はじめに 事業主のみなさん、知的障害者の雇用について ご検討いただいたことがありますか。 「知的障害者を雇用することは、考えたこともない」 「障害者を雇用するなら、身体障害者」 と決めつけてはいないでしょうか。  たしかに、知的障害者は「知的な発達が遅れていて、社会生活を送る上で苦手なことがある」人たちなのは事実です。  しかし、苦手なことがあるということと、何もできないことは同じではありません。適切な援助や配慮があれば、苦手なことを改善することは可能です。  何事も一人で行なう習慣をつけ、繰り返し練習し、経験を積むことで、知的障害者は様々なことができるようになります。実際、周囲(家族や支援機関の職員)の支援を受けながら、公共交通機関を利用して通勤・通学し、働いたり学んだりしている知的障害者はたくさんいます。  これまで知的障害者を雇用する事業所は、経営規模の小さい事業所が多く、業種や職種も限定的に考えられる傾向にありました。しかし、平成10年の「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正により、知的障害者の雇用が義務化されるとともに各種施策の充実が図られました。近年はトライアル雇用やジョブコーチによる支援等様々な支援方法もあり、雇用が進むとともに、職域もサービス業や介護現場等多岐にわたっています。  本書では知的障害者の特徴を説明するとともに、Q&Aや事例の紹介を通して、知的障害者の能力を引き出すために事業所が行なっている工夫や配慮等を紹介しています。  本書をご覧になられた事業所の方々が、知的障害者に関心を抱き、雇用について検討いただければ幸いです。 INDEX はじめに‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1 1 知的障害者の雇用の現状 ●知的障害者の数‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4 ●知的障害者の雇用の実態‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 ●障害者雇用率制度の概要‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6 ●特例子会社制度について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7 2 知的障害とはどんな障害ですか? ●知的障害の定義‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8 ●知的障害の特徴‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9〜12 ●その他の症候群等との関係‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13〜17 3 雇用管理Q&A  (雇用に向けた準備) Q 1 知的障害者を募集・採用するためにはどこへ行けばよいのでしょうか。‥‥‥‥‥‥‥‥ 18・19 Q 2 知的障害者を雇用するための基本的な流れを教えてください。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20 Q 3 事務系の職場で、知的障害者にさせる適当な仕事がありません。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21 Q 4 知的障害者の雇用に関する社内のコンセンサスが取れません。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22 Q 5 同じような能力の人を二人同時に雇いましたが、一人は障害者でないといわれました。 二人の職業能力は同程度で、職場における配慮の度合いも変わらないのになぜでしょうか。 雇用支援の対象となる知的障害者の確認方法を教えてください。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23 Q 6 重度知的障害者はダブルカウントと聞きました。詳しく教えてください。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥24  (募集・採用) Q 7 面接で確認すべきことはありますか。「障害」のことを直接尋ねてもかまいませんか。 適切な採否の判断基準はありますか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥25 Q 8 どんな人であれば「実習」の受け入れが可能ですか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26 Q 9 知的障害者が職場に定着するために必要な「実習」や支援の制度について、 どのような種類があるのか詳しく教えてください。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 27・28 Q 10 「実習」の受入れに際しては、現場の従業員にどのように説明したらよいでしょうか。 また、どのような配慮が望まれますか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥29 Q 11 通勤に関して配慮すべき事項はありますか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥29 Q 12 なるべく「いい人」を採用したいのですが。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30  (処遇) Q 13 賃金はどのように設定すればよいでしょうか。 作業量が少なくても、一般社員と同じ賃金を支給すべきですか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥31 Q 14 「職務能力に見合う」賃金を考えると最低賃金の適用が難しいのですが。‥‥‥‥‥‥‥‥‥31 Q 15 雇用形態についてはどうすればよいでしょうか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32 Q 16 雇用の継続が困難になった場合、本人の行く場所はあるのでしょうか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32  (職場環境) Q 17 指導者を選任した方がよいのでしょうか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥33 Q 18 忘年会や社員旅行等、社内行事には参加させた方がよいでしょうか。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥33 Q 19 作業を指示する場合の工夫やコツがあれば教えてください。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 33・34 4 職場で起きる課題への対処事例  (昼休みの過ごし方) ●自閉症の社員が昼休みに駐車場を徘徊する。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥35 ●昼休みが終了しても、昼寝から起きない。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36 ●昼休みに、会社の作業服で外出し、スーパーの試食コーナーを食べ歩いたり、  食事処でビールを注文し、外部から知らせがあった。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36 ●テレビのチャンネルのことで周囲と摩擦がおきる。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36 ●社員食堂に備え付けてあるソースや醤油、砂糖やミルクを使いすぎる。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36  (日常生活) ●トイレの使い方(なかなか戻らない、使い方が汚い、使用後に流さない等々)について  従業員から苦情が寄せられる。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥37 ●食生活が悪いために体調を崩す。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥37  (通勤に付随する問題) ●精神的に不安定な社員が、通勤途上で毎日民家のトイレを借用する。  その家から連絡があり判明した。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥38 ●退社後、寄り道をする。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥38  (金銭管理) ●給料をすぐに使ってしまう。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥38  (対人関係) ●上司に対する言葉遣いが悪く、自社製品を「安物でぼろい」等不適切な発言がある。‥‥‥‥‥‥39 ●調子がよくだじゃれを連発するが、おしゃべりが過ぎて作業の手が止まる。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥39 ●分かっていないのに「はい」と返事する。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40 ●自閉症の社員がパニックになる。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40 5 さまざまな職場で働く知的障害者 事例1 株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)勤務 幡谷諭史さん ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 41〜43 事例2 社会福祉法人<楽友会>特別養護老人ホーム 「白楽荘」 勤務 木村智彦さん ‥‥‥‥44〜46 事例3 東邦薬品株式会社 勤務 松井徹哉さん ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47〜49 事例4  医療法人<蒼龍会>介護老人保健施設 「ひまわり」 勤務 紫山周二さん ‥‥‥‥‥ 50〜52 事例5 玉の肌石鹸株式会社 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 53〜55 事例6 有限会社 東新幸社 勤務 柴田ゆみ子さん 他 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 56〜58 6 知的障害者を雇用したときに利用可能な助成金の制度 ●特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥59 ●障害者雇用納付金制度に基づく助成金‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥60 7 施設一覧 ●地域障害者職業センター‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥62 ●各都道府県支部(高齢・障害者業務課)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥62 ●中央障害者雇用情報センター‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥63 参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥63 知的障害者の雇用の現状 知的障害者の数 知的障害者の数は、全国約74万1千人。  厚生労働省が、平成23年に実施した「知的障害児(者)基礎調査」によると、在宅の知的障害児・者は約62万2千人と推計され、これを知的障害者更正施設等の社会福祉施設に入所している知的障害児・者約11万9千人と合わせると、わが国の知的障害児・者数は約74万1千人です。  これを年齢別にみてみると、18歳未満の知的障害児が約15万9千人(21.5%)、18歳以上の知的障害者が約57万8千人(78%)となっており(年齢不詳の区分があるため、合計は100%となっていない)、このうち在宅の知的障害者の程度別内訳は、重度が38.9%、その他48.8%となっています。 〈在宅の知的障害児・者の程度別状況〉 (単位:人) 総 数 重 度 その他 不 詳 総 数 621,700 241,800 303,200 76,700 (100.0%) (38.9%) (48.8%) (12.3%) 知的障害児 151,900 54,000 90,000 7,900 (18歳未満)(100.0%) (35.5%) (59.2%) (5.2%) 知的障害者 465,900 184,800 212,200 68,900 (18歳以上)(100.0%) (39.7%) (45.5%) (14.8%) 不 詳 3,900 2,900 1,000 - (100.0%) (74.4%) (25.6%)  - 注 (  )内は構成比 (資料出所)厚生労働省「知的障害児(者)基礎調査」(平成23年) 知的障害者の雇用の実態 常時雇用されている知的障害者は約15万人。  厚生労働省の平成25年の実態調査によると、5人以上の常時雇用する労働者を雇用している民間の事業所が常時雇用する知的障害者は、全国で7万3千人と推計されています。  産業別には、これらの知的障害者の37.9%が製造業で雇用されて最も高い割合を占めており、次に卸売・小売業(30.1%)、サービス業(19.1%)となっています。 知的障害者の産業別の雇用状況 知的障害者の程度別の雇用状況 不明 18.0% 重度 36.3% 重度以外 45.7% (資料出所)厚生労働省「障害者雇用実態調査」(平成20年) 障害者雇用率制度の概要 すべての事業主に障害者の雇用義務がある 民間企業の法定雇用率は1.8% 納付金は罰金ではなく、障害者雇用事業主の経済的負担の軽減が目的 納めても雇用義務がなくなるわけではない  障害者雇用率制度は社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用の場を確保するため、常時雇用する労働者の数に対する一定割合(障害者雇用率)の数の身体障害者又は知的障害者を雇用する義務を事業主に課す制度です。平成23年現在の法定雇用率は民間企業1.8%、国・地方公共団体2.1%、特殊法人等2.1%、都道府県等教育委員会2.0%と定められています。  また、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を引上げることを目的に、上述の法定雇用率を未達成の企業のうち常時雇用する労働者*1200人を超える事業主から、納付金を徴収し、雇用率達成企業に対して調整金、報奨金を支給するとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金を支給する制度が、障害者雇用納付金制度です。  納められた納付金は、障害者を雇用する事業所の経済的不均衡を是正するため、助成金等に使用されますが、罰金ではありません。したがって、納付によって障害者の雇用義務がなくなるわけではありません。 *1 障害者雇用納付金制度の改正  平成27年4月から常時雇用する労働者が100人を超える事業主が制度の対象となりました。なお、納付金額は、不足1人につき月額50,000円ですが、施行から5年間(平成22年7月から平成27年6月まで)は、納付金が月額40,000円に減額されます。  また、平成27年4月から常時雇用する労働者数100人を超える事業主も適用対象となります。このとき、新たに制度の適用対象となった事業主は、施行から5年間(平成27年4月から平成32年3月まで)は、納付金が月額40,000円に減額されます。 特例子会社制度について 障害者雇用のために、一定条件のもと、子会社を設立すると 会社の雇用率に算入できる制度 職務・設備・制度等、 障害者に合わせた職場作りが可能  障害者の雇用義務は、原則として個々の事業主ごとに課せられますが、事業主が障害者の雇用のために特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件*2を満たしているとの厚生労働大臣の認定を受けた場合には、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、雇用率を計算できることとなっています。  なお、平成14年10月より雇用率制度のグループ適用が認められるようになりました。これは、特例子会社を保有する企業が特例子会社以外のその他の子会社(以下「関係会社」という。)を含めて障害者雇用を進める場合には、一定の要件のもとに関係会社に雇用されている労働者も特例子会社に雇用されている労働者と同様に親会社に雇用されている者とみなし、障害者義務数を計算することを可能としたものです。平成21年4月より、特例子会社がない場合であっても、企業グループ全体で雇用率を算定するグループ適用制度が創設されました。  特例子会社は、多数の障害者を集中的に受入れることで、設備が集中でき、投資効率がよいこと、別会社なので障害者雇用に適した独自の制度や管理方法が取れること、障害者の特性に応じた職域開発や職場配置ができること、外注化すべき業務を子会社が持つことで親会社は情報流出の予防になること、重度障害者の受入れも可能で雇用率の改善に効果があること、企業の社会的責任を果たすことができること等々、様々な利点があります。  特例子会社制度についての詳細は、ハローワークへお問い合わせ下さい。 *2 特例子会社の要件 @親会社の要件 特定の株式会社又は有限会社の意思決定機関(財務又は営業又は事業の方針を決定する機関、すなわち、株主総会等をいう。以下同じ)を支配していること。例えば、子会社の議決権の過半数を有すること等。 A子会社の要件 イ 親会社の事業との人的関係が緊密であること。具体的には、親会社からの役員派遣、従業員出向等人的交流が密であること。 ロ 雇用される障害者が5人以上で、かつ、全従業員中にしめる割合が20%以上であること。また、雇用される障害者のなかに重度の身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。 ハ 障害者の雇用管理を適正に行なうに足りる能力を有していること。具体的には障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等を行なっていること。 ニ その他、障害者の雇用の促進及び雇用の安定が確実に達成されると認められること。 知的障害とはどんな障害ですか? ●知的障害の定義 18歳前後までに知的な遅れがあらわれ 日常生活に制約があり、周囲の援助が必要  知的障害には様々な定義*3がありますが、おおむね「知的機能の障害*4が18歳前後*5までにあらわれ、日常生活に支障*6が生じているために、何らかの援助を必要とする状態にあるもの」といえます。具体的には「生まれつき周囲に比べて知的な遅れがあり、身辺処理(洋服を着たり顔を洗うこと等)や意志交換(言葉を理解し気持ちを表現すること等)、日常生活(お金の計算や時計の判読等)が苦手なために援助が必要な人」と言えます。 *3 アメリカ精神遅滞協会における「知的障害」の定義  アメリ力精神遅滞協会(The American Associationon Mental Retardation:AAMR)では、知的障害について「現在の機能における実質的な制約(Limitation)を受けていることをいう。知的機能が有意に平均以下であり、そのために以下の適応スキルにおいて二つ以上の制約を同時にもつものである。すなわち、コミュニケーション、セルフ・ケア、家庭生活、社会的スキル、地域資源利用、自己指南、健康と安全、実用的な読み書き・計算、余暇、仕事である。それらは18歳以前に現れる。」と定義づけており、これは知的障害の代表的な定義となっています。 *4 知的機能の障害  知的機能の障害とは、具体的には知的な面の機能が同年齢の人々に比べて低く、知能検査の知能指数(IQ=Intelligence Quotient 100を平均とする)が75〜70以下であることを言います。知能検査には年齢や障害程度に応じていくつかの種類がありますが、「物事を理解、記憶、推理する能力」「経験を役立てる学習能力」「抽象的思考能力」等を測る項目で構成されていて、総称して知能とよんでいます。また、知的障害の判定にはIQによる「知的機能」だけでなく、意思交換や移動、日常生活等の能力を含めた「社会生活上の適応能力」も重要な判断材料となります。 *5 知的機能の障害が18歳前後までにあらわれる  これは生まれつき知的な面の機能が同年齢の人々に比べて遅れていること、すなわち、事故や病気、生育環境、認知症等の外的要因や環境要因による知的機能の低下は含まないことを意味します。 *6 日常生活の支障  日常生活の支障とは例えば以下のような項目ができなかったり、苦手だったりすることを言います。 <日常生活の支障・援助が必要な事柄の例>                            項   目 身辺処理    食事をとる・排泄・衣服の着脱・整容(入浴、洗顔、洗髪、歯磨き、髭剃り、化粧、生理の処理等) 日常生活    規則正しい生活(定時の就寝起床)・時計の判読(デジタル、アナログ)・金銭計算(硬貨や紙幣の識別、合算)・金銭管理(計画的な使用)・消費経験(買物、物価の知識)・家事手伝い(調理器具の使用、湯沸し、包丁使用、配膳、食器洗浄、布団の上げ下ろし、清掃、犬の散歩)、重量物運搬・電話使用・留守番、様々な状況を判断すること等 移  動    単独外出・自転車利用・特定箇所への往復・公共交通機関の利用・地図による検索・道を尋ねる緊急時に援助を求める・遅刻時の連絡等 意志交換    初対面者との会話・挨拶・返事・質問・言語理解・意思表示・物事の理解等 読み書き・計算 文字判読・書字・家族の名前や住所の記述・計算・数を数えること等 ●知的障害の特徴  知的障害のある人には、「できること」と「できないこと」があります。「できないこと」については支援の必要がありますが、「できないこと」は固定的ではありません。指導や支援を行なうことで改善したり、できるようになることもあります。また「できないこと」は「させなくてよい」ことでもありません。  「どうせできないだろう」「この前できなかったから、今後もできるはずがない」「働く力がない」と決めつけることは望ましくありません。ここではもう少し具体的に知的障害の特徴を説明します。 すべての能力が遅れているわけではない  知的な遅れがあるといっても、すべての能力が遅れているわけではありません。  「話し言葉は理解できるが、文章の理解や表現は苦手」という人もいますし、「言葉による指示より視覚的指示の方が理解しやすい」という人もいます。  また、知的障害の有無を判断する場合、知能検査を実施しますが、ほとんどの検査には時間制限が設けられているため、ゆっくり考えれば答えられる人も、知能指数は低くなります。知能指数はその人の知的能力の目安とされていますが、すべての能力が人より遅れているのではなく、得意不得意があるということです。 ゆっくり学ぶ 理解するには時間がかかる 「わかるまで教えて欲しい」「新しい仕事に挑戦したい」という願い  知的障害者は考えたり理解する力がないのではなく、人より時間がかかるのが特徴です。繰り返し指導し伝える努力をすると効果が現れることがあります。しかもその効果は数年後に現れる場合があります。指導者は効果が現れないとすぐに諦めがちですが、過大な期待をせず、けれど諦めずに指導することが大切です。  知的障害者の雇用実態調査結果等によると、働く知的障害者から寄せられた仕事への要望として、「ほかの仕事もしてみたい」「仕事ができるように教えて欲しい」「周りの人に仕事を助けて欲しい」という回答が寄せられています。企業にとって知的障害者の作業領域を限定するのはやむを得ない面もありますが、時には難しい課題に取組ませるなど、知的障害者の可能性を高める努力をすることも重要なことです。  実際、新しい仕事に挑戦し、旋盤や裁断機を使いこなしたり、フォークリフトの運転資格を取得し、倉庫管理の事業所でキャリアを積んでいる知的障害者の事例もあるのです。 ゆっくり成長する 繰り返し練習すると、ゆっくり成長する  知的障害者の習熟の仕方は非常にゆっくりしています。  最初は仕事がほとんどできず、指導者が時間を取られるので、事業所は知的障害者の雇用を負担に感じることがあります。繰り返し指導し、練習すると仕事が少しできるようになりますが、またできなくなります。それでも繰り返し指導していると、知的障害者はゆっくり成長し、やがて平均に近づきます。「できない」と思っていた作業が周囲と遜色ないレベルになり、一部の作業は平均以上にできたりします。  知的障害者の作業能力を最初の段階で捉えると、ほとんどの場合「生産レベルに達しない」と判断することになります。しかし、指導者が諦めずに指導し、経験を積むと知的障害者は障害のない者が通常、能率が向上しなくなる時期を過ぎてなお成長を続けます。 そして、その成長が完全に止まった時が本当の知的障害者の職業能力と言えるのです。 <知的障害者の習熟曲線イメージ> (作業量) 障害のない者 知的障害者 (時間) 実際の場面から学ぶ 机上の学習は苦手だが 実際の生活・就労場面から学び・働く力を身につける  知的障害者は、目的がはっきりしない机上の勉強は苦手です。けれども、重度の障害がある人も必要に迫られると携帯電話の操作ができたり、在学中は時計の判読がままならなかった人が、就職後は就業時間や電車の時間がわかるようになったりします。在庫管理のデータをパソコンで入力したり、原付バイクや普通自動車の運転資格を取得したり、ガス溶接技能講習を修了した事例もあります。  机上の学習や経験を応用することは苦手でも、実際の生活場面や仕事で必要が生じた場合の学ぶ力はあるのです。したがって、働く力を育てる場合、実際の就労場面で、実際の作業をしながら訓練するのがもっとも効果が上がるやり方だといえます。 感受性は豊か 感情面の遅れがあるわけではなく 感受性は豊かである  知的障害のある人は感情面の遅れがあるわけではなく、感受性は豊かです。侮蔑されたり、差別されることには敏感で、親切な人か意地悪な人か、自分にとって相手の人が敵か味方かを正確に把握しています。これは口調の優しさといった表層的なものとは違うようで、日頃からよく世話をしてくれる職場の上司や同僚には厳しく注意されてもちゃんと従うといった例を聞きます。 まじめに働く まじめに 休まず 陰日向なく働く しかし例外もある  知的障害者の多くは、「挨拶や返事がよく、まじめで、遅刻欠勤が少ない、うそを言わず、さぼらない、陰日向なく、周囲の見本となる」 と評価されます。  実際、このような好意的評価が多いのは事実ですが、あまり賞賛したり強調するのはよくありません。障害のない者と同様、知的障害者も様々な人がいるわけで、一従業員として判断することが必要です。知的障害者も同年齢の若者と同様に憤ったり、喜びを感じています。  一般の従業員に起こり得る雇用管理上の問題は、知的障害者にも起き得ると考えてください。逆に言えば知的障害者であるゆえの雇用管理上の固有の問題はほとんどないという方がより適切な言い方かもしれません。 「機会の喪失」というハンディ 「どうせできないから代わりに」 親切のつもりが、積もり積もって大きなハンディに  知的障害は「考えたり、学んだり、鍛えられる機会を喪失しやすい」障害と言えます。  例えば、球拾いばかりの野球部員はいつまでたっても野球が上手くなりません。それどころか、「危ないから見ていなさい」と言われれば、自分で野球をしようと思わなくなります。「どうせできないだろう」「危ないから(親や周囲が)代わりにしよう」「(本人のことを思って)判断は周囲で行なおう」ということが重なり、知的障害者は自分で考え、体験する機会をどんどん失っていきます。知的障害者は年齢とともに「機会の喪失」が重なり同世代との差が広がるため、経験不足というハンディも大きくなるのです。 ●その他の症候群等との関係  知的障害と重複しやすい症候群や類似した特徴を持つ障害等について、その特性や対応方法を説明します。 自閉症1 言葉が少なく 固執癖・儀式的行動・徘徊がある 定型的な仕事はよくできる  自閉症は、いわゆる「自宅に引きこもる人」 や「しゃべらない人」ではありません。また自閉症は「心の病気」ではなく、脳の損傷による障害と考えられています。したがって医学的には自閉症が治ることはありません。ただし、周りの環境を自閉症の人に合わせることで、社会や職場に適応させていくことは可能です。  自閉症は「言葉によるコミュニケーションが困難で、自分の意志を伝えたり、他人の言葉を理解することが難しい」障害です。そのため対人関係を保つことが難しく、挨拶したり、目を合わすこと、場面に相応しい喜怒哀楽の表情を作ることが苦手です。独特の興味やこだわりがあり、儀式的な行動が見られる場合もあります。言葉は少なく、話しかけられると反響言語(話しかけられた言葉をそのまま繰り返すこと)があったり、独り言や空笑、多動、徘徊、常同行動(身体を前後に揺する、手を顔の前でひらひらする等)が見られる場合もあります。  一般に臨機応変の対応が求められる作業は苦手ですが、繰り返しの作業は得意で、作業量は障害のない者以上ということも少なくありません。  自閉症と診断された人のなかには知的障害を伴わない人もいますが、7割から8割の人たちに知的な遅れがあると言われています。 <知的障害と自閉症の関係> 知的障害 自閉症 (「事業主のための自閉症者雇用ガイド」より) 自閉症2 指示は言葉よりも見本を示して 一日の予定は紙に書いて張り出す 作業量を数字やグラフで表すのも効果的  自閉症の人は言語情報の処理が得意ではありません。厳しい口調や大声での指示や注意には耳をふさぐ人も多く、言葉による注意は外国語や街中の喧噪のように伝わっているのではと感じることがあります。しかし一方で、目で見て判断することは得意です。 複雑な工程の作業でも手本があるとすぐに取り組めることがあります。  自閉症の人に作業を指示する場合、言葉(聴覚)よりも、視覚に訴えることが有効です。 作業の指示は絵や写真、現物を示し、目で見てわかる工夫をすると効果があります。時間概念の理解も難しいため「昼は12時、休憩は午後3時から」と説明するよりも、日程や時間割を色分けし壁に張り出す方がよく理解できます。作業成果が見てわかるよう、作業量を数字やグラフに表すと、反復作業では驚くほどの作業量を示す場合があります。 アスペルガー症候群 一見自閉症と見えないことも 周囲の者の仕草や表情は理解しにくい 指示はグループではなく個別に 叱責ではなく説明を  アスペルガー症候群は自閉症の一タイプですが、会話ができるため一見自閉症と見えない場合も多く、社会生活を送る上で誤解を受けることが少なくありません。  この症候群の特徴は、「難しい言葉を知っているが、言葉遣いや声の大きさ、表情、イントネーションが不自然で、形式ばった話し方をし細かい点にこだわりやすい」「相手の感情を理解することが難しく、冗談や皮肉、ほのめかしが通用せず、その場の雰囲気がよめない」等のコミュニケーションの障害と、「収集癖がある」、「不確定なことに不安を抱き対応できない」等の柔軟性の乏しさがあげられます。  作業場面では作業目標、工程、日程等をあらかじめ明示すること、肯定、称賛、否定、禁止等は仕草や表情ではなくできるだけ言語化すること、グループ全体に指示するのではなく個別に指示すること、叱責は効果が少なく十分説明をしていくことが重要となります。  この症候群の人には知的障害がほとんどなく、学歴の高い人もいるため、事務作業に従事する人もいます。記憶力に優れ、特定領域の知識が豊富だったり数字に強い人もおり、長所を活かす作業が与えられると、良い結果が期待できることは言うまでもありません。 てんかん1 発作で転倒する人は少ない 薬で発作はほとんど抑制できる  てんかんは、発作が反復してあらわれる、脳の疾患で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することが原因で発作が起きると考えられています。てんかんは知的障害とは別の障害ですが、知的障害がありながら、てんかんを有している人もかなりの割合でいます。  「てんかん」と聞くと、雇用をためらう事業主がいるかもしれません。しかし、「てんかん=危険・事故」という認識は正しくありません。医学が進歩した現在では、ほとんどのてんかんは定期的に通院し、服薬を怠らない限り、発作の抑制が可能です。  てんかん発作が起きた場合でも、その程度は意識消失を伴わず周囲が気づかない小さなものから、意識を失い転倒する大発作まで様々な型があります。発作が起きやすい時間帯、体調等、特徴や傾向も人によって様々です。なかには就寝前や起床直後、疲労時に限って発作が起きる人もいます。こうした人の場合、昼間発作が起きる心配はほとんどありません。 てんかん2 服薬は絶対条件 変則勤務は望ましくない 万一発作が起きたなら まず観察・安全確保・口には何も詰めない  てんかんがある知的障害者は、てんかんがない知的障害者と雇用上の配慮が異なるわけではありません。  ただし、発作の抑制には定期的な服薬、規則正しい生活が必要なので、変則勤務体制の職場は望ましくありません。「もう何年も発作は起きていないから」と周囲が安易に「薬を止めたら」と勧めるのも厳禁です。減薬や服薬の中止は医師が判断することです。  ほとんどのてんかんは、通院や服薬を怠っている場合を除けば、発作が起きる可能性は非常に低いのですが、抑制率は100%ではありません。万一発作が起きたときの対応方法は以下のとおりです。 <発作時の周囲の対応方法> @慌てず、落ち着いて行動する。 A発作の時間を把握するため、発作の開始時間をメモする。 B発作の間は必ず付き添い、状態を観察する。 C徐々に姿勢を崩して転倒しそうになる場合は、身体を支えたり、座らせる。 D安全確保に留意する。危険箇所(高所、火気、道路、階段)が近い場合は特に注意する。 E転倒する発作の場合、身体を横向きにして寝かせる。着衣をゆるめ、できれば膝を軽く曲げさせる。 F嘔吐する場合があるので、けいれんがおさまったら、顔を横に向ける。 G呼吸を妨げないよう枕はせず、口には何も詰めない。タオル等を詰めると嘔吐物が詰まり窒息する恐れがある。 H発作がおさまってもしばらく安静にする。体力の消耗が激しい場合、その日は仕事を休ませる。 ※ほとんどの発作は数分間でおさまり、命に関わることはありません。ただし、きわめて稀に発作が続くことがあり、20分以上続く場合は医師の治療が必要です。こうした場合は迷わず救急車を呼ばなければなりません。 ダウン症候群 染色体の異常 小柄な体格 明るく朗らかな性格  ダウン症候群は染色体の異常(染色体が通常より1本多い)に起因する障害です。  幼少時にはおよそ4割の人に心臓の発育不全が認められ、医師から運動制限を課せられる人もいますが、成人を雇用する場合、特に留意しなければならないことはないと思われます。  ほとんどのダウン症候群の人には程度の差こそあれ、知的障害があると言われています。ですから、知的障害者の雇用経験が豊富な事業主の場合、ダウン症候群の人を雇用したことがある場合も多いと思います。  一般にダウン症候群の人は性格が朗らかで、周囲を明るくするユーモアに富み、周囲と仲良くできる特徴があります。 注意欠陥多動性障害 落ち着ぎがなく、注意力不足 本人に分かる「手がかり」を  注意欠陥多動性障害(ADHD=AttentionDeficit Hyperactivity Disorder)は1990年代後半になってから注目されるようになった障害です。しかし、これは新しい障害ではなく、診断名が最近普及したということです。 「知的障害」とは異なりますが、落ち着きがなく、注意力が不足し、対人関係がうまくとれないのがこの障害の特徴です。そのほか「衝動的」「規則に基づく行動ができない」「作業のバラツキがある」等の特徴もあります。  職場においては適切な行動をほめる、手順は図や表に記す、手順を忘れやすい場合、独力で作業できるよう「手がかり」や「思い出すためのメモ等」を作り活用する、作業開始、終了がわかるよう作業量や時間を提示したりブザーを嗚らす、予定の変更は極力事前に伝える、成功体験を積み重ね自信をつけさせる等が考えられます。 選択性緘黙 無理にしゃべらせようとしない 言葉以外の意思表示手段を用意する  本来話す能力をもっているにもかかわらず、特定の場面(学校や職場)で全く話さない人がいます。選択性緘黙は医学的な障害ではありませんが、コミュニケーションがとりにくいため日常生活や職業場面では様々な支障があります。「わかったかな?」と尋ねると、うなづく、首を振る、身振り等で意思表示する人もいますが、まったく代替のコミュニケーション手段が見当たらない場合もあります。  雇用場面では、無理に挨拶や返事を求めず、「できました」「わかりません」「もう一度教えてください」等の意思表示カードを用意する工夫がされています。代替のコミュニケーション手段が確保されると、「話さなければ」 という精神的プレッシャーから解放される場合もあるようです。 知的障害者雇用に関するQ&A 雇用に向けた準備 Q1 知的障害者を募集・採用するためにはどこへ行けばよいのでしょうか。 A1 ・ハローワーク(公共職業安定所) ・障害者合同面接会 ・地域障害者職業センター ・特別支援学校等  まずあげられるのは、国の職業紹介機関であるハローワーク(公共職業安定所)です。ハローワークには専門援助部門等の名称で障害者のための相談窓口が設けられており、多数の知的障害者が求職登録をしています。ハローワークでは障害者の求人の受付のほか、助成金の申請や労働条件、特例子会社の設立方法等、様々な相談に応じています。  都道府県労働局(ハローワーク)主催の障害者合同面接会に参加するのも有効です。地域により開催回数等は異なりますが、最低年1回程度は催されるので、最寄のハローワークに問い合わせてください。 合同面接会は短時間にたくさんの求職者や支援機関の職員と知り合うことができ、効率的です。  また、ハローワークと密接な連携を取りながら知的障害者の雇用支援や職場適応支援を行なっている機関として、地域障害者職業センターがあります。 地域障害者職業センターでは障害者や事業主の支援を専門とする障害者職業カウンセラーが、障害者の職務内容、職場での具体的な指導方法、職場定着に関する問題等の相談や支援を行なっています。知的障害者の職場適応に不安を抱えている場合や、現に知的障害者の職場適応に問題が生じている場合は、障害者職業カウンセラーが策定した支援計画に基づいて、ジョブコーチを事業所に派遣し、障害者の職場適応を直接指導しています(ジョブコーチによる支援事業)。  そのほか、機構の中央障害者雇用情報センター*7でも事業所の相談に応じています。  さらに、特別支援学校等から採用を行なう企業もあります。福祉施設等に通う知的障害者の中には、就労する力を持ちながら、様々な事情で企業就労を果たせずにいる人がいます。直接こうした学校や、施設を訪問する方法もありますが、多くの場合、ハローワークや地域障害者職業センター*8はこれらの機関とも関係があるので、まずはハローワークや地域障害者職業センターに相談してみるとよいでしょう。 *7 中央障害者雇用情報センター   事業主等を対象として次のサービスを提供しています。 @ 障害者雇用エキスパートによる、障害者の雇用の促進・職域拡大・職場定着のための相談・援助 A 障害者が従事する作業を容易にする就労支援機器の導入に関する相談及び貸出し B 事業所における障害者の職域拡大や職場定着等の取組みの好事例を紹介したビデオ及びDVDの貸出し <募集に際しての相談機関> 企業 高齢・障害・求職者雇用支援機構 中央障害者雇用情報センター (障害者雇用エキスパート) 地域障害者職業センター (障害者職業カウンセラー 特別支援学校等 (就労移行支援事業所・就労継続支援事業所) ハローワーク (障害者合同面接会) *8 地域障害者職業センター  地域障害者職業センターは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、「機構」という。)が運営する組織で、全国の都道府県に設置されており、就職を希望する障害者や障害者を雇用する(しようとする)事業主に対して、ハローワーク(公共職業安定所)やその他の支援機関と連携をしながらサービスを行なっています。  相談には障害者や事業主の支援を専門とする障害者職業カウンセラーがあたり、カウンセラーの策定した支援計画等に基づき、ジョブコーチ等の専門スタッフが支援を行なっています。  その他地域障害者職業センター内の高齢・障害者雇用支援センターでは、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請等の受付等も行っています。  主な業務(サービス)内容は以下のとおりです。 <地域障害者職業センターの業務(サービス)内容の一部> 障害者へのサービス 職業評価・職業指導 障害者職業カウンセラーが職業能力等を評価し、職業適性、就職するために必要な事項等を明らかにしながら、就職あるいは職場に適応するための職業リハビリテーション計画を策定します。 知的障害者および重度知的障害者判定 障害者雇用率制度などの雇用対策上の知的障害者・重度知的障害者の判定を行います。(Q5.6参照) 職業準備支援 @センター内での作業支援 センター内での作業を通じて、就職等を目指すための基本的な労働習慣の体得を図るための支援を行います。(早期就業支援、ジョブコーチ等移行支援) A職業準備講習カリキュラム 職業講話、事業所見学、事務所での作業体験等を通じて、職業に関する知識を習得していただくための支援を行います。 事業主へのサービス ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援事業 障害者の就職及び職場適応をすすめるために、ジョブコーチを職場に派遣し、障害者に対する直接的・専門的支援とあわせて、企業の担当者や職場の従業員に対して、障害を理解し配慮するための援助、必要に応じて仕事の内容や職場環境の改善等の助言などを行ないます。 雇用管理に関する助言および援助 受入れの相談、職場適応に関する相談・援助、職場配置・施設整備や作業環境の改善等の相談に応じています。 Q2 知的障害者を雇用するための基本的な流れを教えてください。 A2 情報収集→社内コンセンサス→雇用計画の策定→ 職務の設計→募集・選考(面接・実習)→採用・職場定着  これから知的障害者を雇用しようとする事業所における、一般的な流れを以下に示します。ただし、これらは絶対条件ではありません。雇用のための準備が整ったら、まずは知的障害者を採用してみてください。そして問題や課題が生じた時点で対処方法をハローワークや地域障害者職業センター等の就労支援機関に相談すればよいと思います。 これらの就労支援機関では、様々な支援ノウハウを蓄積しており、役に立つことは多いはずです。 <知的障害者を雇用するまでの大まかな流れ> 情報収集  ハローワーク・機構の中央障害者雇用情報センター・地域障)害者職業センター等での相談、先行企業の見学、都道府県労働局等主催の研修会・講習会出席 社内コンセンサス形成  社内プロジェクトの立ち上げ 企業トップ・現場社員・労働組合等が障害者雇用の理念と意義、必要性の共通認識を持つ 雇用計画策定  募集方法、雇用予定数、配置部署、社員研修、採用条件、処遇の決定 職務の設計  職務の選定(どんな仕事を任せるのか)、任せる職務がない場合は職務の再構築、担当者の選任、業務負担の標準化 募集活動  ハローワークへの求人登録、都道府県労働局主催の障害者合同面接会参加、地域障害者職業センターへの相談、特別支援学校・施設等の訪問 選考  面接・各種実習制度の活用、ジョブコーチの活用 採用・職場定着  雇用計画の見直し、配属先と人事部門の連携、役割の分担、ジョブコーチの継続活用、助成金等の申請、障害者への理解を深める職場内研修、福利厚生、社内レクリエーションへの参加促進、障害者の能力向上のための方策検討 Q3 事務系の職場で、知的障害者にさせる適当な仕事がありません。 A3 各部署で簡易な仕事を出しあい、仕事や配慮を分担する。  仕事を部署毎に見直し、知的障害者にできそうな簡易作業を列挙してみてはどうでしょうか。一般に事務系の職場の場合、一つの部署で一日の作業を確保することは困難ですが、一般の社員が業務の合間に行なっていた「誰にでもできる簡単な作業」はどの部署にも一日一時間程度はあるはずです。 そこで、他の部署と連携し、仕事のある間だけ知的障害者(グループ)が各部署を巡回するという職務創出の仕方もあります。なお、その際にはジョブコーチ(P19の*8やQ9参照)を活用するとよいと思います。  従来、一般の社員が行なっていた簡易な作業を、知的障害者の職務として再構築するこの方法は、知的障害者の職務創出という目的に加え、一般社員がより付加価値の高い作業に取組めるという利点もあります。また、知的障害者が社内を巡回するため、事業所全体が、自然に、知的障害者への理解を深めることにもつながります。 <職務の見直しの例>(知的障害者が対応可能な作業一覧) 部   署  職務内容 総務関係部署 郵便物仕分け、部署毎の配送。社外郵便物投函・郵便局届け。タイムカード、出勤簿の回収。朝刊・夕刊を各部署へ配送。役員へのお茶だし。役員室、応接室等の机、灰皿拭き。生花の水やり。領収書やリサイクルペーパーの仕分け。名刺の整理。コピー機・プリンターの用紙補充。郵便計器操作。再利用封筒やメモ用紙の作成。湯飲み・ポット等の洗浄。給茶機の茶葉、紙コップ補充、清掃。封筒等への押印。シュレッダーかけ。ダイレクトメールの封入、封緘。 業務・広報関係部署  簡単な伝票入力。消耗品の整理・補充。不足備品のチェック。倉庫の整理。 経理関係部署  請求資料の準備、発送。データー入力。資料の丁合。名刺の作成・裁断。フロッピーのコピー。会議室の準備(机の配置・資料の配付等)。定型的なパソコン入力。 <ある事業所での知的暉害者の日課> (知的障害者は数人でグループを作りジョブコーチ(*8やQ9参照)が付く) 9:00   10:00   11:00   12:00   13:00   14:00   15:00   16:00   17:00 総務部 朝刊配布・役員室清掃・お茶だし・コピー機用紙補充  昼休み  郵便物仕分・各部署へ配送・DM封入封緘  夕刊配布・リサイクルペーパー仕分・シュレッダーかけ・給茶機清掃・社外郵便物投函 経理部  消耗品補充・伝票入力・倉庫整理 広報部  請求資料の発送準備・定型的データ入力 Q4  知的障害者の雇用に対する社内のコンセンサスが取れません。 A4 企業のトップと現場 双方の理解を得る。 たとえば、障害者雇用に関する社内プロジェクトを立ち上げる。 まずは先行企業の見学を。  社内のコンセンサスを形成するためには、障害者雇用の理念と企業の社会的責任(企業は障害者雇用の義務が法律*9によって定められ、民間企業の場合、雇用率1.8%が課せられていること、社会連帯・ノーマライゼーションの観点からも障害者雇用が重要であること)等について、「企業トップ」と「現場」 の双方が、理解し認識を深めることが大切です。加えて、法定雇用率達成のためには身体障害者だけではなく知的障害者の雇用を検討することが、必要かつ有効であること等を社内で共有するとよいでしょう。  近年は障害者雇用に関し社内プロジェクトを立ち上げる企業が増加しています。この背景には企業を取り巻く社会情勢の変化がありますが、障害者雇用に真剣に取組む企業が増加していることも事実です。  採用計画の策定にあたっては、すでに障害者雇用の実績がある先行企業を見学すると大いに参考になるはずです。ハローワーク(公共職業安定所)に相談に行けば、こうした先行企業の情報を含め、様々な情報提供を受けることができます。また、地域障害者職業センターや中央障害者雇用情報センター(P18の*7参照)へ相談に行くのもよいでしょう。 *9 障害者の雇用義務を定めた法律について  法律の正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、この法律においては、障害者の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、  ・障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介等の措置を講じ、その職業生活における自立を図る職業リハビリテーションの推進  ・身体障害者又は知的障害者の雇用を法的義務とした障害者雇用率制度の運営  ・身体障害者、知的障害者及び精神障害者の雇用を経済的側面から支える障害者雇用納付金制度等の運営を中心とする施策を講じることとされています。 Q5 同じような能力の人を二人同時に雇いましたが、一人は障害者でないといわれました。二人の職業能力は同程度で、職場における配慮の度合いも変わらないのになぜでしょうか。雇用支援の対象となる知的障害者の確認方法を教えてください。 A5 知的障害者の確認は、原則として療育手帳の有無で判断する。  知的障害があることと、雇用支援の対象となる知的障害者であることは同義ではありません。したがって事業所が雇用率の算定や各種支援制度を活用(助成金の申請や報奨金を受給)する場合には、雇用支援の対象となる知的障害者であるか確認をしなければなりません。  知的障害者の一般的な確認は、都道府県又は政令指定都市が発行する、療育手帳*10で行います。  ただし、療育手帳制度は本人又は保護者等からの申請に基づくことを原則としており、支援制度の必要を感じない人や障害者として位置づけられたくない人などは申請を行なわない場合があります。手帳を持っていない場合、別の確認方法として児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医又は地域障害者職業センターの判定*11に依ることもできます。 *10 療育手帳  療育手帳制度は知的障害者への税の減免、各種の手当や福祉サービス等を受けやすくするため、昭和48年度から実施されているものです。  手帳の名称は実施主体である自治体によって多少異なり、ほとんどの自治体は「療育手帳」と呼んでいますが、青森県や名古屋市では「愛護手帳」、埼玉県では「みどりの手帳」、東京都や横浜市では「愛の手帳」と呼んでいます。 *11 地域障害者職業センターにおける知的障害者の判定  地域障害者職業センターでは知的障害者の判定を行っています。  ただしこの判定は、障害者雇用率制度等の雇用対策並びに国税及び地方税上の障害者雇用に係る優遇措置についてのみ有効です。 Q6 重度知的障害者はダブルカウントと聞きました。詳しく教えてください。 A6 重度知的障害者を雇用すると、「1人をもって2人」と算定するのがいわゆるダブルカウント。 療育手帳の「A」は重度。「B」のなかにも重度該当者がおり、地域障害者職業センターの判定で確認する。  雇用率の算定に当たって、重度の身体障害者を雇用した場合、1人をもって2人を雇用したこととして取り扱います。これをいわゆるダブルカウントと呼んでいますが、知的障害者についても重度の知的障害者を雇用した場合、身体障害者と同様にダブルカウントします。  さて重度知的障害者の確認はまず療育手帳の程度*12が「A」(東京都の場合1度、2度)かどうかで判断します。表記の方法は各自治体で少しずつ異なりますが「A」という記載があれば重度と判断できます。  なお「B」(東京都の場合3度、4度)と判定された人のなかにも職業的に重度と判定される人がいますが、その確認は地域障害者職業センター*13、その他の知的障害者判定機関*14(児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医)における、「重度」判定に依ることができます。 *12 障害程度の区分  障害程度を示す区分は自治体によって表記方法が異なり、細分化した区分を設けていますが、概ねA(東京都の場合1度、2度)が「重度」、B(東京都の場合3度、4度)が「その他=重度以外」となっています。 *13 地域障害者職業センターにおける重度知的障害者の判定  地域障害者職業センターでは重度知的障害者の判定を行なっています。これは、療育手帳、特別児童扶養手当、年金制度等における重度又は1級の判定とは異なり、障害者雇用率制度及び障害者雇用納付金制度等の雇用対策上(国税及び地方税上の障害者雇用に係る優遇措置を含む)の重度知的障害者であるか否かを判定するものです。 *14 地域障害者職業センター以外の知的障害者判定機関での重度知的障害者の確認  以下に該当する人は重度知的障害者です。  児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定書を所持している人であってその程度の判定が、「療育手帳における重度相当」「年金制度における障害の程度が1級(知的障害によるものに限る)相当」「特別児童扶養手当等の支給に関する法律における障害の程度(知的障害によるものに限る)が1級または特別児童(知的障害によるものに限る)もしくは特別障害者(知的障害によるものに限る)相当」または「所得税法または地方税法における特別障害者(知的障害によるものに限る)相当」とされている人。 募集・採用 Q7 面接で確認すべきことはありますか。「障害」のことを直接尋ねてもかまいませんか。適切な採否の判断基準はありますか。 A7 通勤方法、安全の確保、作業意欲等を確認 採否は面接だけでなく、見極め期間である「実習」を通して判断する。  面接では就労意欲、通勤方法、安全規則等が遵守できるかどうかなどを確認します。もちろん障害について尋ねてもかまいません。 ただし、知的障害者の中には言葉で説明することが苦手な人もいますので、面接で確認できることには限界があります。  また当然のことですが、本人が「できる」 ということと、事業所の判断が同じとは限りません。反対に「自信がなさそう」でも、実際には確実に作業ができる人もいます。本人や保護者の言葉や態度、面接の印象だけで「大丈夫そうだ」「無理だろう」と判断してはいけません。  知的障害者が作業に慣れるのには時間がかかります。作業遂行力、適性、意欲の有無を判断するためには一定の見極め期間である「実習」が必要です。どちらか一方(あるいは双方)が「一目惚れ」し、勢いで「一緒」 になったものの、互いに「こんなはずではなかった」という間違いをなくすためには、見極め期間は是非とも必要です。  「実習」をすると多くの発見があります。 障害者に関する発見はもちろんですが、「我が社にこんな面倒見のよい社員がいたのか」「職務を見直したら、障害のない者も働きやすくなった」等、事業所側の新たな発見も多いようです。また、ジョブコーチの支援制度(P19の*8やQ9参照)を利用すれば直接的で専門的な支援を受けることが可能です。  働くために求められる能力は作業意欲、協調性、注意力、数処理、作業遂行力、持続性など多様です。しかし、すべての項目が必要なわけではないはずです。「実習」を受入れることは、「数えられなくても構わないが、基本的体力は絶対条件」等、自社の求人像を具体化することにつながります。また、知的障害者の「できないこと」は職務遂行上の絶対条件か再度検討してみてください。 たとえば数が数えられない場合、数を数えなくてもできる作業はないでしょうか。できることを重視するか、できないことを重視するかで判断は大きく変わってきます。 Q8 どんな人であれば「実習」の受け入れが可能ですか。 A8 身の回りのことができる。一人で通勤ができる。 職場内での安全を自ら確保できる。基礎的体力がある。  知的障害者の選考に際しては「実習」が大切だと説明しましたが、希望者全員を「実習生」として受入れるわけにはいきません。そこで、事前に以下の項目を確認してください。これらが難しい場合、一般企業での受け入れには相当の困難が伴うと予想されます。 <実習を受入れる前提条件> 項 目        前提条件 身辺処理(身の回り)の自立  食事やトイレ、制服への着替え等が一人でできる。 単独での通勤  徒歩、自転車、電車・バス等を利用し一人で通勤できる。練習が必要な人もいるので数週間、保護者やジョブコーチが付き添うのは問題ない。ただし、就職後ずっと事業所が送迎するわけにはいかないので、自力通勤は重要なポイント。 安全確保・禁止事項の遵守  触れてはいけない機械、立入り禁止区域、安全な服装等が遵守できること。 最低限の意思表示・報告  トラブル時の報告、作業指示が理解できたか意思表示ができること。 基礎的体力があること  毎日出勤し、勤務時間内は働き続ける体力があること。 Q9 知的障害者が職場に定着するために必要な「実習」や支援の制度について、どのような種類があるのか詳しく教えてください。 A9 トライアル雇用 ジョブコーチ etc.  ハローワークや地域障害者職業センター、特別支援学校等では期間や手当、設置目的こそ異なりますが、障害者の職場適応を見極めるための「実習」や支援の制度*15を設けています。これらは、それぞれ趣旨や目的が異なるため、厳密には「実習」ではなく、「訓練」 や「試行雇用」、「教育」と位置付けられていますが、障害者、事業所双方にとって「お見合い」のあとの「おつきあいの期間」であることに変わりはないので一括して紹介します。 <様々な「実習」や支援の制度について> 平成23年4月1日現在 名称  実習終了後の雇用予約  事業主への謝金等  障害者への手当等  期 間 @職場適応訓練  あり  委託費(訓練生一人につき(24,000円/月)重度障害者の場合は(25,000円/月))  訓練手当   6月(中小企業及び重度障害者は12月) Aトライアル雇用  なし  奨励金(40,000円/月)  各事業所基準による給与の支給  〜3月                      協力謝金 B職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業  なし  協力謝金(50,000円/月雇用前の支援に限る)  なし  1月〜7月 Cその他(特別支援学校の実習等)  なし  なし  なし  1週間〜4週間程度 *トライアル雇用はジョブコーチの支援を併せて受けることが可能。 *15 様々な「実習」や支援の制度について @職場適応訓練 実施主体:都道府県、ハローワーク  都道府県知事が事業主に委託し、身体障害者、知的障害者、精神障害者等の能力に適した作業について6ヶ月以内(中小企業及び重度障害者の場合は1年以内)の実施訓練を行ない、それによって職場の環境に適応することを容易にし、訓練終了後は事業所に引き続き雇用してもらおうという制度です。 Aトライアル雇用(障害者試行雇用事業)実施主体:ハローワーク  障害者を試行雇用(トライアル雇用)の形で受入れていただき、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業です。トライアル雇用の期間は原則3ヶ月間ですが、トライアル雇用期間を途中で中断させて、常用雇用に移行する場合はこの限りではありません。3ヶ月の期間を経過し常用雇用に至らなかった場合は、契約期間満了による終了となります。ただし、契約期間中に事業主の都合で中止した場合は解雇の扱いとなります。  トライアル雇用期間中の労働条件は、労働基準法等の労働関係法令に基づき、事業主と対象者との間で雇用契約を結びます。トライアル雇用期間中は、通常の労働者として要件を満たす場合、労働保険等が適用されますので必要な手続きを行ないます。  この事業は、ジョブコーチ等の地域障害者職業センター等が実施する各種職業リハビリテーションサービスをあわせて利用することができます。 B職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業 実施主体:地域障害者職業センター  障害者の就職及び職場適応をすすめるために、ジョブコーチを職場に派遣し、障害者に対する直接的・専門的支援とあわせて、企業の担当者や職場の従業員に対して、障害を理解し配慮するための援助、必要に応じて仕事の内容や職場環境の改善等の助言などを行ないます。支援終了後も必要に応じてフォーローアップを行ないます。  ジョブコーチは雇用前後を通じてあらゆる機会に利用できます。ジョブコーチによる支援は、障害者と事業主に支援を行ないながら上司や同僚に適切な支援方法を伝え、支援終了後は事業主による支援が継続されるよう、支援主体を事業所の担当者に徐々に移行していくものです。 Cその他(特別支援学校の実習等) 実施主体:特別支援学校  知的障害特別支援学校では、学校教育のなかで培った作業学習や職業教育等の成果が、実際の職場でどの程度活かせるかを把握する目的から、現場実習を実施しています。在学中から実際の企業での職業体験をさせることで、本人、事業所ともに適性を見極めるよい機会となります。 Q10 「実習」の受入れに際しては、現場の従業員にどのように説明したらよいでしょうか。また、どのような配慮が望まれますか。 A10 「できないこと」はフォロ一を。 仕事には本気で期待し 不十分な場合、指導を。 役割と責任を与え 子供扱いしない。  作業を教える場合の心がまえは「焦らず、諦めず、怒らず」です。また従業員に周知することは、「できないこと」のフォローは必要だが、一から十まで世話する必要はないこと。「できること」を増やすため練習の機会を与えること。「できること」については役割と責任を与え、本気で期待すること。結果が不十分であれば遠慮なく注意し、指導すること。本人を呼ぶときには「○○ちゃん」 ではなく「○○さん」と呼び、子供扱いせずに本人にもその自覚を促すこと、等々です。 Q11 通勤に関して配慮すべき事項はありますか。 A11 連絡先を把握し、トラブル時の連絡は徹底させる。  一般企業で働く(あるいは働こうとする)知的障害者は、基本的に一人での通勤が可能と考えて間違いありません。ただし、知的障害者は慣れるのに時間がかかるので、人によっては通勤の練習が必要です。「実習」開始当初の数週間、家族やジョブコーチが付き添うことは認めてください。また、交通機関が遅れた時に通勤途上から連絡できるよう事業所の逮絡先を教えておいてください。近年は携帯電話も普及したので、事業所側も本人の連絡先を把握しておくとよいと思います。連絡体制を整えているにもかかわらず、無断欠勤や遅刻をする場合は、厳しく注意しなければなりません。 Q12 なるべく「いい人」を採用したいのですが。 A12 「いい人」を具体化する。雇用上の配慮はどんな人にも必要。  どのような人材を「いい人」と考えるかは企業によって異なります。  求めているのは「仕事ができる人」でしょうか、それとも「人柄や性格がよく周囲と円満にできる人」でしょうか。あるいは「障害が軽い人」でしょうか。  しかし、障害程度と職業能力は必ずしも比例しません。障害程度が軽度であれば仕事ができ、重度であれば仕事ができないわけではありません。むしろ軽度の人の方が重度の人より雇用管理が難しい場合もあります。これは身体障害者も同様で、実際、障害者雇用の経験が豊富な事業主ならば一様に頷かれる事実です。  ですからまずは「いい人」を具体化する必要があります。自社が求める求人像が具体的であればあるほど、相応しい人材は見つかるはずです。  ただし、既存の業務に対応でき、一般社員と全く同様の業務をこなし、「配慮を要しない人」となると難しいかもしれません。障害者の雇用を考える場合、雇用上の配慮は多少なりとも必要です。まったく配慮を必要としない人を求めるのであれば、障害者の雇用はなかなか進みません。 処遇 Q13 賃金はどのように設定すればよいでしょうか。作業量が少なくても、一般社員と同じ賃金を支給すべきですか。 A13 基本は「職務能力に見合う賃金」の支給。同一賃金にこだわる必要はない。  賃金の基本的な考え方は、能力、実績に応じた支給です。もちろん障害のない者と遜色なく働いているのに賃金が不当に低い場合は問題です。けれども本人の職務能力に比して賃金が高い場合、周囲との関係を悪化させることも多く、望ましくありません。高い賃金は知的障害者に「この程度の働き方で十分」という誤解を与え、周囲にも「作業量が少ないのに賃金は同じだ」と不満がたまり、双方に不幸なこととなります。一般社員と同様に「働きぶりに見合う賃金」を支給することが大切です。  また、昇給の問題もあります。入社後何年経過しても賃金が変わらないよりも、能力に応じた賃金を支給し、習熟度や能率向上に合わせて、時給が10円でも昇給する方が、本人には励みになります。 Q14 「職務能力に見合う」賃金を考えると最低賃金の適用が難しいのですが。 A14 基本は最低賃金の遵守。しかし困難な場合減額特例許可の申請を。  最低賃金については遵守して下さい。しかし、最低賃金を支払うだけの働きが現状では期待できない場合は、最寄りの労働基準監督署経由で都道府県の労働局長に最低賃金の減額特例許可の申請をすることができます。  最低賃金の減額特例許可の申請は、障害があるという理由だけで認められるものではありません。また、許可には有効期間が定められています。一定期間内に作業能力の向上が見られず、許可を延長したい場合、有効期間内に再度許可申請をする必要があります。 Q15 雇用形態についてはどうすればよいでしょうか。 A15 職務内容や勤務時間などを踏まえ決定。 ただし、解雇する場合 ハローワークへの届出が必要。  事業所で働く知的障害者の雇用形態は正社員ばかりではなく嘱託やパート等の形態で雇用される人もいます。職務内容やその責任の範囲、勤務時間などの労働条件、本人の希望を踏まえ、雇用形態を決定します。  ただし、知的障害者に限らず障害者を解雇する場合、事業主は管轄のハローワークに届出をしなければなりません。これは手厚い支援を必要とする障害者の早期再就職を図る理由から行なわれるものです。なお、労働者の責めに帰すべき理由により解雇する場合及び天災事変その他やむを得ない理由のために事業の継続が不可能となったことにより解雇する場合は、届け出をする必要はありません。 Q16 雇用の継続が困難になった場合、本人の行く場所はあるのでしょうか。 A16 ハローワークや地域障害者職業センターが再就職を支援 就労移行支援事業所等への通所。しかし、在宅という人も。  離職を余儀なくされた知的障害者の進路は大きく分けて三つあります。  一つは再就職です。ハローワークや地域障害者職業センターでは、離職原因や課題等を分析し、改善方策を検討するとともに、ジョブコーチや職業準備性を高めるための職業準備支援事業、トライアル雇用等の職業リハビリテーションサービスを用意し、知的障害者の再就職の支援を行なっています。  二つ目の進路は就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、福祉施設等への通所(入所)です。これらの施設には通所(入所)自体が目的の人もいますが、将来再就職したいと考えている人も通って(あるいは入所して)います。  三つ目の進路は、通う場所がないために仕方なく在宅状態というものです。  それぞれの支援機関では、できるだけ円滑に次の段階への移行ができるよう、他機関と連携をとりつつ努力を重ねています。知的障害者が離職せざるを得ない場合、早めに支援機関に相談してみてください。 職場環境 Q17 指導者を選任した方がよいのでしょうか。 A17 指示命令系統は統一した方がよい。 ただし、特定の人だけが関わるのは望ましくない。  できるだけ指示を出す人は決めた方がよいと思います。様々な人から異なる指示が出ると混乱のもとになります。しかし、忙しい時に指示が飛び交うのは仕方ないことで、あまりこだわる必要はありません。むしろ、 ある特定の人しか、知的障害者に関わらない方が問題です。ある特定の人にすべてを任せると、その人の負担が増大し、異動時等には困ることになります。ですから担当者はとりあえず決める程度でよいと思います。 Q18 忘年会や社員旅行等、社内行事には参加させた方がよいでしょうか。 A18 本人が希望すれば是非参加させてください。  本人が望まない場合に無理に勧める必要はありませんが、社内行事にはできるだけ参加を呼びかけてください。社員の一員だ という意識を持つことは、今後の本人の働き方に良い影響を与えるはずです。 Q19 作業を指示する場合の工夫やコツがあれば教えてください。 A19 「やってみせる」「させてみる」「ほめる」が基本 「数える」「計る」「分類する」 難しければ代替手段の開発を作業工程の細分化単純化  人を働かせるためには先人の言葉のように「やってみせ、言ってきかせて、させてみせ、ほめてやらねば」なりません。これは知的障害者も同じです。まずは見本を示し、やってみせて、次に繰り返し練習させます。ほめる ことも忘れてはなりません。数を数えることが苦手な場合、数えなくてもよい作業環境を工夫します。分類については「手がかり」 を作ります。複数工程の作業も細分化すると、対応が可能です。 <対応方法の一例> 苦手なこと  対応方法・工夫の例 数を数える  部品をすべての枠に入れれば一定数になる箱等の目印を用意します。 10までしか数えられない者が、40数えなければならない場合、10個入りの箱を4個用意し、「箱がいっぱいになったらおしまい」等と指示します。 時間の理解  自動タイマーの利用 「ブザーが嗚ったらおしまい」 一日の作業予定、休憩時間等を帯グラフにして表示。 分類・収納場所  多種類の商品を区別するため、文字情報に加え「手がかり」となる色、記号をつけ、置き場所を区分けする。類似部品は分けて保管。難しい倉庫の配送作業も品物や配送場所を「手がかり」で区分すると対応できる。 複数の工程  作業工程が複数ある場合、作業を細分化し、一工程か二工程のみを担当させる。 A19 指示は具体的に、知的障害者が理解できる言葉やサインを見つける。  作業の指示を出す際には具体的に行い、知的障害者に理解できる言葉やサインに翻訳することが大切です。「適当なところで」「いい頃合いで」「大体のところで」といった曖昧な指示は避けなければなりません。知的障害者が上手に仕事ができない場合、作業の指示や情報が正確に伝わっていないことが考えられます。知的障害者の理解できる、わかりやすい言葉を探り当て、指導者が伝えると、作業能率が向上します。  たとえば、ある社員食堂で働く知的障害者の職務の一つは「うどんを60グラム、そばを50グラム計測して皿に盛り、10皿毎に並べる、お客がきたら応対を優先する」というものです。うどんとそばの麺を種類毎に計量し、10皿単位でまとめること、お客の応対は最優先する、これらは重度の知的障害者には相当難しい作業です。しかし、計量秤の60グラムの位置に赤い線、50グラムには青い線を入れ、10皿並べた位置に箱を置き「白い麺は赤い線、茶色の麺は青い線、箱にぶつかったら次の列。お客さんが呼んだら「はい』と返事をすること」と指示を工夫すると作業がこなせたりするのです。 職場で起きる課題への対処事例  知的障害者を雇用する際に起こり得る課題や対処方法、事業所での取組み等を紹介します。  当然のことですが、これらの課題や問題がすべての事業所に起きるわけではありません。何も問題がなく円滑に職場定着を果たしている事例は多くあります。  また、ある事業所で有効な対処方法も、他の事業所で必ず効果があるとは限りません。ですからここで紹介するのは対処の一例であることをご理解ください。  結局のところ、雇用管理上の配慮や工夫は、知的障害者ゆえに必要なのではなく、一般従業員にも求められるものであり、誰にでも起こり得る課題と考えた方がよいと思います。事業所はその時々の課題に応じて、支援機関(ハローワークや地域障害者職業センター等)と相談しながら、最善と思われる方策を検討し対処することが望まれます。 昼休みの過ごし方 ●自閉症の社員が昼休みに駐車場を徘徊する。 周囲に迷惑がかかる行為か見極めて 周囲が許容するか 代わりとなる行動を考える  自閉症の人には独特のこだわりがあるので、駐車してある自動車の車種やナンバー、走行メーター等を確認しているのかもしれません。  会社側の対応には二通りあります。一つは一定の行動制限を設けながらも徘徊を認めること、もう一つは駐車場徘徊の全面禁止です。  昼休みに駐車場を徘徊し運転席をのぞく行為は、傍目には奇異に映りますが、いたずらが目的ではありません。そこで「お客様用駐車場はうろつかない」「社員専用駐車場では車に触れない」等一定の行動制限や約束を交わした上で、徘徊自体は容認します。周囲には「車が好きで車種やメーターを見ているが、車には触れない約束である」と説明します。これは本人の行動特性をある程度受入れ、周囲が許容する対応です。  一方、駐車場徘徊を全面的に禁止する方法もあります。本人とは「昼休みに駐車場へ行くと迷惑だから行かない」と約束を交わします。ただし、この場合本人は他にこだわりを見つけ徘徊します。駐車場を含めた立ち入り禁止区域、触れてはいけない機器類を明示し、安全確保を確実に行います。  手持ちぶさただったり、周囲から話しかけられるのが苦手なので、徘徊する場合もあります。その場合、一人で雑誌を読む、テレビを見る等、本人の好きな行動がとれる場所や道具、環境を整えることで、徘徊がなくなることがあります。 ●昼休みが終了しても、昼寝から起きない。 初めは起こしてみる 目覚まし時計を準備し 繰り返す場合は昼寝を控える  本人の自覚を促すしかありませんが、初めは周囲の人が時間になったら起こします。また、昼寝をする際は目覚まし時計を準備するよう指導します。しかし、改善が見られない場合、昼寝を控えるしかありません。  会社で昼寝が必要なのは、夜更かし等、退社後の生活に問題があることが多く、家族との相談が必要です。 ●昼休みに、会社の作業服で外出し、スーパーの試食コーナーを食べ歩いたり、食事処でビールを注文し、外部から知らせがあった。 社員として相応しくない行動を書き出し 本人と確認 してはいけないことを理解させる 休憩時間は外出を控える  これらは極端な事例ですが、「してはいけないこと」 がわかっていない場合もあります。社員として相応しくない行動を一つずつ書き出し、本人と確認します。昼食は弁当を持参させるか、出勤途上で購入すること、社内食堂があればそちらを利用することとし、外出を控えなければなりません。 ●テレビのチャンネルのことで周囲と摩擦がおきる。 「見たいテレビが見られるとは限らない」ことを説明し、代償手段を提案  「会社では見たい番組が見られるとは限らない、チャンネルは黙って勝手に変えない」等を確認します。 またどうしても見たいテレビがあれば、自宅でビデオやDVDに録画し、後で見るよう代償手段を提案します。このほか、本人が休憩時に落ち着ける居場所を確保することも、トラブルの減少に効果があります。 ●社員食堂に備え付けてあるソースや醤油、砂糖やミルクを使いすぎる。 本人への働きかけとともに周囲の環境を調整する  本人への指導はもちろん必要ですが、行動の改善には時間がかかります。そこで問題となる状態を軽減するために、周囲の環境を調整します。調味料を配置しないのも一つの方法ですがこれでは周囲の 人が不便です。そこで、ソースや醤油、砂糖やミルク等を小さい容器に移し替え、本人の周りに少量しか置かないようにします。調味料を小分けにして分散配置することで周囲の人も利用できるようになります。 日常生活 ●トイレの使い方(なかなか戻らない、使い方が汚い、使用後に流さない等々)について従業員から苦情が寄せられる。 なるべくその場で注意する 家族にも協力を依頼する チェック表を活用してみる  本来、就職前に身につけるべき事柄ですが、できるだけその場で本人に注意することが大切です。また、家族に協力を依頼し、家庭でも気をつけてもらうようにします。改善が見られない場合、「@トイレが終わったらすぐ作業に戻る A汚さない B汚したら掃除する @〜B できた/できない」等のチェック表を作成し、本人に確認させるのも一つの方法です。 ●食生活が悪いために体調を崩す。 家族に協力を求める 期待できない場合、生活支援機関に相談を  仕事上の問題はないのに、日常生活の基盤が弱く、職場に定着できない残念な例があります。妙案はありませんが、まずは家庭に協力と理解を求めます。  しかし、こうした事例の場合、家庭の支援が期待できないことも多いので、就業・生活支援センター、グループホーム、福祉施設等に相談し協力を仰ぐことが大切です。 通勤に付随する問題 ●精神的に不安定な社員が、通勤途上で毎日民家のトイレを借用する。その家から連絡があり判明した。 医師から「大丈夫だよ」と励ましてもらうと効果がある場合も トイレに関心が向かない工夫を  通勤途上に公共のトイレはないのでしょうか。あれば、当然公共のトイレを利用するよう指導します。また、通勤途上で尿意や便意を催すのは精神的な側面が強いと思われますので、本人が信頼する精神科の医師がいる場合、医師から「会社へいく途中ではトイレに行かなくても大丈夫だよ」と励ましてもらうと効果がある場合もあります。また、通勤途上では音楽を聴く、雑誌を読む等、「トイレへの関心」をそらす工夫を提案してみてはどうでしょうか。 ●退社後、寄り道をする。 門限、連絡等の約束事を決める 連絡先一覧の作成を  「帰宅するまでが仕事であること」を本人に説明します。また、門限時間を決め、ある時間以降は必ず自宅へ連絡する等、約束事を決めるとよいでしょう。緊急時に家族や関係機関と連絡がとれるよう、連絡先の一覧を把握しておくことも大切です。 金銭管理 ●給料をすぐに使ってしまう。 家庭で給料を管理 お金はまとめて渡さない 困難な場合 支援機関に相談を  まずは家庭と相談し、給料の管理を依頼します。家庭ではまとめてお金を渡さず、一週間分、あるいは一日分を小分けにして、本人に渡します。  家庭に管理能力がない場合、支援機関に相談します。きわめて稀には、事業所が金銭管理を行なっている事例も耳にしますが、慎重な対応が必要です。 対人関係 ●上司に対する言葉遣いが悪く、自社製品を「安物でぼろい」等不適切な発言がある。 場面ごとに「ここで話してはだめ」と注意 情報管理も必要  あとで注意するのは効果がないので、相応しくない発言に出くわしたら必ずその場で注意します。  また、自社製品を「安物」と発言する背景には、周囲の影響もあるはずです。本人に会社の批判的な話が入らぬよう、情報を管理することも必要です。 ●調子がよくだじゃれを連発するが、おしゃべりが過ぎて作業の手が止まる。 おしゃべりには乗らず 違う話題を切り出す 作業が滞ったら 黙って作業の手を指さす  事業所によっては作業に影響しない限り、ある程度のおしゃべりが許される職場もありますが、職場にふさわしくないおしゃべりは直接注意します。それでも効果がない場合、だじゃれの連発には反応せず無視します。本人の話に乗らずに違う話題を切り出すのも方法です。作業の手が止まっている場合、黙ってその手を指さし、作業を促します。 ●わかっていないのに「はい」と返事する。 本人の行動を確認 「はい」と答えられない 質問の工夫を  返事を重要視するあまり、わからなくても反射的に「はい」と返事する人がいます。こうした場合、作業方法や指示が十分理解できていないことが考えられます。指示を出す場合、返事ではなくその後の本人の行動を観察し、理解の度合を判断します。  また「手順を説明してこらん」「まず何をしなければいけないかな?」など、「はい」と回答できないように質問を工夫することも大切です。 ●自閉症の社員がパニックになる。 指示や注意は順番に パニックになったら 作業場所とは違う 落ち着ける場所に移動させる  自閉症の人は矢継ぎ早に注意や指示を受けると、パニックになることがあります。予防のためにはできるだけ指示や注意を、順々に行なう必要があります。  しかしパニックが起きてしまったら、あらかじめ決めておいた「本人が好む、気持ちを落ち着ける場所」 へ移動させます。ここで大切なのは「落ち着ける場所」 を前もって作業場と別に用意しておくこと、そして物理的に移動することです。「落ち着ける場所」は外部の騒音や視覚的刺激が入らない、周囲と区切られた部屋が望まれますが、なかにはトイレや倉庫が一番落ち着くという人もいます。場所が変わり、本人が落ち着くことができれば、指示や注意をきちんと聞くことができるはずです。 ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる *タイトルのlive-rallyは造語です。live=今を rally=やりとりするという意味と、ライブラリー(図書館)で本を閲覧するように、働く障害者の今を知っていただきたい、という願いを込めたものです。 Live-rally@ ライブラリー  人に優しい社会づくりを 社員一人ひとり真剣に取り組む 常磐線・地下鉄千代田線松戸駅。山田店長がにこやかに迎えてくれる。(株)ファーストリテイリング・ユニクロ松戸駅東口店。(株)ファーストリテイリング(ユニクロ)では、かつて「社内で中途障害者がでたこと」や「人へ、社会へ。どれだけ誠実な会社になれるだろう」という理念があることから、各店舗1名を目標に障害者雇用を進めている。そんなユニクロに幡谷論史さんを訪ねた。 株式会社ファーストリテイリングユニクロ松戸駅東口店 [概要] 業種:高品質・低価格のカジュアルブランド「ユニクロ」を提供する製造小売業 設立:昭和38年5月1日 従業員数:ユニクロ松戸駅東口店30人(アルバイトを含む) (株)ファーストリテイリング全社7,500名 平成16年2月末日(正社員・準社員) [障害者の雇用人数] 知的障害者:1人(基本的に各店舗1名雇用) [障害者の雇用状況] 勤務時間:9:00〜16:00・週休2日制 [知的障害者の作業内容] 売り場への商品補充・棚の整理 仕事仲間と共に▼ 倉庫の整理をする幡谷さん▼ 心を繋ぐホットライン  商品管理室。黙々と入荷商品の袋剥き(ビニール袋から商品を取りだす)をする幡谷さんのかたわらに、黒いトランシーバー。幡谷さんと店内を結ぶホットラインだ。作業が終わると手に取り次の作業指示を得る。バックヤードで一人作業する幡谷さんに「疎外感を抱かせず、いつでもコミュニケーションがとれるよう」にと山田店長が取り入れたアイデア。幡谷さんもその気持ちを理解している。 「仕事が速く進むよう、少しでも次の仕事に取組めるよう」目標を設定して一所懸命頑張っている。  幡谷諭史さん20歳。千葉県立障害者技術専門校、ながうらワークホーム、アートボックス作業所を経て、平成15年9月(株)ファーストリテイリング・ユニクロ松戸駅東口店に入社。アルバイトを含めた30名のスタッフの中に、準社員(社会保険加入、賞与有)として働く。勤務は、月〜金曜日9:00〜16:00まで。入社のきっかけは、同店が障害者雇用を進める本社の方針で、障害者の募集をした際に、沼南育成園生活支援ワーカー市岡さんの勧めにより、ハローワークを通じて応募したこと。その後、本人、ご両親、支援者(千葉障害者職業センターカウンセラーと生活支援ワーカー)との三者面談を行い、2週間の実習を経て採用を決定。実習開始と同時に、千葉障害者職業センターの宮原知子、古迫香枝両ジョブコーチの支援を受けた。「単純作業でも手間を惜しまず、自分で工夫してがんばっているので能率は上がっています」と山田店長。ジョブコーチは、緊張しがちな本人の相談役として、またある時は作業要領を身につけるための指導役として、度々事業所を訪問。店長や社員の皆さんの疑問や不安にも応える心強い見方であった。 「仕事はぜんぶ楽しい」  幡谷さんの現在の職務は「清掃、袋剥き、袋入れ(商品を袋に入れ直す作業)、値札の付け替え、ハンガー掛け」 である。当初は、商品をきれいに整えたり、袋剥きやハンガー掛けが早くできずに悩んだこともあるが、いまは「どれも楽しい仕事」とのこと。「まだまだ分からないことがある」というが、すぐに店長やスタッフに聞き、「みんなやさしく丁寧に対応してくれるので大丈夫」との感を深めている。朝は時間前に出社し、店頭のゴミをひろい、ショーウインドと自動ドアのガラスを磨く。店長も、「よし次はエアコンの清掃」とどんどん仕事を増やす。与えられる仕事が増えるのは「うれしい」ことだという。  将来の夢を聞くと、「ここ(ユニクロ)で一所懸命やりたい」。休日には「中学の時に陸上部だったので、江戸川べりを走るとか…」。実は幡谷さん、家族ぐるみで競艇のファンで、自身、競艇の選手になるのが夢だったという。競艇のどんなところが好きですか?と聞くと「ぶつかりあい、ターンの瞬間がいい…」との答え。「(船券が)当たればうれしい」との素直な気持ちもあるようだ。 「貯金がしたい」  現在ご家族と同居する幡谷さんは、この4月から独立しようと考えている。まだ、グループホームに入居するかアパートにするかは決めていないが、「貯金をしなければいけない」と思っている。このきっかけは、社会人として芽生えた自負心にあるようだ。  一度「(船券が)当たって家族で焼肉パーティを開いた」という幡谷さんに、市岡さんは「今度は私も呼んで……」と言いながら、そのすぐ後に金銭管理の大切さを説く。信頼関係があればこそであろう。  幡谷さんは「明日も仕事があって良かった」という気持ちを忘れないようにしている。山田店長によると、幡谷さんの入社実績で、他店にも別の障害者の採用が決まったという。雇用の輪がさらに拡がることを願う。 Live-rally POINT 雇用に当たってのアドバイスを聞きました  (株)ファーストリティリング・ユニクロ松戸駅東口店長:山田一真さん 雇用に当たっては、障害者の方が仕事を習得するまでには時間がかかるという認識と、そのことに対する寛容さを自分の中に準備することだと思います。その上で、担当してもらう仕事を何度もシュミレーションし、これなら大丈夫、これは○○さんの仕事というものを、用意しておくことが大事だと思います。「自分たちが、やってもらって助かるもの」というところにポイントを置くと、見えてくるものがあると思います。それと障害者の方の採用をスタッフに伝える問題ですが、私は「従業員は、経営者以上にナーバスになる」との考えから、スタッフ全員に伝えました。ジョブコーチの方に支援に入ってもらったことも、ご本人を理解する上で、大きな効果となりました。おかげで支援体制がすぐにでき、幡谷さんも違和感なくすぐに溶け込めたと思います。 Live-rally POINT 雇用に当たっての留意点を聞きました  沼南育成園生活支援センター生活支援ワーカー:市岡 武さん 事業主の方には、「とにかく雇ってみて下さい」。私生活の面は私たちが支援しますから」とお願いしたいと思います。ここユニクロさんは、地域の施設→千葉障害者職業センターという支援組織のリレーションの好例で、私が面接に同行し、実習が決まった後は、職場での支援を千葉障害者職業センターの宮原さんや古迫さんに引き継ぎました。幡谷さんの「まじめで、根気づよい」仕事ぶりが良い評価につながったと思います。ただ、障害者の方の中には私たちが気に留めないことを気にしたり、上司が変わると、戸惑いをおぼえる方もいます。特にその点へのご配慮をお願いしたいと思います。 ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる *タイトルのlive-rallyは造語です。live=今を rally=やりとりするとう意味と、ライブラリー(図書館)で本を閲覧するように、働く障害者の今を知っていただきたい、という願いを込めたものです。 Live-rallyA ライブラリー すべてのひとの 基本的人権を尊重します。 京王線多摩センター駅を降り、“ニュータウン通り”という名の道を進むと、程なく小高い丘の上に、瀟洒な7階建ての建物が見えてくる。ここが、これから訪ねる木村智彦さんの職場である。 社会福祉法人<楽友会>特別養護老人ホー厶 白楽荘 [概要] 業種:介護福祉サービス、短期入所生活介護サービス、入所者数150名 [障害者の雇用人数] 知的障害者:1人(平成16年4月より採用内定者1人) 視覚障害者:1人 [障害者の雇用状況] 非常勤職員:2人 [知的障害者の作業内容] 館内(6、7階)の定期的清掃及び、介護補助。 介護用品・補助器具等の清掃。リネン交換。 仕事仲間と共に▼ 入居者のレクレーション▼ 「いつも一歩前へ」  赤い風船がふわりと、円形に囲んだ入居者の間に舞い上がる。レクリエーションの時間だ。木村さんは、ケアワーカーと共に輪の中心に入り、落ちてくる風船を軽く押しやっては「はい、佐々木さん、田中さん(仮名)」と声をかけながら、全員がラリーに参加できるよう手伝う。どこに風船が飛んでも入居者の名前を呼ぶ。職場実習期間を経て実務8ヶ月強。木村さんは6階フロアの入居者(約50名)の名前をおぼえているらしい。  木村智彦さん20歳。私立科学技術高等学校卒業後、国立職業リハビリテーションセンター(独立行政法人・高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する施設で埼玉県所沢市にある)で介護を学び、平成15年より社会福祉法人楽友会に勤務している。実習の当初は認知症の方の多いフロアに配属され、ヘルパーの実習生と同じ実習を受けたのだが、夜勤(17:00〜08:00仮眠1時間半)等の問題もあり、施設長や、ケアリーダーの粟津さんの判断で現在は6F・7Fの清掃を担当。粟津さんによると「ケアワーカーは生命にかかわる大変な仕事です。そこで施設長とも相談し、木村さんの負担を軽減しかつ介護の知識を活かせる仕事とということで、いまの仕事に配置しました」。  勤務当初は、重度の入居者の方が多いためマニュアル通りにはいかず、とまどうこともあったとのことだが、今では勤務開始30分前には出勤し、10分前には業務を開始している。出勤後の20分間は、ランドリーで洗濯物をたたむ手伝いをしている。業務を10分早くはじめるのは「入居者の方とのコミュニケーションとケアワーカーの仕事を少しでも手伝う時間をつくるため」という。 「常に入居者の安全・安心のために」 「清掃用のバケツを洗うときにどうしたらこの汚れがとれるか?どうしたらもっときれし、に早く洗えるか?と考える。」そのひたむきで常に前向きな姿勢に、目を覚まされる思いがする。普段心がけていることは「まず、どなたにでもあいさつをきちんとすること。入居者の方のじゃまにならないように掃除用具の位置を考えること」、それ以上に「掃除のことだけではなく」入居者の方、ワーカーの動きを常に視野にいれ「いつでもお手伝いできる心構えでいること」だという。  朝の10分といい、日常の心配りといい、木村さんの仕事に対する責任感は半端なものではない。そしてそれが一緒に働く人たち皆に伝わっている。作業を続ける木村さんのかたわらを通りすぎる人すべてが「おはよう」「がんばってね」。写真におさまる木村さんを見て、「あっ、いいな私も入れてよ」と声をかける。その声や笑顔がとても親密だ。朝一番にお話を伺った粟津ケアリーダーの「明るく素直な好青年」という言葉と、施設長の「その職場のその仕事が出来れば、障害なんか何もない」といわれた言葉も納得できる。 ▲木村智彦さん 「自立した人であるために」  来年度(平成16年4月)からは、木村さんの後輩(国立職業リハビリテーションセンター修了者)の採用が内定し ている。これも木村さんの働きぶりが評価されたからこその結果であろう。後輩にアドバイスはありますか?との質問には、「自分の場合、緊張して周りの人とどう接していいかわかりませんでした。だから、普通に話せばいい、無理せず落ち着いてわからないことは何でも聞く。その上で、どうすればできるか考える…そう話してあげたいと思います」。  木村さんの夢を聞くと、今は家族と一緒に住んでいるが、近い将来には、通勤寮(障害のある人が昼間は会社や作業所等に通勤しながら自活した生活ができるよう援助する施設)に入居し、「身の回りのことはもちろんのこと、金銭の管理まで」自分一人ですることだという。休日には「この仕事は体力がいるから」とスポーツジムで汗を流し、それを「仕事へのやる気」につなげるのだという。「趣味は仕事です」と言い切る姿が頼もしい。ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる。 ▲施設内の清掃 ▲介護補助をする木村さん Live-rally POINT 雇用に当たってのアドバイスを聞きました 楽友会施設長:中村勝政さん 昼休みの時間帯が同じなので、木村君とよく一緒に昼食をとるのですが、明るく、マナーもよく、とてもいい青年です。当所としては、知的障害の方の採用は初めてだったのですが、私自身、福祉の仕事に長く携わっていて、その経験からも、仕事をしたい方がいて、仕事があるのならば、支えあい、どんどん一緒にやっていきたいと考えています。木村君の例を挙げるまでもなく障害者の方も、いや、障害を持つ方だからこそ、前向きに、きちんと仕事をする。そこをよくご理解いただきたい。これからも私たちは「支えあって」一緒に頑張っていきたいと考えています。 Live-rally POINT 雇用に当たっての留意点を聞きました 養護課統括ケアリーダー:粟津ひろみさん 楽友会の経営理念は、(すべての人の基本的人権を尊重します○利用者に「安全」と「安心」を提供します○利用者本位の施設経営を行います○職員の資質の向上に努めます○地域社会の福祉の充実増進に努めます○地域社会に開かれた身近な施設経営に努めます)です。この理念を障害の有無にかかわらず職員全員に体得してもらうことを心がけています。木村さんに関して、当初は「入居者にとってはケアワーカーも臨時の方も職員として同じであること」「入居者それぞれの生活パターンがあること」を理解してもらい、ケースをあげて対処法を考えてもらうことにしました。また「独りぼっちにしない、戸惑いの見えたときはゆっくりと心を落ち着かせる時間をとってやること」を心がけその後は一度にいろいろなことを指示しない、急がせない、(木村さんは)行動が早くなる特長があるので、近くにいる職員が「あわてなくていいよ」等常に声をかけるようにしています。 ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる *タイトルのlive-rallyは造語です。live=今を rally=やりとりするという意味と、ライブラリー(図書館)で本を閲覧するように、働く障害者の今を知っていただきたい、という願いを込めたものです。 Live-rallyB ライブラリー  働くことで得た自信は、 後輩の将来をも明るく照らす 若者の街下北沢。にぎやかな駅の南口から三軒茶屋方面へ徒歩で10分ほど歩くと、東邦薬品株式会社の本社が見える。ここに併設されているTBC代沢という物流センターで、今回お話を伺う松井徹哉さんが働いている。 東邦薬品株式会社 [概要] 業種:医薬品の安定供給と医薬品情報の提供 創立:昭和23年9月17日 従業員数:2,382人 [障害者の雇用人数] 知的障害者:TBC代沢・1人(全社26人、内重度11人) [障害者の雇用状況] 勤務時間:1日8時間・週休2日制 [知的障害者の作業内容] 入荷・出庫作業 成長しようとする努力  さまざまな医薬品が棚に並ぶ地下1階の倉庫に、薬品の仕分け作業を行う松井さんの姿があった。松井さんが働く東邦薬品株式会社は、昭和23年に創立。以来、常に医薬品を安定して供給し続ける総合医薬品商社として、医療機関から高く評価されている。現在TBC代沢は、主に臨床検査薬を取り扱っており、メーカーから仕入れた薬品は、ここから各営業所へ、そこから各病院や診療所へと振り分けられ、スピーディに届けられる。松井さんは、入荷した薬品の仕分けに始まり、段ボール等の片づけまで、幅広く仕事を任されている。本人は「まだまだ仕事ができなくて…」と謙遜するが、テキパキとこなすその仕事ぶりは、はつらつとしている。  松井徹哉さん26歳。平成14年に国立職業リハビリテーションセンターで職業訓練を受け、翌年、東邦薬品株式会社で2週間ほどの職場実習を経験した後、採用が決定。 現在に至っている。松井さんの仕事ぶりを温かな目で見守るのは黒田進TBC代沢センター長である。  「実は、彼はてんかんがあるという理由で前の会社を退職せざるをえなかったようです。当時訓練を受けていた国立職業リハビリテーションセンターから職場実習をさせて欲しいというお話があり、当社では以前から積極的に知的障害者の採用に取り組んでおりましたので、彼なら大丈夫という判断で採用することになりました」。  松井さんが担当する仕分けの仕事は正確性が要求されるため、センター長は、「本当の意味で一人前になるにはもう少し時間がかかるが、自分自身で成長しようと努力する姿勢は、とても好感がもてる」とのことである。 配慮のでぎる人間だからこそ  「出庫の際にミスをすることがあるので、なんとかそれをゼロにするよう心がけています。でもミスをしてしまう」。そんな自分が歯がゆいと語る松井さん。彼の教育は、課長である中野裕司さんが担当している。「仕事ですからミスはゼロにしてほしい。でも人間だから間違いはあります。大切なのは、間違えないよう努力をすることです。失敗が成長につながるかどうかは、やはり本人の心がけ次第ですから」  あとは、もう少し落ち着いて作業ができるようになればと、評価する中野さんが、松井さんの長所を教えてくれた。それは心配りができることだという。「松井くんは、食欲旺盛でお弁当の他にも必ずお菓子を食べます。でもひとりで食べるのではなく、休憩所のテーブルの上に袋を広げて、みんなが食べられるようにしてくれる。ちょっとしたことだけど、気づかいがうれしいですよね」。  そんな配慮のできる松井さんは、このフロアにいるみんなから同僚として受け入れられているという。周りの人々も彼の様子を気にかけ、疲れているときや、つらそうなときは、休憩を勧めるようになってきたと中野さん。知的障害者を迎入れる環境が、着実に整えられてきたことを感じさせるエピソードである。 ▲松井徹哉さん ▲区別が難しい薬品の出庫をする松井さん▼ 何より勝る働く喜び  現在東京都八王子市に住んでいる松井さんは、会社へ電車を乗り継ぎ、1時間半かけて通勤している。高校が遠かったそうで、この程度の通勤時間は苦にならないとのこと。 仕事ができる喜びが、いまは何よりも勝っているようだ。松井さんは昼の休憩時間も働いてしまうことがあり、出庫のリーダーを困らせてしまうのだという。「午後からの作業を効率よく進めようとすると、つい仕事をしてしまうのです。それに仕事を早く覚えたいので…」。  「目標は、僕の後輩になる人に、仕事を教えられるようになることです。仕事をリードできるようになりたいです。そのためにも、もっと薬のことを覚えなくてはいけないと思うのです」と付け加えた。  働くことの喜びは、誰でも変わりはない。松井さんの真剣な表情が、そう語りかけているような気がした。 Live-rally POINT 雇用に当たってのアドバイスを聞きました TBC代沢センター長:黒田 進さん 知的障害者は、働くことへの意欲は高いと思います。ただ周りの人間、つまり社員が知的障害者と一緒に働くことを受け入れなければ、なかなか好結果は得られないのではないでしょうか。今回の松井君の採用に際しては、障害があることを全員に伝えました。彼は努力家ですから、ゆっくりですが仕事を覚えつつあります。それに伴い、社員も同僚として認めているように感じます。知的障害者を採用するには、彼らの得手不得手を早めに理解して、能力にあった仕事で成果が得られるようにサポートする必要があると思います。 Live-rally POINT 雇用に当たっての留意点を聞きました TBC代沢センター課長:中野裕司さん あわてると仕事が滞る場合がありますが、心に余裕があれば、相応の仕事をこなしてくれるのではないでしょうか。心身のサポートは、もちろん私たちがしなければなりませんし、長い目で成長を見守る勇気も必要です。私たちはバーベキューや宴会など、彼とざっくばらんに話せる機会を設けるようにしています。そこからコミュニケーションのヒントを得て、仕事上のアドバイスに生かしています。成長したいと彼が思ってくれるよう働きかけるのも私たちの役目ではないでしょうか。 ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる *タイトルのlive-rallyは造語です。live=今を rally=やりとりするという意味と、ライブラリー(図書館)で本を閲覧するように、働く障害者の今を知っていただきたい、という願いを込めたものです。 Live-rallyC ライブラリー 「積極的なコミュニケーションづくり」 これが成長の第一歩 介護老人保健施設「ひまわり」。入所者と通所者で120名近くのこの施設で、大勢の介護スタッフとともに働く柴山周二さん(昭和53年生まれ)。複数の職業を経験し、高槻市萩の杜を通じて大阪障害者職業センターを紹介され、職業準備訓練(現在の職業準備支援*8参照)を受講。ジョブコーチ支援を受けながら職場実習、トライアル雇用を経て就職。就職して約10ヶ月が経過したいま、柴山さんは「ひまわり」のかけがえのないスタッフになりつつある。 医療法人<蒼龍会>介護老人保健施設 ひまわり [概要] 業種:入所 ショートスティ(短期入所療養介護) デイ・ケア(通所リハビリテーション) [障害者の雇用人数] 知的障害者:1人(蒼龍会全体では4名) [障害者の雇用状況]] 正社員:1名 週休2日制 [知的障害者の作業内容] 館内(2・3階:)の定期的清掃及び、介護補助。 明るくなったのはフットサルが一番のきっかけだと思います。それが仕事にもつながって、スタッフとのやりとりもよくなって。試合とか練習とかしているうちに男性職員とも仲良くなって、笑顔がたくさん出るようになったと思います。(介護職の栄島さん談)▲ フットサルの仲間▼ コミュニケーションというものと真摯に向き合う  柴山さんの職務内容は別表のとおりで、毎日異なっている。「ひまわり」では、障害者を受け入れるのが初めてで、一日の職務内容をどのように組み立てるかが課題だった。清掃等はすでに業者に委託しており、柴山さんが働くためには新たな職務を作る必要があったので、ジョブコーチは入浴介助や食堂の片づけ等、複数の仕事を組み合わせ新たな職務の可能性を探り、それぞれの仕事が一人でできるよう一緒に働きながら支援を行った。  柴山さんはいまではリハビリの歩行訓練など簡易な介助を行う等、「ひまわり」にとって欠かせない一員となっている。しかし、ここへ至るまでには柴山さん自身の努力があったのはもちろんのこと、柴山さんを支えてきた現場のスタッフの協力や、縁の下の力持ちとしてのジョブコーチ3人の支援を忘れてはならない。  柴山さんの職務内容のひとつにリハビリやお風呂への誘導がある。心がけているのは、「これからリハビリルームやお風呂へ行きますよ」と声をかけて誘導することだという。ジョブコーチの内海さんによれば、この声かけは介護におけるコミュニケーションの基本だそうだ。たとえば、車椅子をいきなり押すのは危険なので、「車椅子を押しますよ」と一言かけるのが大切だという。  しかし、これは一朝一夕にできるものではない。喫茶レクレーション、入浴介助の場面で必要な「声かけリスト」をジョブコーチが作成し、職場実習中、ドライヤーのあて方や「熱いですか?」と声をかけること、「体を起こしてください」「お茶をください」と利用者からの要望されたときの対処方法もジョブコーチを相手に繰り返し練習した。  初めのうち柴山さんは緊張で大きな声が出せなかったらしい。スタッフをまとめる三木看護師長によれば、「10ヶ月前とは全然違います。声は大きくなっていますし自信がついたせいか笑顔も見られます。利用者さんや職員の顔もほぼ覚えています。円滑な誘導もできるようになりました。本質的に心の優しい子なんだと思います」。  柴山さんを、短期間でここまで成長させたのは、積極的に話しかけてくれるスタッフや暖かな職場環境によるところが大きい。コミュニケーションと真摯に向き合う柴山さんは、深い愛情を持ったスタッフに囲まれながら、ゆっくりと確実に成長しているようだ。 (別表)柴山さんの一週間の職務内容     午前           午後 月曜日 入浴介助、リハビリ誘導  食堂片づけ、エプロン干し、入浴介助 水曜日 シーツ交換        食堂片づけ、エプロン干し、入浴介助 金曜日 入浴介助、リハビリ誘導  喫茶誘導 土曜日 リハビリ誘導       食堂片づけ、エプロン干し、入浴介助 日曜日 入浴介助         レクレーションの補助等 人との絆うを求める気持ちと、 それに応える場所  柴山さんは「ひまわり」へ来る前、家具などの製作工場や作業所にいたことがあるが、当時を振り返り「前の職場では話ができなかった」と語る。「(いまも)話をするのは苦手だけど、ここではみんなが話しかけてくれる。フットサルのチームもあるし、気軽に話ができる」と嬉しそうである。自分の居場所があり、そして何より仕事が楽しくやりがいがある。暖かい職場環境の中で、生きるために必要なことをのびのび吸収している。年齢が近いスタッフとのコミュニケーションが柴山さんの自立を後押ししているようだ。 ▼柴山周二さん 未来へ向かう意志と、それを支える暖かいチカラ  柴山さんは、正式採用後も仕事に意欲的だ。「もっと仕事を増やしたい」と相談を受けたジョブコーチは、早速大阪知的障害者育成会主催の「知的障害者ホームヘルパー3級養成講座」の情報提供を行った。講座に通う日と「ひまわり」の休日を調整し、仕事を休むことなく大阪市の谷町9丁目にある大阪府障害者社会参加促進センターまで通うことになった。これからの夢は、ホームヘルパーの資格を取り仕事の幅を広げることだという。「困った時いつもスタッフに頼んでいては大変だし、何でも自分でできるようになりたい」。講習の終了に向けて勉強の日々は続く。3級の次は2級に挑戦したいと意欲満々だ。  ご両親は「自分のことは自分でできるように」とグループホームに入所させ、仕事の後には料理学校や趣味の空手を習わせている。忙しくも充実した日々を送っており、費用は全て自分の給料からやりくりしている。ご両親の方針もあり、それが彼自身の将来の夢である「自立」へつながっている。柴山さんの未来は、自分の意志と周りの暖かい励ましで大きく拓かれていくことだろう。 ▲お年寄りのリハビリテーション「おしぼり巻き」 ▼大阪障害者職業センター  障害者職業カウンセラー:竹下純さん 保護者とのこ相談のなかで、「人とコミュニケーションできるところがいい」と言う希望があり、併せてジョブコーチをつけて本人の状況に合わせた支援をしてくださいとの依頼がありました。「ひまわり」では障害者雇用が初めてということから仕事の組立てについて、できそうなスケジュールを組立て、無理なく仕事に馴染むよう配慮しました。これまで大きな問題が起きなかったのは本人の努力はもちろん、看護師長を初め職場の皆様の行き届いた雇用管理があったことが大きな要因だと思います。これからも、障害を持つ人の立場に立ち、状況に応じた支援体制を考えていきたいと思います。 三木和加子看護師長▲ 最初は緊張のせいか声がとても小さかったのですが、仕事を理解してからは声もしっかりしてきて今ではかなり積極的になっています。いままでこれと言ったトラブルもなく、すっかりうち解けています。コミュニケーションが大事だと痛感しています。 ▲財団法人箕面市障害者事業団  総務課企画係  兼大阪障害者職業センター協力機関型  ジョブコーチ:内海敦史さん 柴山さんは、入所当時から「ジョブコーチはいずれいなくなるから、何とか自分でできるようになりたい」という気持ちがありました。いまでは1人で積極的に仕事をしていて、とても頼もしく思いました。 Live-rally POINT 雇用に当たってのアドバイスを聞きました 理事・事務長:井上麗子さん 柴山さんは実習期間を経て入ってこられたんですが、ジョブコーチの方からの助言をきっちり守っているという感じでした。私たちスタッフには言えない部分でも、ジョブコーチだと言いやすいんじゃないのかな。ですから、ジョブコーチと常にコミュニケーション取りながらやっていくのがポイントですね。最初の頃から比べたら、それはもう本当に大きくなられたと思いますよ。ときおり笑顔もみられますし、余裕が出てきたんじゃないですか。ある意味で自信を持たせることは非常に重要なことだと思います。そのためには、仕事を任せたら、自分の力で達成できるまで焦らずにゆっくりと見守ることが必要だと考えます。彼がヘルパーの3級2級1級と進んでいく課程で、これからさらに仕事の幅を広げてくれると期待しています。 ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる *タイトルのlive-rallyは造語です。live=今を rally=やりとりするという意味と、ライブラリー(図書館)で本を閲覧するように、働く障害者の今を知っていただきたい、という願いを込めたものです。 Live-rallyD ライブラリー 会社のため、何よりも自分のためにも 「長く勤めてもらいたい」 玉の肌石鹸は、今年111年目。創業は明治25年という長い歴史を誇る。社員は全部で150名ほどおり、障害者の方は、そのうち4名。14年前から働きはじめた方は、66歳のいまも現役で、新しい方でも4年目を迎えるという。ひたむきな彼らの仕事ぶりを追ってみた。 玉の肌石鹸株式会社 [概要] 業種:石鹸製造業 創業:明治25年 従業員数:正社員61人。パートタイマー5人 [障害者の雇用人数] 知的障害者:4人(うち重度障害者1人) [障害者の雇用状況] 嘱託員:4人 勤務時間:1日8時間・週休2日制 [知的障害者の作業内容] 化粧品の包装及びシール貼り・箱詰め及び製品積込み 最初の雇用に結びついたきっかけは、工場見学  玉の肌石鹸は、元来地元重視型の企業。雇用の発端は、地元の墨田特別支援学校が社会学習の一環として、工場見学に訪れたことがきっかけという。墨田特別支援学校の先生から、「ぜひうちの卒業生を雇用して欲しい」と依頼があり、地元に貢献したいという企業姿勢が、その要望をかなえる形となった。総務部労務課の高井さんは、「はじめの実習生は、非常に真剣に現場実習を受けたので、これなら採用してもいいと言う話になり、以後、特別支援学校の紹介で採用しています。」と話してくれた。  特別支援学校からは年に1回、卒業を控えた在校生が工場見学に来られ、自分たちの先輩が働いている姿を真剣に見入っているということだ。 仕事を覚えるまで、ひとつひとつ積み上げていく  「当初は障害者雇用のノウハウがなかったこともあり、試行錯誤を繰り返しました。3名いる女性の方々は、馴染んでくるにつれ、本人のやる気も出てきて、勤務評価も入社当時と今では雲泥の差」です。ひとつひとつ、ごく単純な仕事から始めて、あまり早い段階でレベルアップはしないが、3ヶ月程度のスパンで次第にいろんな種類の仕事をこなせるようになり、障害のない人とほとんど変わらないところまで来ているそうだ。「時間的にもフルタイムで一般社員と変わりません。さらに2〜3年経つと、ある意味で『障害のない人に負けたくない。付いていこう』という気持ちが出てくる。とにかくレベルアップに対する意欲がすごいし、努力を惜しまない。長い目でゆっくりとした気持ちで接することが必要でしょうね。」と語ってくれた。 ひとことインタビュー 66歳男性 金属年数:20年 入社経緯:病院の紹介 仕事の内容:箱詰め及び製品の積込 休日の過ごし方:洗濯・掃除・テレビを見る。映画を見に行く。 趣味・やりたいこと:神保町の古本屋を見に行きたい。運動や、生け花、漢字の勉強をしたい。 玉の肌石鹸で楽しかったこと:仕事、社員旅行。 33歳女性 勤続年数:15年 入社経緯:墨田特別支援学校の紹介実習(3ヶ月)後入社 仕事の内容:化粧品の包装及びシール貼り 休日の過こし方:妹の子供の子守。買い物が好きで、トイザらスや、錦糸町に母と出かける。 趣味・やりたいこと:花ビーズで犬やお花を作る。折り紙でくす玉を折る。           妹の子に、働いたお金でいろいろなものを買ってあげるのが楽しみ。 玉の肌石鹸で楽しかったこと:忘年会 24歳女性 勤続年数:10年 入社経緯:堅川中学校の紹介 実習(3ヶ月)後入社 仕事の内容:化粧品の包装及びシール貼り 休日の過ごし方:家でのんびりしたり、映画を見に行ったり、買い物したりします。 趣味・やりたいこと:趣味は、映画鑑賞・音楽鑑賞。 玉の肌石鹸で楽しかったこと:職場の人と仲良くおしゃべりすること。 22歳女性 勤続年数:4年 入社経緯:墨田特別支援学校の紹介実習(3ヶ月)後入社 仕事の内容:石鹸の包装 休日の過ごし方:映画鑑賞・音楽鑑賞。ピアノのレッスンや、季節ごとの旅行。 趣味・やりたいこと:絵を描くこと 玉の肌石鹸で楽しかったこと:社員旅行。 仕事を任せ、信頼することが大切  「私たちの場合は厳しいなかにも家庭的な雰囲気を大切にした形でやっています。仕事もそうですが、やはり周りとの人間関係が重要です。特に彼らには人間関係が大事で、コミュニケーションをよくとらないといけません」。しかし、そのなかで、「口は出さずにしばらく見守ることが必要なんです」と言う。『仕事を任せる』という姿勢が大切なのだろう。もちろん、最初は間違ったことをやっても、その時には、「ここでは、こうするんだよ」と指導していく。手を貸したり、離れて見守ったり、その使い分けが長年培ってきたノウハウなのだろう。 「障害がある人とは気づかない」それも本人の努力  障害者の雇用ノウハウがあるこの会社では、彼らの障害に気が付かない人もいる。自力で通勤し、働く。ただそれだけのことだが、その何でもない日常の中には、彼らの計り知れない努力があるのだろう。「彼らは、まじめで忍耐力があるだけでなく、心優しい。とにかく努力家です。」と、高井さんは優しい笑顔で話す。 できるだけ長く勤めてもらいたい  短期間ではなく、できるだけ長い間勤めていただくのが私どもの考えです。ただし、ある程度年齢がいくと、どうしても体力は低下する。その辺に気を付け、とにかく体の調子の悪いときは休んでもいいと話しているのですが、それでも休みはほとんどとらない。66歳の方は、かれこれ勤続20年目。非常に元気で、体調と相談しながら仕事をされています。」70歳までは一応継続雇用を考えているのだそうだ。「障害者の方で勤続20年を超すのがひとつの目標だったんです。これを目標に他の3人の女性にも仲良く20年を超していただきたい」。 社員旅行などのイベントも、一緒が基本  仕事だけではなく、忘年会も旅行などの福利厚生も、すべて一般社員と同じように行っている。「会社の行事には、ほとんど参加しています。4人のなかで重度の障害がある方は、一緒に行きたいという気持ちが非常に強く、お母さんに同伴してもらいました。」昨年は110周年で、なんとハワイ旅行へ。コミュニケーションの場は、会社だけではない。働くこと、そして、遊ぶことを通じてつくられる和。ここ玉の肌石鹸株式会社では、長い時間をかけてそれが確かなカタチになっているのを感じる。 真心込めて包装された製品群。 総務部労務課課長:高井聰さん ここに、がんばる人と、それをあたたかく支える人がいる *タイトルのlive-rallyは造語です。live=今を rally=やりとりするという意味と、ライブラリー(図書館)で本を閲覧するように、働く障害者の今を知っていただきたい、という願いを込めたものです。 Live-rallyE ライブラリー ▲我々を支えてくれているのは彼らかもしれないと話す社長夫妻 経営者と社員の関係以上に 深い絆がある 障害を持つ人たちと共に働くことを誇りに、今年で創業50年を迎える「東新幸社」。社長の井上正治さんと夫人の賀代子さんが切り盛りする東京・葛飾の町工場では、5人の知的障害者を含む43人の社員が、エアガン・照明器具をはじめとするさまざまな玩具・雑貨を製造していた。 有限会社東新幸社(あずましんこうしゃ) [概要] 業種:玩具・照明器具製造 創業:昭和26年 従業員数:正社員40人・パートタイマー3人 [障害者の雇用人数] 知的障害者:5人(重度障害者3人) [障害者の雇用状況] 正社員:5名 1日8時間・週休2日制 [知的障害者の作業内容] 組立・箱詰め 知的障害者た受け入れてから発見が  昭和26年に創立した有限会社東新幸社は、金属玩具、照明器具、エアガン、玩具雑貨品の製造を手がけ、今年で50周年を迎える。製造業の多くが中国ヘシフトし、国内製造業の空洞化が深刻化する現在、東新幸社は日本でほとんど見られなくなったベルトコンベアラインをフル稼働させて、エアガンをはじめ人気の玩具を、今も元気に作り続けている。  「実はハローワークへ求人の募集をお願いしたら、知的障害者を受け入れてもらえないかという話になって、私たちは知的障害者に接した経験もありませんでしたし、お断りしたんです。そうしたら実習だけでもと…」25年前の出来事を振り返る賀代子さん。今、製造ラインの中心で働く柴田ゆみ子さんは、これをきっかけに東新幸社に入社することになる。  「実習では結局、知的障害者を二人受け入れたのですが、ひとりはすぐに辞めてしまいました。ゆみ子ちゃんは最初、呼びかけにも答えないし、コミュニケーションに苦労しました。でも仕事を教えたら、あっという間に覚えていき、5年たったら、本当にラインの中心として働いていましたね」  彼女と出会ってから、知的障害者を採用するようになったと語る井上社長。それからというもの、実習に来る知的障害者に、この人にはこんな能力があるんだ、と驚かされるという。 会社を支える5人の個性  もちろん、実際に採用して定着に至る人は限られる。現在、日々のいろいろなアクシデントを乗り越え、東新幸社を支えている知的障害者の人たちは5名。その横顔をここに紹介しよう。  柴田ゆみ子さん。彼女がいなくなったら、工場を畳むと井上社長に言わせてしまう東新幸社の中心人物。「入社当時何も反応を示さなかった柴田さんも、すでに今年で勤続25年。葛飾区から優良従業員として表彰されました。  関根恵子さんも入社して24年を迎える。実習で一度は不採用としたが、こ両親の強い希望と知的障害者の可能性にかけていた二人の直感で採用した。今も変わらずコツコツと仕事をひたむきにこなしている。  実習の途中、工場をシャボン玉だらけにしてしまい、賀代子さんをあきれさせた竹内進さんは入社して19年。製造個数のカウントなら、彼に訊けば間違いないと、社長からも信頼されている。「社長と奥さんは、いい人です。周りの人もいい人です。休みの日は、ほとんどサッカーをしています。ポジションはフォワードです」  入社4年目の横山かおるさんは、最近ヘルパーの資格を取って、ボランティアとして活躍している。資格を取ったことが自信となり、仕事の励みなっているようだと井上社長も眼を細める。  三橋宏信さんは今年で入社3年目。いつも竹内さんとサッカーを楽しんでいる。「僕はエアガンの組み立てと照明器具を作っています。仕事では、とにかく間違えないよう気をつけています。仕事は本当に楽しいですよ」 ▲三橋宏信さん 柴田ゆみ子さん▼ ▲竹内進さん 関根恵子さん▼ ▲仕事仲間と共に 障害者雇用の新たな可能性  「言葉で何かを表現するような能力は、障害がある彼らには乏しいかもしれませんが、何かを察知したり、気配りしたりする力は、障害のない人以上に豊かだと思います」そう語る賀代子さんは、ストレスで落ち込んだりしていると、彼らにさりげなく励まされるという。経営者と社員以上の関係を築いていると井上社長も笑う。井上夫妻とここで働く知的障害者は、足りない物をお互いが補える関係という方が正しいのかもしれない。  「実習生として初めて会社にきたときは、仕事などできないと思える知的障害者が、現場の中でどんどん成長していく姿をみるのは、本当にうれしいものです。2、3年もすると、障害のない人に負けない能力を発揮する人もいる。そんな人を育てることは喜びですね」  本当の意味で「支え合う」という東新幸社の障害者雇用が、新たな可能性を生み出している。 Live-rally POINT 雇用に当たってのアドバイスを聞きました 有限会社東新幸社代表取締役:井上正治さん 当社で働く5人の知的障害者は、それぞれが製造の組み立てラインに携わっています。一人ひとりが大切なので、誰か一人でもいなくなると、会社は本当に困ります。彼らに感心するのは、本当に休まずに出社し、きちんと自分たちのノルマをこなすことです。確かに育成する点では、難しい側面もありますが、一度覚えれば、本当に能力が伸び貴重な戦力になります。これからも私たちは、仕事を一緒にこなすパートナーとして、知的障害者と歩んでいきたいと思います。 Live-rally POINT 雇用に当たっての留意点を聞きました 有限会社東新幸社専務取締役:井上賀代子さん 知的障害者を採用する場合は、私たちだけで決定することはありません。私はあくまでも採用の窓口。1、2週間の実習期間の中で社員が、この人は必要かどうかを判断します。みんなが仲間に加えても良ければ、採用することになります。実習の間に、どうしても課題があるということになれば、やはり採用は見送りますし、職場のみんなが、この子は仕事が遅いけど、仲間にしたいということであれば採用します。現場の意見を尊重することで、仕事への熱意と障害者への理解や共感が、生まれてくるのです。 知的障害者を雇用したときに 利用可能な助成金の制度 知的障害者を雇用した際に 利用可能な助成金については様々な種類がありますが、 ここでは比較的多くの事業所で利用されている 二つの助成金についてこ紹介します。 ●特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)  問い合わせ→都道府県労働局、ハローワーク  身体障害者、知的障害者又は精神障害者等の就職が特に困難なものをハローワーク等の紹介により雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部を雇い入れた日から一定期間助成するものです。 ★対象事業主 受給できるのは、次の全ての要件を満たす事業主です。 @ ハローワーク又は適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等の紹介により身体障害者、知的障害者又は精神障害者等(65歳未満の者に限る。)を継続して雇用する労働者として雇い入れ、助成金支給後も引き続き相当期間雇用することが確実であると認められる雇用保険の適用事業主 A 当該雇い入れの前及び後6ヶ月間において当該雇い入れに係る事業所で雇用する被保険者を事業主の都合により解雇したことがないこと B 当該雇い入れの前及び後6ヶ月間において当該雇い入れに係る事業所において特定受給資格者となる離職理由により雇用する被保険者を、当該雇い入れ日における被保険者の6%を超えて離職させていないこと(特定受給資格者となる離職理由により離職した者が3人以下である場合を除く。) ★助成額・助成期間等  助成額、助成期間は次の表のとおりです。助成対象期間を6ヵ月ことの支給対象期に区切り、この支給対象期ごとに支給されます。 対象労働者          企業規模        助成対象期間 第1期支給額 第2期支給額 第3期支給額 第4期支給額 支給総額  支給回数 短時間労働者以外 (1)身体障害者、知的障害者 @中小企業事業主以外   1年      25万円   25万円             50万円   2回 ((2)に該当する者を除く) A中小企業事業主     1年6月    45万円   45万円   45万円        135万円   3回 (2)重度障害者等                @中小企業事業主以外   1年6月   33万円   33万円   34万円       100万円   3回                A中小企業事業主     2年    60万円   60万円   60万円   60万円  240万円   4回 短時間労働者 身体障害者、知的障害者、精神障害者                @中小企業事業主以外   1年    15万円   15万円             30万円   2回               A中小企業事業主     1年6月   30万円   30万円   30万円        90万円   3回 ※「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者をいう。 ※「重度障害者等」とは、重度身体障害者、45歳以上の身体障害者、重度知的障害者、45歳以上の知的障害者及び精神障害者であって、短時間労働者として雇い入れられた者を除く。  ただし、対象労働者を雇い入れた事業主が当該対象労働者について最低賃金の減額の特例の許可を受けている場合は、支給対象期について対象労働者に支払った賃金額に次の助成率を乗じた額(上表の支給対象期ことの支給額が上限)となります。    対象労働者     中小企業事業主以外    中小企業事業主 イ ロ以外の者          1/4          1/3 ロ 重度障害者等         1/3          1/2 ●障害者雇用納付金制度に基づく助成金 (詳細は当機構ホームページhttps://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html#sec03をご覧ください。)  事業主が障害者を新たに雇い入れたり、障害者の安定した雇用を維持するために、少なからぬ経済的負担がかかることがあります。障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、その費用の一部を助成し、負担の軽減を図ることで障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。 ★助成金の種類  (助成金の対象、助成率、限度額等は当機構ホームページ   https://www.jeed.go.jp/disability/employer/subsidy/sub01.htmlをご覧ください。) 助成金            内  容 障害者作業施設設置等助成金  障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害者が障害を克服し、作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設、就労を容易にするために配慮されたトイレ、スロープ等の附帯施設もしくは作業を容易にするために配慮された作業設備の設置または整備等を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 障害者福祉施設設置等助成金  障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主又はその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置又は整備を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 障害者介助等助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者又は就職が特に困難と認められる身体障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。 職場適応援助者助成金  職場適応援助者による援助を受けなければ事業主による雇い入れ又は雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするため職場適応援助者(機構が行う研修又は厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者)を障害者の実習先の事業所や現に障害者を雇用している事業所に派遣して、援助を実施する社会福祉法人等又は自社の事業所に職場適応援助者を配置し、雇用する障害者に対する援助を実施する事業主に対して、その費用の一部を助成するものです。 重度障害者等通勤対策助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者又は通勤が特に困難と認められる身体障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるかあるいは継続して雇用する事業主、又はこれらの重度障害者等を雇用している事業主を構成員とする事業主団体が、これらの者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金  重度身体障害者、知的障害者又は精神障害者を常時雇用する労働者として多数雇い入れるかあるいは継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主が、これらの障害者のために事業施設等の整備等を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 障害者能力開発助成金  障害者の職業に必要な能力を開発し、向上させるための能力開発訓練事業を行う事業主やその団体もしくは社会福祉法人等が能力開発訓練事業のための施設・設備の整備等を行う場合、その能力開発訓練事業を運営する場合、障害者である労働者を雇用する事業主が、その障害者である労働者に能力開発訓練事業を受講させる場合、及び障害者をグループにして事業所で就労することを通じて常時雇用する労働者として雇用するための教育訓練を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。 施設一覧 地域障害者職業センター     施 設 名 称      〒           所   在   地          電話番号      FAX 北海道障害者職業センター     001−0024札幌市北区北24条西5−1−1札幌サンプラザ5F      011−747−8231 011−747−8134 北海道障害者職業センター旭川支所 070−0034旭川市四条通8丁目右1号ツジビル5F         0166−26−8231 0166−26−8232 青森障害者職業センター      030−0845青森市緑2丁目17−2                 017−774−7123 017−776−2610 岩手障害者職業センター      020−0133盛岡市青山4−12−30                 019−646−4117 019−646−6860 宮城障害者職業センター      983−0836仙台市宮城野区幸町4−6−1              022−257−5601 022−257−5675 秋田障害者職業センター      010−0944秋田市川尻若葉町4−48                018−864−3608 018−864−3609 山形障害者職業センター      990−0021山形市小白川町2−3−68                023−624−2102 023−624−2179 福島障害者職業センター      960−8135福島市腰浜町23−28                 024−522−2230 024−522−2261 茨城障害者職業センター      309−1703笠間市鯉淵6528−66                 0296−77−7373 0296−77−4752 栃木障害者職業センター      320−0865宇都宮市睦町3−8                   028−637−3216 028−637−3190 群馬障害者職業センター      379−2154前橋市天川大島町130−1               027−290−2540 027−290−2541 埼玉障害者職業センター      338−0825さいたま市桜区下大久保136−1             048−854−3222 048−854−3260 千葉障害者職業センター      261−0001千葉市美浜区幸町1−1−3               043−204−2080 043−204−2083 東京障害者職業センター      110−0015台東区東上野4−27−3上野トーセイビル3F        03−6673−3938 03−6673−3948 東京障害者職業センター多摩支所  190−0012立川市曙町2丁目38−5立川ビジネスセンタービル5F   042−529−3341 042−529−3356 神奈川障害者職業センター     228−0815相模原市桜台13−1                  042−745−3131 042−742−5789 新潟障害者職業センター      950−0067新潟市大山2−13−1                  025−271−0333 025−271−9522 富山障害者職業センター      930−0004富山市桜橋通り1−18住友生命富山ビル7F        076−413−5515 076−413−5516 石川障害者職業センター      920−0856金沢市昭和町16−1ヴィサージュ1F          076−225−5011 076−225−5017 福井障害者職業センター      910−0026福井市光陽2−3−32                  0776−25−3685 0776−25−3694 山梨障害者職業センター      400−0864甲府市湯田2−17−14                 055−232−7069 055−232−7077 長野障害者職業センター      380−0935長野市中御所3−2−4                 026−227−9774 026−224−7089 岐阜障害者職業センター      502−0933岐阜市日光町6−30                  058−231−1222 058−231−1049 静岡障害者職業センター      420−0851静岡市葵区黒金町59−6大同生命静岡ビル7F       054−652−3322 054−652−3325 愛知障害者職業センター      453−0015名古屋市中村区椿町1−16井門名古屋ビル4F       052−452−3541 052−452−6218 愛知障害者職業センター豊橋支所  440−0888豊橋市駅前大通り1−27MUS豊橋ビル6F        0532−56−3861 0532−56−3860 三重障害者職業センター      514−0002津市島崎町327−1                  059−224−4726 059−224−4707 滋賀障害者職業センター      525−0027草津市野村2丁目20−5                077−564−1641 077−564−1663 京都障害者職業センター      600−8235京都市下京区西洞院通塩小路下る東油小路町803     075−341−2666 075−341−2678 大阪障害者職業センター      541−0056大阪市中央区久太郎町2−4−11クラボウアネックスビル4F 06−6261−7005 06−6261−7066 大阪障害者職業センター南大阪支所 591−8025堺市北区長曽根町130−23堺商工会議所5F       072−258−7137 072−258−7139 兵庫障害者職業センター      657−0833神戸市灘区大内通5−2−2               078−881−6776 078−881−6596 奈良障害者職業センター      630−8014奈良市四条大路4−2−4                0742−34−5335 0742−34−1899 和歌山障害者職業センター     640−8323和歌山市太田130−3                 073−472−3233 073−474−3069 鳥取障害者職業センター      680−0842鳥取市吉方189                   0857−22−0260 0857−26−1987 島根障害者職業センター      690−0877松江市春日町532                  0852−21−0900 0852−21−1909 岡山障害者職業センター      700−0821岡山市中山下1−8−45NTTクレド岡山ビル17F      086−235−0830 086−235−0831 広島障害者職業センター      732−0052広島市東区光町2−15−55               082−263−7080 082−263−7319 山口障害者職業センター      747−0803防府市岡村町3−1                   0835−21−0520 0835−21−0569 徳島障害者職業センター      770−0823徳島市出来島本町1−5                 088−611−8111 088−611−8220 香川障害者職業センター      760−0055高松市観光通2−5−20                 087−861−6868 087−861−6880 愛媛障害者職業センター      790−0808松山市若草町7−2                   089−921−1213 089−921−1214 高知障害者職業センター      781−5102高知市大津甲770−3                 088−866−2111 088−866−0676 福岡障害者職業センター      810−0042福岡市中央区赤坂1−6−19ワークプラザ赤坂5F      092−752−5801 092−752−5751 福岡障害者職業センター北九州支所 802−0066北九州市小倉北区萩崎町1−27             093−941−8521 093−941−8513 佐賀障害者職業センター      840−0851佐賀市天祐1−8−5                  0952−24−8030 0952−24−8035 長崎障害者職業センター      852−8104長崎市茂里町3−26                  095−844−3431 095−848−1886 熊本障害者職業センター      862−0971熊本市大江6−1−38−4F                096−371−8333 096−371−8806 大分障害者職業センター      874−0905別府市上野口町3088−170              0977−25−9035 0977−25−9042 宮崎障害者職業センター      880−0014宮崎市鶴島2−14−17                 0985−26−5226 0985−25−6425 鹿児島障害者職業センター     890−0063鹿児島市鴨池2−30−10                099−257−9240 099−257−9281 沖縄障害者職業センター      900−0006那覇市おもろまち1−3−25沖縄職業総合庁舎5F      098−861−1254 098−861−1116 高齢・障害者雇用支援センター 都道府県 郵便番号       所 在 地                電話番号     FAX番号 北海道  060−0004札幌市中央区北4条西4丁目1札幌国際ビル4F        011−200−6685 011−232−2720 青森   030−0822青森市中央1−25−9EME青森ビル6F            017−721−2125 017−721−2127 岩手   020−0024盛岡市菜園1−12−10日鉄鉱盛岡ビル5F           019−654−2081 019−654−2082 宮城   980−0021仙台市青葉区中央3−2−1青葉通プラザ13F          022−713−6121 022−713−6124 秋田   010−0951秋田市山王3−1−7東カンビル3F               018−883−3610 018−883−3611 山形   990−0039山形市香澄町2−2−31カーニープレイス山形3F        023−674−9567 023−633−3975 福島   960−8034福島市置賜町1−29佐平ビル8F               024−524−2731 024−524−2781 茨城   310−0803水戸市城南1−1−6サザン水戸ビル7F            029−300−1215 029−300−1217 栃木   320−0811宇都宮市大通り2−1−5明治安田生命宇都宮大通りビル2F    028−610−0655 028−610−0656 群馬   379−2154前橋市天川大島町130−1                 027−287−1511 027−287−1512 埼玉   330−0074さいたま市浦和区北浦和4−5−5北浦和大栄ビル5F       048−814−3522 048−814−3515 千葉   261−0001千葉市美浜区幸町1−1−3                  043−204−2901 043−204−2904 東京   130−0022墨田区江東橋2−19−12墨田公共職業安定所5F         03−5638−2284 03−5638−2282 神奈川  231−0003横浜市中区北仲通4−40商工中金横浜ビル5F         045−640−3046 045−640−3047 新潟   951−8061新潟市中央区西堀通6番町866号NEXT21ビル12F     025−226−6011 025−226−6013 富山   930−0004富山市桜橋通り1−18住友生命富山ビル7F          076−471−7770 076−471−6660 石川   920−0856金沢市昭和町16−1ヴィサージュ1F             076−255−6001 076−255−6077 福井   910−0005福井市大手2−7−15明治安田生命福井ビル10F        0776−22−5560 0776−22−5255 山梨   400−0031甲府市丸の内2−7−23鈴与甲府ビル1F            055−236−3163 055−236−3161 長野   380−0836長野市南県町1040−1日本生命長野県庁前ビル6F       026−269−0366 026−269−0377 岐阜   500−8856岐阜市橋本町2−20濃飛ビル5F               058−253−2723 058−253−2728 静岡   420−0851静岡市葵区黒金町59−6大同生命静岡ビル7F         054−205−3307 054−205−3308 愛知   450−0002名古屋市中村区名駅4−2−28名古屋第二埼玉ビル4F      052−533−5625 052−533−5628 三重   514−0002津市島崎町327−1                    059−213−9255 059−213−9270 滋賀   520−0056大津市末広町1−1日本生命大津ビル3F            077−526−8841 077−526−8842  京都   600−8006京都市下京区四条通柳馬場西入立売中之町99四条SETビル5F   075−254−7166  075−254−7110 大阪   541−0056大阪市中央区久太郎町2−4−11クラボウアネックスビル3F   06−4705−6927 06−4705−6928 兵庫   650−0023神戸市中央区栄町通1−2−7大同生命神戸ビル2F        078−325−1792 078−325−1793 奈良   630−8122奈良市三条本町9−21JR奈良伝宝ビル6F           0742−30−2245 0742−30−2246 和歌山  640−8154和歌山市六番丁24ニッセイ和歌山ビル6F           073−499−4175 073−499−4179 鳥取   680−0835鳥取市東品治町102明治安田生命鳥取駅前ビル3F       0857−50−1545 0857−50−1520 島根   690−0887松江市殿町111山陰放送・第一生命共同ビル3F        0852−60−1677 0852−60−1678 岡山   700−0907岡山市北区下石井2−1−3岡山第一生命ビル4F         086−801−5150 086−801−5171 広島   730−0013広島市中区八丁堀16−14第2広電ビル7F          082−511−2631 082−511−2632 山口   753−0074山口市中央5−7−3山口センタービル2F            083−995−2050 083−995−2051 徳島   770−0823徳島市出来島本町1−5                   088−611−2388 088−611−2390 香川   760−0017高松市番町1−6−1住友生命高松ビル8F            087−813−2051 087−813−2061 愛媛   790−0006松山市南堀端町5−8オワセビル4F              089−986−3201 089−986−3202 高知   780−0053高知市駅前町5−5大同生命高知ビル7F            088−861−2212 088−861−2214 福岡   810−0073福岡市中央区舞鶴2−1−100RE福岡赤坂ビル5F        092−718−1310 092−718−1314 佐賀   840−0816佐賀市駅南本町5−1住友生命佐賀ビル5F           0952−37−9117 0952−37−9118 長崎   850−0862長崎市出島町1−14出島朝日生命青木ビル5F         095−811−3500 095−811−3501 熊本   860−0844熊本市水道町8−6朝日生命熊本ビル3F            096−311−5660 096−311−5661 大分   870−0026大分市金池町1−1−1大交セントラルビル3F          097−548−6691 097−548−6692 宮崎   880−0805宮崎市橘通東5−4−8岩切第2ビル3F            0985−77−5177 0985−77−5178 鹿児島  892−0844鹿児島市山之口町1−10鹿児島中央ビル11F         099−219−2000 099−219−2007 沖縄   900−0006那覇市おもろまち1−3−25沖縄職業総合庁舎4F        098−941−3301 098−941−3302 中央障害者雇用情輻センター 郵便番号 住     所 電話番号 FAX番号 105−0022 東京都港区海岸1−11−1 ニューピア竹芝ノースタワー13階 03-5400-1626 03-5400-1632 03-5400-1608 ※平成24年3月中旬以降の所在地は以下になります。 130−0022 東京都墨田区江東橋2−19−12 墨田公共職業安定所5階 03−5638−2792 ※その他の関係機関等については当機構ホームページの以下のアドレスをご覧下さい。  (https://www.jeed.go.jp/links/links.html) 参考文献 ダウン症候群  (D.W.スミス A.A.ウィルソン 長崎ダウン症児研究会訳 学苑社 1975) リハビリテーション  (砂原茂一 岩波新書 1980) てんかん病 専門医からのアドバイス  (和田豊治監修 掛川紀夫著 真興交易(株)医書出版部 1981)自閉児―お母さんと先生のための行動療法入門―  (梅津耕作編 有斐閣選書 1981) 知恵おくれの人の職業生活を進める条件  (手塚直樹 光生館 1986) 障害者は、いま  (大野智也 岩波新書 1988) インフォームド・コンセント  (水野肇 中公新書 1990) 自閉症の謎を解き明かす  (ウタ・プリス著 冨田真紀 清水康夫訳 東京書籍 1991)てんかんテキスト 理解と対処のための100問100答 (国療静岡東病院院長 清野昌一、副院長 八木和一監修 南江堂 1991) lCD−10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン  (World Health Organization 医学書院 1993) 療育技法マニュアル 第8集 知的障害者の就労援助―全国各地の取組み― (財団法人神奈川県児童医療福祉財団 1994) DSM−W 精神疾患の診断・統計マニュアル  (The American Psychiatric Association 高橋三郎 大野 裕 染矢俊幸訳 医学書院 1994) 知的発達障害Q&A生活支援ハンドブック  (北沢清司 中央法規出版 1996) 就労へのためらいにこたえる・40の質問とこたえ  (大山泰弘ほか 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会 1996)精神障害者のための就労支援ガイドブック  (野中猛・松為信雄編 金剛出版 1998) 知的障害者の雇用のために  (労働省職業安定局障害者雇用対策課編 社団法人雇用問題研究会 1998) 障害者雇用マニュアル  (日経連障害者雇用相談室編著 日本経団連出版 1998)働くために・働きつづけるために「働く・はたらく」改訂版 (関宏之ほか 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会 2000) 精神障害者ケアマネジメントマニュアル  (寺田一郎 中央法規 2000) 障害者が社会に出る―その後の五人の人生―  (松兼功 筑摩書房 2000) 平成17年知的障害児(者)基礎調査結果の概要  (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 2007) 学習障害(LD)及びその周辺の子どもたち  ―特性に対する対応を考える―  (尾崎洋一郎、草野和子、中村敦、池田英俊 同成社) 平成20年度障害者雇用実態調査の概要について  (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課 2009) アスペルガー症候群と高機能自閉症  その基本的理解のために  (ゲーリー・メジホフ ビクトリア・シェア リン・アダムス著 服巻繁 梅永雄二 服巻智子訳 エンパワメント研究所 筒井書房 2003) 注意欠陥/多動性障害  ―AD/HD―の診断・治療ガイドライン  (AD/HDの診断・治療研究会 上林靖子 齋藤万比古 北道子 じほう 2003) 用語索引 【ア】 AAMR[The American Association on Mental Retardation] (掲載頁/P8) アメリカ精神遅滞協会 ADHD[Attention Deficit HyperactMty Disorder] (掲載頁/P16) 注意欠陥多動性障害。落ち着きがなく、注意力が不足し、対人関係がうまくとれないのがこの障害の特徴。知的障害とは少し異なる。 IQ[lntelligence Quotient] (掲載頁/P8) 知能指数。100を平均とする。 アスペルガー症候群 (掲載頁/P14) 自閉症の―タイプ。コミュニケーションに障害があり柔軟性に乏しい面があるが一見自閉症と見えない場合が多い。 【イ】 意思表示カード (掲載頁/P17) 「できました」「わかりません」「もう一度教えてください」等の言葉が書かれた代替コミュニケーション・ツール。 【ク】 グループホー厶 (掲載頁/P37.P43) 少人数の障害者が、施設ではなく、必要な援助を受けながら共同で生活する地域の住宅のこと。 【コ】 合同面接会 (掲載頁/P18.P19.P20) 都道府県労働局(ハローワーク)が主催する、求職者、企業担当者、関係支援機関の職員が一堂に会する面接会。 国立職業リハビリテーションセンター (掲載頁/P45.P48) 高齢・障害・求職者雇用支援機構の運営する組織。障害者に対する職業能力開発(職業訓練)等を行なっている 雇用率制度 (掲載頁/P6) 常時雇用する労働者の数に対し、一定割合数の障害者雇用の義務を事業主に課す制度。 【シ】 障害者介助等助成金 (掲載頁/P60) 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成する助成金。 障害者職業カウンセラー (掲載頁/P18.P19.P42.P52) 事業主や障害者の相談を専門に行なう職員で、地域障害者職業センター等に配置されている。 常同行動 (掲載頁/P13) 同じ動作、身振り、姿勢、言葉などが一定時間以上くり返されること。 障害程度の区分 (掲載頁/P24) 自治体によって表記方法が異なるが、概ねA(東京都の場合1度、2度)が「重度」、B(東京都の場合3度、4度)が「その他=重度以外」となっている。 職場適応援助者助成金 (掲載頁/P60) 障害者に対する職場適応援助者による援助の事業を行う社会福祉法人等(第1号)並びに職場適応援助者を配置し援助を実施する事業主の方(第2号)への助成金。 職場適応訓練 (掲載頁/P27.P28) 都道府県知事が事業主に委託し、身体障害者、知的障害者、精神障害者等の能力に適した作業について6ヶ月以内(中小企業及び重度障害者は1年以内)の実施訓練を行い、職場の環境に適応することを容易にし、訓練終了後は事業所に引き続き雇用してもらう制度。 ジョブコーチ (掲載頁/P18.P19.P20.P21.P25.P27.P28.P42.P43.P51.P52) 障害者が職場に対応できるよう、障害者の職場に出向いて障害者に対する直接的・専門的支援や企業の担当者や職場の従業員に対して、障害を理解し配慮するための助言、また必要に応じて仕事の内容や職場環境の改善の提案などを行なう。 自閉症 (掲載頁/P13.P14.P35.P40) 言葉によるコミュニケーションが難しく、意志伝達、言葉の理解等が難しい障害。 【セ】 精神保健福祉センター (掲載頁/P23.P24) 精神保健福祉に関する相談や、精神障害者の社会復帰の支援等を行なう機関。 選択制緘黙 (掲載頁/P17) 本来話す能力を持っているにも関わらず、特定の場面(学校や職場)で全く話さない人、そういう状態。 【タ】 ダウン症候群 (掲載頁/P16) 染色体の異常に起因する障害。 ダブルカウント (掲載頁/P24) 重度の障害者を雇用した場合に、1人をもって2人を雇用したこととして取り扱うこと。 【チ】 地域障害者職業センター (掲載頁/P18.P19.P20.P23.P24.P27.P28.P32.P42.P43.P52.P61.P62) 高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営。各都道府県に設置されており障害者や事業主の支援を専門とする障害者職業カウンセラーやジョブコーチが、職場での具体的な対応方法、職場定着に関する問題等の相談や支援を行なっている。地域障害者職業センター内の高齢・障害者雇用支援センターでは、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請等の受付等も行っています。 地域資源 (掲載頁/P8) 利用者ニーズ充足のために活用される地域の物的・人的資源。 知的障害者更生相談所 (掲載頁/P23.P24) 知的障害者の社会参加と自立を図るために専門的な指導を行うとともに、療育手帳の判定・施設入所等に伴う医学的・心理学的・職能的判断を行っている機関。 知能指数 (掲載頁/P8) IQに同じ。 注意欠陥多動性障害 (掲載頁/P16) ADHDに同じ。 中央障害者雇用情報センター (掲載頁/P18.P19.P2.P22.P63) 高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営。事業主への相談等を行なっている。 【テ】 てんかん (掲載頁/P15) 発作が反復してあらわれる、脳の疾患。 【ト】 特定求職者雇用開発助成金 (特定就職困難者雇用開発助成金) (掲載頁/P59) 身体障害者、知的障害者又は精神障害者を雇い入れる事業主に対して、その従事者に支払った賃金の一部を、雇い入れた一定期間支給する助成金。 特例子会社 (掲載頁/P7) 事業主が障害者の雇用のために特別に配慮した子会社を設立し、厚生労働大臣の認定を受けると、子会社の労働者も親会社に雇用されているとものみなして、雇用率を計算できる制度。 トライアル雇用 (掲載頁/P27.P28.P50) 企業に、障害者を試行雇用の形で受け入れていただき、本格的な障害者雇用に取組むきっかけづくりを進める事業。 【ノ】 ノーマライゼーション (掲載頁/P22) 「障害のある人も家庭や地域でともに生活ができるようにする社会づくり」のこと。1950年代後半にデンマークからはじまる。 【ハ】 反響言語 (掲載頁/P13) 話しかけられた言葉をそのまま繰り返すこと。 【ホ】 法定雇用率制度 (掲載頁/P6) 社会連帯の理念に基づき、常時雇用する労働者の数に対する一定割合(障害者雇用率)の数の身体障害者または知的障害者を雇用する義務を事業主に課す制度。 【リ】 療育手帳 (掲載頁/P23.P24) 知的障害者への税の減免、各種の手当や福祉サービス等を受けやすくするため、昭和48年度から実施されている。 障害者職域拡大マニュアルNo.14 知的障害者の職場定着推進マニュアル 平成16年3月発行(平成23年1月5刷) 発行 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部雇用開発課 URL https://www.jeed.go.jp/