就業支援ハンドブック実践編
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「施設見学」「体験前面接」など、正式利用につながるまでに利用者についての情報収集をする機会は何回かありますが、正式利用前の面接で初めて「生活歴」「職歴」「病歴」などの細かい個人情報を確認します。この時の注意点として、本人にとっての話しやすさに十分に配慮(「話したくない事は話さなくていい」とあらかじめ伝えておく等)した上で話を聞くことや、支援者が一方的に質問をして、尋問の様にならないようにすることが大切です。6最初に行ったインテークの場面では、「小さい頃は活発であった」「学生時代から集中力が続かない、体がだるいなどの不調のサインがあった」「病気になったきっかけは職場の対人関係で悩んだためだった」「B事業所を1年くらい利用したら仕事に就きたい」などを話されたPoint7  。精神障害者に対する支援に際しては、「自分が理解してもらえている」という安心感を持てるようにすることが今後の支援者との信頼関係の構築に重要です。本人の話したいスタイルで話を聞きながら「発病のきっかけ」「再発の要因」「離職理由」「将来の希望」など、病気や職業的課題、さらにその方の意向を確認していきます。7また、主治医に作成を依頼した「主治医の意見書」には、「病状は落ち着いている」「ストレスが留まると疲労感が強くなる」「就業に際しては本人の病気への理解が必要である」などのアドバイスがあった Point8  。精神障害は「疾病と障害が併存する障害」です。したがって、障害からのアプローチ(福祉側)のみでは、有効な支援を提供できません。必要であれば医療側からの意見も聞きながら、医療と福祉、双方で足並みを揃えながら進めていく事が重要です。8以上の情報収集から職員は、「集中力が続かない」「対人関係」「ストレスが留まると疲労感」「病気への理解」など、Aさんの今後の就業支援のキーワードを拾い上げた。Aさんは開所当初から「B事業所に毎日通所したい」という希望を示したが、職員は「就業への意欲は強いがやや焦り気味」と感じたため、Aさんの希望はゆくゆくの目標として、まずは週3日の通所から開始とし、慣れるにしたがって徐々に日数を増やしていく事を提案し、利用契約を締結した。第2章 事例3 体験利用プログラム、医療機関からの情報収集等によるアセスメントとプランニング80第2章 事例3

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