就業支援ハンドブック
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 実際に職場で遅刻が大きな問題となった場合、どのようなことから支援に着手するだろうか。 「遅刻しないようにしなさい」と注意するだけで済めばこれに越したことはない。しかし、遅刻という事象の原因が何であるかが分からなければ対処することができない。仮に遅刻の原因が「寝坊」であれば、対処としては目覚ましをセットすることや、家族に起こしてもらうということが妥当であるといえる。「自立」という観点で考えると、前者がより的確であり、後者は避けたい支援方法ではあるが、直接支援の方法としては間違いではない。しかし、寝坊の原因が根深いものである場合は、そこにも支援の必要性が発生する。仮に夜更かしが原因であれば、目覚ましのセットよりもむしろ生活習慣(夜更かし)の改善が必要になる。また、夜更かしを余儀なくされる家庭環境であれば、本人に対する支援よりも、むしろ家族を巻き込んだ生活環境の改善が必要になり、支援は本人のみならず家族にまで波及する。 このように職場において「遅刻」としてしか現れない事象の背後には、実に様々な要因が含まれていることが多く、その場合には家庭環境に踏み入った支援が必要になる場合が少なくない。 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 79表1 支援が必要な就業に直接関わる事象と支援方法状況の把握(聴き取り、面談)を行い、適宣対処、家庭(保護者)との話合いによる協力要請具体的な方法を支援(髭剃り、洗顔、整髪等)、家庭(保護者)との話合いによる協力要請(入浴、洗顔、更衣、洗濯等に関することについて)家庭状況の把握、具体的な打開策の提示(仕出し弁当の注文など)家庭の状況把握、本人からの聴き取り、「働く」ための生活のリズムの提示等、服薬等に関する相談本人からの聴き取りによる状況把握、職場での関係把握、SSTの活用、余暇の状況把握、模索支援が必要な事象原因として考えられること朝寝坊、夜更かし、時間の組み立てに関する困難、家庭環境、通勤時の問題等経験不足、家庭環境、こだわり等常習的な遅刻欠勤身だしなみ(清潔感の欠如等)昼食の過剰摂取、不摂取、栄養バランスの欠如家庭における状況把握の欠如、物理的に支援困難な家庭の状況、欲求(食欲)の制御困難な状況夜更かし、意欲低下等作業中の集中力不足、居眠り等職場での他害、物損等耐える力の不足、コミュニケーションの問題(人間関係)、余暇の不足等支援方法(対象)

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