全盲のため、画面読み上げソフトを利用して業務を遂行していますが、作成した書類のレイアウト調整や、研修・講演など出張の際のガイドは視覚障害以外のメンバーがサポートしているそうです。「自身が得意なこと」と、「障害上できないこと」、「できるが時間がかかること」に分類して、担当全体として業務を円滑に進めることを考えて、周囲のメンバーの協力を得ながら業務を進めています。最近では、ウェブアクセシビリティに関心を持つ自治体や企業も増え、研修や講演の依頼が多くなっているそうです。Oさんは「障害のある方にとって少しでも暮らしやすい社会をつくりたいという自分の希望がこうした業務を通じて少しずつ達成されることがとても嬉しく、これからも障害者がチャレンジできる社会づくりの一役を担いたい」と考えています。会社からも、マネージャーとしてさらに力を発揮することを期待されています。Pさんも歩行技術や点字の習得の訓練を受けた後、国立職業リハビリテーションセンターでパソコンスキル習得のための職業訓練を受講しました。訓練終了後は、パソコンスキルを活かして、データ入力の業務に就きました。2年ほど経過した頃、N社の求人を知り、新しいことにチャレンジしたいという気持ちで転職しました。現在は主に、障害者に役立つポータルサイトの企画・運営に携わっています。企画に際してはどのような情報が障害者にとって役立つのか、また、どのように掲載すると利用者が読みやすいのかなど、日々担当のメンバーとディスカッションを重ね検討しながら業務を進めています。業務を遂行する際は、画面読み上げソフトや画面拡大ソフトをインストールしたパソコンのほか、拡大読書器を使用していますが、ハード面が整備されているだけでなく、ソフト面でもさまざまな障害のある方がお互いに必要な配慮をしているそうです。例えば、取材には、カメラマンを兼ねた視覚障害以外のメンバーが同行しサポートします。サイトに記事を掲載するために自ら取材し、記事も執筆しますが、ひとつの記事ができあがるまでには、取材先との交渉や調整が何度も必要になります。以前の会社で従事した定型的な業務と比べると、とてもやりがいがあると感じています。障害理解研修や心のバリアフリー研修などの講師を務めることもあり、当初より業務の幅が広がっています。研修を通し、障害について多くの人に知ってもらうことで障害の有無にとらわれることなく、支えあいながら社会で共に暮らしていくことが日常となることを願っています。そのためにも、自分自身について発信していくことが大切と考えていて、「これはできるけれど、ここはサポートがあるとありがたい」ということをきちんと伝えることを意識しています。「これからも自分のできることにチャレンジしてどんどん仕事を広げたい」と考えています。ポータルサイト記事ができるまで記事の企画取材先との調整取材原稿執筆校正掲載準備サイトへの掲載18サイトの企画から執筆まで、仕事の幅が広がるPさんは、網膜はく離のため18歳のときに何度か手術を行いました。現在右目は見えず、左目の視力が0.03程度です。視野のところどころが欠けていて、特に下の方は見えにくく、全体的にすりガラスを通して物を見ているような感覚だそうです。
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