就業支援ハンドブック
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5支援者の立ち位置について 最後に、まとめとして支援者の立ち位置についてお伝えしたい。就業支援における支援対象者に対する立ち位置は、その他の福祉サービスにおけるそれとは異なると考えられる。 福祉サービスにおける支援者の立ち位置は、本人に寄り添い、本人の満足を最優先にするものと考えられる。最終的にはサービスが評価され、更なる利用者の増加につながる。 しかし、就業支援における支援者の立ち位置はこれとは異なる。支援対象者は必ずしも法人のサービス利用者とは限らない。また、本人の満足は今目の前にある一点ではなく、安定した就業・生活という長く続く線であり、即座には感じづらいものである。このような視点をしっかりと持ち、 自身の立ち位置を考えることが重要である。 また、福祉サービスにおいては本人の満足を最優先するため、時として手厚いサービスを提供する。そして本人がサービスを利用し続ける限り、対象者との関係が変化することはない。 しかし、就業支援において支援者はあくまでも黒子である。必要以上に出過ぎることは適切な支援とはいえない。また、場合によっては支援頻度・介入度を徐々に減少させ、困ったときに SOSが出せるような距離感の取れる存在になることも必要である。支援すること自体に満足を求めるのではなく、支援対象者が自立することに支援者自身の仕事の満足・目的を置かなければならないのが就業支援であり、就業支援における生活支援である。 警察や消防といった機関に例えることが適切であるかは分からないが、就業支援における生活支援は、その機能は類似していると私は考える。あらゆる事態に対し常に準備し、情報を収集する。そして準備した情報は機能する機会がなければそれはよいことであり、しかし必要な場合にはすぐに駆けつけられる。このような機能を持つことを意識し、その内容にやりがいを持つことができれば、就業支援における生活支援はとても有意義であり、必要不可欠なものであると感じられるであろう。そして就業支援者として真に「何をすべきか」をしっかりと捉えて、支援対象者の自立に向けた的確なサポートができるだろう。 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 91

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