就業支援ハンドブック
277/300

  第二次世界大戦前の障害者に対する雇用対策や就業支援は、傷痍軍人に対する施策が中心であった。それ以外では、1923年に文部省令「公共私立盲学校及び聾唖学校規程」が交付され、盲学校や聾唖学校において職業補導が行われたり、関東大震災後に発足した財団法人同潤会が震災で受障した障害者のために啓成社を設置(1924)し、洋裁等の授産訓練を実施したことなどがあげられるが、ごく一部の取組みに限られていた。 第二次世界大戦後、労働省が厚生省から分離し、職業安定法が制定され、全国に公共職業安定所が設置された。1948年にヘレンケラー女史が来日した際に身体障害者職業更生週間が始まり、現在の障害者雇用支援月間に引き継がれている。また、身体障害者公共職業補導所が開設(1949)され、1952年には、身体障害者の職業更生を推進するための基本対策として「身体障害者職業更生援護対策」が定められた。なお、「更生」とはリハビリテーションを翻訳したものである。 このような中、1960年に「身体障害者雇用促進法」が制定され、身体障害者雇用率制度が導入された。1976年の同法の抜本改正により、身体障害者雇用は努力義務から法的義務になり、身体障害者雇用納付金制度が導入されたことで、身体障害者雇用は大きく前進した。 1970年代までの障害者に対する就業支援を実施する機関としては、労働行政の分野では、公共職業安定所や身体障害者職業訓練校などに加え、1971年から全国に順次設置された心身障害者職業センター(地域障害者職業センターの前身)がある。一方、厚生行政の分野では、身体障害者福祉法の制定(1949)により、身体障害者更生相談所や身体障害者更生援護施設等が設置された。さらに、精神薄弱者福祉法(現知的障害者福祉法)の制定(1971)により、精神薄弱者更生相談所や精神薄弱者援護施設等が設置されて、これらの施設で就業支援が実践されていた。また、1947年に学校教育法が制定され、これまでの盲学校、聾学校に加え、養護学校が設置されるようになった。これらの学校では職業教育が行われ、専攻科や高等部には新規学卒者に対する職業紹介が特例的に認められ、教育分野での就業支援が行われている。このように、障害者の就業支援は、労働行政、厚生行政、教育行政それぞれの分野で展開されていた。なお、精神障害者については、1950年に「精神衛生法」が制定されたが、就業支援に繋がるような動きはあまり見られなかった。そのような中、東京都精神第2節 障害者雇用に関する制度の概要 269◇障害者雇用と就業支援の歴史◇■コラム⑨ 

元のページ  ../index.html#277

このブックを見る