就業支援ハンドブック実践編
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相談当初は気づいていなかった自身の傾向等について、職歴等の振り返りを通じて本人自身が気づいていくことが重要です。そのため、支援者は職歴等の振り返りを通じ本人がどこに困り感を持っているかを捉えながら聞き取りを進めていきます。さらに、支援者は適宜本人に振り返りの感想などを確認し、本人から新たな考え方や気づきに関するコメントがあった場合は、適切にフィードバックしていく事がポイントです。6これまでの面談を通して情報収集した内容の整理Point7  ○強みと思われる点・真面目。就職に対する自発性が高い。・支援者に経過を素直に話してくれる。・通勤上の制限はみられない。○懸念事項・作業遂行上での不適応が続いている。・在宅生活が長引き、生活リズムが乱れている。・質問、報告など職場における対人技能が不足している。・相談する習慣がなく、母・支援者への自発的なSOSの発信が懸念される。・金銭管理が不十分である。・家族の障害理解やサポートに不安がある。アセスメントにおいては、本人や関係者から収集した事実をもとに、支援者が本人の職業生活における課題や課題解決に必要な支援を想定するため、本人が持つ強みと課題を整理していく必要があります。本事例では、ここまで聞き取りによるアセスメントを行っていますが、本人の表現力や理解力に一定の制限があること、家族のサポート体制が手厚いとは言えないことから、情報が側面的であること等を踏まえ、あくまで強みと思われる点と懸念事項として整理をしています。7(4) Aさん及び家族との面談(就労移行支援事業所を活用したアセスメントの勧奨)ワーカーはAさん及び母親との面談を経て、さらにアセスメントが必要な事項について、①「実際の作業における遂行力」、②「集団場面でのコミュニケーション力」、③「ブランクによる基礎体力や労働習慣への影響」、④「辛い時等のAさんの意思表示と家族に期待できるサポート体制」の4点に整理し Point8  、Aさん、母親と今後についての面談を設定した。Aさんの就職に対する意欲を尊重しつつも、失敗体験をこれ以上積み重ねないよう、上記4点を明確にした上で、Aさんに合った働き方や就職活動のタイミングを検討したい旨を伝達した。また、これらを面談のみで把握することは難しく、実際の作業場面で確認をすることが望ましいため、就労移行支援事業所の利用を提案した。事例5 障害者就業・生活支援センター 軽度知的障害113第2章 事例5

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