就業支援ハンドブック実践編
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い。」というものであった。このAさんの気持ちの変化は、自分自身を客観的に振り返ろうとしている時であると思えたため、就労支援員は、この機会に集中的に支援を行うことが適切であろうと感じた。このため、施設における具体的な作業体験等を通して、Aさん自身でできそうかどうかを確認してもらうことを目標として設定した。なお、このやり取りについては、Aさんにメモとして残してもらったPoint5  。重要事項はメモに残すようにしていますが、本人がメモを取れていても、後で思い出せない可能性があるため、念のため家族にもメモや資料を渡しています。また、本人がメモを取り切れていないようであれば、その事実を本人に伝え、障害に起因する特性であることを、本人の受け止め状況や理解度に合わせてフィードバックしています。なお、本人がメモを取る際の一連の行動をアセスメントすることで、聴覚情報を逐一メモに書き留められる情報処理力があるかどうか等、支援者は多くの情報を収集することができます。5Aさんの体験利用時の目標は、下記の3点で設定したPoint6  。・施設での生活(1日の流れ)がどのようなものかを知る・自分が通所できそうかどうか確認する・分からないことは聞く記憶や認知に障害のある方が、自分の特性を理解するということは容易ではなく、時間を要します。また、支援者が様々な場面設定を行っても、本人の特性への理解が進まない場合もあります。そのため、特性への理解につながる場面等、きっかけを逃さず、支援者と本人で振り返りを行いながら、繰り返し特性の理解を進める支援を行うよう心掛けることがポイントです。6なお、支援初期の段階において、障害特性に関して特に留意していることは以下の2点になります。① 支援上必須な配慮内容例えば、「半側空間無視や目の疲労が顕著である等の場合は、パソコンでの作業内容・作業時間についての配慮が必要であること」、「左半身麻痺等の症状がある場合は、作業姿勢に配慮が必要であること」、「服薬管理についての配慮が必要な場合があること」、「アレルギー等による食事等の配慮が必要な場合があること」等、身体機能や通院に係る情報を的確に収集し、健康管理や安全面に係る配慮事項として留意している。② 医療機関との連携状況高次脳機能障害者に対する支援に当たっては、特に医療からの情報収集・連携は必要不可欠である。在宅期間が長く、医療機関との連携が実質少なくなっている場合でも、必要に応じて医療機関から聞き取りを行い、働く際の職務上の制限や安全面での配慮事項等を確認する必要がある。事例4 就労移行支援事業所 高次脳機能障害93第2章 事例4

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