就業支援ハンドブック
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60 第1章 就業支援のプロセスと手法 ② なぜ企業に対する支援の視点が重要なのか 第2項の「企業へのアプローチの方法」でも述べられているように、障害者雇用に当たって、企業は職務設定や指導方法、安全面の配慮等で課題を感じ、支援を必要としている。また、障害者の現状、障害特性、雇用支援制度等に対する知識不足や誤解から、企業が誤った対応をしてしまい、その結果、不適応状態となったり、離職を余儀なくされてしまうケースも多くみられる。 ここに企業に対する支援の必要性があるのであり、ジョブコーチは職場において必要とされるこれらのニーズにタイムリーに応えていく役割を担っている。3)ナチュラルサポートの形成の視点 ジョブコーチ支援は、障害者が自分の能力に応じた役割と責任を持って働けるようになるとともに、企業が障害者を職場の一員として自然に受け入れ、無理なくサポートできることを目指している。ナチュラルサポートの形成においては、一般に、障害者を受け入れた企業の従業員が職場で障害者を支えることのできる体制づくりが重要となる。 「体制」と言うとつい大仰なことを想像してしまうが、むしろ何気ないちょっとしたことの方が多い。一方で、何気ないことであるが故に気づきにくいという側面もある。 例をあげれば、車いす使用者が段差のあるところをスムーズに移動するにはスロープが有効になるということは分かりやすい。しかし、知的障害や精神障害のように目に見えない障害を持つ者の就労における「段差」とは何か?そしてそれを埋める「スロープ」とは何か?といったことは一見分かりにくい。 例えば、質問をする場面で考えてみる。までの支援に慣れ親しんだ者には、どうしても本人を変えることに目が行きがちであるが、課題に応じて、どちらがより効果的であるかなどの観点から柔軟に適用するべきであろう。本人を変えることに制限があるほど、それを補う環境調整がウエイトを占めることになる。

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