就業支援ハンドブック
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28 第1章 就業支援のプロセスと手法 いずれにしても、職業準備性は、健康管理や日常生活の管理、社会生活能力の向上(代償手段獲得の訓練も含む。)といった幅広い内容を含んでいる。ゆえに、職業準備性の向上への取組みは、就業支援の領域だけでなく医療・保健・福祉・教育等の各専門領域や家庭等でも行われることになる。このような視点をすべて取り入れて、職業準備性の向上に係る支援を記載しようとすると、膨大なものになるため、本節では、上記②および③の一部に関連して、就業支援の領域で行われるものに絞って説明する。 なお、就業支援の領域で行われる主な取組みとしては、就業イメージの明確化、就業に対する自信の獲得(自信回復)、一般的な職場ルールの理解促進、職場で求められる基本的な対人技能の習得、といったようなことが挙げられる。 また、就労移行支援事業のように、ある程度長期的な支援期間が設定されている場合には、基礎的な作業能力(持続力、正確性等)の向上、基礎的な体力づくりや就職後も継続して行えるような健康増進のための習慣づくり、就職後の支えになる仲間作りや余暇活動への取組みも想定される。さらに、疾病管理や日常生活管理のような医療・保健・福祉の専門領域で取り組むべきことについても、職業生活の継続の視点から取り組むことが考えられる。 3)職業準備性を考える際の留意点 職業準備性を考える際に留意しなければならない点は、「職業生活を始めるために必要な条件」が、企業側の障害者雇用に係る考え方や支援機関の支援状況等によって異なるため、職業準備性の絶対基準を設定し、個人の側に必要な条件が用意されているかどうか画一的に判別することは難しいという点である。 また、第1章第4節で説明することとなるが、援助付き雇用モデルの登場は、「訓練してから就職」というレディネスモデルの考え方から、「就職してからの継続的な支援」に発想の転換を促している。特に、訓練先で学んだことを実際の職場で応用することが苦手な人や、環境の変化に対応することが苦手な人の場合には、「訓練してから就職」よりも「就職してからの継続的な支援」の方が効果的な場合が多いのも事実である。

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