V 職場における配慮事項 Question Q1 視覚障害者は移動が困難だと思いますが、通勤や職場 内の移動は一人でできるのでしょうか? A1  一人で通勤することが可能です。  視覚障害者、特に全盲などの重度視覚障害 者の雇用に際しては、多くの事業主が通勤に ついての不安を感じているようです。 訓練を受けた視覚障害者は、基本的に公共 交通機関を利用して単独で通勤することがで きます。全盲者も、訓練施設や盲学校等で歩 行訓練を受けており、白杖等を使用した安全 な歩行技術を身につけています。  通勤経路が決まったら、歩行訓練士に通勤 訓練を依頼し、必要な回数の歩行訓練を行っ た後は一人で通勤することが可能です。  会社によっては、混雑時のリスクを避ける ために、勤務時間をずらす等の配慮をしてい るところもあります。 歩行訓練を受けるには  歩行訓練は、主に視覚障害者のリハビリテーション施設や、一部の医療機関・団体等で実施しています。  入所や通所による訓練のほか、訪問による訓練を実施しているところもあります。  詳細については、各都道府県または各市町村の障害福祉所管課に問い合わせてください。 用語解説 歩行訓練士  歩行訓練士とは、視覚障害者の生活訓練の一部を担当する訓練士のことで、視覚障害者が建物内や道路を安全に移動または歩行し、 交通機関を利用するための訓練にあたります。視覚障害者の歩行手段としては、手引き(ガイド)による歩行、白杖を使用しての歩 行、盲導犬を使用しての歩行、電子歩行補助具を併用しての歩行などがあります。歩行訓練士は、これらの使用方法や操作技術を指 導します。 A2  職場のレイアウトを伝えてください。  職場内の移動については、入社時に職場内のレイアウトや移動の手がかりとなるもの を確認しておくと、その後はスムーズな対応ができます。  一般的な配慮事項として、視覚障害者が通常利用する通路に物を置かないようにする ことやロッカーの扉を開け放しにしないようにすることを心がけることがあげられます。  ただし、周囲が支障となるのではないかと思うものでも、視覚障害者本人にとっては、 手がかりや目印となっていることもありますので、職場内でレイアウトの変更がある場 合は、その都度具体的に説明することが必要です。 A3 通常のルート以外の移動は、サポートが必要になる  場合があります。  視覚障害者、特に全盲者が会議や研修などで職場以外の場所に外出しなければならな い場合など、通常の通勤ルートと異なる行程を移動する必要がある場合には、基本的に は全行程または一部の行程を誘導することが望まれます。  視覚障害者の誘導(ガイド)のしかたについては、50 ページを参照してください。 P50「視覚障害者のガイド(誘導)方法」 Question Q2 視覚障害者を雇用する場合、どのような施設・設備の 改善が必要でしょうか? Answer A 基本的には大がかりな施設の改善や設備の導入は必要ありません。視覚障害者 にとって危険を避けるような工夫や、わかりやすいような工夫をすることが望 まれますが、これらは、あまり費用をかけずに行うことができます。 A1  点字表示が便利です。  全盲者を受け入れる際は、エレベーターのボタンの横に点字表示をつけると良いで しょう。また、視覚障害者が自分のいる位置を把握するために、階段の手すりやエレベー ターホールにも何階かを示すような点字表示をつけることが望まれます。  そのほかトイレや給茶機など、視覚障害者が利用する設備に、点字シールを貼ってわ かりやすくしている会社もあります。 点字表示をつくるには   点字表示によるプレートを作成する際には、点字図書館や点字製作所と相談することが望まれます。  また、市販の点字ラベラーを利用して点字ラベルシールを作成し、給茶機や自動販売機などに貼付することもあります。 P66「点字図書館・点字出版所」 A2  危険を避ける工夫が必要です。  「階段のステップの色とエッジの色のコントラストを強くして識別しやすくする」、「衝 突防止のためにドアを引き戸(もしくは内側に開く扉)にする」、「ぶつかっても怪我を しないようにカウンターの端にクッション材を貼る」など、視覚障害者の見え方によっ て、危険を避けるような工夫をすることが大切です。 A3  移動しやすいレイアウトを考えることが必要です。  視覚障害者が移動しやすいように、「部屋の入り口近くに席を設置する」、「トイレ、 更衣室、エレベーターなど通常使用する場所への移動がなるべく直線的になるように机 を設置する」など職場のレイアウトを工夫することが望まれます。  また、常に整理整頓を心がけ安全性を確保すると共に、書類や物品の保管場所を一定 にして、探すことに時間をかけないですむようにすることが大切です。  書類をファイリングする際には、ファイルの表紙や背表紙の文字を大きくするなど、 A4  必要に応じ、支援機器の導入を検討しましょう。  障害の状況や職務の内容に応じて、たとえば、書類の文字を拡大するための拡大読書 器など必要な支援機器を導入することを検討してください。  支援機器については、「W視覚障害者に役立つ支援機器」を参照してください。  また、「T視覚障害者が活躍する職場」のCASE1・CASE2・CASE5にも具体的な活 用事例を掲載しています。 P4・6・12「T視覚障害者が活躍する職場CASE1・2・5」 P44「W視覚障害者に役立つ支援機器」 CHECK! 見やすいように工夫することが望まれます。 A4  必要に応じ、支援機器の導入を検討しましょう。  障害の状況や職務の内容に応じて、たとえば、書類の文字を拡大するための拡大読書 器など必要な支援機器を導入することを検討してください。  支援機器については、「W視覚障害者に役立つ支援機器」を参照してください。  また、「T視覚障害者が活躍する職場」のCASE1・CASE2・CASE5にも具体的な活 用事例を掲載しています。 P4・6・12「T視覚障害者が活躍する職場CASE1・2・5」 P44「W視覚障害者に役立つ支援機器」 Question Q3 視覚障害者が仕事をするうえで、どのような作業環境 が必要でしょうか? Answer A 見え方や仕事の内容によって異なりますが、以下のような環境を整 備すると良いでしょう。 A1  就労支援機器を活用しましょう。  近年のICT 技術の進歩により、視覚障害者、特に全盲者の文字処理能力が向上し、電 子化された情報であれば、支援機器を活用して独力で点字や音声に変換して、「読む」 ことができる人が多くなっています。  障害特性に応じた就労支援機器を活用することで、視覚障害者の「できること」の幅 を広げたり、職務を効率的に遂行することができます。就労支援機器の詳細については、 「W視覚障害者に役立つ支援機器」を参照してください。  これら就労支援機器の導入に際しては、「就労支援機器の貸出し制度」や「障害者作 業施設設置等助成金」が設けられています。 P44「W視覚障害者に役立つ支援機器」 P49「就労支援機器の貸出し制度」 P56「障害者雇用納付金制度に基づく主な助成金一覧」 A2 職場介助者の配置などヒューマンサポートを検討しま   しょう。  職務を遂行する際に、障害の種類や程度に応じ必要な介助等の措置を実施する場合、 その費用の一部を助成する「障害者介助等助成金」が設けられています。  重度視覚障害者の雇用の際には、これを活用して職場介助者を導入し、資料の読み上 げや記録、視覚障害者が作成した文書の確認等のサポートをすることができます。  助成金を活用する際には要件等がありますので、受付窓口でよくご相談ください。 P56「障害者雇用納付金制度に基づく主な助成金一覧」  障害者が円滑に職場に適応することができるように、ジョブコーチが事業所に出向き、 職場内で作業遂行力の向上のための支援や雇用管理に関する助言などを行う「職場適応 援助者(ジョブコーチ)による支援」があります。 P61「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」 A3  照明や採光などを検討しましょう。  一般に十分な照明がない場合や、逆に直射日光のもとなど明るすぎるところでは、目 の疲労感が増大するといわれています。弱視者は、人によって見え方がさまざまであり、 特に明順応や暗順応に障害がある場合は、照明や採光に配慮が必要になります。  まぶしすぎる、暗すぎると感じる明るさは一人ひとり違うので、視覚障害者本人とよ く話し合って対応方法を検討してください。  具体的な対応方法としては、「南側の窓はブラインドを下げる」、「蛍光灯にシェード をかけて光をやわらかくする」、「デスクスタンドを利用する」、「遮光眼鏡をかける」等 が考えられます。 A4  勤務時間について調整する場合もあります。  視覚障害者は、一般的には目が不自由なだけでほかの面は特に健常者と変わらない ので、勤務時間や仕事量、仕事内容については、健常者と同様に本人の能力や経験に より決めていきます。  ただし、障害の種類や程度は人によってさまざまであるため、通勤を考慮して勤務開 始時間をずらしたり、仕事に慣れるまでの間は業務量を調整している場合もあります。  また、眼疾患によっては目の疲労を感じやすいことがあり、適宜休憩をとることが 望ましい場合もあります。  糖尿病や腎臓病などのもともとの疾患がある場合には、定期的な通院など個別の配 慮を要することがありますので、本人とよく話し合ってください。 Question Q4 視覚障害者とのコミュニケーションで配慮することは ありますか? A1  一声かけることが大切です。  全盲や重度の弱視の場合は、声でその人が誰 であるか判断しています。また、いきなり話し かけられても自分に話しかけられているのかわ かりにくい場合があります。  「○○さん、△△です」というように、相手 の名前を呼びかけてから、自分の名前を名乗る とわかりやすくなります。  席を離れる時や席に戻った時にも一声かける ことが大切です。  不在であることを知らずに話しかけて、返事 がないということを避けるためにも、「○○に 行ってきます」「戻りました」等、声をかけて コミュニケーションをはかることが大事です。 A2  説明は具体的にします。  視覚障害者に口頭で説明する場合には、具体的に伝えることが大切です。  「これ」「それ」「ここ」「そこ」という指示代名詞は避け、「右」、「左」、「前」などの 説明のしかたをすると、わかりやすくなります。  物の位置については、時計の文字盤を例にとって、「9 時の位置に電卓があります」 という説明をすることもできます。これは、クロックポジションと呼ばれています。 P55「視覚障害者のガイド(誘導)方法 クロックポジション」 A3  目線が合わないこともあります。  中心に暗点があったり角膜の中央が濁っている場合などには、顔を傾けて斜めの方向 から見ることがあります。  このように、見え方によっては目線が合わないこともあることを理解し、安易に「こ ちらをまっすぐ見てください」などの声かけをしないことが望まれます。 Question Q5 視覚障害者に情報を提供する場合には、どんな配慮が 必要ですか? A1  一人ひとりの見え方によって工夫します。  全盲者で点字を利用している場合は、会議や研修の資料などについては、点字図書館 や点字出版所に委託して資料を点字化、音声化することができます。  また、視覚障害者がパソコンを使用することができる場合は、資料を電子化しテキス トファイルにして、事前に提供することが望まれます。テキストファイルであれば、視 覚障害者が点字化あるいは音声化して読むことが可能です。  そのほか、同僚や上司、職場介助者などが読み上げる方法もあります。 P66「点字図書館・点字出版所」  弱視者は、人によって見え方がさまざまです。  資料をルーペや拡大読書器を利用して読むことができる場合でも、その場で読むのは 時間がかかることがあるため、事前に提供したほうが良いでしょう。  見え方によっては、資料を「拡大コピーする」「印刷を濃くする」などの配慮が望ま れます。  所定の届出用紙等については、パソコンが 使用できる場合には電子データ化して提供す ると良いでしょう。  パソコンの使用が難しい場合は、状況に応 じて代わりに記入することが必要です。  掲示文書などについては、掲示してあるこ とに気づかない場合もありますので、内容に ついて本人に知らせたうえで、必要に応じて 読み上げることが望まれます。  パソコンが使用できる場合には、掲示文書 と同じ内容のものをメールで知らせている 会社もあります。 Question Q6 社員が視覚障害になった場合、企業としてどのような 配慮が必要でしょうか? A1  職場復帰に向けて長期的な視点での対応が必要です。  疾病や事故等で視覚障害となったときは、本人が自分の目の状況や治療の見通し、障 害の状況について正しく理解し、どのようなリハビリテーションを受けるかを検討する ことが必要となります。  しかし、目が見えなくなることは本人の生活に大きな制限や困難をもたらし、精神的 にも大きなダメージとなり、自分の障害を受け止めるには時間がかかります。企業とし ては、まずこれらのことを理解し、会社としての今後の支援の見通しなどを示すことが 望まれます。  職場復帰の際には、配置転換やそれに伴う技術習得の必要性など、長期的な視野にたっ て対応することが必要になります。産業医や主治医と相談したり、リハビリテーション 施設に同行して職場復帰に向けたプロセスを確認することなどが大切です。  障害の状況にもよりますが、一般的な職場復帰までのプロセスは以下のとおりです。 治療リハビリテーション(必要に応じ生活訓練、職業訓練) 職場復帰の調整職場復帰復帰後のフォロー A2  本人、主治医、訓練担当者とよく相談しましょう。  必要な治療やリハビリテーションを実施し、自立の見通しがたってきたら職場復帰へ の準備をはじめます。 P40「Q7. リハビリテーション」  職場復帰の際には、配置転換等を検討する必要がある場合もあるので、本人の希望 を確認した上で、職種や配属先についての打ち合わせをします。  その際、仕事の内容や手順、支援機器の必要性等を確認します。  障害の状況や職場によっては、職場全体の仕事を細分化し、本人に適した仕事を集 めて一人分の仕事を組み立てることが必要な場合もあります。  支援機器等の整備については、企業の業務システム、メールやスケジュール、社内 向けWeb サイトなどをキーで操作できるか、画面読み上げソフトや拡大ソフトを利 用できるかなど、システム担当者との打ち合わせも必要となります。  仕事以外の場面でもどのようなサポートが必要か、通勤や事業所内での移動、昼食な ど不安に感じていることを確認し、必要な調整を行います。たとえば、レイアウトの変 更や、慣れるまで勤務開始時間をずらすなどの調整が必要なことがあります。  生活訓練や職業訓練などのリハビリテーションが終了する前に、訓練の担当者と連携 して本人の状況を把握し、必要な調整や検討を行うことが大切です。  職場復帰に際しては、支援機器の貸出し制度や助成金制度の活用も検討してください。  また、職場復帰については、「T視覚障害者が活躍する職場」のCASE5 にも具体的な 取り組み事例を掲載しています。 P12「T視覚障害者が活躍する職場CASE5」 P49「就労支援機器の貸出し制度」 P56「障害者雇用納付金制度に基づく主な助成金一覧」 A3  社内の理解を進める取り組みをしましょう。  職場復帰が決まったら、配属先の上司や同僚の視覚障害に対する理解を深めることが 大切です。  「通路に物を置かない」「情報を共有できるように、回覧文書を読み上げる」、「パソ コンのトラブルによって音声が出なくなったときにサポートする」など一般的な配慮事 項を知ってもらうことも大切ですが、障害の状況は一人ひとり違いますので、視覚障害者 本人とよく話し合って、どんなときにどんなサポートがあると良いのかを職場で共有す  るようにしてください。 職場復帰後は、本人や配属先の管理者と定期的に連絡をとり、勤務状況を確認し、課 題があれば再度調整するような体制を整備しておくことが望まれます。 Question Q7 視覚障害者のリハビリテーションはどのようなもので すか?企業において活用できるものはありますか? A1  主に生活訓練と職業訓練を行います。  視覚障害者に対するリハビリテーションは、目が見えなくなったことによる不便さを 解消あるいは軽減していく訓練を通じて自信を回復し、次の目標を見つけることを目的 にしています。  医療機関における治療やリハビリテーションの見通しがたった段階で、日常生活で生 じる課題に対して、その課題の解決や軽減を目的とした訓練を行います。  代表的なものとして、「目が見えない、見えにくい」ことによって「一人で歩けない」、 「文字の読み書きができない」、「料理等ができない」といった不便さを解消するための、 @歩行訓練、Aコミュニケーション訓練、B日常生活動作訓練があります。  歩行訓練では、白杖を使用して安全を確保し、一人で目的地まで移動できるような訓 練を行います。  コミュニケーション訓練では、点字の読み書き、拡大読書器や音声パソコンの操作法 等を習得し、文字処理ができるようにします。  日常生活動作訓練では、「お茶を入れる」、「料理をする」、「洗濯する」などの動作を 一人で行えるような訓練をします。  こうした訓練を通じて基礎的な生活能力を習得し、再び仕事に就くための準備をして いきます。  これらの訓練は生活訓練(社会適応訓練)と呼ばれており、視覚障害者のリハビリテー ション施設や一部の医療機関、団体等で受講することができます。  休職中の視覚障害者が職場復帰する場合や、事業所を移転する場合などに通勤訓練と して歩行訓練を活用している会社があります。 P64「生活訓練(入所・通所・在宅)を実施している施設、機関」 A2  職場復帰のために、新たに職業訓練を受講する場合もあります。  生活訓練を終了し基礎的な生活能力を習得した後に、必要に応じて専門技能を身につ けるための職業訓練を受ける場合があります。  たとえば、「受障前の業務に復帰することが困難であり配置転換をする場合、新たな 職務に必要な基本的なパソコン操作技術を習得するための訓練を受ける」などです。  現在実施されている職業訓練の科目は、パソコン操作による事務処理技術の習得、情 報処理技術の習得を目的とした科目が中心となっています。 P64「視覚障害者を対象とした職業訓練を実施している職業訓練機関」 会社によっては、復職後に研修という位置づけで、訓練を受けた施設へ一定期間定期 的に通い、スキルの定着をはかっている場合もあります。  また、勤務している社員の視力が低下し業務遂行が困難になった場合に利用できる、 在職者を対象にしたコースや、新規採用者のための研修として職業訓練を利用している 会社もあります。  事務処理技術や情報処理技術の習得以外に、国立視力障害センターや盲学校(視覚特 別支援学校)で、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を取得する方法が あります。  これらの資格を取得し、ヘルスキーパーとして復帰した例もありますが、一定の訓練 期間(3 年程度)を必要とするため、休職期間等に配慮が必要になります。 コ ラ ム ロービジョンケアとの連携・保有視機能の活用  視覚障害があっても、多くの場合は視機能(視力や視野、色覚、物を見るための働きなど)が少し保 持されていることが多いようです。その保持されている視機能を最大限に活用し、できるだけ快適な生 活を送れるように支援する眼科医療や福祉のことを「ロービジョンケア」といいます。  眼科で行うロービジョンケアでは、保持されている視力や視野を効率よく使って、少しでも見やすい 環境をつくるための取り組みをします。視機能評価の結果をもとに、ニーズに応じた補助具を選定し、 その補助具を使用する訓練を行います。  たとえば、「自分の状態にあった拡大鏡(縮小鏡)を使用する」、「網膜の中心にダメージがある場合 に周辺部分の機能している網膜で見る練習をする」、「遮光眼鏡を使用する」などです。  また、視覚障害者向けにつくられたロービジョングッズを利用することによって、日常生活を送る うえでできることの幅が広がります。ロービジョンケアでは、このような情報提供も行っています。 【便利なグッズいろいろ】 スマートフォン、タブレット端末  画面の拡大機能、読み上げ機能、また録音機能や写真録画機能が便利に活用できるほか、支援アプ リ(OCRなど)も多くリリースされている。 視覚障害者用ポータブルレコーダ  音声等によりボタンの操作が認識でき、DAISY方式による録音ならびに当該方式により記録さ れた図書の再生ができる。 (※DAISY方式・・・Digital Accessible Information Systemの略で日本では「アクセシブル な情報システム」でDAISY方式と訳されています。視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人 々のためにアクセシブルな電子書籍の国際標準規格として、50か国以上の会員団体で構成するデイ ジーコンソーシアムによる開発と維持が行われている情報システムです。) 配慮事項のいろいろ【ハード面における配慮事項】 1. 点字表示・トイレ、エレベーター、給茶器、ゴミ箱等要所に点字シールを貼付 2. 扉の改装 ・衝突防止のため、ドアを引き戸に改装 ・ドアはすべて室内側に開くようにし、ドアとの衝突事故を防止 ・来客がわかるように、ドアチャイムを設置 3. 事務室、作業場のレイアウトの工夫 ・事務室の入り口近くに席を設置 ・入室する際のランダムテンキーロックを変更 ・トイレ、更衣室、給茶器、エレベーターへの移動がなるべく直線 的になるように机や設備の配置を考慮 4. 支援機器の活用 ・拡大読書器、画面読み上げソフトや画面拡大ソフトをインストー ルしたパソコンを活用 5. 職場の整理整頓 ・物品や資料の保管場所の徹底 ・整理整頓の励行 6. 道路の点字ブロックの敷設 ・通勤の安全を確保するため、最寄り駅から事業所までの点字ブロッ ク敷設を管轄警察署に依頼 7. 交差点の音声対応装置の整備 ・通勤の安全を確保するため、通勤途上の交差点に音声対応装置の 設置を管轄警察署に依頼 8. 街灯の設置・バス停から事業所までの道に街灯の設置を依頼 【ソフト面における配慮事項】 1. 社内支援体制の整備 ・職業コンサルタントや障害者職業生活相談員が相談できる体制を ・情報アクセシビリティの理解(視覚障害者が識別しづらい情報の理解) [例]システムのキー操作、読み上げ状況、保護された文書やデータ、画像データ、    図表・フローチャート、テキストボックス、色分けされた領域 整備 2. 職場介助者等のヒューマンサポート ・隣にチームリーダー、後ろに職業コンサルタントを配置してサ ポート ・職場介助者を採用して配置 ・同僚による回覧文書の読み上げ、資料の代読等 ・同僚による通勤時や昼食時のナチュラルサポート ・点訳ボランティア等ボランティアの活用 3. 積極的なコミュニケーション ・会話の前に自分の名前を名乗る ・挨拶や声かけを行う 4. 勤務時間の配慮 ・ラッシュ時間を避けた勤務時間の設定 ・日没時間を避けた退社時間の設定 障害者雇用に役立つ資料のご紹介 ●マニュアル、教材、ツール等  目が見えなくなってきた従業員の雇用継続のために  (企業の人事担当者、管理者の皆さまへ)  重い眼疾患の罹患・進行により、在職中に視力や視野の障害が現れた社員に 対する事業主、産業保健スタッフ等の対応のポイントをわかりやすくまとめた リーフレットです。 ●障害者雇用マニュアル コミック版1  視覚障害者と働く −理解と配慮で、ともに働く環境づくりー  視覚障害に関する基礎知識、就労支援機器や支援制度の活用例、職場での具 体的な支援方法などを盛り込みながら雇入れと職場定着に必要な雇用管理の手 法について、コミック形式で紹介したマニュアルです。 ●動画・DVD  みんなが輝く職場へ 〜事例から学ぶ 合理的配慮の提供〜  障害者雇用を積極的に進めている企業の取組や、活き活きと働く障害者の様 子、企業や障害者を支える家族や支援者の姿を映像で紹介するとともに、企業 担当者のインタビュー等を通じて、職域開発や雇用管理等に関するさまざまな ノウハウをわかりやすく動画で紹介しています。