障害者職域拡大マニュアル 11 在宅勤務障害者雇用管理マニュアル 障害のある人を在宅勤務の形態で雇用する場合に 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 はじめに  今日、IT関連の情報通信技術の進歩はめざましく、障害者雇用の分野にも大きな可能性を与えており、身体等に障害のある方々が通勤や就労上の困難を克服し、在宅勤務の形態で主としてパソコンやインターネット等を利用した職種に雇用される機会が拡がってきています。  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構では、事業主等の皆様が障害のある方々を在宅勤務の形態での雇用を進めるに当たっての手引きとなるように、在宅勤務における雇用管理上の配慮事項を中心にQ&A形式で分かりやすくとりまとめた本マニュアルを平成9年に作成いたしました。本マニュアルはその後も増刷を行い、事業主等の皆様に対し広く配布してまいりました。  今般、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下、「法」という。)の一部改正が行われ、障害者雇用納付金制度に基づく助成金や在宅就業障害者に対する支援措置の拡充等が施されることになりました。これを受けて、本マニュアルの改訂を行うこととし、今回の法改正の内容等新たな動きに合わせて掲載情報の充実を図りました。  障害者の在宅勤務の形態で雇用する方式が一般企業に取り入れられるようになってから、これまで在宅勤務を行う障害者数は徐々に増えてきていますが、まだ十分に普及しているとは言えない状況にあります。しかし、在宅勤務方式は、通勤が困難な身体等に障害のある方々にとってきわめて有効な勤務形態です。事業主の皆様が障害者雇用の促進と安定のために在宅勤務を導入されるようお願い申し上げると共に、本マニュアルがそのためにお役に立つことを念じています。  本マニュアルの作成にあたり、ご協力いただいた各企業や社会福祉法人東京コロニー、その他関係者の皆様に改めて厚く感謝申し上げます。  平成18年3月 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 目 次 第1章 解説編 −障害者の在宅勤務の状況について− 1 Q1. 在宅勤務って何ですか? 1 Q2. 日本で在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか? 3 Q3. 海外で在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか? 5 Q4. 日本の障害のある人の在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか? 7 第2章 実務編 Q5. 在宅勤務者受け入れの流れ 9 (1)雇用管理 11 制度・助成金 11 Q6. 障害のある人の求人・求職 11 Q7. 障害のある人の在宅雇用に関する雇用保険等の取扱い 13 Q8. 障害のある在宅勤務者の障害者雇用率制度の適用 15 Q9. 在宅勤務での労働者災害補償保険の取扱い 17 Q10. 在宅勤務における助成金の利用 19   雇用形態・処遇・契約 21 Q11. 在宅での雇用形態 21 Q12. 在宅勤務者の処遇 昇給、賃金面の考え方 23 Q13. 在宅での勤務時間・休日の定め方と就業管理の方法 25 Q14. 就業規則に適合しない場合の契約方法 27 業務・指示・報告 29 Q15. 在宅での業務内容の決め方 29 Q16. 仕事の指示や報告等業務管理の方法 31 Q17. 出勤の頻度 33 Q18. 在宅勤務者の所属、担当者(上司) 35 福利厚生・コミュニケーション・教育 37 Q19. 職場とのコミュニケーション、社内情報の提供の工夫 37 Q20. 教育訓練・能力開発の方法と配慮 39 Q21. 福利厚生・健康管理についての配慮 41 障害への配慮 43 Q22. 身体状況に対する配慮 43 Q23. 障害のある人が利用できる社会資源について 45 (2)在宅勤務のための機器 47 Q24. 在宅での業務のため設置する適切な機器 47 Q25. 障害状況にあわせた機器の工夫 49 Q26. 機器の購入について 51 Q27. 在宅勤務のための機器購入の助成 53 Q28. 機器利用に伴う光熱費、消耗品等の経費の取扱い 55 Q29. 機器の更新 57 (3)作業環境 59 Q30. 専用の作業室の必要性 59 Q31. 障害状況に合わせた作業環境 61 Q32. 作業環境改善における会社の関わり 63 Q33. 障害状況にあわせた什器類(机、椅子、棚など)の工夫 65 Q34. 在宅勤務者本人ができる工夫 67 Q35. 職場と同程度の環境となるような配慮 69 ・地域障害者職業センター一覧 71 ・駐在事務所一覧 72 ・都道府県協会一覧 72 ・引用・参考文献 第1章 解説編 障害者の在宅勤務の状況について Q1 在宅勤務って何ですか? A1 在宅勤務とは、「労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤を免除され、かつ自己の住所又は居所において勤務すること」をいいます。つまり、「自宅において仕事をすること」を指しますが、最近では、電話やパソコン、インターネットが家庭に導入、普及していることなどを背景として、情報通信機器を活用して仕事をする形態が増えています。これを「テレワーク:遠く離れたところ(TELE)で仕事を行うこと(WORK)」とも言い、在宅勤務はテレワークの一つの形態としてとらえられています。    テレワークには、在宅勤務の他に、自宅の近くにオフィスを設け、通勤時間を短縮する「サテライトオフィス」、「テレワークセンター」、営業マンが携帯パソコンなどを持って活動する「モバイルオフィス」などがあります。    在宅勤務が普及することによって、個人、企業、社会のそれぞれに効果がもたらされると言われており、個人では、勤務者のゆとりの創出、通勤困難の解消、また、主婦・高齢者・障害者などの通常の勤務が困難な人たちへの就労機会の確保などがあげられています。  生産性の向上、優秀な人材の確保、オフィスコストの削減、危機管理への対応策としても在宅勤務方式を採用する企業があります。    社会的には、大都市圏の一極集中の是正・地域の活性化、大気汚染などの環境問題への対応策としてもとりあげられています。    また、在宅勤務が広く普及する条件としては、情報通信環境の向上が必要不可欠であり、パソコンの普及、インターネットなどのマルチメディア化の進展、ブロードバンドや光ファイバーなどの通信環境の向上などによって在宅勤務が普及してきています。 コラム T-1 個人における効果 ・勤務者のゆとり創出 ・通勤困難の解消 ・新たな就労機会の確保 企業における効果 ・生産性の向上 ・優秀な人材の確保 ・コストの削減 ・危機管理対策 社会における効果 ・一極集中の是正 ・地域の活性化 ・環境問題への対応 情報通信環境の向上 ・パソコン、インターネットの普及 ・マルチメディア化の進展 ・通信インフラの向上 第1章 解説編 障害者の在宅勤務の状況について Q2 日本で在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか? A2 IT技術を活用することにより、会社のみではなく、自宅や色々な場所で働くことができる、新しい業務形態が創出されました。つまり、時間や場所に関係なく業務遂行が可能になったわけです。これをテレワーク(テレ=遠隔、ワーク=働く)といいます。在宅就業が広がりを見せてきたのは、このようなテレワークの進展によるものであり、そのためには、IT基盤を整備することが不可欠となります。    日本では2001年に「e-Japan戦略」のもと、政府の方針としてIT基盤の整備に取り組んできました。これによりインターネットは広がり、高速通信網も飛躍的に拡大しました、このような状況のもとで、2003年にはIT戦略本部が「e-Japan戦略U」を策定しました。e-Japan戦略Uでは、21世紀にふさわしい社会として「社会全体が元気で、安心して生活でき、新たな感動を享受できる、これまで以上に便利な社会」とし、その中の「先導的取り組みの7分野」及び「IT社会基盤の整備」で実現したい事を具体的な数値目標として明示しています。7分野の中には「就労・労働」という項目があり、ここでは電子的手段で情報を入手し職を得る人が2005年までに年間100万人、テレワーカーが2010年までに就業者人口の2割にするなどを掲げています。このように、テレワーク環境はさらに良好な状況へと変わりつつあり、在宅就業にも追い風となっています。なお、2002年時点におけるテレワーク人口推計値(週8時間以上テレワークを実施)は、雇用型テレワーカー311万人、自営型テレワーカー97万人で合計408万人となっており、雇用者及び自営業に占めるテレワーカーの比率はそれぞれ5.7%、8.2%です。  以下にテレワークを実施している企業の事例を紹介します。なお、この事例は日本テレワーク協会刊「テレワーク実施事例集」の一部で、詳細は同誌をご覧ください。 日本におけるテレワーク実施企業の事例 旭硝子株式会社 東京都 ガラス製造業 約900億円/約6,300名 ・同社は2001年4月1日に、それまで全国6ヵ所にあったガラス事業部の支店を廃止し、支店に代わって本社内の販売グループが全国の営業活動を一括して管理する体制に移行した。 ・支店の廃止にともない、全国の20数名の営業スタッフが、自宅から顧客先に直行直帰をするモバイル勤務に移行した。 アップルコンピュータ株式会社 東京都 コンピュータ機器の製造販売 約54億円/約500名 ・同社は1997年にテレワークを制度として導入した。 ・導入後わずか6年のうちに、ADSLを始めとするテクノロジーが想像以上に進歩・普及したことも大きくプラスに働いている。自宅からでもオフィスにいるのと同じようにサーバーにアクセスでき、データのやりとりもまったく不自由がないように、各自にセキュリティカードが貸与されている。 ・最近開発されたテレビカメラ iSightも、書類の文字が読めるほどの高画質を実現して、今後のテレワークの可能性をますます広げるものと期待されている。 日本IBM株式会社 東京都 コンピュータ機器の製造販売、情報システム、ソフトウェア、ハードウェア、コンサルティング、その他IT関連の製品、サービスによるソリューション提供 約1,353億円/20,000人以上 ・日本IBMはいち早く営業系にモバイルワークを導入したことでも、テレワーク実施状況には先進的な取り組みをしてきているが、2001年には「e-ワーク」と呼ばれる、在宅勤務制度を導入した。 ・同社のe-ワーク制度は、IBMが世界的な規模で展開しているワーク/ライフ・バランスを提供していくという戦略の一環であり、仕事と生活の両立を可能とすることによって、社員の能力を継続して十分に発揮できるような環境を提供することに主眼がある点が重要である。あわせて、同社が推進しているe-ビジネスを自ら実践し、勤務場所や勤務形態に柔軟性を持たせるワーク・フレキシビリティの実現や向上を目指したものである。 ・2002年12月の時点で実施者は約2,000人である。多くの人は1週間の内1〜3日、もしくは1日のうち一部の時間をe-ワーク(在宅勤務)するというパターンであるが、フルタイム在宅で仕事をしている人もいる。e-ワークは管理職も適用対象であり、課長や部長クラスの利用者も多い。 ・子どもの夏休み期間だけ半日e-ワークするという社員もみられ、e-ワークはライフだけでなく、季節によっても使い分けがある。 日本オラクル株式会社 東京都 ソフトウェアプロダクトの販売及びソフトウェアプロダクトの利用を支援する各種サービスの提供 約220億円/約1,400名 ・2001年から、在宅勤務制度を試験的に導入、2004年度まで正式導入の可否について検証を行ってきた。 ・その結果、業務運営上、特に支障がないと判断され、2004年9月に就業規則を改訂し、正式に在宅勤務制度を全社展開することとした。 ・これは「会社への通勤による業務」という従来の枠組みにとらわれず、「場所を問わない勤務制度」=「Work@Everywhere」というコンセプトに基づいており、在宅勤務に関する規程は「Work@Homeプログラム規程」と称している。 ・「Work@Homeプログラム規程」では、通常勤務をしている中で、特定の日を在宅勤務とするType Bと、育児・介護・障害・傷病などの事由に配慮したType Aの2種類の規程がある。 ・Type Aの場合は、各事情に応じた業務量の軽減がある。 ・現在の実施状況は、以下の通りである。  *対象部門:全部門  *制度利用実績:約150名(2005年5月実績) ・現在、大きな障害も無く運用できていることから、本制度利用者は、今後増加していく見通しである。 日本電気株式会社 東京都 コンピュータ機器等の製造販売 ・同社については、ビジネスとして展開しているITシステムについての調査を行なった。これらは、実用化可能で、かつ最先端のシステムをデモブースにも展示している。テレワークを実施するに当って、参考になるところが多いと思われる。 ・なお、同社は営業・SE系のスタッフにモバイル勤務を導入している。 富士通株式会社 東京都 コンピュータ機器の製造販売 約3,200億円/約34,000名 ・一部事業所において、本部長・事業部長の約30人を除く社員約4,000人全員が固定席をもたないフリーデスク制(ノンテリトリアルオフィス)とし、イス席数は社員数の約70%とした。 ・社内はユビキタスワークプレイスと称しているが、実質は社内テレワークを導入。 ・勤務している人の多くはモバイル勤務を実施している。 ・制度化は行なっていないが、健康上の理由などにより通勤が困難なケースについて、個別に適用している。 (1)継続的な勤務を可能とする勤務形態 (2)専門性の高い人材の確保 (3)成果を上げやすい環境の提供  という本人と会社の互いのニーズに合致するしくみとして導入。 ・ 在宅勤務については、有効性は会社として認識しているが、企業としての制度化は今後の課題であると考えている。 ・スタート当初は座席が不足気味であったが、その後集積もなくなり、デスク数は充分足りている。 マイクロソフト株式会社 東京都 コンピュータソフトウェア及び関連製品の営業、マーケティング 約5億円/約1,100名 ・同社の社内IT環境は、早い時期から全社員が日常の業務で電子メール、インターネットアクセス、社内LAN上のデータを自由に活用できるように整備されており、日常のコミュニケーションは、国内外や社内外を問わず電子メールシステムとボイスメールシステムが主要ツールとして活用されている。 ・さらに、社内のみならず、国内外の出張先や社外においても高度なセキュリティ管理システムの元、自由にネットワークにアクセスし活用できるIT環境が整備されているため、世界のどこの場所にいてもオフィスにいるのと遜色がない仕事環境が提供されている。 第1章 解説編 障害者の在宅勤務の状況について Q3 海外で在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか? A3 在宅勤務などのテレワークは、欧米などの海外においても普及しています。特に、アメリカはテレワーク先進国であり、1999年以来毎年アメリカテレワーク協会(ITAC)がAT&Tの後援で調査を実施しています。また、公共部門における導入が進んでいると言われており、ここではアメリカ連邦政府におけるテレワークの取り組みについて紹介します アメリカ連邦政府におけるテレワーク 1.テレワークの法制化  連邦政府では、1990年代初頭からGSA(General Services Administration、総務庁)が主導権をとってテレワークを推進してきた。テレワーク実施者がなかなか増加しないという問題を抱えていたため、2000年10月のPublic Lawで、各省庁にテレワーク実施が義務づけられた。  この法律では「連邦政府の各省庁は、従業員の生産性を低下させずにテレワークに適格と思われる従業員を最大限テレワークさせるためのポリシーを策定しなければならない。この法律が施行されてから6ヶ月以内に、適格者の25%がテレワークを実行し、その後各年ごとに25%ずつ拡大して行かねばならない」ということが規定され、条文通りに読むと2004年には適格者の100%がテレワークをしなければならないということが定められた。 2.テレワーク推進の背景  連邦政府がテレワーク推進を図っている理由はいくつかあげられる。 @交通混雑緩和:首都ワシントンDCの朝夕の道路の混雑はかなり激しく、テレワークによって交通混雑を緩和させようという考え方。 A環境問題への対応:上記交通混雑とも関わるが、通勤に使われる車を減少させることによって、排気ガスを削減しようという考え方。 B公共工事の削減:道路の混雑が進むと、新たな道路や橋を建設することが必要となり、連邦政府の公共工事が増加してしまうため、テレワークによって混雑を回避し、そのことによって間接的に公共工事を削減しようという考え方。 C危機管理対策:9.11以降、災害やテロなどが発生した際に、業務を継続できるような仕組みとしてテレワークを位置付けるという考え方。 Dファシリティコストの削減:テレワークの導入によるオフィスコストの削減。 E人材の確保:我が国と異なり、アメリカの政府部門は常に民間企業との間で人材確保の競争を行っているため、働く環境を整えることで、優秀な人材を長期間にわたって確保しておきたいという考え方。 3.テレワーク実施の状況  Public Lawにより2004年までに、各省庁が選出したテレワーク適格者の100%を実施に移行させるとなっているものの、2003年半ば時点での実施比率は、適格者の10%程度にとどまっている模様である。  実施比率が上がらない理由としては、マネージャーに長年蓄積された「組織文化」の変革がなかなか思うように進まないことが最も大きな原因として指摘されている。つまり、アメリカの連邦政府ですら、「目の前の管理」という従来からの組織論理を変革することが容易ではないということであろう。 [ニューイングランド地域におけるGSAのテレワークの現状] 1.テレワーク推進組織  テレワークプログラムを推進するための特別委員会が設置されている。  委員会は、テレワークの定義、適用される法律、テレワークに用いる情報技術などについての検討を行い、参加者を増やすための戦略づくりを行った。 2.テレワーク導入前の調査   従業員とマネージャーに対して、導入前の意向調査を実施した。従業員の多数はテレワークを希望したが、マネージャーの中には抵抗感や疑念を持つものが多数みられた。 3.パイオニアプログラムの実施  マネージャーの抵抗は依然としてあったが、テレワーク実施者のパフォーマンスが低下するような場合には、テレワークを中止するという前提条件で、マネージャーを説得してプログラムをスタートさせた。  結果的には、パイオニアに選ばれた人達のパフォーマンスは低下することなく、反対していたマネージャーは、テレワーク実施者は実施以前に比べてよりハードに仕事をしていると報告している。  本格実施の段階においては、こうした反対意見を持っていたマネージャーが、テレワークの強力な推進者になっている。 4.自分の仕事を見直す機会  ニューイングランド地域のGSA職員は、パイオニアプログラムの実施に先立って、自分の行っている仕事の内容を見直す機会を与えられた。  このミーティングでは、自分の仕事の内容は何か、その仕事を行うのに必要な情報技術は何か、その仕事はオフィスでないとできない仕事か、災害などが発生した時にどのような対応策が考えられるか、などをグループ単位で議論することが行われた。  その結果、自分達が行っている仕事は「時間と固定的な場所」だけで行うことには向いていないことに気付き、テレワークでできる仕事の計画を行うことになった。各グループは、自分達の仕事の内容ややり方に向いたテレワークはどのようなものであるかを検討しテレワーク実施のプランづくりにまで発展した。 5.テレワークの効果  導入後1年経過した時点での効果としては以下のようなものがあげられている。   *ある部門では、収入が前年に比べて15%向上した。   *パフォーマンス向上や地球環境への対応などに関する各種の表彰を受けた。 (出典 社団法人日本テレワーク協会「テレワーク実施事例集」抜粋) 第1章 解説編 障害者の在宅勤務の状況について Q4 日本の障害のある人の在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか? A4 一般のテレワークの普及とともに、移動の制約等から企業に通勤して働くことに困難を抱えている重度障害者にとっても在宅での就業の可能性が広がり、それを支援する新たな動きが出てきています。国や自治体では、障害者の在宅就業の支援やIT技能向上のための講習などを展開する中で、障害者の在宅就業の推進を図ってきました。  障害者の在宅勤務については、平成3年に在宅勤務者が障害者雇用率制度および特定の助成金の対象となり、平成17年には、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部改正により、在宅勤務コーディネーター助成金が新設されました(A10参照)。また、平成17年の法改正では、企業に雇用される在宅勤務者だけでなく、請負型の在宅就業を行う障害者(在宅就業障害者)に対して企業の積極的な仕事の発注を奨励することを目的として、在宅就業障害者および障害者の在宅就業を支援する団体(厚生労働大臣の登録を受けた在宅就業支援団体)に仕事を発注した事業主に対して、障害者雇用納付金制度に基づく特例調整金や特例報奨金が支給される仕組みが創設されました。(注1)このように、障害のある在宅勤務者などへの支援が整備されつつあります。  在宅勤務については、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であることから、労働時間の算定が難しいと言われています。そのため、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(注2)が策定され、事業場外労働のみなし労働時間制を適用することにより、在宅勤務の労務管理運用がより適切に行えるようになりました。このような社会環境の変化により、在宅勤務は今後の就業形態の一つとして大きな位置を占めるようになるものと思われます。  障害者の在宅勤務者数や在宅勤務制度を導入している企業・団体等の正確なデータは現時点では残念ながらありませんが、障害者の在宅雇用事例としては、当機構ホームページの「障害者の在宅就業支援」(https://www.challenge.jeed.go.jp/index.html)で紹介している「在宅就業の事例」や「在宅就業支援団体」などをご覧ください。 (注1)「障害者雇用対策」 (http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha.html) (注2)「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の策定について (http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/03/tp0305-1.html) コラム T-2 【トピックス】 在宅雇用をバックアップ  ITを活用した業務が障害者の就業に極めて有効であると言う認識のもと、障害のある人を対象としたパソコンセミナーを開いたり、障害のある人と企業を結ぶ在宅勤務の支援を行ったりしている非営利の市民組織が全国に多数あります。また、遠隔地からのセミナー受講希望者に応じるため、インターネット上で運営する通信講座を始めている機関もあります。このような中から、企業の在宅雇用に結びつく人も、今後更に増えていくものと思われます。 第2章 実務編 Q5 在宅勤務者受け入れの流れ 障害のある人の在宅勤務を検討するとき、どのような手順で進めたらよいでしょうか? A5 障害のある人を在宅で雇用したいと考える企業がこのような手続きをしていくというひとつの代表的な手順をフローにまとめてみました(コラムU−2参照)。ここにある事項について、適切な時期に検討していくことは、在宅勤務を軌道にのせていくために非常に大切なことです。 コラム U-1 【事例】プロジェクトチームの結成  C社は以前から障害者雇用に熱心な会社ですが、車椅子利用の在宅勤務者を雇用するのは初めてのことでした。そこで、入社の1年前に社内にプロジェクトチームを結成し、問題点の洗い出しと検討を行いました。プロジェクトチームのメンバーは、人事部、人材開発部、法務室、施設課、診療所、そして所属部署となるシステム部です。具体的に検討した内容は、以下のようになっています。 ・施設の改善(トイレ改造の必要有無)、通路の整備・出社時の駐車場確保 ・コンピュータ設備の仕様、導入機器の改善 ・自宅の改造 ・業務内容 ・受け入れ体制(教育) ・関係法規の調査 ・助成金の調査 ・健康管理(年に一度の健康診断の実施) [C社のヒアリングより] コラムU-2 在宅勤務者受け入れにあたっての流れ(フロー) 注:数字は対応するQ&Aの番号を示しています。 採用の検討開始 在宅勤務の受け入れセクション・業務の検討 7〜9、15 受け入れ検討プロジェクトの発足から入社まで (社内への啓蒙、業務内容・受け入れセクション・教育方法の検討、関連法規の調査) 求人登録 求職 6 面接 雇用形態・処遇の決定・利用できる助成金の検討 7〜13、17、21〜23 作業環境の整備 30〜35 必要機器の検討 24〜27 指示・報告方法の検討 16〜18 契約・覚書き 14、28 採用決定 採用の決定 機器の設置 26 採用時の教育 20 職場とのコミュニケーション 19 雇用の継続 雇用継続への配慮 18、19 レベルアップ研修 20 機器の更新 29 第2章 実務編 (1)雇用管理 制度・助成金 Q6 障害のある人の求人・求職 障害のある人を在宅勤務の形態で採用したいと思いますが、どのような点に留意すればよいでしょうか? A6 障害者を雇用しようとする事業主に対しては、求人への対応から助成金、相談等のアフターケアまで、さまざまな機関が必要なサービスを提供しています。まずは、公共職業安定所に求人申込みをする際、在宅勤務を考えている旨を伝えてください。障害者雇用に関わる厚生労働省関連の主な機関は、右の図のとおりです。  ただし、在宅勤務については現在、事例が必ずしも多いとはいえないので、各機関がもてる情報を総動員し、事業主の方と知恵を出し合いながら、一つひとつ問題を解決していく形になると考えられます。先に、在宅雇用方式を取り入れた企業や在宅勤務に取り組んだ経験を持つ障害者支援団体等からの情報収集も役に立ちます。  一方、事業所においては、雇用管理、必要な機器、作業環境など、在宅勤務者を受け入れる体制づくりをする必要があります。  雇用管理面に関していえば、勤務時間の管理、業務進行管理、業務連絡、研修・教育などの方法について、従来の雇用管理体制をそのまま適用することが不都合な場合が生じてくるものと考えられます。これらについて、本書のようなマニュアルを活用して準備することもできますが、すでに在宅勤務方式を採用している事業所や団体から情報を得て参考にすることも有効です。また、一定期間、在宅による業務を試行的に実施し、障害者本人の意見や要望も考慮しながら、この間に明らかになった問題点を一つひとつ解決するという形で、在宅勤務を軌道に乗せるための態勢づくりをしていった事例もあり(コラム参照)、こうした方法も有効と考えられますので参考にしてください。 コラム U-3 【事例】 障害のある人の在宅勤務に助言  Bセンターは重度の障害のある人を対象として、在宅でのコンピュータ教育を行い、この講習を修了した人を企業の在宅雇用に結びつけるための援助を行っています。  一方、O社はコンピュータ周辺機器の販売を行う会社で、在宅で顧客サービスを行える障害者を求めていました。O社としては当時障害のある人の雇用自体が初めてのことであり、さらにこの顧客サービスの仕事を在宅で行うことも新しい試みであったため、Bセンターの講習生2名がこれに応募するに当っては、雇用管理、在宅勤務用の機器、作業環境といった部分でBセンターの職員が助言する形をとりました。  具体的には、次のような内容について試行的事業を6カ月間実施し、在宅勤務を軌道にのせることができました。 ・障害のある人を雇用する場合の手続き ・障害状況への配慮事項 ・業務遂行方法の確立 ・パソコン利用のための補助具の手配 ・作業環境の整備 ・在宅勤務者への技術的、精神的支援(導入時) 求職・求人からアフターケアまで  障害者の職業的自立を援助したり、障害者を雇用する事業主に対して必要なサービスを提供するための機関及び施設等には次のようなものがあります。 障害者職業能力開発校 公共職業安定所 労働基準監督署 障害者雇用支援センター 障害者就業・生活支援センター 地域障害者職業センター 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター せき髄損傷者職業センター 駐在事務所 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 都道府県障害者雇用促進協会雇用開発協会等 第2章 実務編 (1)雇用管理 制度・助成金 Q7 障害のある人の在宅雇用に関する雇用保険等の取扱い 障害のある人を在宅勤務で雇用する場合、雇用保険の対象になりますか。また、これまで通勤していた社員が障害を得て通勤が困難となったこと等により、在宅勤務に変更した場合などは、雇用保険についての手続きはどのように行えばよいでしょうか。労働基準監督署への届け出は必要ですか。社会保険についてはどうでしょうか。 A7-1 近年の技術革新の進展、経済のサービス化・情報化に伴い、通常の雇用労働においても、研究開発業務などのように、業務の遂行方法についての労働者の裁量性の高いものが増加してきました。その結果、業務が在宅勤務で処理される場合も増加している現状から、在宅勤務者についても一定の要件を満たしていれば、雇用保険の被保険者として認められるようになっています。  具体的には、次の@〜Fのすべてを満たす在宅勤務者については、雇用関係が明確であると認められるので、雇用保険の被保険者とすることとされています。 @業務が、新製品・新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計・記事の取材・編集、デザイナー等、業務の性質上、その遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要性の高いものであること A事業主の指揮監督系統が明確であること B所属事務所の通勤している労働者と同一の就業規則等が適用されること(在宅勤務者に関する特別の就業規則等を定めることも可能ですが、労働条件、福利厚生等が他の労働者とおおむね同等でなければなりません) C所定労働日、休日、始業・終業時刻、休憩時間等が就業規則等に明示されていること D各自の始業・終業時刻等の勤務実績が事業主に把握されていること E報酬の中に、月給、日給、時給等、勤務した期間または時間を基礎として算定した部分があること F機械・器具・原材料等の購入、事業主や顧客との通信費等について、本人の負担がないことまたは事業主の負担であること、他の事業主の業務に従事してはならないことが、雇用契約書、就業規則等に明記されているなど、請負・委任的な色彩がないこと  これらの要件に該当するか否かの判断については最寄りの公共職業安定所にご相談ください。在宅勤務者に関する雇用保険被保険者資格取得届には、「在宅勤務実態証明書」を添付して確認を受ける必要があります。  これまで通勤していた社員が在宅勤務に変更した場合も、上記の要件を満たせば、引き続き雇用保険の被保険者となります。この場合も、「在宅勤務実態証明書」に必要事項を記入して公共職業安定所に提出することが必要です。なお、在宅勤務に変更することで、一週間当たりの所定労働時間が短くなる等により被保険者区分に変更が生じる場合には、管轄の公共職業安定所に「雇用保険被保険者区分変更届」を提出する必要があります。 A7-2 労働基準監督署への届出については、在宅勤務であることだけをもって届出の必要が生じることはありません。通常の労働者を雇用した場合と同じ扱いです。したがって、従来から雇用している労働者が在宅勤務に変わる場合には、そのことに関する届出は必要ありません。  ただし、在宅勤務者を雇用することにより、就業規則に必要な改訂を行ったり、在宅勤務者に対する特別の就業規則を定める必要が生じる場合は多いと考えられ、こうした場合には、就業規則の変更届を管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。  医療保険、年金保険等社会保険に関して事業主が行っている諸手続についても、一般の雇用労働者の扱いと変わりません。 第2章 実務編 (1)雇用管理 制度・助成金 Q8 障害のある在宅勤務者の障害者雇用率制度の適用 障害のある人を在宅勤務者として雇用する場合、障害者雇用率制度の対象となりますか? A8 障害者雇用率制度の対象となる在宅勤務者は、雇用保険の被保険者として取り扱われる在宅勤務者(A7参照)のうち、常用雇用労働者に該当している者となります。常用雇用労働者に該当するかどうかは、1週間当りの勤務時間、雇用(契約)期間によって判断することになりますので、在宅勤務者である障害者が常用雇用労働者に該当するかどうか明らかでないときは、最寄りの公共職業安定所にご相談ください。 コラムU-4 【事例】 在宅勤務者として雇用  R社は雇用方針の1つとして、障害のある方の積極的な採用を行っています。創業以来、障害のある方に必要な支援を行うことで、障害の有無に関係なく就労の機会を均等に提供しています。2004年には、筆記試験の結果、英語/日本語の翻訳は可能との判断により、片手指先のみが動かせる24時間介助が必要な重度障害のある方を在宅勤務者として採用しました。近年はe-ワーク制度、モバイルオフィスなどの浸透により、社内の在宅勤務に対する環境が整ってきたため、契約社員にもその機会を提供できることとなりました。 [R社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 制度・助成金 Q9 在宅勤務での労働者災害補償保険の取扱い 在宅勤務中にけがをしたり、出社する際に事故が発生した場合など、労働者災害補償保険の補償対象となりますか。在宅となると、どこまでが労働災害と考えられるのか難しいような気がします。 A9 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下、「業務災害」又は「通勤災害」という。)に関して、必要な保険給付を行うこととしています。  業務災害と認められるためには、「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態」に起因する災害と認められることが必要であり、通勤災害と認められるためには、「労働者が、就業に関し、住居と就業場所との間を合理的な経路及び方法により往復する通勤」において発生した災害と認められることが必要です。  さて、在宅勤務については、事業主の管理下を離れて業務に従事することとなりますから、在宅勤務中の個々の行為については、事業主の拘束を受けず、在宅勤務者の任意に委ねられています。そのために、在宅勤務中には、さまざまな私的行為が行われるでしょうし、また、それは、在宅勤務の性質からして、通常あり得ることと考えられます。  在宅勤務中に発生した災害について労災認定をする場合、業務と私生活が混在しているために、業務中に発生した災害かどうかの判断が難しくなります。  具体的に問題となる例としては、自宅で休憩中にトイレにいく途中階段から落ちて負傷した場合、終業時間の定めを超えて自主的に残業して負傷した場合、買い物のついでに報告書の発送を依頼するため業者等へ行く途中又は帰る途中で災害にあった場合等が考えられます。  具体的な認定に当たっては、在宅勤務中に発生した災害であっても他の災害と同様に、個々の事案ごとに、当該業務又は通勤に起因して発生したものか否かについて調査を行われた上で判断されることとなります。 第2章 実務編 (1)雇用管理 制度・助成金 Q10 在宅勤務における助成金の利用 在宅勤務で障害のある人を雇用した場合、特定求職者雇用開発助成金など、通勤する障害者と同様の助成金を受けることができますか? 在宅勤務による雇用について、利用できる助成金を教えて下さい。 A10-1 特定求職者雇用開発助成金は、身体障害者、知的障害者又は精神障害者を公共職業安定所の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、賃金の一部を助成するもので、雇い入れた日から1年(重度障害者については1年6カ月)間支給するものです。助成金を受けることができるのは、次のすべての要件を満たす事業主です。 1.公共職業安定所の紹介により、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(65歳未満)を継続して雇用する労働者として雇い入れる雇用保険の適用事業主であること。 2.当該雇入れの前後各6か月の間、当該雇入れに係る事業所で雇用する被保険者を、事業主の都合により解雇したことがないこと。 3.当該雇入れの前後各6か月の間に当該雇い入れに係る事業所で雇用する被保険者を特定受給資格者となる理由で3人を超え、かつ、当該雇い入れ日における被保険者の6%を超えて離職させるものでないこと。  在宅勤務で新たに障害者を雇用しようとする事業主も、上記の要件を満たすものはこの助成金を受けることができます。受給しようとする事業主は、対象労働者を雇い入れた日から1か月以内に、資格決定申請書を管轄の公共職業安定所に提出し、6か月ごとに支給申請書を提出します。詳しくは、管轄の公共職業安定所におたずねください。 A10-2 公共職業安定所が扱う助成金のほか、障害者雇用納付金制度に基づき、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が支給する助成金があります。在宅勤務の障害者に適用される主な助成金は次のとおりです。 1.障害者作業施設設置等助成金(第1種作業施設設置    等助成金、第2種作業施設設置等助成金)  障害者を常用雇用労働者として雇い入れるか継続して雇用する事業主で、例えば車椅子使用者のために作業場の改修を行うなど、その障害者の作業を容易にするため、障害を克服するために配慮・改造された施設・設備の設置・整備又は賃借を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。障害者雇用納付金制度の趣旨が、障害者を雇用する事業主の経済的コストを事業主間で調整するものであることから、助成を受けられる作業施設等は、対象障害者が在宅勤務者である場合は、その在宅勤務者の住居部分と明確に区分され事業主が所有(賃借)している部分のみを助成の対象としています。また、作業設備については、原則として障害を克服するための改造や障害者用の特別な機能を備えていることが必要ですが、在宅勤務により職域の拡大が図られると考えられることから、在宅勤務者については市販の設備・機器も助成の対象としています。 2.障害者介助等助成金(職場介助者の配置又は委嘱助成金)  重度視覚障害者又は重度四肢機能障害者(在宅勤務者を含む。)を雇い入れるか現に雇用している事業主が、これらの障害者の業務遂行のために必要な職場介助者を配置又は委嘱する場合に、必要な費用の一部を助成するものです。職場介助者とは、当該重度障害者の指示に基づく文書の作成とその補助業務等に対する介助の業務を担当する者をいいます。 3.障害者介助等助成金(職業コンサルタントの配置又は委嘱助成金)  5人以上の重度身体障害者等(在宅勤務者を含む。)を雇い入れるか現に雇用している事業主が、これらの障害者の雇用管理のために必要な職業コンサルタントを配置又は委嘱する場合に、必要な費用の一部を助成するものです。職業コンサルタントとは、障害者職業生活相談員の資格を取得後、障害者である労働者の職業生活に関する相談等の業務に3年以上の経験のある者であって、当該重度障害者等の雇用管理のために必要な職業生活に関する相談及び指導の業務を専門に担当する者をいいます。また、該当する障害者の数によって、助成の対象となるコンサルタントの数が異なります。 4.障害者介助等助成金(在宅勤務コーディネーターの配置又は委嘱助成金)  在宅勤務の障害者を雇い入れるか現に雇用している事業主が、これらの在宅勤務障害者の雇用管理、業務管理及び雇用管理・業務管理制度の設計及び就業規則等の諸規程の整備のために必要な在宅勤務コーディネーターを配置又は委嘱する場合、必要な費用の一部を助成するものです。在宅勤務コーディネーターとは、障害者職業生活相談員の資格を取得後、障害者である労働者の職業生活に関する相談等の業務に3年以上の経験のある者であって、当該在宅勤務障害者の雇用管理、業務管理及び雇用管理・業務管理制度の設計及び就業規則等の諸規程の整備の業務を担当する者をいいます。  受給資格認定申請書の提出は、定められた期間内に申請事業所の所在地を管轄する都道府県障害者雇用促進協会(雇用開発協会・雇用促進協会・総合雇用推進協会を含む。)を経由して、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に行います。詳しくは、管轄の都道府県障害者雇用促進協会にご相談ください。 第2章 実務編 (1)雇用管理 雇用形態・処遇・契約 Q11 在宅での雇用形態 在宅勤務で雇用した人を正社員としたいと思いますが、実際に正社員としている企業はありますか? A11 在宅勤務は既存の就業規則では包含し得ない事項があったり、また、就業規則の改定に時間がかかるなどの理由で、正社員ではなく、嘱託やパートタイム労働者として雇用している例もあります。また、通勤している他の社員の意識を考慮して、正社員以外のかたちをとるという考え方をする事業所もあるようです。  しかし、在宅勤務で雇用した人を正社員とすることは、むしろ望ましいことですし、実際に障害をもつ人を在宅勤務の正社員として雇用している事業所はたくさんあります。(コラム参照)  既存の就業規則で包含され得ない事項があり、就業規則の改訂が困難な場合であっても、別途、在宅勤務者との間で、問題点に関する契約書又は覚書きを取り交わす、あるいは、労働組合との間で協定を結ぶなどの方法をとれば、正社員として雇用することに問題はありません。 コラムU-5 【事例】 従業員代表と協定書  BセンターはB社の1事業所で就業規則や給与規定はB社全体を対象として1本となっています。在宅勤務については就業規則の中では全くふれられていません。  Bセンターには重い障害の従業員が多く、通勤による体力的な負担を軽減するなどのため在宅勤務を取り入れる必要性がありました。  法人全体として取り入れることは、すぐには無理と判断し、事業所独自で在宅勤務制度の導入に踏み切ることとし、従業員代表との協定を取り交わし、実施に移しました。  協定書には、次のような内容が盛り込まれています。 ・在宅勤務制度の目的及び対象となる人 ・在宅勤務の申請・変更方法 ・開始・終了時の連絡・報告 ・時間外勤務の扱い ・就業規則との関係 [B社のヒアリングより] コラムU-6 【事例】 雇用契約書の取り交わし  C社では、在宅勤務で雇用する際、勤務場所・勤務時間など他の従業員と異なる面があるため、別途雇用契約を締結することとしました。この雇用契約書には次のような内容について定められています。 ・契約の目的   ・出社と訪問 ・契約締結日   ・就業時間 ・就業の場所   ・休日、年次有給休暇 ・業務内容    ・勤務管理と機密保持 [C社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 雇用形態・処遇・契約 Q12 在宅勤務者の処遇 昇給、賃金面の考え方 在宅勤務者の賃金はどのように決定すればよいでしょうか? 昇給の際の評価方法がむずかしいように思いますが。 A12 正社員として雇用した場合、他の通勤している社員と同じ給与規定の中で賃金が決定されているのが普通です。その場合には、昇給についても同様の査定方法で実施されています。  在宅勤務は、実際の勤務の様子を日々見ることができないため、勤務の評価を難しく考えがちですが、評価方法のあり方を考えるとき、仕事の成果、実績を評価するのであれば、在宅勤務者と一般勤務者との間に決定的な差異がある、とはいえません。  むしろ、在宅であることが不利にならないような評価の方法を検討していくのが望ましいといえます。 コラムU-7 【トピックス】S社での人事評価方法       〈自己評価の追加と上司評価のフィードバック〉  S社は、サテライトオフィスの設置などに先進的な取り組みを行っている会社です。  また、同社では、以前から人事評価方法の一つの施策として自己評価を追加するとともに上司評価の本人へのフィードバックを実施しています。その方法は、まず「実績評価表」に基づき、各期の初めに所属長と面接の上、業務項目及び目標を決定・登録します。そして期末に、登録した各項目の目標に対して「できばえ」を自己評価し、そのことについて所属長と十分な話し合いを行うことにしています。この方法によりますと、自分がどのような項目でどのようにして評価されているかがわかると同時に、勤務者が一定期間にやらなければならない業務がかなり明確になります。  したがって、勤務地が「できばえ」に影響することはなく、会社から離れたサテライトオフィスで勤務する社員が人事評価において不利になることもありません。むしろ、同社では「テレワークする人たちの生産性は総じて向上している」という評価をしています。 [S社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 雇用形態・処遇・契約 Q13 在宅での勤務時間・休日の定め方と就業管理の方法 在宅での勤務時間・休日はどのように決めたらよいでしょうか? また、休暇の申告などの就業管理についてはどのようにすればよいでしょうか? A13 在宅勤務であっても、通勤者と同様の勤務時間・休日の方式をとっている企業が普通です。つまり、会社全体が固定時間勤務であれば在宅勤務者も固定時間、会社全体がフレックスタイム制を導入していれば在宅勤務者もフレックスということです。固定時間勤務の場合は在宅勤務者も会社に通勤している社員と同じ時間帯で仕事をする方が他の社員との連帯感があり、孤立感を持つことが少なくなります。  タイムカードを使用することができない場合は、始業・終業の時間を会社側に電話連絡するなどの方法もありますが、情報通信機器を活用した在宅勤務の場合は、みなし労働時間制を適用することによる勤務管理の方法もあります。休暇の申請なども、在宅勤務であっても通勤者と同様に届け出用紙によって申告を行うことが望ましいでしょう。届け出の提出はFAXや電子メールを利用し、緊急の場合以外は事前に申告するように定めておくとよいでしょう。 コラムU-8 【事例】 出勤確認  在宅でCADのデータ構築の業務を行っているUさんは、業務開始時と終了時に必ず会社に電話連絡をとります。この時に社の所属部署でも出勤確認簿をつけており、週ごとに、これを照らし合わせて、出勤の確認を行っています。 [F社のヒアリングより] コラムU-9 【事例】 就業報告  C社では、在宅勤務での就業計画と実績を上のように1カ月単位で報告書に入力しプリントして、会社にFAXする方法をとっています。年休の取得等についても予定を会社に知らせておくため、会社では離れた場所で仕事をしていても在宅勤務者の勤務予定を把握しておくことができます。  1カ月が終了した時点で予定に対する実績を入力しプリントして再度FAXで報告しています。もちろん、緊急時には早めに電話で連絡するようにしています。 [C社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 雇用形態・処遇・契約 Q14 就業規則に適合しない場合の契約方法 当社の就業規則は通勤者を前提に作成しているため、在宅勤務の従業員については適合しない内容が多々あります。例えば、出社についての取り決め、在宅勤務でかかる費用(消耗品、電話代、電気代等)の精算方法、在宅での介助者をどう考えるかなどは、就業規則にはふれていません。どのように対応すればよいですか? A14 就業規則に在宅勤務に関する事項が盛り込まれていることが望ましいといえますが、在宅勤務の実施は最近のことですから、在宅勤務を考慮して就業規則を作っている企業は稀でしょう。(A7-2参照)就業規則に含まれていない項目としては、例えば以下のようなものがあります。 ・出社や社からの訪問について ・勤務管理や報告の方法について ・就業場所について ・在宅での費用負担や精算方法について ・会社名義の貸借物の取扱いについて ・機密保持について  また、就業規則の変更は組合との意見調整や他の規則との整合性をとる必要性などから、通常、多大な労力と時間を費やします。  そこで一つの方法として、在宅勤務者が入社する際に別途覚書きをとりかわすことが考えられます。契約書の様式や内容については、各々の事情に則したものとすればよいのですが、大切なことは、勤務が始まってから双方が「こんなはずでは...」と思うことのないよう、特にお金に関係することなどについては曖昧にせず文書で残すことが重要です。記憶に頼っていると担当者が代わったときに大変困ります。 コラムU-10 【事例】 在宅勤務就業規則  H社は、第3セクター方式による情報処理サービスを行う会社です。現在、93名の従業員の内、40名が障害者でその内7名が正社員として在宅勤務をしています。  在宅勤務制度を採用するにあたっては、「重度障害者在宅勤務就業規則」を定め、それに則した就業管理を行ってきています。本就業規則では、25条の規則があり、具体的には、「目的、在宅勤務者の定義、規則遵守義務、採用、提出書類、定年、退職、解雇、服務規則、勤務の記録、勤務時間、休日、年次有給休暇等、給与、給与の支払、給与の控除、割増給与、時間給改訂、服務心得、遅刻・早退等、制裁、制裁の種類、教育、慶弔見舞金」等について定められています。 [H社のヒアリングより] コラムU-11 【事例】 雇用契約書の取り交わし  C社では、在宅勤務で雇用するにあたり、就業規則に含まれない部分について雇用契約書を取り交わしました。  また、費用に関する契約書を別途取り交わしています。  契約書には次のような費用に関する取扱いについて定められています。 ・仕事部屋の電算機器・回線機器の購入又は賃借料 ・仕事部屋のNTT回線設置工事費用、回線契約料・基本料・使用料 ・仕事部屋の電気工事費用、電気使用料 ・仕事部屋のOAテーブル・置き台、業務上必要な消耗品費 ・出社に必要な交通費、介護者に関する費用 ・その他業務に必要な費用 ・在宅勤務者の負担する費用 ・自宅の改造費用 ・精算方法及び金額 ・その他 [C社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 業務・指示・報告 Q15 在宅での業務内容の決め方 在宅勤務でできる業務内容は限られるように思いますが、業務内容を決めるとき注意すべき点はあるでしょうか? また在宅に適した業務があるとしても、その仕事が継続的にあるとは限らないのではないでしょうか? A15 在宅勤務における業務は、その遂行の方法を作業者の裁量に委ねる必要性の高いものであることが望ましいとされています。例えば、次のような業務です。 ・新商品又は新技術の研究開発等の業務 ・情報処理システムの分析又は設計の業務 ・記事の取材又は編集の業務 ・デザイナーの業務  仕事の内容は通勤の作業者も含めて変わっていくものです。固定的な見方にならないように心がけ、業務を考えていきましょう。     現在、障害のある人の在宅勤務が実施されている事例では、次のような業務がありますが、コンピュータに係わる業務が圧倒的に多くなっています。 ・システムエンジニア、プログラマー ・データ入力、ワープロ入力 ・コンピュータによる図面作成(CAD)等 ・写植印刷 ・テープレコーダの記録のリライト ・ユーザーサポート ・データベース・サーチ ・インターネットのホームページ(コンテンツ)作成 ・モニター業務 ・マーケティング(市場調査、調査分析)  上記の業務やその他の業務については、当機構ホームページの「障害者の在宅就業支援」をご覧ください。 コラム U- 12 【事例】 CADによる図面作成  Sさん(頚髄損傷1級)が入社したD社では、CAD(Computer Aided Design)による図面作成を行っているチームがあり、Sさんはここに所属しましたが、障害により車の運転ができず通勤が困難ということで在宅勤務になりました。    作業を行うシステムとFAXがあれば、FAXで仕事の指示を受け図面作成をした後FAXで送り返すという在宅でも全く支障のない業務です。Sさんは、手にも障害がありますが、CADによる作業については作業量・スピード共に他の人と全く引けをとらない実績をあげています。    また、Sさんはその後九州に車椅子対応の住宅を建てて東京から引越しました。本社より担当者が出張して自宅への機器設置を行い、業務は同様に続けています。 [D社のヒアリングより] コラムU-13 【事例】 印刷の版下作り  Vさん(脊髄損傷1級)は、自宅に写植機と暗室を設置し、在宅でページものや、新聞などの文字を印画紙にする業務をしています。  G社では、当初、Vさんの冬季の通勤上での危険を回避するため、部分的に在宅勤務を始めましたが、現在では完全に在宅勤務としています。仕事の受け渡しは本人が出社したり、会社の上司や営業が訪問して行っています。 [G社のヒアリングより] コラムU-14 【事例】 システム開発  M社は病院、開業医、企業等より委託を受け、衛生検査を行う業務を行っています。Bさん(脳性マヒ1級)は、この会社で在宅でシステム開発の仕事を行っています。主に、客先のオフィスコンピュータと検査所のホストをつなぐオンラインソフトの開発が仕事です。Bさんが客先との打ち合わせにも出かける場合もありますが、スケジュール調整なども全て自己管理しています。 [M社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 業務・指示・報告 Q16 仕事の指示や報告等業務管理の方法 在宅勤務の場合、就業場所が離れているため仕事の指示がしにくいように思います。また、仕事の進捗状況の報告についても同様です。どのように業務管理をすれば効率的でしょうか? A16 同じ場所に集まって仕事をすることが従来一般的でしたので、仕事の指示も報告も顔を合わせて行う方法に我々は慣れているといえます。(アメリカなど人口密度が低い所では離れた場所で仕事をすることが多く、打ち合わせや仕事の指示、報告も離れた場所で行うやり方が自然に取り入れられているようです。)  離れた場所にいる人に仕事の指示をする場合は電話連絡であっても内容をまとめてから話をするのが一般的です。できれば、それを文書の形にしてFAXや電子メールで送り確認できるようにすることが望ましいでしょう。  電話による連絡・打ち合わせに加え、FAXや電子メールを使えば在宅でも十分に指示・報告のやりとりをしていくことができます。  口答による指示のみに慣れていると、指示の内容をまとめたり、勤務者の方も報告内容をいちいち記述するのが面倒に感じます。しかし、本当の意味での仕事の効率を考えると、文書を使う方法が仕事の効率化につながっていくはずです。 コラムU-15 【事例】 週報をFAXから電子メールへ切り替え  課内では全員、業務日報を作成することが義務づけられ、在宅勤務者も仕事の報告をするために、当初は、課内の共通書式で週単位で入力しFAX送付していました。  最近では、昨今の情報処理技術の進展に伴い、業務日報についても、その都度の仕事の指示・報告と同様、電子メールでできるように移行しました。 [C社のヒアリングより] コラムU-16 【事例】 電子メールを利用  ソフトウェアの開発を主な業務とするA社ではインターネットも利用できる社内ネットワークが全社的に利用されています。従って、仕事の指示、報告等全て電子メールで行われています。在宅でシステム開発やDTP(デスクトップパブリッシング−机上印刷)の業務を行っているPさん(筋ジストロフィー2級)は1日のうちに何度も電子メールをやりとりしながら業務を進めています。 [A社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 業務・指示・報告 Q17 出勤の頻度 障害のある在宅勤務者は出勤することが困難な人がほとんどですから、できるだけ出勤しないですむように仕事の仕方を検討したいと思いますが、どのくらいの頻度で出勤してもらったらよいでしょうか? A17 業務内容、在宅勤務者の身体状況、自宅と会社の距離などによって、在宅勤務者の望ましい出勤頻度は各々異なりますが、月に一度程度出社してもらう例が多いようです。  通勤が困難なために在宅勤務をしている障害者は、基本的には通勤しなくても仕事が進められる条件を配慮することが望ましいでしょう。  しかし、在宅勤務においては、孤独感や疎外感をもちやすい場合が多く、企業の一員であることを実感できるような配慮も必要です。打ち合わせや報告会などのような機会に出社してもらうこともひとつの方法であり大切なことです。 コラムU-17 【事例】 出社回数  Cさん(脊髄性横断マヒ1級)が配属されているP社の総合研究所は都内の自宅から片道2時間かかりますが、Cさんは少なくても週1回、平均すると週2回は出社することにしています。  自宅にも会社と同レベルのコンピュータシステムを設置しているため、出社しなくてもコンピュータネットワークの活用により、充分に仕事をしていくことはできます。しかし、Cさんは直接仕事仲間に会い、打ち合わせをしたり、情報交換をすることをとても重要と考えています。  また、月1度、所長による全体朝礼があり、会社の現状についての話などもあります。これについては朝9時から始まりますので、自宅を相当早く出なければなりませんが、Cさんは積極的に出席するようにしています。 [N社のヒアリングより] コラムU-18 【事例】 在宅勤務者のミーティング  E社には、データ入力、ワープロ文書作成の業務をしている障害のある在宅勤務者が4名います。この4名の在宅勤務者は、月に一度出社のうえ、ミーティングを行っています。このミーティングでは、在宅勤務を行う中で感じていることなどについても、相談するなど、交流のよい機会ともなっています。 [E社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 業務・指示・報告 Q18 在宅勤務者の所属、担当者(上司) 在宅勤務者を所属させる部署について、あるいは組織上のことなどでなにか配慮が必要でしょうか? A18 基本的には、どのような部署であっても配属可能なわけですが、障害のある人の在宅勤務の場合、客先の都合で仕事のスケジュールを左右されるような業務を行う部署はふさわしくないとしている企業もあるようです。それは、在宅勤務者の体力的な理由と、仕事の打ち合わせが頻繁に発生するためというのが理由です。  大切なことは所属部署と上司をはっきりさせ、在宅勤務者が仕事や処遇について相談しやすいような環境をつくることです。直属の上司などを、その在宅勤務者の担当者として位置づけ、在宅勤務者の仕事・勤務の管理をしていくのが望ましいでしょう。  何人か在宅勤務者がいる場合は、仕事配分の調整をする調整役(コーディネータ)がいると業務がスムーズに運びます。  在宅勤務者の所属長、担当者となった人は、仕事の指示をする、報告を受けることももちろんですが、在宅勤務者が心身共に安定した状態で仕事を続けているかにも配慮することが大切でしょう。 コラム U-19 【事例】 在宅勤務者のまとめ役  E社では、データ入力やワープロ文書作成の業務を行う障害をもつ在宅勤務者が4名います。会社では、この4名の業務が常時適当な量を保てるように調整する担当者を人事部に置いています。担当者が、各自の仕事量をチェックし、多すぎたり、逆に空きが出たりしないように管理しているため、在宅勤務者は一定のペースで仕事をすすめることができます。 [E社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 福利厚生・コミュニケーション・教育 Q19 職場とのコミュニケーション、社内情報の提供の工夫 在宅勤務者と職場の人とのコミュニケーションや、社内情報の提供についてどのような配慮をしたらよいでしょうか? A19 在宅で一人で仕事をしていると、個人差はありますが、孤独感や疎外感を感じる勤務者が多いようです。出勤の手段がある場合は定期的な打ち合わせや社内情報報告会などの機会に出社させるようにし、その際に職場の人とのコミュニケーションをはかれるようにしていくことも必要でしょう。  社内報の送付などの他、最近では、社内のネットワークを在宅勤務の場所から利用することにより、社内情報について、他の職場と同様に得ることができる企業も多くなっています。  勤務者側に対してもこのような環境を利用して、積極的に職場とのコミュニケーションや社内情報を得るように指導することが必要でしょう。 コラムU-20 【事例】 社長が打ち合わせに自宅を訪ねる  料亭等5店の飲食業を経営するI社で、Xさん(頚髄損傷1級)は在宅でワープロやパソコンを使って業務を行っています。業務内容はマーケティング、経理書類の作成、ダイレクトメールの作成、ちらしやメニューの作成などです。  月に一度、Xさんが打ち合わせのため出向く他、社長が週に一度勤務者宅を訪ねスケジュールや仕事量を調整します。また、毎日、在宅勤務場所にそれぞれの店の責任者が電話をいれ、打ち合わせをすることにしています。 [I社のヒアリングより] コラムU-21【事例】 職場の仲間が訪問  在宅勤務者の自宅の仕事場所には、職場の仲間の写真が飾ってあります。会社の仲間とは電子メールや電話やFAXでやりとりをします。また、年に一度職場の仲間が自宅を訪ねて懇談したり、会社行事に参加したり、みんなで食事をしたりして、コミュニケーションをはかっています。 [C社のヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 福利厚生・コミュニケーション・教育 Q20 教育訓練・能力開発の方法と配慮 在宅勤務者の教育訓練はどのような方法で行うのがよいでしょうか? また、能力開発の面で配慮すべき点などがありますか? A20 ほとんどの場合、入社して業務に就く際には、ある程度の教育訓練が必要になります。また、入社時の研修については一定期間出社している事例もありますが、在宅勤務場所に研修担当者が出向いて教育を行う例が多いようです。    在宅での業務が軌道にのった後の職場における研修は、在宅であることや研修場所が遠方であったり、車いすでは利用できない施設(車いす用トイレがない、エレベータがないなど)であったりするため参加が困難な場合もあります。しかし、できる限り在宅勤務者にも研修の機会があるようにすることが望ましいでしょう。一般的に在宅勤務に適した業務が作業者に与えられ、そのまま何年も同じ業務を続けることになりがちですが、業務内容のレベルアップやそのための能力開発の研修などを計画的に実施していくことが勤務者のモラールの向上にも繋がります。この点は通勤する一般勤務者と変わることはありません。 コラムU-22 【事例】 在宅場所を訪問して  Sさん(頚髄損傷1級)は、入社後2年間、コンピュータ教育を受け、コンピュータに関する基本的な知識はすでにもっていました。  CADによる図面作成の業務を始めるに当っては、研修担当者が週に3日、2カ月間、自宅を訪問し、商品知識とシステムの動かし方の教育を行いました。                     [D社のヒアリングより] コラムU-23 【事例】 宿泊して初期研修を  在宅でCADのデータ構築の業務に従事しているUさん(頚髄損傷1級)の自宅は会社から2時間以上の距離にあり、入社当初の初期研修に続けて通勤することは困難でした。そこで、都内の車椅子対応の宿泊施設に2週間滞在し、そこから会社に通って研修を受けました。  その後、自宅に機器を設置し会社から担当者が訪問の上使用方法などの研修を行いました。      [F社のヒアリングより] 教育訓練 第2章 実務編 (1)雇用管理 福利厚生・コミュニケーション・教育 Q21 福利厚生・健康管理についての配慮 在宅勤務者に対して、通勤している社員と同様の福利厚生を考えていくことはむずかしいのではないかと心配です。また、健康管理についてはどのような配慮をする必要がありますか? A21 在宅勤務であることで、通勤している社員と全く同じ福利厚生を提供することは難しいという面は確かにあります。しかし、同程度の提供を心がけることが大切で、例えば社内旅行などでは車椅子利用者も参加できるような企画をし参加を呼びかけたり、歓迎会や忘年会など職場の行事にも参加できるようにすることが望ましいでしょう。  職場での集団健康診断が受けられない場合は、別途病院で健康診断を受けてもらい費用を会社負担とする方法もあるでしょう。通勤していれば、健康状態の変化などを本人が自然に話す機会も多く、顔色の変化などにより職場の周りの人も気づくものですが、在宅勤務の場合は、その点がわかりにくいものです。業務報告などの際に健康面の状況報告も併せて提出してもらうようにするのもよいでしょう。 コラムU-24 【事例】 社員旅行にも参加  K社のZさん(多発性関節リウマチ2級)は、在宅でワープロ入力の業務に就いています。会社としては在宅勤務者の福利厚生はできるだけ通勤者と同様になるように心がけており、旅行や忘年会などの行事にも参加できるよう配慮しています。 [K社のヒアリングより] コラムU-25 【事例】 Jリーグ観戦や観劇など  会社で利用可能な福利厚生施設はすべて車いすでも利用できるようになっています。また、社員旅行などで車いすの利用がむずかしい場合は、Jリーグ観戦や観劇などの機会が提供されています。 [C社のヒアリングより] コラムU-26 【事例】 健康管理  Bセンターでは従業員の半数が重度の障害のある人であるため、嘱託医としてリハビリテーションの専門医が配置され、月一度の診察日を設けています。  この日に定期的に診察を受け、体調や障害状況のチェックを行います。在宅勤務の人もこの日にあわせて出社するようにしますが、都合により出社が困難な場合も多いため、嘱託医が在宅勤務場所を訪ねて様子をみるなどしています。 [Bセンターのヒアリングより] 第2章 実務編 (1)雇用管理 障害への配慮 Q22 身体状況に対する配慮 障害のある人に対する身体状況について、どこまで配慮したらよいでしょうか? A22 視覚、聴覚、肢体と障害の部位により配慮する内容は異なりますし、同じ部位の障害であっても身体状況には個人差があります。  障害名から一般的に推測し、身体状況を固定的に理解するだけでは不十分です。障害のある在宅勤務者の身体状況について必要な配慮を欠いたため、本人が急に体調を崩して休んだり、気づかないうちに疲労を蓄積して二次的な障害の発生につながることもあります。障害の状況や身体状況について詳しく尋ねることにためらいを感じることもありましょうし、雇用者のプライバシーには十分に配慮する必要があります。実際、障害者の側からは、必要以上に気を使われることはかえって苦痛であるという意見もあります。  しかし、人事担当者や直属の上司は、あらかじめ、障害のある雇用者との間で十分に意見を交換し、障害の状況、身体状況について、どのようなことを常に配慮し、どのような関係機関と連携をとるべきか、本人の承諾を得られる範囲で把握しておくことが必要です。そして、在宅勤務者の身体の状況を十分に把握し、業務内容や業務量、就業管理に反映させていくことが雇用者がよい体調を維持し、永く業務を遂行してもらうことにつながります。 第2章 実務編 (1)雇用管理 障害への配慮 Q23 障害のある人が利用できる社会資源について 在宅勤務者が家で仕事をすることで、家族が仕事中介助にあたったり、出社の際の送迎をすることになり、家族の方の負担が大きくなるのではないか、と思うのですが。 A23 在宅勤務の場合、勤務者の家族(主に両親)が介助にあたる場合が多いようです。出社の場合の送迎も同様でしょう。  在宅勤務者も家族に介助や送迎を依頼し、出社時の食事やトイレ介助をしてもらうのが安心な面はあるでしょう。しかし、このように家族のみに頼った介助体制は、将来的なことも考慮したとき問題があるといえます。  ホームヘルパー派遣や福祉タクシーの利用等については、現在のところ「生活のため」の援助であり、「仕事のため」では認められない自治体が多いようですが、自治体により制度の内容が異なるため、居住する地区の福祉事務所などに利用可能な社会資源を確認し、在宅勤務者に情報提供することも必要でしょう。 コラムU-27 ○ホームヘルパー派遣  重度障害者のいる家庭に対し家庭奉仕員を派遣し、適切な家事、介護等の日常生活の世話を行う事業。盲人ガイドヘルパー派遣事業、脳性まひ者等ガイドヘルパー事業も本事業の一つである。 ○福祉タクシー  重度障害者の生活圏の拡大を目的としたものであり、あらかじめ自治体から交付されたタクシー券を運転手に渡して割り引かれた料金を支払うか、後で割引料金分を自治体から払い戻してもらう制度である。  また、車いすに乗ったまま車両後部のリフトを使用して乗車できるキャブ型のリフト付タクシーが運行されており、運行はタクシー会社に委託されている。 「知っておきたい障害者福祉制度活用のすべて」 (労働旬報社)より 第2章 実務編 (2)在宅勤務のための機器 Q24 在宅での業務のため設置する適切な機器 在宅勤務のために設置する機器にはどのようなものが必要でしょうか? A24 在宅勤務のために設置する機器は、業務により様々ですが、在宅勤務者が担当する業務をすべて在宅で行えるように配慮して設置することが大切です。    また、在宅勤務においては会社との連絡がとりやすいよう、職場となる部屋に情報通信機器を設置しておくことが望ましいでしょう。例えば次のようなものです。 ・パソコン ・モデム ・FAX ・電話    インターネットやパソコン通信ができる環境にしておけば、双方のコミュニケーションが容易になります。パソコンでの成果物や日報をそのまま電子メールで会社に送ることができますし、社内報などもリアルタイムで勤務者にとどけることができます。また、社内の他の従業員とのコミュニケーションを図るツールにもなります。    その他、打ち合わせが頻繁に発生するような業務においては、TV会議などの利用も有効でしょう。 コラムU-28 【事例】 TV会議で打ち合わせ  プログラマーのWさんは、在宅で福祉機器用のアプリケーションを開発しています。会社との細かいプログラムについてのやりとりはミーティングステーションと呼ばれるTV会議を利用します。開発用のマシンとは別にTV会議専用のマシンとカメラを準備し、ブロードバンド回線で会社とつなぎます。一つの画面を双方で制御可能ですから、作成したプログラムをお互いにながめ、話し合いながら両方で手を加えるという使い方をしており、非常に効率があがっています。 [H社のヒアリングより] 第2章 実務編 (2)在宅勤務のための機器 Q25 障害状況にあわせた機器の工夫 在宅勤務者の障害によっては、キーボードがそのままでは使えなかったり、スイッチが自分で入れられないなどの問題もあるかと思います。どう対処すればいいのでしょうか? A25 勤務者のハンディキャップを補う機器の導入を、本人とともに検討していくことが望ましいでしょう。こうした機器や工夫をテクニカルエイドといいますが、現在種々のハードウェアやソフトウェアが揃っています。例えば、2つのキーを同時に押下できない方のためのソフトウェアや手が使えない方のための足で操作できるマウス、また弱視の方のための画面拡大ソフトなどがそれに当たります。これらについては駐在事務所(A27-2参照)、右の表にあるような機関や、障害者ITサポートセンター等に相談してみるのがよいでしょう。    ここで大切なことは、その器具を使っての操作姿勢に無理がないかチェックを常に怠らないことです。長時間の無理な姿勢が二次障害や体調の悪化につながることのないよう、不安な場合は専門家(作業療法士や理学療法士など)に相談するのが望ましいでしょう。 コラム U-29 【事例】 特注のトラックボールでビジュアルなチラシ作り  頚髄損傷により標準のマウスを使いにくいXさんは、クリックやドラッグ用のスイッチがついている特別なトラックボールを利用し、チラシなどのビジュアルな資料を作っています。この製品は通信販売で購入したものです。これによって通常操作しにくいドラッグなども全く問題なく使いこなすことが可能になりました。 [I社のヒアリングより] 機器についての相談機関一覧 横浜市総合リハビリテーションセンター www.yokohama-rf.jp/shisetsu/reha 企画研究課、研究開発室 〒222-0035  神奈川県横浜市港北区鳥山町1770 横浜市において、コミュニケーションエイドに関する臨床的な支援を行っている。また同時に個々のニーズに対応したさまざまなエイドの開発や改造に取り組んでいる。 神奈川県リハビリテーション支援センター www.chiiki-shien-hp.kanagawa-rehab.or.jp 生活支援工学研究室 〒243-0121 神奈川県厚木市七沢516 障害者情報バリアフリー化支援事業の実施に伴い情報機器を使用する際に必要となる周辺機器やソフト等の相談、装置の改造や製品情報提供の相談が可能である。 石川県リハビリテーションセンター www.pref.ishikawa.jp/kousei/rihabiri バリアフリー推進工房 〒920-0353 石川県金沢市赤土町ニ13-1 県工業試験場、県土木部とが連携し、福祉用具・住環境・ユニバーサルデザイン等の相談指導、研究開発を行っている。 名古屋市総合リハビリテーションセンター nagoya-rehab.or.jp なごや福祉用具プラザ 〒466-0015 愛知県名古屋市昭和区御器所通3丁目12-1 御器所ステーションビル3階 1000点もの福祉用具を展示。実際の体験や用具の選定、使い方に関する相談や、福祉制度の利用、住宅改造、用具の製作・改造等の相談も可能である。 兵庫県立総合リハビリテーションセンター www.hwc.go.jp/noukai 家庭介護・リハビリ研修センター、福祉用具展示ホール 〒651-2181 兵庫県神戸市西区曙町1070 福祉用具展示。福祉用具及び介護用品等約900点を展示している。実際に試したりエイドについての相談が可能である。 総合せき損センター www.sekisonh.rofuku.go.jp/ 医用工学研究室 〒820-8508 福岡県飯塚市伊岐須550-4 主に肢体不自由のある人を支援する環境制御装置やコミュニケーションエイド等の操作環境への支援を行っている。特に入力に関するスイッチ等についての相談が可能である。 こころ工房 kokorokoubou.com 〒770-8033 徳島県徳島市方上町馬場ノ上28-3 障害のある人々のコミュニケーションエイドやコンピュータ利用に関する情報提供・相談・トレーニング・講習会等を行っている。 注:ここでは、研究・相談機関としていくつかの機関・団体を掲載しています。相談を希望する場合は、各機関・団体にお問い合わせください。 第2章 実務編 (2)在宅勤務のための機器 Q26 機器の購入について 在宅勤務に必要な機器を購入する際、会社側と勤務者とどちらが費用を出すべきなのでしょうか? A26 基本的には仕事に必要な機器ですから、会社側が負担するべきと考えられ、実際にも会社が購入を実施している事例がほとんどです。しかし、昨今パソコンやFAXの個人の保有率が上がったこともあり、すでにそれらが自宅にある場合も少なくありません。このような場合は勤務者の所有機器を利用するケースも考えられますが、その際も、勤務者の機器を借りているという考え方にたち、借用料を月々固定で支払ったり消耗品を実費で支払うことが望ましいと考えます。また、修理をした際の費用も同様です。 第2章 実務編 (2)在宅勤務のための機器 Q27 在宅勤務のための機器購入の助成 会社側で在宅勤務者の使用機器を購入しようと思うのですが、費用負担は小さくありません。何か利用できる助成制度はないでしょうか? A27-1 Q10のところでもふれた「障害者作業施設設置等助成金」の利用を考えてはいかがでしょう。障害者の能力に適合する作業を容易にするために必要な設備、機械の設置・整備を行う事業主に対して、それに要する費用の3分の2(限度額が設けられています。)に当たる額が支給されます。    この助成金を申請する先は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構ですが、窓口は、事業所の所在地を管轄する各都道府県障害者雇用促進協会(雇用開発協会・雇用促進協会・総合雇用推進協会を含む。)となります。    作業設備には、原則として、障害者の能力に適合する作業を容易にするための特別な改造を施すことが条件ですが、特定の障害を克服する機能が本来機能として付与されているものは、特別な改造がない場合であっても助成対象となります。例えば、視覚障害者用パソコン、拡大読書器、作業用車椅子などはそれに当たります。  また、在宅勤務者については、新規雇い入れまたは職域の拡大を行う場合は、障害者用に改造された設備に限定せず、市販の設備・機器も助成対象となります。    上記の設備を賃借する事業主に対しても、費用の3分の2(限度額が設けられています。)に当たる額が支給されます。支給期間は、賃借した日の属する月の翌月から3年間のうち、その設備を、当該障害者のために使用している期間です。 A27-2 助成金のほかにも、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構では、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の就労を支援する機器やソフトウェアを、6カ月以内の期間、無料で貸し出す事業も実施しています。詳しくは、就労支援機器ごとに写真や動画を使用して紹介しているホームページ(サイト名:就労支援機器のページ)をご覧いただくか、お近くの駐在事務所へお問い合わせください(巻末参照)。 就労支援機器のページのURL: https://www.kiki.jeed.go.jp/ コラム U-30 【事例】 障害者作業施設設置等助成金で環境作り  I社に勤務する在宅勤務者のXさんは飲食店チェーンの店舗のチラシやメニュー等ビジュアルな資料作成を担当しており、パソコンの他にもスキャナーやカラープリンタが必要です。会社では障害者作業施設設置等助成金を利用し、これらの機器の整備を行いました。 [I社のヒアリングより] 独立行政法人高齢障害者雇用支援機構の駐在事務所  拡大読書器、画面拡大ソフト、点字、点図ディスプレイ、音声メールソフト、音声ブラウザ、点字読み取り、読み上げソフト等、視覚障害者向けパソコン・周辺機器。会議用拡聴器、筆談支援機器、屋内信号装置等、聴覚障害者支援機器。キーボード、マウス補助具、キーガード、スクリーンキーボード、オフィス用三次元車椅子等、上肢、下肢障害支援機器。レジ支援システム等知的障害支援機器等、各種就労支援機器について、障害者を雇用する事業主を対象に無料で一時貸出しも行っています。 仙台駐在事務所 〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央3-2-1青葉通プラザ2F 東京駐在事務所 〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1ニューピア竹芝ノースタワー13F 名古屋駐在事務所 〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4-5-28近鉄新名古屋ビル5F 大阪駐在事務所 〒541-0056 大阪府大阪市中央区九太郎町2-4-11クラボウアネックスビル3F 福岡駐在事務所 〒812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東1-1-33はかた近代ビル1F 何らかの理由から個人で機器を購入しなければならない場合には、福祉のサービスが利用できます。まず「日常生活用具」としての給付です。弱視の方用の拡大読書器や視覚障害者用のワープロ等はこの用具として対象になっています。手続きやお問い合わせは居住する市区町村の障害福祉担当課、または福祉事務所が窓口になります。    また、資金援助としては、業務に必要な機器の購入として申請すれば、身体障害者福祉資金の貸付が可能な場合があります。   手続き及びお問い合わせは、居住する地区の民生委員又は市区町村社会福祉協議会が窓口になっています。 第2章 実務編 (2)在宅勤務のための機器 Q28 機器利用に伴う光熱費、消耗品等の経費の取扱い 在宅で利用する機器の電気代、光熱費、電話代、消耗品などの経費の額は正確には算出しにくいと思われるのですが、どのように考えたらよいでしょうか? A28 諸経費については、勤務開始後のトラブルや不平不満につながらないよう、採用時に覚書きをとりかわし、確認しあっておくことが大切です(Q14参照)。  一般的には、電話回線(通信回線)は仕事用に別途回線を契約し、使用料を会社請求する事例が多く見られます。消耗品については、購入後会社請求するケース、使い切ったタイミングで会社から現物支給するケースなどがあります。  電気代、光熱費については別請求が難しいため、季節や地域を考慮した経費の割り出しを双方納得の上で事前に行っておくことが望ましいでしょう。  また、機器の故障やトラブルを考えてメンテナンスの経費の請求についても文書で確認しあっておくことが必要です。 コラム U-31 【事例】 光熱費を固定額で支給することにした  パソコンの周辺機器の製造・販売をしているO社では、在宅でDさんがお客様サポートにあたっています。Dさんは頚髄損傷により体温調節が難しくなっており、季節を問わず、エアコンの消費量がかなり高いものになります。そこで、O社では半年の試行期間でわかった光熱費のデータをもとに、毎月、固定額の光熱費を給与とは別に支給する契約をしました。 [O社のヒアリングより] 第2章 実務編 (2)在宅勤務のための機器 Q29 機器の更新 会社では定期的にマシン類を新しいものに更新しています。在宅勤務者の環境も同様に変えた方がいいのでしょうか? A29 基本的にはソフト類も含めて会社の機器と同じタイミングで計画的に更新するのがいいでしょう。また現在の環境が勤務者の実施している業務やその後の業務計画に最適なものかどうか随時話し合っていくことも大切です。  在宅勤務者はともすれば、新しい情報が入りにくいため最適とはいえない機器環境を利用していたり、情報を入手していても購入を請求することに遠慮がちなケースが見受けられます。在宅の機器のチェックはつい見逃してしまいがちですが、仕事の効率化に結びつく大切な配慮といえましょう。 コラム U-32 【事例】 社内の機器と一緒に在宅環境も一斉にバージョンアップ  E社では、在宅で社内文書を作成している勤務者が何名かいます。それらのマシン環境と会社のマシン環境が食い違うと、ソフトのバージョンが微妙に異なってきて、データのフォーマットが統一されないなどの問題が生じてきます。そこで、在宅勤務者の機器の環境についても一括して会社のシステム課で管理し、社内のシステムのバージョンアップの際に在宅勤務者のマシン等もレベルアップするようにしています。 [E社のヒアリングより] 第2章 実務編 (3)作業環境 Q30 専用の作業室の必要性 在宅勤務をする場合、自宅に専用の作業室を確保したほうが良いのでしょうか? また、作業場所が確保できない場合はどのようなことに考慮すればよいですか? A30 家族が共に生活する日常生活の場とは別の作業場所を確保したほうが良いでしょう。なぜならば、家族の生活から物理的にも心理的にも離れることで、仕事に集中できるばかりでなく、「仕事が終わった」といった気分転換ができるからです。さらに、作業場所を明確に分けることによって、作業時に災害が発生した場合、労災補償の可否の判断が行いやすくなります。このように、長期にわたり安定した生産性と心理的な安定を確保するためには、作業室を確保することがたいへん重要となってきます。しかし、自宅に本人の部屋がある場合は、前述の内容を満たす環境であれば、わざわざ作業室を別に確保する必要はないでしょう。  また、自分の部屋も作業室も確保できないという場合は、リビングに仕事中だけでも簡単なつい立てを立てたり、テーブルを作業時間だけ専用で使えるようにするだけでもずいぶんと違ってきますから、家族の協力を得ながら作業スペースを確保していくと良いでしょう。 コラム U-33 【事例】 (1)自宅を改造して作業室を確保した  在宅勤務を始めるにあたって、自宅を改造して車椅子で動ける作業室を設置しました。  仕事は自社製品の向上のための研究を行う技術職であり、仕事に必要なワークステーション、ワープロ、パソコン、プリンタ、FAX機能付きコピー機など多くの機器が作業室にずらりと並んでいます。しかし、作業室のスペースは20m2と広く、車椅子でもゆとりある広さです。  また、仕事部屋を中心に隣には日常生活に必要な休憩室兼寝室と本人専用の浴室が設置されていて、業務に集中できるように、公私の区別がでる間仕切りとなっています。さらに、仕事部屋から屋外への出入り用に昇降リフト、寝室と浴室にはホイスト式天井走行リフトが設置されています。 [C社のヒアリングより] コラムU-34 【事例】 (2)自室を作業室としている  2階7.5畳の自室を作業室として利用しています。仕事は全社的書類作成やデータベースへの社員健康管理データの登録などであり、パソコン・プリンタ・FAX機が低い机に並んでいます。 [E社のヒアリングより] (見取り図) コラムU-35 【事例】 (3)リビングに作業スペースを確保した  16畳のリビングのほぼ半分の広さを作業スペースとして確保しています。家族との共有の場でもありますが、ソファを仕切り代わりとしています。仕事はCAD業務であり、パソコン・プリンタ・FAX機・プロッタなど会社の業務に使用している機器の1セットを作業スペースに設置しています。 [D社のヒアリングより] (見取り図) 第2章 実務編 (3)作業環境 Q31 障害状況に合わせた作業環境 障害の状況に合わせた在宅の作業環境とはどのような環境ですか? A31 身体に障害のある人にとっては、障害に合った作業環境がとりわけ求められます。特に車椅子使用者には、室内の床面に段差がないことが望まれます。また、トイレも障害にあった構造になっていれば介助なしでできる場合も多くなりますし、介助が必要な場合でも介助者の負担が少なくてすみます。さらに、長時間車椅子に乗って同じ姿勢で仕事をすることで身体に負担を与えてしまうことも考えられます。このような場合には、ベッドやソファなどにちょっと横になることができるような休憩コーナーがあると体力的にも精神的にも負担が少ないようです。実際に身体に障害のある人は、生活の場でもある自宅には既にこのような環境が確保されていることが多く、仕事のためにはじめから作業環境を整備することは比較的少ないようです。 コラムU-36 【事例】 (1)E社  筋ジストロフィーで1級のT氏の作業スペースは2階の自室ですが、階段昇降機を設置しており、自分一人で昇降が可能なようになっていますし、休息コーナーもあります。また、トイレにはリフターがあり介助者もかなり身体的な負担が軽減されるようです。  就職前から住空間としての改造をしていたので、仕事のために作業環境を整備するための特別なことはしていません。 [E社のヒアリングより] 図 在宅就労スペース案(最低限のスペース) コラムU-37 【事例】 (2)Bセンター  頚髄損傷1級のQ氏は1階7.5畳の自室を作業室としています。初めから車椅子での生活が可能なようにと設計された家なので床面に段差はありません。トイレも浴室も自分一人で使えるようになっています。「ベッドも室内にあり昼休みの休憩時には横になり休憩をとっています。トイレも自分専用のトイレが近くにあることが何よりいいです。肉体的にはもちろんですが精神的に落ち着いた環境で仕事ができます。12、3年前に建てた家で、今現在では荷物も増え狭くなってきていますが満足度は大です。ただ、手がかじかむと指が動かなくなるので暖房には気をつけています。」(Q氏談) (見取り図) 第2章 実務編 (3)作業環境 Q32 作業環境改善における会社の関わり 在宅勤務をする上で、作業環境は快適に効率よく仕事を進めるためにたいへん重要な項目であることは言うまでもありませんが、生活の場でもある自宅の作業環境改善に対して雇用側である会社がどこまで関わるべきなのでしょうか? A32 作業環境改善では、もっぱら作業だけに使われる部屋の改善に対しては会社負担が大きく、リビングなど住まいとして使っている部屋の一部を使うときは会社の負担は少ないようです。しかし、心理面、身体状況、作業の効率なども含め総合的に会社が配慮することが大切です。  いずれにせよ、はじめに会社と本人とが十分話し合い、その結果を必ず契約書などの文書で取り交わすことが大切です。 コラム U-38 【事例】 (1)作業室を新築  母屋を建て直すための一時しのぎとして作業室を作りましたが、効率がよいので母屋ができた後もこの作業室を使っています。作業室は仕事上必要な暗室もありますが、これも含めて会社でできる限り対応しています。 [G社のヒアリングより] コラム U-39 【事例】 (2)作業室として改造した時の会社の関わり  20m2の広い作業室は、もともと駐車場であったところを改造しました。この改造に関しては、設計の段階から会社が関わっています。改造費用は在宅勤務者本人が負担、作業に必要な電気回線工事は会社が負担しました。 [C社のヒアリングより] 第2章 実務編 (3)作業環境 Q33 障害状況にあわせた什器類(机、椅子、棚など)の工夫 障害の程度によっては、普通に机と椅子を用意してというだけではすまないケースもあるのではないかと思いますが、在宅勤務者に負担にならないような什器類の工夫例があれば教えて下さい。 A33 在宅勤務者の現状をみるとコンピュータを使用していることが多いので、ここではコンピュータによる作業を前提に説明します。作業スペースにもよりますが、最低でも机と椅子(車椅子をそのまま利用する場合もある)は必要です。机も一般の机では車椅子の高さによっては使えない場合もあります。車椅子が入る高さに調整し易い机を利用するとよいでしょう。  また床に座って作業をするケースでは低めの机を使いますが、このときディスプレイの位置に十分気をつけてください。ディスプレイが目の位置より高くなると、首をあげてキーやマウス操作をすることになり、この姿勢を続けると頚髄に負担をかけ二次障害を招く危険もあるからです。逆にディスプレイの位置が低すぎるのも、やはり首に負担がかかり良くありません。ノートタイプのコンピュータでは低くなりやすいので注意しましょう。  利用頻度の高い資料などは取り出しやすい場所におくことを考えると作業テーブルは広いものが理想的です。しかし、作業スペースが十分に確保できない場合は、取り出しが便利な棚などの収納器具を積極的に利用するとよいでしょう。 (断面図3種) コラムU-40 【事例】 (1) 机の長さ、メインテーブル  「6畳段差なしの作業室は仕事のため増築しました」、というN氏は頚髄損傷の1級です。  部屋の中央に作業机が配置されています。作業机などは車椅子にあわせて特注しました。 [I社のヒアリングより] コラムU-41 【事例】 (2)車椅子に 乗ったままでも十分に足が入る机  頚髄損傷1級のU氏は設計部門に所属し、CADによる基礎データの構築を在宅で行っています。会社の人事の方と一緒に什器類の検討をしました。当初、机の高さが調整できるものを考えていましたが、在庫がなかったため車椅子を使用した状態でも十分に足が入る高さのものを選びました。           [F社のヒアリングより] 第2章 実務編 (3)作業環境 Q34 在宅勤務者本人ができる工夫 身体的に重度とは言え、仕事をするための工夫はなるべく在宅勤務者本人ができるようにしていくことが望ましいと思いますが、例えばどのようなことがあげられますか? A34 特に上下肢に重度な障害のある人にとっては、作業時間中でもいろいろな場面で介助者の手が必要となります。介助者がいつもそばでサポートしなければならない状態では思うように仕事も進みませんし、また介助者の都合に左右されてしまうこともあるでしょう。しかし、ちょっとしたアイデアや工夫で障害のある本人でも介助なしでできることが多くあります。たとえば以下のようなことがあげられます。 ・ドアの取っ手を車椅子でも操作できるように低くする ・握力が弱い人でも開閉がしやすいようにドアに大きな取っ手をつける ・電灯には長い紐をつける、カーテンにも紐をつけその紐を操作することで電灯のオン/オフやカーテンの開閉をする ・パソコンの電源が本体の側面の奥にある場合などは長い棒を用意する ・小さなスイッチの操作に指の力を必要としないように、棒などを取り付ける ・機器の操作も前面でできるような構造になっているものを使う  このような工夫で日常的に頻繁に発生する操作も本人ができることがかなり多くなり、その分家族の負担も軽減し作業の効率もあがるでしょう。  家族の負担や不便を感じながら仕事をするのではなく、「できることは本人がする」ことをコンセプトに考えることが必要ではないかと思います。またこのようなちょっとした工夫は、経済的に大きな負担をかけずにすむ場合が多いようです。 コラム U-42 【事例】 (1)カーテンの開閉  窓からの光が直接ディスプレイに当たるのを避けるために、カーテンに紐をつけ、移動せずにカーテンを開閉できるように工夫してあります。また、機器のスイッチも自分でオン/オフできるように手元にスイッチをつけたり、棒をつけて工夫しています(イラスト)。 [C社のヒアリングより] コラムU-43 【事例】 (2)可動のテーブル  頚髄損傷1級のQ氏でも動かすことが可能な可動机を用意しています。この可動机はキーボードと入力原稿がちょうど置けるくらいの大きさですが、入力原稿が大きいときは自力で机を広げることができます。また、机とディスプレイの距離が1m20〜30cmと離れているため、目の疲れが少なくて済んでいるようです。また、棚も組立式のラックを使って自分で手のとどく範囲に必要な物を置いて利用しています(イラスト)。 [B社のヒアリングより] コラムU-44 【事例】 (3)FAXの机  筋ジストロフィー1級のT氏は、少しの力でも動かせるようにとFAXが置いてある机には台車がついています(イラスト)。 [E社のヒアリングより] 第2章 実務編 (3)作業環境 Q35 職場と同程度の環境となるような配慮 職場と同じ環境が在宅勤務者の作業環境として必要と思いますが、特に重度の障害のある在宅勤務者では、温熱環境についてどのような配慮が必要になってきますか? A35 最近では、住宅内においても冷暖房設備はごく当たり前のものとなり、その機器も充実してきました。これらの温熱環境が作業効率や健康に大きく影響することは言うまでもありません。身体に重度な障害のある人にとっても仕事を健康に長期に行う上ではたいへん重要なことです。  例えば、頚髄損傷者や脊髄損傷者は外気温の変化にすばやく順応することが困難ですし、脳性麻痺者のように不随意運動で発汗が多く体力を消耗する人、さらには神経筋疾患や慢性リューマチ者など冷暖房が身体の負担を少なくするために必須な人も少なくありません。このようにどのような障害かによって冷暖房の設備は多少違ってきますが、身体に無理のない冷暖房設備を初めに検討されるのがよいでしょう。  換気や照明への配慮も一見すると忘れがちですが、作業効率や疲労に影響を与えます。呼吸により身体の中の換気量が低下する者やアレルギー体質の人にとっては、換気は健康面で特に重要です。コンピュータ関連の作業室を例にとって説明しますと、OA機器の中には冷却のためのファンを内蔵して埃を舞い上がらせるものやレーザープリンタのように粉体トナーを空気中に排出するものなどがありますので、できるだけ埃を除去する機能のある機器類を利用することをお奨めします。照明には部屋全体を照らすものと作業面を照らすものの2種類があります。作業面を照らす照明については外との明るさの差やディスプレイのぎらつき、姿勢の変化にこまめに対応できると目の負担も少なくてすみます。ここでも本人ができるだけ操作しやすいように工夫するとよいでしょう。  このように、職場と同程度の環境は在宅勤務の場合も必要となってきますが、ほとんどの場合は生活の場でもある住宅にはこのような設備は準備されています。ここで問題となってくることは、光熱費など費用をどうするかということです。これは入社時に覚書きでも良いですからきちんと文書にして、双方が納得いく取り決めをしておくと後々のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう(Q28参照)。 コラムU-45 【事例】 (1)光熱費の支払い  社内システムの開発やDTP業務に取り組んでいる筋ジストロフィー2級のP氏が勤める大手ソフトハウスでは、P氏の作業室の環境を当初から考慮し、会社と同程度の環境にしています。また、そのための光熱費も取り決めにより支給しています。 [A社のヒアリングより] コラムU-46 【事例】 (2)照明  仕事に使うワークステーション、ワープロ、パソコン、プリンタ、FAX機能付きコピー機など多くの機器が設置されているため、家庭用とは別に60アンペアの電気容量で契約しています。照明は500ルクスあります。  また、冷暖房も完備されています。電気回線工事・照明・空調設備等は設計段階から会社が関与し、それらの費用は会社負担で行いました。 [C社のヒアリングより] 引用・参考文献 ● テレワーク白書2003 (社団法人日本テレワーク協会 2003年) ● テレワーク実施事例集 (社団法人日本テレワーク協会 2004年) ● 欧米における在宅ワークの実態と日本への示唆(労働政策研究報告書 No.5) (独立行政法人労働政策研究・研修機構 2004年) ● 障害者の雇用支援のために (厚生労働省、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 2005年) ● 平成6年度 研究調査報告書−4 在宅勤務方式による重度障害者の雇用促進に関する調査研究T(No.203) (日本障害者雇用促進協会 1996年) ● 平成7年度 研究調査報告書−7 在宅勤務方式による重度障害者の雇用促進に関する調査研究U(No.212) (日本障害者雇用促進協会 1997年) ● 平成11年 研究調査報告書−No.H11-2 重度障害者の在宅雇用・就労支援システムに関する研究調査 (日本障害者雇用促進協会 2001年) ● 平成12年 研究調査報告書−No.H12-1 「在宅による障害者の雇用と就労を進めるために」 (日本障害者雇用促進協会 2002年) 在宅勤務障害者雇用管理マニュアル ― 障害のある人を在宅勤務の形態で雇用する場合に ― 平成9年11月(平成10年9月増刷、平成18年3月改訂) 編集・発行 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 〒105-0022 港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー TEL 03-5400-1625 FAX 03-5400-1608 URL https://www.jeed.go.jp デザイン・印刷 東洋ビジネス印刷株式会社