就業支援ハンドブック
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90 第1章 就業支援のプロセスと手法6)就業支援における生活支援のプロとして 就業支援における生活支援を行う場合、必ずしも本人に寄り添う場面ばかりではない。支援対象者、企業双方への支援が前提になるので、時には本人の意に沿わないことにも取り組む場面に直面する。福祉を志す方の多くが本人の希望に寄り添い、サポートすることを主眼に業務に当たっていると思う。しかし、時として相反する支援が存在するのが就業支援である。今支援対象者にとって何がベストなのか、支援者自身の満足ではなく、支援対象者にとってのベストを求める意識を常に持っておくことが重要である。 また、日常生活を形成するうえで、どのような困難が存在し、何に起因しており、どのような対処が有効かを模索し、また、問題解決に当たってどのような資源・機関があり、活用が可能かを検討することとなる。そのための豊富な情報が必要であり、地域資源や社会情勢には常に高いアンテナを張っておくことが必要になる。 就業支援のプロとして、持てる力を発揮できるよう連携を重視し、地域に根ざした活動をすることが、よりよい支援につながる。が必要になる。支援者の見定めのないまま、本人に対して支援者が身の回りの全てを支援してしまうことは、本人のスキルアップにはつながらない可能性がある。 支援者が「私がいれば大丈夫」というスタンスで支援する限り、支援対象者の「できる」は育たない。最低限の支えでという意識をどこかでしっかりと持つ必要がある。例えるならば、杖があれば歩ける方に車椅子を差し出してしまうようなことは、就業支援における生活支援の場においては避けたい。働き続けること、生活し続けていくことが目的であり、現時点の問題解決が必ずしも最終目的ではない。過度な支援は、結果として対象者の自立を阻害し、支援者なしには生活できない状況を作り上げてしまう恐れがあることを忘れてはならない。

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