就業支援ハンドブック実践編
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目標も設定したい。」との意向もあったが、それについては、「まだ3か月しか経っていないので、周囲との対人関係には自然に慣れていくであろうこと」「事業所利用の目的は就業なので、友達作りを第一に考えなくても良いこと」などを伝え、今回の目標には挙げない事を共有したPoint16  。目標設定をする際、本人は就業への思いの強さから、多くの目標を設定したり、すぐには達成が困難な目標を設定することがありますが、達成につながらなければ、本人の失敗体験のみが膨らんでしまいます。そのため、本人から要望があっても、時には支援者が「今回は見送る」という判断をすることも必要です。16利用者の意向支援の方針高校卒業後は、調理の専門学校へ進み、学校給食の仕事を始めた。仕事は好きだったが職場の対人関係がうまくいかず病気となり退職となった。希望としては、もう一度調理の仕事に戻りたい。でも、働いていない期間が少し続いたので復職が不安。そのため、事業所に毎日通えるようになって、働ける体力を取り戻したい。苦手だった対人関係の練習もしたい。生活のリズムの安定、体力・体調のコントロールをつづけ、さらに就業時間を延ばすことを目標としていきます。また、トレーニング内容も軽作業を卒業して、実践トレーニングの3部門への移行を図っていきます。また、就労プログラムに積極的に参加し、病気や障害の知識なども深めていきましょう。解決すべき課題目標(3ヶ月)支援の内容いつ・どこで・期間など① 週20時間働ける体力をつける。② 病気を上手にコントロールする。③ 難しくなった仕事への対応。① 週4日通所へチャレンジをする。② 通所する中で疲れのサインが出たら支援者にすぐ発信する。③ 自分にあった作業の覚え方を支援者と一緒に考える。週4日を基本とするが、必要であれば休憩を取るなどのアドバイスをする。必要であれば支援者からも声かけをして、サインを一緒に共有する。各部門の担当と、本人に合ったメモの書き方や、マニュアル作りを考える。週1回の定期面談で日々のトレーニングを振り返り、必要であれば支援内容の修正を行う。図6 個別支援計画書(第2回目)8 帰すう現在、Aさんの利用開始から10か月が経過している。通所日は週4日から5日へと増え、「長期目標」であった「事業所に毎日通えるようになる」についても実現している。「疲れのサイン」については、発信が上手になり「サインが出たら休みを取る」という方法で対応している。また、「周囲と上手くなじめない」という悩みも、時間の経過や通所日が増えたことによって、徐々に周囲への緊張が和らぎ、近頃ではメールのやり取りやお茶をする仲間もできてきたようである。今後については、「長期目標」を「就業に向けた具体的な準備を始める」へと変更し、トレーニングの場も事業所の施設内作業から施設外実習へと広げていく予定である。また「疲れのサイン」についても、今までの「サインが出たら休む」から「サインが出ない働き方を知る」と、より就業を意識したものに変化させていく予定である。事例3 就労移行支援事業所 精神障害87第2章 事例3

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