就業支援ハンドブック実践編
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障害(特性)について・ Aさん、母親ともに「知的障害のために療育手帳を取得した」ということ以外に、Aさんの特徴を考えたことはない。母親曰く「受け身」「常に声かけが必要」とのこと。【面談で把握した強み】・ 真面目。就職に対する自発性が高い。支援者に経過を素直に話してくれる。通勤上の制限はない。【面談で把握した課題】・ 作業遂行上の不適応が続いている。在宅生活が長引き、生活リズムが乱れている。質問、報告等の職場における対人技能が不足している。相談する習慣がない。金銭管理が不十分である。家族の障害理解やサポートは必ずしも十分でない。今後の支援について・ 就職活動のタイミングや方法等を検討する上で、下記4点についてさらにアセスメントを進める必要があり、そのためにB事業所の利用をAさんに勧めている。1 実際の作業における遂行力2 集団場面でのコミュニケーション力3 ブランクによる基礎体力や労働習慣への影響4 辛い時等の本人の意思表示と家族に期待できるサポート体制自機関で把握した情報を確実に共有するためには、他機関に対して紙面にて情報を提供することが効果的です。本人の障害特性や経歴なども重要な情報ですが、自機関の支援方針を具体的に記載することが重要です。これによって、他機関も何を求められているのかを具体的に理解することができるようになります。13 また、B事業所利用開始日に、Aさんの目標と支援者の役割等について共通認識をもつことを目的としたケース会議(参集範囲:Aさん、母親、ワーカー、B事業所担当支援員)をB事業所で実施した。①「実際の作業における遂行力」②「集団場面でのコミュニケーション力」③「ブランクによる基礎体力や労働習慣への影響」④「辛い時等の本人の意思表示と家族に期待できるサポート体制」の確認が最大のねらいとなるため、Aさんの目標も関連した内容となるよう調整したPoint14  。B事業所からは「できるだけ多くの作業を経験するように調整するが、必要に応じて職場実習の設定も可能である。」との話をいただいた。Aさんの目標や支援員の支援事項は以下のとおり。本事例ではアセスメントを目的として就労移行支援事業所を利用していますが、アセスメントする事項に合わせて本人の達成目標を明確にすることがポイントです。達成目標を明確にすることで、「目標達成ができたかどうか?」「目標達成できなかった場合の要因は何か?」を支援者間でより具体的に情報共有ができるとともに、本人の気づきも一層促進されます。14 事例5 障害者就業・生活支援センター 軽度知的障害117第2章 事例5

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