就業支援ハンドブック実践編
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(3) 先輩や同期の就職決定による刺激施設内の先輩や同期の就職は、就労移行支援事業所ならではの目にする光景であり、他の利用者の就業意欲を向上させる良い刺激となっている。1年半が経った頃、Aさんが憧れていた先輩の就職が刺激となり、「施設にずっといるんだ。」と述べていたAさんが、「今度は自分の番!」という意識が芽生えたのか、「就職したい。」「職員の言うことを聞く。」「ルールを守る。」と、これまでには聞かれなかった発言がAさんからよく聞かれるようになった。利用期間が1年延長の3年目に入り、先輩や同期が就職し、自分が最年長となったことを意識し始めてからは、更に就業意欲が高まってきた。(4) 本人の長期目標の変化と、その後の就職活動に向けた支援① 長期目標の変化個別会議は1年で3回、3年間で計9回行われる。Aさんが立案した長期目標には、気持ちの変化がよく現れている。1年目の夢を追っている様子から、2年目は理想と現実の挟間で悩む時期が続いていた。しかし、2年目の終盤から就職に前向きになり、第8回個別会議では、具体的な希望職種が挙がるまで気持ちが変化していった。【長期目標】 ※個別支援計画より抜粋入所前1,000万円ほしい。アメリカで就職したい。第1回パソコンの仕事がしたい。お金を貯めたい。イタリア車がほしい。第2回ビデオ屋さんに就職したい(先輩の話を聞いてかっこいいと思った)。第3回希望がよくわからない。第4回希望職種はわからない。土日休み、家の近く、6時間勤務以内。第5回希望職種はわからない。就職して家族をごはんに連れて行きたい。第6回あと1年で就職したい。ルールを守る。第7回あと1年で就職したい。ルールを守る。第8回B老人ホームに就職したい。就職して家族にプレゼントしたい。② 老人ホームでの雇用を前提とした職場体験実習入所3年目の夏頃、保育園実習をイメージしながら、ハローワークにて求人検索を行った。その際、タイミングよく老人ホームの求人を見つけ、直接先方に連絡を取ったところ、雇用を前提にした職場体験実習に進むことができた。主な業務はAさんの得意業務であるホーム内の清掃作業であった。老人ホーム側も障害者の受け入れが初めてだったことから、担当支援員の助言を基にしながらAさんの特性に合わせた業務を組み立ててもらうことができた。また、老人ホーム側は即戦力としてではなく、長い目で成長を見守るスタンスであった。Aさんの特性については、老人ホーム側に事前の理解を得ていたため、面談時に思うように言葉が出なくても、問題にはされなかった。さらに、作業上スピードは求められず、むしろ丁寧さを重視していたため、Aさんの良い面を発揮する機会となった。老人ホーム側の受入時期の事情も加わり、職場体験実習を2回行った結果、Aさんの働く意欲が老人ホーム側にも伝わり採用に至った。第2章 事例2 施設内作業、職場実習等におけるアセスメントとプランニング72第2章 事例2

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