就業支援ハンドブック
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36 第1章 就業支援のプロセスと手法 さらに、知的障害者や精神障害者等の中には、その障害特性から環境が変わると訓練等で身に付いた力を充分に発揮できないタイプの人もいる。このため、障害の特性や受入れ企業の準備態勢の状況に応じ、職場に適応するために「仕事の技能習得」、「職場ルールの遵守」、「コミュニケーション技能の習得」、「人間関係の形成」等に関してきめ細かな支援を行うことが必要な場合もある。 就業している障害者は職場で従業員としての役割を果たしていくことに加え、生活者として「規則正しい生活習慣の確立」、「家事の遂行」、「消費活動や金銭管理」、「友達や異性との交友や余暇活動」、「地域活動への参加」、「通院・服薬といった疾病管理」など様々な役割や活動があることにも留意しなければならない(第2節図3(16ページ)、図1)。知的障害者や精神障害者等の場合、職場環境が整っている場合でも、家族関係や交友関係での問題、金銭面での問題、疾病管理の問題が、職場での作業遂行やコミュニケーション、人間関係にも影響することがありうる。したがって、雇用継続のためには職場での支援に加えて、生活面の継続的な支援も重要である。 以上のことから、就職から雇用継続のためには、①障害者の個々の状況に応じた職場適応のための支援、②企業への支援、③生活面の支援をきめ細かく一体的に実施していくことが必要であり、そのためにはそれぞれの支援を担当している支援者(病院・クリニック、就労移行支援事業所、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等)が支援対象者や企業に関する情報を共有し、連携して支援を行っていくことが重要である。 さらに、これらの支援により職場適応が図られても、生活環境の変化、配置転換や職務内容の変更、上司や同僚の異動などにより、新たな支援課題が生じる場合もある。支援者としては、職場適応後もしばらくは定期的な職場訪問や電話連絡等を通じて勤務状況を把握しておきたい。 なお、これらの情報共有においては、当然のごとく支援対象者や企業に対してその目的や内容を説明した上で同意を得ておく必要はあるので留意されたい。 ここでは、就職から雇用継続のための支援として、「企業へのアプロー

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