就業支援ハンドブック
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7)ナチュラルサポートの言語化 定着支援を実施する機関は、地域障害者職業センターに加え、障害者就業・生活支援センター、障害者就労移行支援事業所、障害者就労定着支援事業所、特別支援学校等近年ますます多様化している。定着支援を一つの機関から別の機関に引き継ぐというケースも増える中、ナチュラルサポートの形成とその修復(メンテナンス)を複数の機関で分担する場合、ナチュラルサポートの実態に対する共通理解が不可欠となる。 ナチュラルサポートの実態の全てを言語化することは難しいにしても、本人の就労を支えている要素とその機能を明らかにすることは可能であろう。それには「もし〇〇が無くなれば本人の就労は危うくなるかも知れない」と思われるものを考えればよい。この「〇〇」に当たるものが就労を支える要素となる。この要素はジョブコーチが新たに作った仕組みのこともあれば、職場に元々あった風土や暗黙のルールのこともある。さらに、ジョブコーチがこの要素の安定度までアセスメントでき、それらが引き継がれれば支援機関は切れ目のない支援がしやすくなり、企業にとっても障害特性に留意した自立的な雇用管理が可能となり得る。おわりに ジョブコーチ支援は、企業の内外で障害者の就業を支える仕組みを作るんなことしてるの?面倒だし、止めたら?」ということになりかねない。 例えば、分からないことがあっても質問できず、周囲から孤立し被害的になり休職してしまった精神障害者を復職支援したケースでは、支える仕組みとして、定期的に上司に報告することとし、それにより、本人が作業のできばえを確認できることが安心感につながり、また、評価されることでモチベーションの維持につながった。この場合、なぜ、対象者には仕事の区切り毎に「報告する」というルールが必要なのか、対象者にとっての報告行為の意味合い、そのメカニズムを企業や周囲で働いている人に理解してもらう必要がある。 ただし、難しいのは知らないうちに仕組みが消失し職場で課題が発生しないと、その仕組みの大切さがなかなか理解できないというところである。 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 75

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