就業支援ハンドブック実践編
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当初の個別支援計画は、トレーニングを受ける土台作りを第一のねらいとしているため、比較的個別性が低い目標や支援内容になっていますが、利用を通して徐々に個別の課題や対応が生じてきます。したがって、個別支援計画の再作成では「就業に向けた現実的かつ利用者の希望に沿った個別性の強い内容」となるよう、以下の手順で丁寧に進める必要があります。また、個別支援計画の再作成は、「障害や疾病に係る本人の気づき」「本人の特性に対する支援者の理解」の促進に繋がります。① 個別相談にて本人・支援者双方の感想を共有する② 目標以外の新たな課題が出ている場合に取り上げる③ 新たな目標について、本人・支援者の意見・思いを共有する④ ①~③の事柄を踏まえて個別支援計画を再作成する14まずは、Aさんから目標の達成状況について感想を聞き取った。Aさんからは、「毎日が新しいことばかりで緊張はしたが、やりがいのある毎日であった。」「休まずに通い続けられたことは良かった。」「まだまだ覚えることが多いので大変である。」等を話された。職員からは、「この3か月、常に前向きに頑張った。」「途中頑張り過ぎて、疲れのサインが出たときもあったが、上手に休みを入れながら乗り越えることが出来た。」などを伝えた。また、当初の個別支援計画では、クローズアップされていなかった「疲れのサイン」について、Aさんの意見を確認すると、「週4日にして頑張ったら人が悪口を言っているように感じて調子が悪くなった。」「少しトレーニングのペースを落としてみたら楽になった。」などを話された。さらに、次の3か月の目標についてAさんの希望を確認すると、「もう一度週4日にチャレンジしてみたい。」「軽作業以外の作業は難しいため、上手く覚える工夫を考えたい。」の2点が挙げられた。職員からは「トレーニングを頑張るだけではなく、疲れのサインを上手に活用しながら、無理のないトレーニングを重ねて欲しい。」旨を説明し、Aさんの了解を得たPoint15  。個別支援計画における目標は、「就業に近づくためのもの」であると同時に「本人の自己評価が上がるもの」であることが重要です。したがって、スモールステップを提示しながら、過度な負荷はなく、その上で、本人が就業へ近づいていることが実感できるものにしていくことが重要です。15以上を踏まえて、職員から今後のAさんの目標について、「長期目標」は前回同様「B事業所に毎日通えるようになる」とし、具体的な「短期目標」を以下の3点へと変更することを提案した。① 週4日通所へチャレンジする。② 通所する中で疲れのサインが出た場合は、支援者にすぐ発信する。③ 自分にあった作業の覚え方を支援者と一緒に考える。Aさんは、上記の3点について了承。その他では、「通所から3か月たったのに、まだ話せる友達が出来ないこと」「周囲になじめずいつも緊張していること」などの対人面での不安が語られ、「対人関係の第2章 事例3 体験利用プログラム、医療機関からの情報収集等によるアセスメントとプランニング86第2章 事例3

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