就業支援ハンドブック
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1ジョブコーチ支援における基本的な考え方1)ジョブコーチが生まれた理念的背景 1986年(昭和61年)に米国においてリハビリテーション法が改正され、 「援助付き雇用」が制度化されたことにより、わが国の職業リハビリテーションにおいても、従来のレディネスモデルから「援助付き雇用モデル」へのパラダイム変換が図られることとなった。 レディネスモデルとは、職業評価によって明らかとなった能力の不足を職業訓練で補ったり、職業準備性を高めたりすることにより、一定の水準に到達させ、その後就職につなげるという考え方である。 これに対して、「援助付き雇用モデル」とは、訓練してから就職を目指すのではなく、まず企業を紹介し就職した後に、その職場で求められる具体的な作業能力や対人対応力を直接的に引き上げるとともに、能力を発揮しやすいよう職場環境(物理的環境、人的環境、要求水準等)の方を調整するという考え方である。ジョブコーチは、この「援助付き雇用モデル」の考え方のもとに生まれたものである。 2)環境調整と企業に対する支援の視点 ジョブコーチ支援では、職場での支援が中心になるため、障害者に対する支援もさることながら、職場環境の調整や企業に対する支援の視点が極めて重要になる。  ① 本人を変えるか、環境を変えるか レディネスモデルは“就職までの支援が中心”であり、ジョブコーチ支援は“就職後の職場での支援が中心”といえる。この職場での支援の方法には実は2つしかない。a本人を変えるか、b職場環境を変えるかである。前者は、本人が作業遂行力を習得したり、職場で求められる行動様式を身に付けたりすることなどであり、後者は、作業工程を単純化したり、上司に適切な指示の出し方を習得してもらうことなどが該当する。この2つの方法は二者択一的なものではなく、相補的に適用されるものである。就職 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 59第3項 ジョブコーチ支援

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