就業支援ハンドブック実践編
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[障害について]・ 上記(4)のスーパー(品出し、接客)で勤務している時、作業ミスや同僚との摩擦等のストレスから○クリニックに通院。アスペルガ一症候群の診断に至ると同時に服薬を開始。・ 主治医の意見書には、「不安、不注意の症状がある」「コミュニケーションにおいて相手の意図を汲みとることが難しい」旨の記載あり。・ 病院で受けたWAIS-Ⅲの所見では、「言語理解は平均的な能力だが、表現の際に言葉が不足してしまう」「聴覚情報の短期記憶や操作は苦手」「指示に従う力は高くミスも少ない」「視覚情報の理解は得意なため事務処理は安定する。しかしながら、細部への注意、探索は少し時間を要するため、処理量はやや少なくなる。」等の傾向が記載されている。・ Aさんは、「抽象的なことが分かりづらい」「数字の読み間違い等の早合点が多い」「判断が求められることへの対応が苦手」の3点を自覚している。また、ストレスを感じると気分が落ち込んでしまう傾向があると話される。[生活歴及び職歴について]・ 学生時代は勉強で困ることは少なかったが、運動や対人関係は苦手で困ることが多かった。・ 職歴について、短期契約以外の仕事では概ね2年以上継続勤務。いずれの職場でも仕事で大きな支障はなかったが、早合点や不注意によるミスがやや多く、抽象的な問いかけ等が分かりづらい等、作業面で苦慮することも間々あった。離職に至った直接的なきっかけは、職責の変化やコミュニケーション上でのストレスである。・ 現在の職場の悩みは、夜勤による疲労以外にも雑談や世間話に苦慮していること、頼まれ事や相談事を受けて人間関係の板狭みになること等、対人関係のストレスを挙げている。Aさんの主訴は、「転職の参考のため検査等を受けたい。」であったが、把握した情報からは、職場における不適応の主な要因は仕事の適性よりも対人関係やストレス対処であった。現在の職場でも対人関係で悩んでいるため、カウンセラーは職場における対人コミュニケーションやストレスの特徴に留意し、対処方法を検討することが重要と考えた。このため、職業センターでの職業準備支援における「発達障害者就労支援カリキュラム」の体験利用を通じて、具体的なAさんの特徴を把握した上で、今後の転職も含めた支援のプランを立案することが望ましいと考えた。また、職務遂行力の状況や注意障害の特徴、疲労状況の把握のためには、1対1での各種検査だけでなく模擬的就労場面における作業支援を活用することが効果的と判断した。これらの方針をAさんや発達支援センター担当者に伝え、両者から同意を得た。(参考事例) 地域障害者職業センター 発達障害49第2章 事例1

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