就業支援ハンドブック
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222 第4章 就業支援に必要な知識 精神障害者には、医療や住居、職場、金銭面、余暇活動、地域生活などにおいて多面的な支えが必要な人も多い。これらはすべて職場適応に大きく影響することから、職業生活におけるつまずきや問題の発生をあらかじめ想定し、支援者は多面的で継続的な支援体制の整備を検討しておくことが必要となる。また、多面的な職業的課題に対応するためには、支援対象者とのコミュニケーションの確保と本人を中心とした関係者間の情報共有が非常に重要となる。 本人の思いをゆっくりと聞き出し、場面に応じてきめ細かに振返りや打合せを行うなど、個別にコミュニケーションの機会を確保することは、支援を進めるうえで基本となる過程である。職場においては、職場のキーパーソンを確保することが大切である。障害のあるなしに関わらず、職場の中に相談が可能な人がいるかどうかは、職場適応に不可欠ともいえる条件となる。さらに、家庭での相談、病院やデイケアでの相談、職場・家庭から離れた第三者の相談など、職場外にコミュニケーションの機会を設けることも必要である。そうすることで、過度な緊張感や不安感、焦燥感、意欲低下などのメンタル面を始めとした多面的な課題に、様々な立場から対応できる体制を整えることができる。 一方、様々な人が関わる中で、ちょっとした情報の不足や行き違いが、本人や関係者の中に様々な憶測や不信感をもたらし、後々大きなトラブルに発展することも少なくない。支援者は、本人の同意や主体性の尊重を前提に、職場や家庭、医療機関等の連絡・調整や情報共有を意識的に図る必要がある。 具体的には、本人を交えたケース会議などを通じ、職場内外の窓口やキーパーソン、職場や家庭、医療機関、デイケア、就業支援機関などにおける相談体制や相談スケジュール、役割分担、連絡網や情報の流れなどを決めていく必要がある。  ロ.多面的で継続的な支援体制の整備、コミュニケーションの確保と情報共有

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