就業支援ハンドブック
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236 第4章 就業支援に必要な知識れる。また、発達障害としての認知面・行動面の課題を把握するためには、職業評価などのアセスメントが必要となる。これらは、障害の自己理解を進め、本人や家族、支援者が進路の方向性を見立てていくうえでも、就職活動や職場において必要な支援を周囲に具体的に求めていくうえでも、重要な土台となる。本人の状況や意思を尊重することを大前提として、発達障害者支援センターや精神保健福祉センターなどの専門機関において診断や評価に関する相談を行ったり、地域障害者職業センターにおける職業評価の活用などを通じて、このプロセスを踏むことが望ましい。 発達障害者の中には職業に関する経験が少なかったり偏る人も少なくない。そのため、まずは、個別面接、模擬的な職場環境や集団場面での訓練、障害者委託訓練や実習制度を活用した職場体験など様々な機会を設け、自己理解や必要な知識・スキルの基盤を築く必要がある。また、その際には、課題の理解や対処方法の習得が一つひとつ積み重なるよう、ただ訓練や体験を積むだけではなく、進捗状況に応じて生じた具体的な課題に対するきめ細かなフィードバックが重要となる。 さらに、フィードバックに当たっては、様々な場面で生じた課題を目に見える形で整理分類し、体系化して示すことが必要である。発達障害者は、情報をまとめ上げたり、周囲の状況と照らし合わせて適切な選択をすることに困難があり、また、課題が多い場合には何から手を付けてよいのか分からず混乱してしまうことがある。個別の課題に名前を付け、カテゴリーに分け、優先順位に基づきターゲット化し、自分の問題として認識できるようにし、その課題毎にどのように行動することが適切か選択肢を示していかなければならない。 また、相談やフィードバックの方法として、内容のポイントを絞って書いてまとめる、図にする、あらかじめ整理したテキストや振返りのチェックシートを活用する等の工夫も求められる。図5は「指示に従う」という課題とその対処方法を学ぶためのテキストの例である。このような相談のための支援ツールや、職業生活に必要な知識・スキルを身につけるための  ロ.きめ細かく、かつ、整理された、評価結果のフィードバックとその結果に基づく訓練

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