就業支援ハンドブック実践編
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キング作業を多数実施してもらい、頭の中で作業の切り替えを行いながら適切に実施できるかを把握した。Aさんは、作業開始時は慎重な様子がみられたもののミスなく正確に取り組めていた。また効率を意識した作業ぶりであり、徐々に作業量も増していった。報告についても定型的報告スキルは身についており、特段課題はみられなかった。○対人技能講座① テーマ「会話を遮り、用件を伝える」上記テーマの講座に見学参加。利用者は10名程度。はじめにテーマである「会話を遮り、用件を伝えること」について、職場での必要意義や使用する場面、この場面において各自が考える課題を互いに共有した後、ロールプレイを実施した。ロールプレイでは、発達障害の特性を踏まえ、悪い見本と良い見本を対照的に提示し、利用者間で意見交換した後にロールプレイを行った。この意見交換の際には、それぞれの利用者が、①相手の顔を見る、②都合を伺う、③用件を結論から伝える、④相手の返答に耳を傾ける、⑤復唱する、⑥お礼を言う等、細分化して整理することで自身が意識していなかったポイント等についての気づきを促した。また支援者は、ロールプレイを行う際の個々の利用者が意識するポイントを見出せるようにした。Aさんの講座後の感想は、「自分も相手に話しかけるタイミングに迷うことがあり、特に相手の表情を観察すること、一呼吸置くこと、うまくできなくても気にせずに次回の機会を窺うこと等に関するスキルが参考になった。」と話された。○第1週目の振り返り面談Aさんからは、ピッキングは過去に経験したスーパーの品出しに類していたため戸惑いなく作業できたと話された。また対人技能講座は、コミュニケーションに不安が大きいため大変参考になったと話された。カウンセラーからは、Aさんが抱えるコミュニケーションの不安について、どのように参考になったのか具体的に確認したところ、「相手の様子を窺ってしまい、自分の用件を話せないことが多いことが分かった。」と話された。そのためカウンセラーは、Aさんの特徴として、他者の気持ちを窺い過ぎてしまい話せずに留め込んでしまうことがあることを共有した。またAさんの今後について、対人技能のスキル習得だけでなくストレス対処法を習得することの重要性について、カウンセラーは改めて認識した。【第2週目】○物品請求書作成品名力一ドで指示された物品をカタログで調べ、物品請求書を作成する課題。5段階のレベルの計6物品が記載されている請求書を作成する課題であり、作業手順等のワーキングメモリーの維持力、注意力の配分・維持力等の特徴が把握できる。また、この課題は事務作業の適性を把握する際に実施する単独作業の一つである(詳細は事例1参照)。Aさんに対しては、1時間半程度、課題の内容を変えながら繰り返し実施。指示書通りに作業を進めることができておりペースも安定していたが、計算ミスが2回あった。Aさんの作業後の感想は、物品をカタログから検索する際は間違えないように注意を払っていたものの、「計算は若干気を抜いてしまった。」と振り返っていた。(参考事例) 地域障害者職業センター 発達障害53第2章 事例1

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