障害者雇用マニュアル101 鉄鋼業における障害者の雇用事例 CONTENTS CASE1 株式会社神戸製鋼所 東京本社 CASE2 新日本製鐵株式会社 君津製鐵所 CASE3 住友金属工業株式会社 特殊管事業所 CASE4 JFEアップル東日本株式会社 CASE5 JFE精密株式会社 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 P.1 はじめに 障害者雇用マニュアル 101 鉄鋼業における障害者の雇用事例 障害者の雇用については、近年、障害者の就労意欲が高まるなか、企業サイドにおいても、CSR(企業の社会的責任)への関心の高まり等を背景として、積極的に障害者雇用に取り組む企業が増えてきており、障害者雇用は着実に進展してきています。 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構では、厚生労働省と連携を図りながら、業界団体に働きかけて、業種別に障害者雇用推進事業の取り組みを展開しています。平成20年度は、社団法人日本鉄鋼連盟にご協力をいただき、鉄鋼業界における障害者雇用の取り組み状況を把握するため、企業へのヒアリング等を行いました。 本マニュアルでは、現在障害者雇用に積極的に取り組み、障害者に適した雇用管理や職域の確保、社内啓発等で工夫し効果を上げている5社の事例を紹介しています。鉄鋼業は、我が国の製造業における基幹産業であるとともに、障害者雇用の取り組みが進んでいる業種であり、本マニュアルに掲載されている各事例は、鉄鋼業界はもとより他の製造業等多くの企業の障害者雇用の取り組みにとって参考になりますので、ぜひお役立てください。 最後に、ご協力いただいた社団法人日本鉄鋼連盟、取材やヒアリング調査に応じていただいた各企業、そして関係者の皆様には心から感謝を申し上げます。 P.2 CONTENTS 障害者雇用マニュアル 101 鉄鋼業における障害者の雇用事例 CASE1 株式会社神戸製鋼所 東京本社 配属部署に受入研修を実施 3 CASE2 新日本製鐵株式会社 君津製鐵所 マッサージルームを新設し、ヘルスキーパーと して雇用を拡大 5 CASE3 住友金属工業株式会社 特殊管事業所 フレックスタイム制の活用、スキルアップ の推進 7 CASE4 JFEアップル東日本株式会社 安全面を重視した雇用管理、支援機関との連携 9 CASE5 JFE精密株式会社 トライアル雇用・ジョブコーチ支援を利用 11 ●障害者雇用に関する制度 13 ●地域障害者職業センター、駐在事務所 18 P.3_4 CASE1 配属部署に受入研修を実施 株式会社神戸製鋼所 東京本社 人材発掘のアンテナを広げ、幅広い人材の登用を図る 企業プロフィール●所在地:東京都品川区 ●雇用障害者:肢体不自由者/視覚障害者/内部障害者 幅広い人材を求めて 障害者の中途採用にも力を入れる 1905年創業、100年以上の歴史のある株式会社神戸製鋼所。鉄鋼事業、溶接事業をはじめ、環境関連事業や建設機械事業等、多岐にわたる事業を展開しています。 障害者雇用促進法が改正された1998年当時の東京本社の実雇用率が法定雇用率を満たしていなかったことから、障害者の積極的な新規採用に踏み切る方針を打ち出しました。その後障害者雇用数は増加し、2009年2月現在、東京本社においては11名の障害者が働いています。特例子会社を作るのではなく、「同じ会社内でともに働く」という方針のもと、積極的に障害者を雇用しています。近年は中途採用にも力を入れており、幅広い人材の登用を図っています。 身体的な負担に配慮し、 フレックスタイム制※を活用 雇用している障害者は、入社後に障害者となった人、新卒で入社した障害者、中途採用の障害者など、経緯はさまざまです。 1970年に入社し、その後心臓機能障害となった男性は、長年の製造にかかる現場での勤務経験を活かし、受障後はアルミ・銅事業における全国の各工場との連絡調整等をしています。心臓に過度な負荷がかからないよう、フレックスタイム制や休暇等を活用していますが、「基本的には一般従業員と何ら変わりはありません。本人も健常者と区別はしないでほしいという意識が強いですね」と話すのは、人事労政部東京人事グループの係長、小畑裕司さん。障害の有無に関係なく、同じ会社の仲間として接するという社風が根づいています。 また、新卒で入社した一人に重度肢体不自由者の千代田つむぎさんがいます。千代田さんは車椅子を使用していますが、環境がバリアフリーに整備されているので業務上特に支障になることはありません。朝の通勤ラッシュを避けるため、千代田さんもフレックスタイム制を利用しています。「車椅子だとラッシュ時は大変なので、フレックスタイム制を利用できるのは助かります」と千代田さん。現在は、メンタルヘルス研修や社員の健康増進を目的としたウォーキングイベントの開催などの人事関係の仕事をしています。また障害者雇用にも携わり、障害者の合同面接会の際には人事担当者に同行し、面接に立ち会っています。千代田さんは「面接に来た障害者の方に『同じ障害者の自分も元気に働いている』ということをアピールできるのは嬉しい」と笑顔で語ります。関西弁が飛び交う明るい職場のなか、充実した職業生活を送る姿を垣間見ることができました。 民間のWeb求人サイトを活用するなど、 人材発掘のアンテナを広げる 軽度の下肢障害の横山まりさんは、中途で採用された一人です。障害者専門の民間のWeb求人サイトを通じて、1年ほど前に雇用に至りました。横山さんが中国に関する仕事を求めて人材紹介会社に登録をしていたところを、会社側からスカウトしました。中国への留学経験もあり、中国語が堪能であるという技能を活かして、中国等海外との営業・取り引きに関する業務に従事しています。「責任のある仕事を任せていただいており、ありがたいです」と横山さん。「これまで趣味で中国語の勉強をしてきましたが、仕事として語学を使うのは大変なことだと痛感しています。でも、仕事を任せてもらえる一方で、同僚に中国人の方が2人いるのでサポートもしてもらえるので、バランスよく仕事をさせていただいています。今後はもっとスキルアップしていきたいです」 当社では、現在民間のWeb求人サイトを通して障害者を雇用することも多くなっています。「Web求人サイトは、大手新聞の求人広告と比べて比較的長期間公表されるため、コスト面を含めて効果的な募集が可能だと思います。意欲的で高いスキルをもつ即戦力となる障害者も非常に多いです」と小畑さんは言います。 障害者の配属部署には障害者と 同じ状況を体験してもらう「受入研修」を実施 障害者の受け入れが決まると、配属先部署に対し産業カウンセラーを講師とした「受入研修」を実施しています。「障害者を受け入れるには、『障害とはどういうものなのか』を理解することが重要です。そのため、研修には健常者に同じ状況を体験してもらうメニューを取り入れています。たとえば、『2人1組になって一人が目隠しをして、もう一人が目隠しした人を誘導して歩く』というような体験です。実際に体験してみることにより、『これまで適切だと思っていた誘導の仕方が、実は間違っていたんだ』などと身をもって体感できますから、障害への理解が進みますね」と小畑さんは話します。 雇用後は、前述したフレックスタイム制の活用推進と音声認識ソフト等の就労支援ツール類の購入などで、障害者が働きやすい環境をバックアップ。また、日々の医学的なケアを必要とする内部障害者等への配慮として、「健康管理センター」を活用。担当の看護師を決め、何かあればすぐ相談できるような環境を整備しています。 用語解説 ※ フレックスタイム制 1日の所定労働時間の長さを決めずに、あらかじめ定めた一定期間(1ヵ月以内)における総労働時間の範囲内で、労働者は各日の始業時刻・終業時刻を自主的に決めて働く制度。 雇用管理のポイント 人事労政部 東京人事グループ長 濱口 康一さん 現在、当社では障害者の中途採用にも力を入れているのですが、即戦力となる障害者の方が本当に多くいらっしゃることを改めて感じています。当社としてもなるべく多くの貴重な人材を活かせるよう、努力していきたいですね。そして入社した障害者の方には、我々の組織を通じてさらにスキルアップしてほしいと考えています。また、これは障害者に限らないことですが、やはり日頃のコミュニケーションは一番大切ですね。職場内できちんとコミュニケーションをとり、温かい雰囲気を作ることが長期雇用の秘訣なのだと思います。 職場インタビュー 人事労政部 東京人事グループ 千代田 つむぎさん(肢体不自由) 当時通っていた大学の就職課から神戸製鋼の求人の話を聞いて入社してから、もう10年になります。初めての新規雇用の障害者ということで、周囲も本当に気を配ってくれましたね。今も、同じ部署だけでなく他部署の方も「大丈夫? 手伝おうか?」と声をかけてくださるなど、会社全体が温かく誰に対しても優しく接する雰囲気があります。障害者を特別扱いするのではなく、でも困っている人がいれば自然と助ける。この社風があるからこそ、長く働いてこれたような気がします。 溶接カンパニー 国際部 横山 まりさん(肢体不自由) もともと中国に関する仕事をしたいと思っていたのですが、体のこともあって半ば諦めていました。ですから、障害者専門のWeb求人サイトを通して神戸製鋼からそういった仕事があると連絡が来たときは、本当に嬉しかったですね。長年の夢だった中国関係の仕事に就けてとても嬉しいですが、趣味とは違って仕事はやっぱり大変です。プロフェッショナルな仕事を任されていますので責任も大きいですが、日々スキルアップを目指して頑張ろうと思っています。 P.5_6 CASE2 マッサージルームを新設し、ヘルスキーパーとして雇用を拡大 新日本製鐵株式会社 君津製鐵所 中途障害者と新規雇用障害者、それぞれに合った配慮を行う 企業プロフィール●所在地:千葉県君津市 ●雇用障害者:肢体不自由者/聴覚障害者/視覚障害者/内部障害者/その他の身体障害者 中途障害者には経験を 最大限活かせるような配置転換を行う 東京ドーム約220個分という広大な敷地を有する新日本製鐵株式会社の君津製鐵所。自動車や家電製品用の薄板、造船や建築用の厚板等、鉄鋼製品を生産・出荷しています。 障害者雇用にはもともと取り組んできましたが、毎年着実な雇用の推進を図り、2008年の常用雇用障害者数は39名(うち重度18名)となっています。 秋元実さんは、1975年に入社し、工場で各種設備を運転・整備する作業に従事していましたが、1991年に右上腕の肩関節から切断しました。現在は現場経験のノウハウを活かし、製鋼地区の機械設備の発注や保全等にかかる連絡調整などの業務に従事しています。秋元さんが所属する製鋼地区機械設備課長の村田正利さんは、「秋元さんを障害者だからと特別扱いするのではなく、同じ仲間という意識で接しています。秋元さんの仕事は経験や技能に裏付けられた高いレベルの判断を必要としますが、しっかり期待に応えてくれています」と話します。また、「秋元さんが現場で身につけた知識というのは、1年や2年で得られるような簡単なものではありません。その貴重な経験や知識を活かすことができ、会社にとっても本人にとってもベストな配置転換だったと思っています」と語るのは、労政・人事グループの丸山和雄さんです。 職場からは、明るく和やかな雰囲気が伝わってきました。丸山さんは、「入社後に中途で障害者になった方に対しては、受障する前と同様、障害者としてではなく一人の人間として接する風土ができています。気を使わずに接したほうが、障害者は働きやすいようですね」と話します。 小形栄一さんも1986年に入社し工場内の作業現場に勤務していましたが、1994年に左下肢リスフラン関節から切断した中途障害者です。受障後は秋元さんと同様、それまでの現場経験を活かせる事務管理部門に配置転換となりました。薄板管制課に所属し、管理センター内で薄板製造にかかるスケジュール管理等の業務に従事しています。現場経験を活かせる事務管理部門に配置転換した以外は、職場レベルで大きな配慮はしていないとか。 薄板管制課長の猿渡直樹さんは、「障害者だからという理由で、業務において配慮するという点は特にないです。薄板管制課ではラインのスケジュールを管理していますので、ラインの知識が必要です。その点ラインでの勤務経験のある小形さんは適任ですね。現場との信頼関係もありますし」と言います。こちらの職場もとても和やかで和気藹々としています。「小形さんの持ち前の元気で明るい性格は、職場の雰囲気を良くしてくれていますね。明るい職場というのは安全面からみても大切なことなんです」と猿渡さん。 助成金を活用してマッサージルームを設置 新規の視覚障害者の雇用につなげる 谷千賀子さんと伊藤栄次さんの2人は新規に雇用された視覚障害者。君津製鐵所に併設されている「君津健康増進センター」内に、1999年に「障害者作業施設設置等助成金※」を活用し、マッサージルームを新設。同時にハローワークを通じて、ヘルスキーパーとして谷さんを採用しました。谷さんは右眼視力なし、左眼視力0.03で両眼視野1/2以上欠損という状況です。また、視覚障害3級である伊藤さんは、千葉盲学校へ求人を出したのがきっかけで採用につながりました。同センターには、2人を含めて計3名のヘルスキーパーが勤務。勤務時間は12時30分〜21時で、1日に8〜9人程度(一人当たり30分)の利用者に対して、肩の凝りや腰の痛み等のマッサージを行っています。新規に雇用する上で配慮した点について丸山さんにお聞きしました。「新規に雇用したのは初めてだったので、はじめのうちはどのような配慮をすればよいのか見当がつきませんでした。ですから谷さんたちに直接尋ねました」 現在、利用者のカルテには手書きの拡大文字を使用するという工夫を行っています。谷さんは「お客さまが次回いらした時に、誰が担当してもわかるよう記録しているんです。会話の糸口にもなりますし」と言います。そして、「ほんの少しのサポートで、障害者は十分働けるんです。特別な人を雇用するというのではなく、健常者を雇用するのと同じ意識をもっていただけたら嬉しいですね」と笑顔で語る谷さん。さらに、「障害者側も最大限の努力をして、最小限のサポートを求める姿勢をもつことが必要だと思います。最小限の努力で最大限のサポートを求める人もいますが、それだと企業の苦労が過大になってしまいますから。障害者自身もがんばることで、障害者雇用ももっと進むと思うんです」とも語る谷さんの表情には、意欲が満ち溢れていました。 今後の目標はバリアフリー化 の推進や専門機関の活用 今後はまだ雇用実績のない障害者の雇用も推進していきたいと考えています。「たとえば、私ども管理部門が働くこの建屋は古いためバリアフリーも行き届いていませんが、現在新しい建屋を建設中です。そこはバリアフリーを整備していますので、車椅子利用者も雇用できると考えています」と、労政・人事グループの丸山さん。「雇用を維持するのは会社の使命ですから、職域開発にも積極的に取り組み、今後さらに障害者雇用を推進したいです」 用語解説 ※ 障害者作業施設設置等助成金 障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用する事業主で、その障害者が作業を容易に行えるよう個々の障害に応じ配慮された施設または改造等がなされた設備の設置または整備を行う(賃借による設置を含む)場合に、その費用の一部を助成するもの。(17ページ参照) 雇用管理のポイント 労働・購買部 労政・人事グループリーダー 黒田 和男さん 当社では、入社後に受障したとしても同じ職場に配属し、経験を活かしてほしいと考えています。しかし、やはり作業現場は危険が伴いますので、経験にマッチングした事務作業ということで職域を開発してきました。また、助成金を活用したマッサージルームの設置により、新規雇用の障害者も増え、徐々に障害者が働きやすい環境を構築できてきたように思います。 しかし、課題が多いのも事実です。今後はさらなる雇用機会の拡大に向け、バリアフリー化を推進する等環境整備を行っていきたいと考えています。 職場インタビュー 設備部製鋼地区設備室機械設備課 秋元 実さん(肢体不自由) 1991年に作業現場で怪我をしてから今の職種で仕事をしておりますが、私が従事できる職種を会社が見出してくれたことに、本当に感謝しています。障害者だからと諦めてしまうのではなく、自ら進んで努力をすれば必ず結果は出るものだと改めて感じています。 生産業務部薄板調整グループ薄板管制課 小形 栄一さん(肢体不自由) 私が働きやすい職場を考えてくださった会社には本当に感謝しています。現場でやっていた業務内容以外の分野も勉強して実力をつけ、幅広い業務に対応できるようになりたいですね。毎日の仕事をきちんとこなすために、日頃から健康管理には気を使っています。 君津健康増進センター/マッサージルーム 谷 千賀子さん(視覚障害) 立派な設備でとても働きやすい職場で、会社には本当に感謝しています。今年で入社11年目になりますが、お客さまに定着していただいており、やりがいのある職場ですね。体力の必要な仕事ですが、お客さまに「ありがとう」と笑顔で言われると、疲れも吹き飛びます。 君津健康増進センター/マッサージルーム 伊藤 栄次さん(視覚障害) ここに入社して1年くらい経ちました。以前の職場は障害に対しての理解があまりなく、働きづらいと感じる点も少しありましたが、この職場はいい人ばかりですし、会社が視覚障害者に対して理解してくれているのでとても働きやすいですね。 P.7_8 CASE 3 フレックスタイム制の活用、スキルアップの推進 住友金属工業株式会社 特殊管事業所 ハローワーク主催の障害者合同面接会で人材を発掘 企業プロフィール ●所在地:兵庫県尼崎市 ●雇用障害者:肢体不自由者/内部障害者 中途障害者の継続雇用に続き、 新規障害者雇用も開始 高級鋼管製造の専門工場である住友金属工業株式会社の特殊管事業所は、1919年に開設されました。 障害者雇用については、開設以来、入社後に受障した中途障害者の継続雇用が中心で、関連会社に配置転換し従事可能な職務(清掃、植木の剪定、メールサービス)を行ってもらうなどの取り組みを行ってきました。現在、特殊管事業所にも2名の中途障害者が在籍しています。2名とも入社後に内部障害者となった人で、継続雇用に当たっては、主治医と産業医に作業内容や勤務時間について確認を行ったうえで、社内にある職務を洗い出しました。 しかし、中途障害者の継続雇用だけでは法定雇用率に達成しないこともあって、4年ほど前から新規の障害者雇用にも取り組むこととなりました。「まずはハローワークに相談に行きました。そのときに、今も引き続き勤務してくれている岩下好美さんを紹介され、雇用したのがスタートでした。その後、ハローワークに阪神間の障害者合同面接会に参加してはどうかと勧められて参加し、さらにもう1名の障害者を雇用したんです」と当時を振り返る総務室長の本田雅之さん。長い歴史のある会社のため、「戦前の建物も残っており、完全にバリアフリーを整備するのが難しく、これまでは車椅子を利用する方はお断りせざるを得ませんでした。今の新社屋に関してはバリアフリー環境を整備できたので、雇用できる障害者の幅も広がってきています」 新規雇用の際にはハローワーク主催の 障害者合同面接会を活用 新規に雇用した障害者は、現在6名。一番初めに雇用された岩下さん以外は、すべてハローワーク主催の障害者合同面接会を通して採用しました。 合同面接会に参加し面接を担当する総務室の宮本和博さんは、次のように語ります。 「たくさんの意欲あふれる障害者の方々が面接会に来られています。一人ひとりとじっくり話しますので、いつも時間内に終われないんです。なるべく多くの人を採用させていただきたいのですが、そういうわけにはいかずに心苦しいのですが」  採用を決めるポイントをお聞きすると、「製造にかかる現場の業務に配置するのは難しいというのが現状です。事務作業での雇用が主となりますから、必要最低限のパソコンスキルを身につけていることが条件です。みなさん、やる気は十分にお持ちなので、あとは面接で“人となり”を見て判断することになります。基本的には健常者の雇用と変わらないですよ」と宮本さん。 毎年春と秋に開催される障害者合同面接会への参加は、今後も続けていく予定です。 フレックスタイム制の活用や、 スキルアップの奨励 新規に雇用した障害者の一人が、田中和美さん。総務室に所属し、人事関係事務の補助業務に従事しています。田中さんは心臓機能に障害があり通勤ラッシュが身体的に非常に負担となるため、フレックスタイム制度を利用し、毎日時差出勤をしています。月に1度、有給休暇を利用して通院しています。そのほか、体調を第一に考えて残業は一切させないなどの配慮もしています。 また、下肢に障害のある尾ア充代さんは、障害者職業能力開発校でCADの訓練を受けた後、入社しました。保全室に所属し、図面管理業務に携わっています。この業務はもともと子会社に委託していたのですが、尾アさんの入社に伴い、社内で従事するように業務の調整を行いました。「明るくてとても好感が持てました。パソコンスキルが高かったことも雇用のポイントでした」と話すのは、面接を担当した宮本さん。 さらに、品質保証室に所属するのは、岩井克典さんです。岩井さんは交通事故により頸椎を損傷、右上下肢に麻痺がみられます。パソコン使用時は主として左手のみで入力しますが、入力速度を求められる業務ではないため、業務上特に支障はありません。 品質保証室は、海外とのやり取りがあるために英語のスキルが必要であるのに加え、自社製品であるパイプの知識やNDI(超音波の資格)も必須です。当社ではスキルアップを推進するため、社内で英会話教室や、NDI資格取得に向けた講習を開催するなどの取り組みを行っています。 岩井さんも社内の講習会や自主学習により、NDIの初級資格を取得しました。また、他の障害者は公共交通機関で通勤していますが、岩井さんには自家用車通勤を許可するなど、通勤面での配慮も行っています。 障害者雇用に関しては、助成金を活用してきました。「現在は、特定求職者雇用開発助成金※を利用しています。ハローワークの助言のもと、申請しました」と宮本さん。「いろいろな助成金があるので、うまく活用して障害者雇用を推進していきたいと思います」 用語解説 ※ 特定求職者雇用開発助成金 新たにハローワーク等の紹介により高年齢者(60歳以上65歳未満)、障害者等の就職が特に困難な者または緊急就職支援者を継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主、65歳以上の離職者を1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して賃金相当額の一部を助成するもの。(17ページ参照) 雇用管理のポイント 特殊管総務部 総務室長 本田 雅之さん 障害者・健常者関係なく、人物本位の採用をしています。どの方も優秀で、非常に頑張ってくれています。障害者の方々は本当に努力家が多いですね。その姿を見て健常者も刺激を受けますし、同じ職場に障害者・健常者がいる相乗効果は大きいと感じています。 今後は、知的障害者や車椅子の方の雇用にも力を入れていきたいですね。そのようにすることが社会的貢献にもつながるのではないでしょうか。当社には特例子会社もありますが、そこに頼るだけではなく、事業所としても障害者雇用を推進していきたいと考えています。 職場インタビュー 岩下 好美さん(肢体不自由)・田中 和美さん(内部障害) (岩下さん)災害などの関係の仕事をしています。今までとは全然違う職種ですが、勉強になることばかりです。足に障害があるのですが、今の社屋は床がフラットできちんと整備されているので、とても働きやすいですね。 (田中さん)私の場合、見た目で障害がわからないのもあってか就職活動は大変でした。でもこの会社は理解をしてくださっているので、体への負担がかなり減りました。 尾ア 充代さん(肢体不自由) ハローワーク主催の合同面接会に参加したのですが、たくさんの会社があった中、この会社は一番気さくで息が合ったので入社を決めました。実際働いてみても、障害者に対する壁がなくとても良い会社だと感じています。CADに関する知識をもっと吸収して、仕事を頑張りたいです。 岩井 克典さん(肢体不自由) ハローワークの合同面接会がきっかけで入社しました。英語のスキルやNDI(超音波の資格)が必要となる業務に携わっているので、日々勉強を頑張っています。学ばなければならないことも多く責任も重い仕事ですが、とてもやりがいを感じています。 P.9_10 CASE 4 安全面を重視した雇用管理、支援機関との連携 JFEアップル東日本株式会社 安全面を重視した雇用管理と支援機関を活用した雇用を推進 企業プロフィール ●所在地:神奈川県川崎市 ●雇用障害者:肢体不自由者/聴覚障害者/内部障害者/知的障害者 安全面を重視した就業場所の選定や ミーティングの実施 JFEアップル東日本株式会社は、JFEスチール株式会社(旧NKK(日本鋼管株式会社))が障害者雇用を拡大する目的で1994年5月に設立した特例子会社(当時の社名は株式会社エヌケーケーアップル)。2009年1月現在、身体障害者9名、知的障害者8名が働いています。 広大な敷地に立ち並ぶ工場。「障害者の受け入れに当たっては、安全面での配慮を一番大切にしています。」と、取締役総務部長の成澤順二さんは言います。就業場所を入出門に近い教育センターに選定しましたが、それは@バス停から徒歩で数分の場所にあり、トラックが行き交う敷地内でも通いやすい、A健康面で何か問題が生じた際にすぐに対応できる保健センター(診療所)の近くにあるという、安全面を考えた2つの理由によります。 また、障害者が安全に活き活きと働いていけるよう、3つの行動目標(@安全に仕事をしよう Aルールを守ろう B仕事は楽しくしましょう)を掲げ、毎日の始終業時のミーティングの際に確認しています。「安全面に関しては確認しすぎるということはありません。特に知的障害者の方は、一度聞いただけでは理解しきれないこともあるので、繰り返し確認することで万全を期しているんです」と話すのは、業務1課課長の石橋昇三さんです。 バリアフリー完全整備で 車椅子の社員にも配慮 身体障害者は、親会社に入社後受障した人が転籍あるいは出向しているケースと、新規に雇用したケースがそれぞれ半分ずつの割合です。主として、パソコンによる文書作成業務に携わっています。具体的には、グループ会社社員の名刺作成、作業基準書等の書類データ化、親会社の資材品の受払作業などです。 パソコンを使った仕事は初めてという人がほとんどなのだとか。「みなさん、ここで働きながらパソコンを覚えたんですよ。触ったこともなかったような人ばかりでしたけど、今では正確性、スピードともにかなり上がってきました」と石橋さん。「名刺も作業基準書もお客様に直結する仕事ですから、ミスがあっては大変です。とても神経を使う仕事ですが、みんなやりがいを感じながら働いてくれています」 社屋はスロープや自動ドア、車椅子用のトイレなどバリアフリー環境が整備されており、車椅子の利用者も支障なく勤務しています。 業務を調整し、知的障害者を雇用 OJTを重視した指導 知的障害者は、教育センター内及び親会社の工場内の清掃に従事しています。知的障害者の職務開発に当たっては、親会社の人事部門が親会社の周辺業務(サービス業)を担っているJFEジーエス株式会社と調整を行い、安全で確実に対応が可能という観点から、清掃業務に決定しました。このほかにもダイレクトメールの封入作業等も定期的に行っています。 清掃は、4名ずつ2つのグループに分かれて行っており、1グループにつき1名の現場監督者を配置しています。監督者には、部下に対する指導経験が長い人を選定。知的障害者をOJTで細かく指導しています。「みんなとても素直で、マンツーマンできちんと教えれば、しっかりと仕事をこなします。口で教えるのではなく、実践することにより、体で覚えてもらう。これが重要です」と石橋さんは言います。「親会社の社員から『掃除してくれているおかげで機械の調子がとてもいいです。どうもありがとうございます』と言われたときは、感動しました。みなさんに喜んでもらえるのがメンバー全員にとって何よりの励みです」 支援機関との連携に加え、 地域にも貢献 障害者の採用に当たっては、1名はトライアル雇用※を活用しましたが、その他は1週間くらい職場実習を行い、採用を検討するというケースが多くを占めています。 きめ細かな配慮や指導を行う体制は社内にも整備されていますが、地域の支援機関である地域就労援助センターと連携を図りながら、さらに支援体制を強化しています。具体的には、@欠員が生じた場合に、当センターが関わっている障害者の中から当社に合う人材の情報を提供してもらう、A雇用した人のフォローアップとして、当センターの職員が定期的に来社している、などです。 成澤さんは「当社は、今現在のスキルだけを見るのではなく、入社してからきっちりと仕事をこなせる人材を求めています。その点を地域就労援助センターも理解をしてくださっており、求める人材を推薦していただけるんです」と言います。「雇用前から定着に至るまで、地域就労援助センターの支援が欠かせません」そこには厚い信頼関係が築かれています。 さらに、神奈川県内の企業、福祉施設、学校、行政からなるNPO法人障害者雇用部会の会員でもあり、社内のみならず地域社会の障害者雇用の促進にも活動の場を広げています。 用語解説 ※ トライアル雇用 障害者に関する知識や経験がないことから、障害者雇用をためらっている事業所に、障害者を試行運用の形で受け入れてもらうことで、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業。(13ページ参照) 雇用管理のポイント 取締役 総務部長 成澤 順二さん 障害者を雇用する上で不安もたくさんありましたが、障害をもつ社員たちは健常者と変わらない活躍をしています。 彼らは働いてお金をもらっている、立派な社会人の一人です。また、危険が伴う工場の中で事故にあったら大変ですから、時に私は厳しく接しています。しかし、厳しく注意したからといって誰も不平不満を口にするでもなく、素直に話を聞いてくれています。おそらく、面と向かい合って伝えることできちんと彼らの心に響き、このことが職場定着につながっているような気がします。 職場インタビュー 清掃作業監督者 畠山 良詞さん 知的障害者の現場監督者として、まず第一に怪我をさせないこと、そして、同じ内容でも毎日繰り返し伝えることを意識しています。 また、同じ知的障害者であっても一人ひとり違う対応が求められます。Aさんにはこういう言い方、Bさんは同じ作業を続けさせない…など、本人が仕事に集中しやすいような配慮が必要です。そこで、いろいろな反応をメモして記録しています。今はみんなの個性もだいぶ把握でき、ずいぶんと円滑に業務が進むようになりました。 中村 孝史さん(肢体不自由) OAグループのリーダーとして働かせていただいているのですが、実はパソコンはこの会社に入ってから覚えたんです。はじめのうちは、たくさんの本を買って必死に勉強しました。以前に比べればパソコンスキルは格段に身につきましたが、もっとスキルアップしたいです。 藤ヶ崎 清美さん(肢体不自由) 多くの障害者が働いていることもあって、プレッシャーもなくマイペースに仕事できる点が働きやすいです。また、パソコン業務が初めてだったのですが、わからないことがあっても周囲に質問しやすく、中村さんもフォローしてくださるので感謝しています。 P.11_12 CASE 5 トライアル雇用・ジョブコーチ支援を利用 JFE精密株式会社 適材適所の配置により、職場定着を図る 企業プロフィール ●所在地:新潟県新潟市 ●雇用障害者:肢体不自由者/内部障害者/知的障害者/精神障害者 社内にプロジェクト会議を設置し 新規の障害者雇用を実現 JFEスチール株式会社のグループ会社であるJFE精密株式会社は、車や携帯電話のほか、さまざまな機器の部品となる金属素形材製造を主に行っている300人以下規模の会社です。 障害者雇用の本格的な取り組みを開始したのは約4年前。法令遵守や社会的貢献を考え、障害者にもできる仕事があるのではないかと検討を始めました。総務室長の大坪満博さんは、次のように話します。 「人材を探していたときに、ハローワークから障害者の紹介を受けたのがきっかけでした。しかし当社では中途障害となった社員はいたものの、新規に障害者を雇用した経験がなかったんです。そこでハローワークのアドバイスのもと、総務室を中心に各部署の責任者を主なメンバーとする『障害者職場定着推進会議』を立ち上げ、本格的に障害者雇用に取り組み始めました」 その会議は現在も、職場のリーダーが障害者雇用のノウハウを共有する場として、大いに活用されています。 障害に見合う職務を確保・検討 したうえで適材適所の人材配置 2009年1月現在、在籍している障害者は全部で7名。このうち、2名は雇用率にカウントされないアルバイトで勤務しています。さらに、この2名のうち1名は、入社後受障し長年勤務していましたが、定年後アルバイトでの勤務となりました。「最近の雇用情勢は非常に厳しいですが、状況が許す限り、定年後もアルバイトとして勤務してもらうなど長く働ける場を提供していきたいと考えています」と大坪さん。厳しい状況ながらも、社員全員が長く安心して働ける環境を整えようと努力する様子が伝わってきました。 受け入れ先については、適材適所を心がけています。「『障害者雇用のために新たな職域を開発する』という大それたものではなく、『この業務に人材が必要だが、この業務ならば障害者にもできるのではないか』という視点から障害者雇用に結び付けています」と大坪さんは話します。「一般的に身体障害者なら座位作業、知的障害者なら単純繰り返し作業が向いていると考えられます。人材を必要としている職場にそのような作業があれば、ハローワークにまず相談します」 必要な配慮を行いつつ 最大限の能力を発揮できる環境づくり エンジニアリング部環境整備グループは、主に工場の補助的な作業を行う部署です。この環境整備グループには3名の障害者が勤務しています。その中の一人である布村正成さんは、トライアル雇用を経て採用されました。布村さんは腎臓機能に障害があり、週3回、終業後に人工透析のために通院しています。時折疲労のために休むこともありますが、特に支障となるほどではありません。ショットプラスト処理業務等に従事していますが、フォークリフトの運転が必要な業務であるため、入社後に免許を取得しました。 「布村さんに関しては、基本的に健常者とまったく変わらない対応をしているんです。ですから業務に必要なフォークリフトの資格はきちんと取得してもらいました。仕事もしっかりと一人でできますから、頼りにしています。もちろん体調管理の面だけは、本人、周囲ともに気を配って無理をしないよう努めていますが」と環境整備グループのチーフ、眞田守さんは話します。 トライアル雇用や ジョブコーチによる支援を活用 知的障害の品川一秋さんは、冷鍛工場のパレット洗浄や除草などに従事しています。初めての知的障害者の雇用であり、雇用に際しては職場実習を経た後、ジョブコーチ※による支援及びトライアル雇用を利用し、時間をかけて、本人、会社ともに適応状況を見極めました。眞田さんは以下のように話します。 「入社後は、必ず誰かとペアになって、単独では作業をさせないように配慮しています。いつも明るく、一生懸命仕事をしてくれていますから、とても助かっているんですよ」 また、精神障害者の白川隆夫さんは産業医の十分働けるとの判断を経て、ジョブコーチによる支援及びトライアル雇用を利用して雇用に至りました。主に、清掃車を使用する冷鍛工場内の床清掃と、ゴム板の穴あけ作業に従事しています。 「毎日休むことなく、真面目に勤務しています。周囲とのコミュニケーションもしっかりととれていますし、特別に配慮していることはないんです」と眞田さん。「配慮している点を敢えて言うならば、1日中同じ仕事ではなく、午前は清掃、午後はゴム板の穴あけや時折除草を手伝ってもらうなど、変化に富んだ仕事をしてもらっている点でしょうか。午前と午後で仕事の内容が変わるのは、モチベーションを保つための一つの方法だと思います」 環境整備グループでは、食事休憩を全員一緒にとっています。「障害者が長く勤めるためには、チームに溶け込めるかが大切になりますが、このチームは障害の有無に関係なくとても仲が良いんです」と眞田さんは語ります。日常的に仕事中以外にもコミュニケーションを図っていることが、職場の一体感と障害者の職場定着につながっています。 用語解説 ※ ジョブコーチ 職場適応援助者ともいう。地域障害者職業センターと社会福祉法人等に配置されている。知的障害者、精神障害者などの障害者の職場適応を容易にするため、雇用の前後を問わず必要なタイミングに事業所へ出向いて、障害者と事業主の双方にきめ細かな人的支援を行う。その他、事業主が自ら雇用している障害者のために配置することもできる。(13ページ参照) 雇用管理のポイント 総務室長 営業部 次長(兼務) 大坪 満博さん 当社は障害があるからといって特別扱いはせず、基本的には健常者と同じように接することが大切だと考えています。もちろん、毎日の体調への気遣いや障害に見合った業務内容など、会社として配慮しなければならないことは配慮しています。特に注意しなければならないのは安全面です。工場内は危険が伴いますから、現段階では、主に補佐的な業務に携わってもらうことで危険を回避しています。必要な配慮をすることで、能力を発揮できる方がたくさんいるということを、障害者雇用を通じて痛感しました。 職場インタビュー エンジニアリング部 環境整備グループ 布村 正成さん(内部障害) 環境整備グループは、障害者に対する偏見のようなものはまったくなく、とても働きやすい環境です。フォークリフトを運転するなどの専門的な仕事ができるのも楽しいと感じています。体調が悪いときは周りの方がフォローしてくださりますし、本当にありがたいですね。 エンジニアリング部 環境整備グループ 品川 一秋さん(知的障害) とてもいい会社です。職場の仲間もみんないい人たちですし、毎日楽しく働いています。任せてもらえる仕事は、何でもがんばってこなしたいですね。今、55歳ですが、体が元気なうちはずっと働きたいと思っています。 エンジニアリング部 環境整備グループ 白川 隆夫さん(精神障害) 職場のメンバーみんなが変な気を使うことなく和気藹々とした雰囲気なので、とても居心地がいいですね。マイペースに仕事をさせていただいている点も、本当に感謝しています。定年までずっと働きたいです。 P.13_14 障害者雇用に関する制度 制度についてはさまざまな種類がありますが、そのうちの一部をご紹介します。 いずれの制度にも要件等がありますので、詳細は各機関にお問い合わせください。 ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援 問い合わせ 地域障害者職業センター 障害者が円滑に職場に適応することができるよう、ジョブコーチが事業所に出向き、職場内においてさまざまな支援を行います。地域障害者職業センターに所属するジョブコーチ(配置型ジョブコーチ)と社会福祉法人等に所属するジョブコーチ(第1号職場適応援助者)が各地域に配置されており、必要に応じて両者が連携して支援を行います。 上記のジョブコーチ以外に事業主が自ら雇用する障害者(在職者)のために、職場適応援助者を配置することができます(第2号職場適応援助者)。また、第1号及び第2号職場適応援助者配置に関し、助成金が支給されます。 障害者試行雇用(トライアル雇用)事業 問い合わせ ハローワーク 障害者に関する知識や雇用経験がないことから、障害者雇用をためらっている事業所が、障害者を原則3ヵ月間、試行雇用(トライアル雇用)の形で受け入れ、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業です。トライアル雇用を実施した事業主に対しては、トライアル雇用終了後、トライアル雇用奨励金が支給されます。 精神障害者総合雇用支援 問い合わせ 地域障害者職業センター 精神障害者及び、精神障害者を雇用しようとする又は雇用している事業主に対して、主治医との連携のもと、雇用促進・職場復帰・雇用継続の雇用の各段階で行う体系的かつ専門的な支援の総称です。 <雇用促進支援> 採用計画等を含む雇用管理に関する助言・援助、ジョブコーチによる支援 など <職場復帰支援> 職場復帰のコーディネート、リワーク支援 など <雇用継続支援> 職場適応の状況等に応じた助言・援助、ジョブコーチによる支援 など 各種雇用相談・情報提供 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html 雇用相談・助言 (1)雇用相談 障害者を新たに雇用する事業所からの相談、職場定着に関する相談等、事業主からの各種の雇用相談に応じています。 (2)障害者職場定着推進チームの育成 障害者職場定着推進チームは、障害者がその能力を十分に発揮できるような職場環境をつくり、障害者の職場適応の促進を図ることを目的としており、当機構では原則として障害者を5人以上雇用する事業所での設置を推奨しています。このため都道府県高齢・障害者雇用支援協会等では、推進チームの設置に関しての助言、設置後の運営に関しての相談や資料の提供等といった援助を行っています。 各種講習会の開催 障害者雇用に関する理解を深めていただくとともに、職場における障害者の指導方法等の雇用管理に関しての各種のノウハウを習得していただくことを目的として、地域のニーズや実情に応じた特性等を踏まえた各種の講習会を開催しています。 障害者職業生活相談員資格認定講習の開催 障害者を5人以上雇用する事業所においては、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、障害者の職業生活全般に関する相談・指導を行う障害者職業生活相談員を選任しなければならないこととされており、都道府県高齢・障害者雇用支援協会等が、その資格認定講習を実施しています。 障害者雇用事例リファレンスサービス https://www.ref.jeed.go.jp/ 障害者雇用における課題に対して解決の参考となる、全国の事業所の取り組み事例等をホームページで紹介しています。 雇用管理サポート事業 問い合わせ 地域障害者職業センター、駐在事務所等 障害者の雇用、雇用継続又は職場復帰にあたっての雇用管理に関して、専門的な知識や支援を必要としている事業主に対して、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラーまたは駐在事務所や都道府県高齢・障害者雇用支援協会等の障害者雇用アドバイザーが、地域の各種専門家(協力専門家)と一緒に事業所を訪問し、相談・助言を行っています。 就労支援機器の普及啓発 問い合わせ 駐在事務所 特に重度障害者の方々の雇用促進と雇用継続を図るため、ホームページを活用して障害者の就労を支援する機器及びソフトウエアなどの普及を図っています。 また、障害者を雇用する事業主の方々や事業主の団体に対して、就労支援機器を一定期間無料で貸出すことにより、その普及を促進しています。 就労支援機器は、ホームページから検索することができます。https://www.kiki.jeed.go.jp/機器等の貸出を受けようとする際は、管轄する駐在事務所の障害者雇用アドバイザーにご相談ください。また、申請書は上記ホームページからダウンロードできます。 P.15 障害者雇用率制度 社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用の場を確保するため、すべての事業主が、一定割合以上の人数(法定雇用障害者数)の身体障害者又は知的障害者を雇用することを義務付けている制度です。 法定雇用障害者数=事業所全体の常用労働者の総数×法定雇用率 法定雇用率(平成21 年3月現在) 民間企業=1.8%、特殊法人等=2.1% 国・地方自治体=2.1%(一定の教育委員会2%) ※身体障害者及び知的障害者のうち重度障害者については、1 人を2 人とみなします。これをダブルカウントといいます。 障害者雇用納付金制度 問い合わせ 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要とされることが多く、経済的負担が伴うことから、雇用義務を履行している事業主と履行していない事業主とでは経済的負担に差が生じることとなります。 障害者雇用納付金制度は、障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるとの社会連帯責任の理念にたって、事業主間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより、障害者の雇用の促進と職業の安定を図るため「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき設けられた制度です。(参照:障害者雇用納付金制度の概要(P16)) 除外率制度 障害者が就業することが困難とされる職種の労働者が相当の割合を占める業種の事業所については、除外率により障害者の雇用義務を軽減する制度です。ただし、納付金制度に基づく障害者雇用調整金及び報奨金の支給を算定する際には除外率は適用されません。 ※この制度は廃止に向けて段階的に縮小することとなっています。 特例子会社制度 問い合わせ ハローワーク 障害者雇用率は、原則として個々の事業所に課せられますが、事業主が障害者の雇用の促進を目的として、一定の要件を満たす子会社を設立した場合に、特例子会社として、子会社で雇用している障害者を親会社の雇用率に算入できる仕組みのことです。 P.17 助成金制度 障害者雇用納付金制度に基づく助成金 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html 事業主が障害者を新たに雇い入れたり、重度障害者の安定した雇用を維持するために、少なからぬ経済的負担がかかることがあります。障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、その費用の一部を助成し、負担の軽減を図ることで障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。 ●助成金の種類 (助成金の対象、助成率、限度額等は当機構ホームページ https://www.jeed.go.jp/disability/employer/subsidy/sub01.htmlをご覧ください。) 助成金 障害者作業施設設置等助成金 障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害を克服し作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設または改造等がなされた作業設備の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者福祉施設設置等助成金 障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主またはその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された福利厚生施設の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者介助等助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する費用に対する助成金です。 職場適応援助者助成金 職場適応援助者による援助を受けなければ、事業主による雇い入れまたは雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするために職場適応援助者(機構が行う養成研修または厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者)を配置し援助を実施する費用に対する助成金です。 重度障害者等通勤対策助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主、またはこれらの事業主が加入している事業主団体が、これらの者の通勤を容易にするための措置を行う費用に対する助成金です。 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者を常用労働者として多数雇い入れるか継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主で、これらの障害者のために事業施設等の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者能力開発助成金 障害者の職業に必要な能力を開発し、向上させるための能力開発訓練事業(厚生労働大臣告示による基準に該当するもの)を行う事業主等が、能力開発訓練のために施設・設備の整備等を行う費用、その能力開発訓練事業を運営する費用や障害者である労働者を常用労働者として雇用する事業主が、その障害者である労働者に障害者能力開発訓練を受講させる費用に対する助成金です。 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金) 問い合わせ 都道府県労働局、ハローワーク 身体障害者、知的障害者又は精神障害者等の就職が特に困難な者をハローワーク等の紹介により雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部を雇い入れた日から一定期間助成するものです。