就業支援ハンドブック
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 22 第1章 就業支援のプロセスと手法 ⑤ 行動観察 行動観察は、様々な場面での利用者の言動をありのままに記録して、その職業的諸特性を明らかにするものである。 限られた時間内に、限られた方法で利用者の多様な職業特性を全て把握することは困難であり、また、アセスメントそのものが現実の職業場面ではないという限界もある。行動観察は、この限界を補うものである。・行動描画法:①事実を具体的に記述すること、②程度、頻度等を記録すること、③状況が分かるようにしておくこと・録音・録画法:事前に利用者の了解を得て、VTR等を用いて行動を記録する・評価尺度法:観察しようとする行動と評価段階を事前に用意し、実際の行動をそれに当てはめて記録する<ポイント>〇多面的に把握するため、褒める、具体的な目標を与える、激励するなどにより態度や状況の変化を把握することも重要である。〇一つの行動でも一面的な捉え方だけでなく、流れや能力の程度、障害の内容等を全体的に考慮して意味付けることが必要である。例えば「よそ見」という一つの行動であっても、注意や集中力が散漫なためであったり、やり方に自信や確信がないためであったり、種々の要因が考えられる。〇あらかじめ観察すべきポイントを絞り込んでおくために、障害特性に関する予備知識を持つ。例えば、脳性まひの痙直型の場合は、主たる障害部位以外にも多少なりとも影響があり作業能力に関係することがある等、作業能力や職業生活に関係する場合等の予備知識があれば、観察ポイントを事前に把握できる。〇評価実施時には、観察の工夫と努力が必要である。例えば、身長計の目盛りを利用者に読んでもらうことで、視力の具合や目盛りの読み取り、三桁の数の理解、小数や単位の理解等の数処理の実用性の一端を観察することができる等、工夫により把握できる情報が増える。

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