就業支援ハンドブック実践編
77/148

5 帰すう(入所2年目以降の取組み)2年目以降の流れも基本的には1年目と同じで、個別支援計画(アセスメントとプランニング)を軸にし、プランニングのチェック→再プランニングのサイクルとなるが、具体的な就職活動を目標とした活動となる。(1) 初めての就職活動 ~就職面接会への参加~Aさんは、特に初対面の人の前では極度の緊張により、言葉が出なくなることがこれまでに何度もあった。就職面接会でも案の定、質問に対して一言も発することができず、不採用となってしまった。そのような中でも、小さな声で名前を言えた点だけは、これまでにない大きな変化であり、Aさんに大きな進歩としてフィードバックしている。その後は、所内での面接練習の機会を増やすとともに、就職面接会にも積極的に参加することで、経験を積み重ねて慣れることに重点を置いた。(2) 2つの転機となる職場体験実習 ~マッチングの検討~① 保育園で見られた適性入所1年半までは、どの職場体験実習に行っても「やりたくない」「施設の作業の方がいい」との発言を繰り返していた。しかし、初めてこの時期に「保育園で働きたい」という希望が出てきたことに端を発し、3日間という短期の実習を行った。Aさん自らの希望であったにも拘わらず、入所当初と同様、実習目前になると初めての環境が苦手であることや、不安な気持ちが強くなり、実習前はあまり気持ちが乗らない等の意欲低下が見られた。担当支援員が面談を繰り返し、家族からも後押しをして貰うことにより、なんとか実習に臨むことができた。保育園では清掃業務を中心に体験したが、作業適性としては、特にゴミ掃き・塵取りの使い方に適性が見られた。過去にあったような業務に対する拒否行動や不満の声は上がらず、3日間の実習を充実して行っている様子であった。保育園の園長や保育士からの評価も高く、職場環境として、この保育園の温かな人的環境と清掃業務の一部に適性が窺えた実習となった。② 厨房業務とのミスマッチさらにAさんの適性業務を探りながら、就業意欲の向上を図るため、①の保育園での職場体験実習の3か月後に食堂での実習も行った。保育園での成功体験により気持ちが保育園に向いてしまい、厨房での実習に対する意欲の低下が著しかった。スタート時点から「ここでの実習は嫌だ。やっても就職はしない。」等、否定的な発言があったものの、実習が始まると、パートの方と一緒に食器洗いに励む姿が見られた。この頃から、依然として否定的な発言自体は残るものの、以前のように作業への頑なな拒否感はなくなってきた。また、適性のある業務であれば十分にこなせるものの、終日を通じた体力の維持とスピード面での課題は残り、支援者が傍にいないと手が止まる特徴が見られた。この厨房では、Aさんが得意とする反復作業という視点から、食器洗浄業務を設定したものの、スピードを求められる作業内容であったことからAさんにとっては過酷であり、Aさんの意欲喚起にはつながらなかった。事例2 就労移行支援事業所 重度知的障害71第2章 事例2

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る