就業支援ハンドブック実践編
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【Aさんの行動観察実習等の評価概要】(図2 実習評価票を参照)○ 両作業班での評価Aさんの実習評価票から、印刷班では、事務補助業務で計測、判別、パソコン操作を苦手とし、集中力が低下している状況も見られた。反面、クリーニング班では、作業能力自体は高くないものの、体を使う作業を繰り返す中で、作業能率等の向上が見られた。全般的に評価値は低いが、印刷班の業務よりもクリーニング班の方に業務適性が見られた。両作業班における共通の課題点は、挨拶や報告・連絡・相談のコミュニケーション等、働く上での基本的な労働習慣の体得が課題として挙げられた。○ 面談・テストでの評価就職については「1,000万円ほしい、アメリカで就職する。」と話す等、生活の糧のために給与を得る必要性や、職業に関する現実的なイメージは乏しく、希望職種などは挙げられなかった。テストでは、漢字・計算・一般常識等、苦手な様子であった。(3) 利用調整会議実習評価票を参考に地区福祉事務所主催による利用調整会議が行われ、施設利用が決定する仕組みとなっている。一人につき第2希望まで希望施設候補を挙げ、各施設での実習の様子を踏まえ、施設利用が決定する。Aさんは、当施設希望者のうち評価値では最下位であったため、就労移行支援の2年間での就職は難しいという意見もあったが、Aさんの強い希望と今後の成長に期待して、当施設の利用が決定した。3 施設利用に係るプランニングとアセスメント (利用開始から6か月経過まで)~更なるアセスメントとプランニング~以下のとおり、2年間の利用期間で、個別目標支援プログラムを軸にアセスメントとプランニングを行っている。1年目は作業と職場体験実習を繰り返す中で、就労意欲を高め職務への適性(マッチング)を探ること、2年目は具体的な就職活動に移っていく流れである。入所後の6か月までは、当施設の環境に慣れ、作業を覚える点に重点が置かれ、所内活動中心のプログラムとなる。(1) 利用に係る事前情報の入手施設利用が決定すると、入所前に出身校の担任教諭から引き継ぎを受ける機会を設けている。教育から福祉への円滑な移行を実現するためには、学校時代の情報(行動特徴、学業、人間関係面、健康面等の情報)は欠かせない。「2(2)①家族面談」で得られた内容も参考に、特別支援学校からの個別移行支援計画と身上書をもとに、これまでの支援内容と今後の支援方針の詳細について、意見交換を行う。事例2 就労移行支援事業所 重度知的障害63第2章 事例2

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