就業支援ハンドブック実践編
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傾向が標準域より高く、一方で「感情をストレートに表現する」「現実的である」「客観性を重んじる」「周囲を思いやる」等については、全体的に標準域より低い傾向がみられた。このため、第一印象は対人対応力が高いように思われがちだが、それはあくまで表面的なAさんの特徴であり、内面では自分の感情を過度に抑制する傾向が強かったり、現実に即した客観的な判断が行えないために他者の意向に従ってしまうなど、他者とのコミュニケーションによりストレスを蓄積させている様子が顕著に窺えた。おそらく職場においては人の目を過度に気にするあまり、周囲の板狭みになって悩んでしまう特徴があると推測した。Aさんにこの結果をフィードバックしたところ、現職でも「職場内で板狭みになってしまう。」等、次第に自分自身がつらくなってしまうとのことであった。そのため、対人対応に係る心構えやコミュニケーションスキルの習得について、検討していきたいと話された。○GATBの結果検査結果からは、一般的な学習能力や形を細部まで正確に見分ける能力等は問題ないものの、目と手を共応させ迅速に作業する能力、文字や数字を正確に見分ける事務的な処理能力は標準域に比較して低位な傾向が窺えるなど、各下位検査におけるバラつきがみられた。以上の結果は、WAIS-Ⅲ等における主治医の所見とも一致する部分があった。このため、作業内容自体は概ね理解できていても、実行段階では手間取ってしまいストレスとなることが予想された。また作業面では、書類の細部チェックや素早い書記、データ入力などの事務補助業務は苦手と考えられた。Aさんにこの結果をフィードバックしたところ、自分の強みを活かすためには事前に図や手順書等を活用して全体を把握することで、より正確に把握できるのではないかとのことであった。一方で、苦手と感じていたチェック作業等については、ミスを軽減するための補完手段を検討する提案をカウンセラーから行い、Aさんも同意した。特に注意面の対処方法を習得したいとのことであった。4 職業準備支援の体験を通じたアセスメント(1) 職業準備支援体験プログラムの設定以下の通り、常設の模擬的就労場面における作業支援と発達障害者就労支援カリキュラムの講座の体験プログラムのスケジュールを作成し、Aさんに提示した。期間は、週2日3週間の計6日間を職業センターに通所するスケジュールとした。また在職中であることに配慮し、夜勤勤務のシフトと調整の上、過度な負担とならないよう、第1週目は半日、第2~3週目は1日と半日を交互に設定した。さらに1週間に一度振り返り面談を設定し、体験中の振り返りを行うこととした。表 体験プログラムのスケジュール週曜日AMのプログラムPMのプログラム第1週火【作業①】ピッキング―木―【講座】対人技能①第2週火【作業②】物品請求書作成【講座】リラクゼーション技能木―【講座】対人技能②第3週火【作業③】製品組立【講座】対人技能③木―【講座】問題解決技能(参考事例) 地域障害者職業センター 発達障害51第2章 事例1

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