就業支援ハンドブック実践編
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発達障害のある方の場合は、障害特性に起因する状況把握の苦手さや考え方、判断の偏りを支援者が把握しつつ、その特徴に応じたコミュニケーションを図ることが重要になります。視覚的な理解が優位な方においても、文字と図の組み合わせで簡潔に記載することが良い方や文章で詳細に記載することが良い方等、特徴は個々に様々です。また、単に口頭指示で補足するだけではかえって混乱するため、資料を一通り一読した後に、一行一行口頭で補足した方がよい方もいます。そのためアセスメントで把握した情報を踏まえ、個々の特徴に応じた分かりやすいフィードバックを心掛けます。19職業評価結果について、就業に対する考え方等、聞き取った内容に変更がないか、また本人と支援者との認識にずれがないかについて一つひとつ確認した。職業センターでのアセスメントを通じて、自分の特性について気づいた点を尋ねると、①ストレスの発散ができず溜め込みやすいこと、②相談場面だと焦らず話ができること、③見落としやうっかりミスが多いこと、④慣れないうちは、スピードと正確性の両方を意識することができにくいため、最初は正確性の方を意識して行いたいこと等であったPoint20  。支援者とのやりとりを通じて、本人自身がアセスメントやプランニングに主体的に参加できるようにします。そうすることで本人が結果に納得し、かつ自己理解が深められるようになります。20また感想として、「職業評価を受ける前はもっと散々な結果になると思っていたが、自分の得意な点などセールスポイントにも気づけて驚いた。」と話され、カウンセラーからは、Aさんが気づけた上記4つ全てがこれから働く上での留意点になることを伝えた。なお、アセスメントの内容の一部はAさんから聞き取った内容と概ね一致しており、相談を通して丁寧に一つひとつ振り返れば、Aさんは自分自身の状況を適切に把握し、改善に向けた取組みを検討することができる力をもっている旨を伝えた。なお、以前の聞き取りで確認した内容について、誤りや変更はないとのことだったが、前回のワークサンプル幕張版の検査が終了した後、パソコンのタイピングソフトと表計算の参考書を購入し、自宅で勉強を始めているとのことだった。さらにAさんは、「障害を開示して事務職での就職活動を進めたい。」と話され、その理由を尋ねると、これまでのアセスメントを通してパソコン作業は比較的ミスが少ないことが分かったこと、かつ障害者求人にはパソコン作業を中心とした簡易事務作業の求人があり、就職例もあると分かったためと話された。カウンセラーからは、以前は次の一歩が踏み出せるか不安であると話していたが、現在は自分で今後の方向性を考え、積極的に取り組もうとする点は好感が持てると肯定した上で、今後の具体的な方針を決める相談を行うことを伝えた。事例1 地域障害者職業センター 発達障害41第2章 事例1

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