就業支援ハンドブック
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84 第1章 就業支援のプロセスと手法3生活支援における役割分担 これまで述べてきたように、生活支援は非常に多岐にわたり、多様な対応が必要になる。状況によっては、専門的な知識・対応が必要になるため、一機関で完結する支援は一般的ではなく、他機関・家族等との連携が基本になる。 支援者としては「何とかしたい」と強く思うあまり一人で解決しようとしがちだが、不充分な知識やスキルによる支援は対象者の状況を悪化させてしまう危険があるので注意したい。生活支援においては、専門的なスキルを必要とする場面が多いため、どのような支援に対してどのような機関が有効であるかという情報が重要になる。そして持てる情報を充分に活用して支援を組み立てるコーディネーター的な役割を担うことが最も有効な支援方法になるといえる。 就業支援における生活支援では、企業・家族・支援機関の連携が必要だが、支援機関には多数の機関が含まれる。このような場合に、それぞれの機関が独自に企業や家族と連絡をとることは、企業や家族の負担感を大きくし、場合によっては情報の誤認識や時間軸におけるズレなどを引き起こす。主となる支援者がコーディネーター的な役割を担い、情報を集約することが望ましい。ただし、医療情報など個人情報に関する事柄に関しては、 就業者本人が主導する余暇活動の支援においては、金銭感覚の問題や仕事に支障をきたさないための配慮、交友関係等に関する問題などについて介入度が高くなることが少なくない。特に近年ではネットに関するトラブルも増加しており、対応内容は多岐にわたる。犯罪や契約トラブルなど、場合によっては支援者の対応可能な範囲を超える事例も発生するので、利用可能な地域資源と連携した対応が必須になる。 就業において不可欠であるのが余暇であり、また就業のために適切な支援が必要になるのが余暇であるといえる。当然のことではあるが、社会においては「障害者だからここから先はダメ」という規制はない。我々に提供されているものすべてが支援対象者にも提供されている。 余暇支援において重要なことは、活動の押しつけや支援者の判断による禁止ではなく、より適切な余暇の過ごし方をともに考えることである。

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