就業支援ハンドブック実践編
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ワーカーからは、Aさんと母親に就職に向けた支援、就職後の職場定着支援、生活支援についてパンフレットをもとに説明し、登録の希望を確認した。当面はAさんとの信頼関係の構築と情報収集を目的に面談を継続的に実施すること、必要に応じて地域の就業支援機関にも協力をお願いする場合もあることを説明した。Aさん、母親ともにセンターの支援を希望されたため、登録手続きを行った。1週間後にAさんと面談をすることとし本日の面談を終了した。(2) Aさんとの個別面談(1回目)Aさんから、改めて就職に対する考え方や職歴等について聞き取った。まず母親の前では話しづらい事があるのかを確認するとPoint4  、「母親に過去のことを聞かれたくなかったので話しづらかった。」とのこと。理由は父親に知れるのが怖いこと、後ろめたさがあること、どう説明したらいいか分からなかったからとのことであった。将来的に家族のサポートがどれだけ期待できるかによって、支援計画の内容も大きく異なってくるため、早い段階で把握することが必要です。4就職については、焦りはあるが「自信がない」「何が向いているのか分からない」等の不安を話された。前職の離職後にいくつかアルバイトの面接を受けたが不調に終わり、次第に家に閉じこもりがちになっていたが、手帳取得をきっかけに再度就職しなければという気持ちが強くなった様子。なお、Aさん自身は手帳の取得に抵抗感はなかったとのこと。働く動機は、「両親に心配をかけたくない(心配をかけると怒られそう)」「一人暮らしをしたい」等が理由とのこと。職歴の把握については、Aさんの理解力や表現力を考えると、聞き取りだけでは必要な情報を収集、整理するのが難しいこと、また、Aさん自身の振り返りの機会とすることを目的に、「職歴の振り返りシート(図1)」を活用した。Aさんには、「記入できる範囲でかまわない」旨を伝え、さらに、Aさんが記入できない項目については、「質問方法を変える」「具体例を挙げる」等、Aさんの理解力を踏まえてサポートした。その結果、抽象的な部分はありながらも以下の情報を整理することができたPoint5  。知的障害等により、理解力や表現力等に配慮が必要な方については、本人にとって望ましい相談のペースや言葉遣いを意識してアセスメントをすることが大切です。また、本人では十分に受け答えや説明ができない事項もあると思いますが、その点は改めて家族等から確認することとし、まずは本人の言葉で話してもらうことによって、本人の潜在的なニーズや今後の支援のポイントを探っていく姿勢が重要です。支援者や家族等の周囲の人間が、本人を置き去りにしてしまうアセスメントをしないよう心がけます。5第2章 事例5 就業支援ネットワークを活用した情報収集によるアセスメントとプランニング110第2章 事例5

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