療部位、施術内容を全て把握して施術を行います。毎日の業務報告については、障害のあるスタッフが何人の患者に応対したかなどをお互いに確認し合い、自分たちで業務日誌を作成しています。業務日誌への記入の際は、細かい記入は求めず、ルーペを使ってレ点チェックで簡単に済むように改良された様式を使うようにしており、取りまとめを行っているスタッフが聞き取りなどを行い業務日誌の内容を補完するようにしています。また、施術室には施術用のベッドが8台設置してあり、同時に複数の患者への施術を行えるように機器を揃えています。高齢の患者に対しては、ベッドへの移乗時に転倒する危険があるため特に全員で注意を払いながら施術を行います。Iさんは約40年間勤務しており、事務処理、苦情の処理、教育指導(お客様への接遇他)などのサポートを行ってきました。現在は非常勤のスタッフとなりましたが、今でも障害のあるスタッフに目を配り、仕事上のサポートやスタッフの悩みを聞くなど、G病院における障害者雇用を支える役割を担っています。G病院では退職者も含めこれまでに10名の障害のあるスタッフを雇用しており、そうした経験を踏まえ、障害雇用に関する経験・ノウハウを積み重ねてきました。業務以外のサポートとしては、G病院が職員のために独自に送迎バスを運行しており、障害のあるスタッフは、全員が送迎バスを利用し安全に通勤できるような通勤環境を整備しています。また、送迎バスは決まった時間での運行であることから、障害のあるスタッフが仕事の都合で送迎バスに間に合わないときは同じ方面に帰宅する障害のない職員が自家用車で送るなどのサポートが行われています。職場の人間関係については、同じ職場で同じような障害のあるスタッフが働いている中、コミュニケーションをよく取っており、同じ立場の仲間であるのでお互いに気遣いがあり、お互いの生い立ち、障害による不便さなど共感しているので非常に良好な関係を築いています。ですから、退職理由は結婚などのライフスタイルの変化によるものや、G病院で働くことで自信をつけて開業したことによるものとなっています。Hさんは勤続21年のスタッフとしてG病院で活躍しています。視覚障害の程度は、小さな文字などはルーペを使って判読でき、人の顔を見て誰かは判別できませんが、廊下を歩いていて人とぶつかることはありません。数年前に職場結婚をしていますが、結婚後もG病院のスタッフとして働いています。盲学校在学中にあん摩マッサージ、指圧、鍼、灸の資格を取得しており、卒業と同時にG病院に就職しました。通勤は、自宅から同法人の通勤バスが通うところまで公共交通機関を利用しており、通勤に介助は必要とせず、ひとりで通勤しています。Hさんが仕事場で苦労したことは、弱視であるために患者の名前とどんな治療をしている患者さんなのかが一致しないことでした。視覚障害のあるスタッフは名前を聞いても顔を見て判別することが難しくなります。これは、患者からするとなかなか名前を覚えてくれないことになり、迷惑をかけてしまうことにつながります。この対策として周りのスタッフの助けを借りるとともに、患者の声の特徴、仕草の特徴などを覚えるなどの努力を行っています。Hさんは病院以外の活動として、全国の鍼灸・マッサージ師の資格を持って医療機関に勤務する障害視覚障害者の団体に所属し、各方面からの情報交換をしながら、資格や技術の取得、自己研鑽を行っています。Hさんは、「患者さんとの会話を通じて患者の痛みや、高齢の患者の悩みを聞くことなどを通じて、日常の中で信頼関係が築かれ、患者さんが継続して病院に来て下さる時に仕事の達成感を感じています。これからも、できる限りこの仕事に携わって患者さんの心と身体の痛みを軽減して喜んでいただけるような治療を行っていきたい」と話しています。11お互いの気配りではたらきやすい職場環境を長年の就労を支えるもの
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