就業支援ハンドブック
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82 第1章 就業支援のプロセスと手法3)働き続けるための支援(継続的な就業のために) 就業支援における生活支援を考える際には「働き続ける」ということがキーワードになる。もちろん職場での安定した作業や人間関係構築に向けた支援が必要なことはいうまでもない。前述したように生活支援のために家族等との連携も不可欠である。ここでは更に安定した就業のために必要な要素である余暇支援について考察したい。 表2の例は、事象として現れるまでにいくつかのサインがあり、最終的に職場における問題に発展してしまったケースである。ここではまず職場での様子に注目していただきたい。 表における①~④においては問題として見てとれる事象はない。むしろ彼女ができたことが仕事へのモチベーションにつながりよい評価を得るかも知れない。⑤に至り、初めて本人に異変が起きていることに気付くであろう。このように、この事例においては職場のみでは把握できない問題が発生しているといえる。 では、家庭の様子からは異変は見てとれないだろうか。 例えば②を見ていただきたい。もし家族との連絡の中で、「自室にこもりがち」という事実がつかめていたらどうであっただろうか。少なくとも本人に訊いてみることぐらいはできるであろう。そこですべてが把握できて解決ができるわけではないが、注意を払うきっかけにはなるだろう。ここで気にかけていることができれば、③における事象は問題の発生を確信させる内容であるといえないだろうか。さらに④の事象に至れば、本人・家族と話をする場面を設けることができるであろう。 結果として、⑤、⑥のような事態になるとしても、職場での把握のみでいきなり⑤の事象に当たるよりは迅速な対応が可能になる。 このように、職場だけではなく家庭等における様子の把握は、生活支援において非常に重要になる。そのため、生活支援を行う場合には家族、グループホームの世話人、ケースワーカーなど、支援対象者が最も話をしやすい人との連絡調整が不可欠になる。支援対象者を取り巻く環境を充分に把握することが必要といえる。

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