就業支援ハンドブック
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3)支援対象者は成人であるという認識 就業している(しようとしている)障害者を支援する際に忘れてはならないことは、対象者は成人であり一社会人であるという認識である。前述したようにすべての社会は彼らに開かれており、彼らがとる行動は本人の自己責任によるものとみなされる。 支援対象者は、これまでは学校や施設といった機関において、一定の管理された環境下で多くの時間を過ごしてきている。また、外出の際も多くは保護者同伴などある程度安全が確保された状況下に置かれている。しかし、就業者になると、管理された環境でもなく、常時同伴者がいるという状況でもなく、本人の責任能力が問われる機会が一気に増大する。 職場における就業支援においては、本人のスキルアップと並行して、補助具の使用や周囲の配慮によって困難を解消するという手法を用いる。しかし、生活支援においては、これらの手法は適応しない場合が多い。経験値や情報を増やすことで、判断材料を増やすなど障害者本人の意識や能力に頼る面が大きく、問題解決には時間がかかる。本人の能力による解決が困難と判断される場合には、成年後見人制度の活用なども視野に入れて支援に当たらなければならない。生活支援においては、就業支援以上に本人の能力や意識が重要になるといえる。 我々が支援する対象者はあくまでも一人の成人であり、一社会人であるという前提を忘れてはいけない。支援者の態度としては、一社会人として接することは勿論のこと、平易な説明に配慮するあまり、支援対象者を子供扱いするように誤解を招く表現をしたり、支援方法を強要するようなことがあってはならない。また、支援の範囲や内容について、本人、家族、企業と共有し、共通認識の下に支援を行うことが重要になるが、支援に関する情報を家族等と共有する場合でも、本人にその趣旨を十分説明し同意を得る等の配慮が必須である。身の所在の明確化、常に連絡が取れる体制の整備が重要になる。また、自分が対応できない場合は放置するのではなく、代役を立てるなどして即時対応に努めることが重要であり、そのための基盤を整備しておくことが必要である。 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 87

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