就業支援ハンドブック
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32 第1章 就業支援のプロセスと手法9)職業生活を通しての職業準備性の向上 本節では、職業準備性を「個人の側に職業生活を始める(再開を含む。)ために必要な条件が用意されている状態」とした。しかし、労働省および身体障害者雇用促進協会(昭和62年当時)による研究会報告書では、職業準備における「準備」の語感には、職業生活の事前の準備というニュアンスがあり、これにこだわると、就職後の職業能力開発や職場環境変化への対応の視点を欠くとして、職業準備の概念は、就職後の職業能力開発や職業上の変化への対応力を含め、今後の社会的、経済的変化を踏まえた「全生涯にわたる職業への対応能力の準備としてとらえなければならない」5)としている。このような考え方は、エンプロイアビリティ(雇用可能性)*の概念に近くなるが、障害のあるなしに関わらず、多くの人が、実際に企業の中で働くことにより、技術を身に付けたり、労働者として成長していくことを考えれば、実践的には、見落としてはならない視点である。 また、職業準備性向上の取組みを一緒に行った人たち等との仲間作りが、就職後の職業生活の継続に大きな影響を与える場合もある。職業準備性を向上させる取組みを行う際には、その点も考慮しておくことが望まれる。 * employability(雇用可能性):ある人が仕事に就けるかどうか、一旦就いた仕事を継続できるかどうか、また、転職できるかどうかを示す、労働市場で通用する職業能力、労働市場価値を含んだ就業能力をいう。援は多岐にわたっている。就労移行支援事業、地域障害者職業センターの職業準備支援やリワーク支援等以外にも、「障害者の態様に応じた多様な委託訓練」の「実践能力習得訓練コース」等を活用したり、技能習得のための職業能力開発校の利用も考えられる(第4章第2節参照)。様々な制度を有効活用するためには、制度の情報を知るとともに、関係機関と連携し、より効果的な制度活用を図ることが望まれる。 職業準備性を向上させる際には、個々の課題に留意しながら、個別の取組みを行うことが望まれる。例えば、地域障害者職業センターでは、作業第3項 職業準備性向上のプログラム例

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