就業支援ハンドブック実践編
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題である。・ 「図形の模写」は、指定した図形を模写する課題である。・ 「図形の色塗り」は、図形に指定した色を塗る課題である。Aさんは、理学療法、作業療法、言語療法等、総合的な医療リハビリテーションを受けていたため、スムーズな遂行が可能ではないかと思われたが、同時注意やかなひろいでミスを出し、注意力の不足が確認できた。実施結果については、「かなひろい」「同時注意・数字」においてミスが発生するなど、注意障害が認められた。また、作業スピードに課題が窺えたが、この段階では、慎重に作業に取り組もうとするためなのか、作業能力の不足によるものなのかについての判断はできなかった。上記1~4の作業課題を通じて、総合的にAさんの状況を把握できた。高次脳機能障害の諸特性については、特に注意障害に起因する作業能力の低下が著しいことを把握できた。また、失語症があるものの表面的な会話は何とか成立するため、逆に就職の際にはコミュニケーション上の課題として目立たず、就職した後の職場定着において課題が生じる可能性も予想された。③ 体験利用後の面談体験利用の終了時に振り返りの面談を実施した。なお、Aさんの感想と施設の評価は下記の通り。<Aさんの感想と当施設の評価>Aさん:「通所自体は問題ないため、継続して通所できそう。」→  当施設の評価:電車の時間や乗り換えのルートも口頭できちんと説明できており、時間通りに決められたルートで通所ができた。Aさん:「事務職での就職について、強く希望したい。」→  当施設の評価:注意障害の影響が大きく、読み書き等、事務職に必要とされる基本的な能力に課題があり、現状では困難ではないかと判断している。しかしながら、今回の相談において事務職が困難であると否定するのは適切でないと判断し、事務職での就職に向けた訓練プログラムの提供自体は行うこととした。ただし、現実的な就職に向けては事務以外の作業を活用した訓練も行う必要があることから、事務以外の作業の実施についても提案したところ、家族の後押しもあり、事務以外の作業も実施することとなった。以上により、改めて利用希望の意思確認を行った上で、主治医に働いてよいかどうか、また働く上での諸注意等について確認した。また、体験中の記録は実習評価票(図1)にまとめ、ポイントを絞って説明を行った。事例4 就労移行支援事業所 高次脳機能障害97第2章 事例4

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