就業支援ハンドブック
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80 第1章 就業支援のプロセスと手法 支援者が支援に入る際に最も重要なことは、見えている事象がどのようなことに起因し、どの部分に対して支援が必要かということを充分に検証することである。そのためには、本人・家族から状況について充分に「聴く」ということが必要になる。充分に聴くことによって状況をしっかり把握し、より効果的な支援を行うことができるからである。同時に、目の前で起きている事柄をよりスピーディに解決するということと、その根本的な課題にアプローチするという二つの支援を同時に展開することも必要になる。職場における課題(問題)は、即時解決すべき事象であると同時に、根本原因の克服には時間を要する場合が多いからである。 また、支援を行う際に企業と支援の範囲について認識を共有する必要がある。雇用主である企業が求める以上の支援は、時として不安定な状況をまねく原因にもなり得る。特に生活面における支援は職場における課題と関連する事項が多く、これらのバランスが重要になるため、常にベストの状況をゴールに見据えることはできない。企業と「ここまで」という支援の範囲を共有する必要がある。 2)就業の場面では見えない内容について 次に、就業の場面では具体的に問題として見えない(見えにくい)事柄について考えてみる。就業支援を行う際に、職場にだけ目を向けていればよいのだろうか。確かに職場において問題が発生した場合に対処することが就業支援の大きな役割ではある。しかし、我々が職場で働いている時間は一体どれくらいであろうか。仮に週休2日制・1日実働7時間(拘束8時間)の職場に勤めているとすると、1週間のうち職場で過ごす時間は40時間になる。1週間は168時間なので、職場以外の時間は128時間にもなる。1日8時間睡眠をとったとして睡眠時間を差し引いても、72時間は職場以外(睡眠時を除いた)で過ごしている計算になる。職場とそれ以外の場所での生活時間の比率が約4:7ということをみても、いかに職場以外で過ごす時間が長いかが分かると思う。 このような状況において、職場でしっかりできているから大丈夫ということは少々油断しているといわざるを得ない。職場を出てから帰宅までの時間、休日、更には自宅においてもパソコンや携帯電話で外界とつながっ

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