就業支援ハンドブック
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 ① 障害認定はないが職業生活上の困難がある難病患者 例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病のような腸が炎症を起こす病気では、従来は炎症部分を切除し、人工肛門をつけたり、チューブや点滴による栄養摂取を必要とする状態になった時点で障害認定されるが、現在では、そこまで悪化する前に服薬等で症状が抑えられるようになっている。しかし、それでも完治には至っていないために、症状の変動があったり、腹痛や下痢を経験しやすかったり、体調管理上の配慮が必要であったりする。 あるいは、進行すれば様々な身体障害の原因となる病気(多発性硬化症、膠原病等)でも、適切な治療や業務上の配慮等によって障害の進行を一定程度予防することが可能である。しかし、そのような配慮は、身体障害の認定対象となるより以前から必要となる。また、障害の進行を遅らせる治療にもかかわらず、多くの患者は疲労感や体の各部の痛みを経験している。また、治療薬の多くは劇薬であり、その副作用による症状も大きい。 その他、HIVを原因としない先天性の免疫機能障害、筋肉の疲れやすさ、ホルモン調整の異常、等々、従来の身体障害認定基準には該当しない様々な「その他の心身の機能の障害」があるために、職業生活上の困難がありながら、障害認定はないという難病患者が存在する。 ② 障害認定のある難病患者 身体障害者等として認定されている障害者において、その原因疾患が難病である場合も多い。そのような場合、従来の固定された障害の理解以外に、難病の病気としての特性が職業生活に影響することがある。 視覚障害の原因疾患として網膜色素変性症やベーチェット病があり、働き盛りでの発病や進行性が問題となる。また、パーキンソン病は、症状を一時的に抑える特効薬があり、薬が効いているときには健常者と全く変わらないのに、数時間で薬効が切れると体を動かせなくなるという極端な身体障害が進行することや服薬によって劇的に症状が改善するが、その効果が数時間しか持続しないといった「ON-OFF症状」という特徴があり、職業への影響がある。関節の炎症が原因となって身体障害がある場合では、内臓の疾患の合併や関節等の痛み、疲れやすさ等の症状も仕事に影響しうる。多くの難病は様々な身体障害の原因となるが、脳血管疾患であるもや 第1節 障害特性と職業的課題(難病) 243

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