第 2 章 ◆ 聴覚障害者の長期職場定着のために Section 1 聴覚障害者の職場定着指導 障害を理解しきめ細かな配慮を 職場定着を図るために 各社の取組に見る長期職場定着のためのヒント  聴覚障害者を雇用している先進的な企業関係者の長 い間の努力によって、雇用者数の増加や職場適応の実 績が上がってきています。しかし、聴覚障害者が長期 的に安心して勤め続けられる環境が整っているケースばかりではありません。障害者職業生活相談員等の活動を通して、いろいろな問題点の把握と解決をより いっそう推し進めるためには、各社の雇用経験から得 られた知識を参考に取り組んでいく必要があります。  聴覚障害者を雇用し、その定着を図ってきた企業か らは、事業主の熱意や雇用上のさまざまな問題を解決 するにあたってのきめ細かな配慮、障害者に対する理 解の深まりなどが見受けられます。 会社の障害者雇用理念と 理解を深めるための継続的努力  当社の人事基本方針の一つに「イコール・オポチュニティー」があります。この方針をもとに、障害者に も積極的な雇用の機会を提供し、募集、採用、配置、 昇進、給与、教育訓練、福利厚生など、すべての人事 制度上で差別なく処遇しています。  障害者自身とその上司に対するアンケート調査結果 によると、大半は「差別のない環境で働けて幸せです」 といった好意的な回答でしたが、聴覚障害者の上司か らは「意思伝達の困難さ」を訴える声や、聴覚障害者 自身からは特に問題はないとしながらも「将来のキャ リアに対する不安」もありました。  また、会社の基本方針である「イコール・オポチュ ニティー」に対しても、上司の対応によっては不信感 が持たれていますので、方針の徹底と理解を深めるた めの継続的努力の必要性を感じています。 (I社のヒアリングより) ■イコール・オポチュニティーの概念■ ●機会均等  すべての社員は、人種、国籍、信条、性別、年齢、 障害の有無にとらわれることなく、機会は均等 に与えられる。 ●均等の推進  過去の経緯から、仕事に参画することが困難 な人々に対し、同じ条件のもとに仕事に携われ るように、必要に応じ援助を行う。 聴覚障害者の心の支え 社内カウンセラー  当社では、聴覚障害者の雇用数が増えるに従い、孤 立してストレスを抱えるなどして人間関係に悩む人が 目立ってきました。心身症になったり、入社2年以内 に退職する人も出始めました。そこで、社内カウンセ ラーの養成に着手。総務部の女性が勤務しながら会社 の費用で産業カウンセラー養成講座を受講し、資格を 取得しました。  筆記、手話、口話、ジェスチャーなどあらゆる手段 を用いてのカウンセリングがスタートして以降、聴覚 障害者のストレス発散、孤立感の除去、問題点整理の 手助けなど、大きな効果が上がっています。聴覚障害 者からは「話を聞いてもらうことで気持ちのモヤモヤ がなくなり、ストレスが発散できた」など喜びの声が 上がり、出勤率も目に見えて向上しました。  このカウンセリング体制を設けたことで、コミュニ ケーション不足で見えていなかった職場のギャップが 明確になり、会社として取り組むべき課題もはっきり とらえられるようになりました。  くわえて、カウンセリングだけでは解決できない問 題が生じた場合に備えて、外部の医療機関(心療内科、 精神科など)との連携体制も取っています。 (S社のヒアリングより)  ここでは、定着指導が成功した事例を4つ、うまくいかなかった事例を一つ紹介します。成功事例はもとより、失敗事例からも教えられることが多々あります。 適性を見極めて適応職種を選定  「障害者は身体上の障害はあるが、職業に適性を欠 くわけではない」という基本的な考え方に立ち、障害 のない人にも仕事に対する適性、不適性があると同様 に、障害者にもそれぞれ向き不向きの仕事があると考 えています。そのうえで個々の能力と適性、障害状況 を確認し、適応職種を選定しています。  聴覚障害者の職域も「営業・システムエンジニア系」 「開発・エンジニア研究員系」「総務・業務係」「人事・ 管理・企画系」「技能系」と広くなっています。 (I社のヒアリングより) 退社を通して得た貴重な経験  A君は、B君とともに、特別支援学校から新卒で) 入社しました。B君は何事につけてもよくできるほ うで、A君はB君のようにはいきませんでした。  入社して2年が経過したころ、A君がしばしば休む ようになりました。上司が家庭との連絡を取り、訪問 して本人と相談を重ねたところ、以下のことが判明しました。  A君はB君と一緒に自動車教習所に通っていました が、B君が順調に免許を取得したのに、A君は何回も 失敗していました。同僚の目が気になってストレスが たまり、家庭内暴力を振るうようにもなりました。ま た、免許取得に意識が集中し、仕事を休むようになっ てしまったとのことでした。  会社(人事・現場責任者)は、A君が免許取得のた めに休むことを認めることにしましたが、家族は会社に迷惑をかけること、本人が仕事に集中できないことから退社を申し出ました。その3か月間、会社は県障害者相談室、学校、聴覚障害者の先輩(従業員)、 家族、本人との間で相談や指導をしましたが、退社す ることになりました。  A君は、退2か月後に免許を取得し、また他の会社に就職し、その旨を報告にきました。この一連の経 過の中で、   会社が努力したこと   他の障害者が本人、会社に協力してくれたこと   A君および家族とも現在・将来について話し合う 機会が持てたこと 特に障害者の場合一つの壁にあたったとき、周囲の目を非常に気にすること   本人、会社ともに、貴重な経験を得たこと など、得られたものも大きかったといえます。 (M社のヒアリングより) 採用前から働きやすい職場体制を整えて  以前は、仕事の能力が高い聴覚障害者であっても、 情報不足による人間関係のもつれや疎外感といった心の葛藤により、短期で退社するケースが少なくありませんでした。  そこで、配属に関して、聴覚障害者の特性を知り、 お互いに歩み寄る努力をすることにし、採用時は受け 入れ準備として配属先のメンバーを中心に手話研修を 行い、入社後はマンツーマンで指導することにしまし た。また、月に1回は聴覚障害者を講師とした手話サークルを開くなどして、他部署との交流を持ち、コミュニケーションを図りました。  設備などのハード面としては、ミラーやマイク、伝 言ボード、パトライト、補聴器対応の電話拡張器など を導入しました。機器導入の効果は個人差もあります が、今後も聴覚障害者の社員と相談しつつ、よりよい 環境作りを目指していきます。 (L社のヒアリングより) 2 聴覚障害者は職場でのコミュニケーションに悩んでいます  下の表は、ハローワークに新規求職申込みのあった 障害のある求職者に関する雇用の実態について、平成 30年に調査したものです。  離職を防ぐことができたと考えられる職場での具体 的な措置や配慮として、聴覚言語障害者では『職場で のコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配 置』が『能力が発揮できる仕事への配置』と並び最も 多くなっています。また、職場で必要としている配慮 としても同回答が約半数を占める結果となっており、 コミュニケーションの壁は聴覚障害者の雇用にとって 大きな問題であることがわかります。  コミュニケーションには、内容の伝達と関係の伝達 という2つの側面があるといわれています。内容の伝 達とは作業に関する指示、仕事上の留意点など、関係 の伝達とは話し相手との人間関係を形成するという機 能、職場においては昼休みや仕事の後などの関わりと いえます。  この2つの側面が相まってこそ、充実したコミュニ ケーションが図られるといえます。 前職の離職を防ぐことができたと考えられる職場での措置や配慮(複数回答) 全 体 視覚障害 聴覚言語障害 肢体不自由 内部障害 調子の悪いときに休みをとりやすくする 14.4% 8.0% 8.2% 9.8% 23.3% 能力が発揮できる仕事への配置 15.3% 18.0% 11.0% 19.0% 10.4% 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮 9.7% 2.0% 6.8% 6.6% 16.8% 短時間勤務など労働時間の配慮 13.7% 14.0% 5.5% 11.9% 18.6% 職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置 4.9% 0.0% 11.0% 5.3% 3.2% 業務内容の簡略化などの配慮 5.7% 4.0% 1.4% 7.1% 5.4% 上司や専門職員などによる定期的な相談 3.1% 4.0%  2.7% 2.9% 3.2% 作業を容易にする設備・機器の整備 3.7% 4.0% 2.7% 6.1% 0.4% 移動のための配慮(点字ブロック、スロープ等) 1.9% 6.0% 0.0% 2.9% 0.4% 業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置 3.6% 4.0% 2.7% 5.0% 2.2% 職業生活、生活全般に関する相談員の配置 0.8% 2.0% 0.0% 1.1% 0.7% 教育訓練・研修の充実 0.5% 2.0% 0.0% 0.0% 1.1% その他 7.3% 10.0% 13.7% 6.6% 6.1% 特になし 44.2% 50.0% 54.8% 44.2% 40.1% (独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター『障害のある求職者の実態等に関する調査研究』(2020年3月)より) 職場で必要としている配慮(複数回答) 調子の悪いときに休みをとりやすくする 29.6% 19.3% 13.6% 23.9% 44.2% 能力が発揮できる仕事への配置 29.1% 44.6% 31.4% 37.0% 14.7% 通院時間の確保、服薬管理など雇用管理上の配慮 29.0% 24.1% 11.0% 20.1% 48.8% 短時間勤務など労働時間の配慮 18.6% 12.0% 9.3% 17.9% 23.1% 職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置 8.3% 6.0% 49.2% 3.5% 2.3% 業務内容の簡略化などの配慮 8.0% 8.4% 9.3% 9.9% 5.1% 上司や専門職員などによる定期的な相談 3.0% 2.4% 4.2% 3.1% 2.3% 作業を容易にする設備・機器の整備 9.0% 15.7% 7.6% 12.6% 2.3% 移動のための配慮(点字ブロック、スロープ等) 6.8% 21.7% 0.8% 9.1% 1.5% 業務遂行の支援や本人、周囲に助言する者等の配置 6.1% 9.6% 14.4% 6.6% 1.5% 職業生活、生活全般に関する相談員の配置 1.2% 2.4% 1.7% 1.6% 0.3% 教育訓練・研修の充実 1.8% 4.8% 4.2% 1.1% 1.5% その他 5.7% 6.0% 8.5% 5.5% 5.1% 必要なし 11.5% 7.2% 9.3% 13.1% 10.8% (独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター『障害のある求職者の実態等に関する調査研究』(2020年3月)より)  聴覚障害者の方々から『、障害者雇用マニュアル コミック版3 聴覚障害者と働く(』68 ページ参照)を読んだ感想が数多く寄せられています。聴覚障害は、聴力損失から生じる情報量の不足だけでなく、自分の意思を 相手にうまく伝えることができない障害でもあります。いただいた手紙には、職場でのコミュニケーション に悩んでいる聴覚障害者の気持ちが綴られています。ここに一部を抜粋してご紹介します。  僕は文章を書くのがすごく苦手です。ふだんは手話だけ使って話し ていますが、今年4月から入社して、会社の人達はあまり手話を知ら 聴 なくて、筆談だけやってコミュニケーションをした。本当は言いたい 事がたくさん持っているが、どうやって文章を書けばいいのかわから なくて、短い文ばかり書いても伝えない。やっぱり僕は文章が苦手で、 あきらめないで勉強してみたいと思っていた。どうやって正しい文章 書けばいいのかな。以前までは、学校の先生と母が直してくれたです。 今は一人暮らししていますので、これからどうすればよいのか一番悩んでいます。 (19歳 男性 聴覚障害者)  私は、感音性難聴による障害を持っていますが、幼少に失聴したの ではなく、成人してから次第に聴力を失いました。しかし現在では、 およそ3級レベルになっているようで親しい人や家族との電話では、 簡単なやりとりができる状態です。  10月より新しい職場に転職したのですが、面接時で私の発声がき れいなこと、多少電話(主に社内専用ですが)応対可能なこと、口話 でゆっくり大きな声で話してもらえば会話ができることなどで、情報 センターに配属されました。そこでは、大勢の社員が出入りし、郵便 物や宅配、問い合わせ、依頼など、コミュニケーションが必要なとこ ろでした。難聴・中途失聴という障害がどんなものであるか、私なり に同僚や上司に説明するのですが、発音がきれいで話ができていると 見られてしまって、どうも軽い障害と受け取られています。私自身、 性格が消極的で、「だまっていれば事が済む。」と最初は考えていまし たが、現実はそうもまいりません。そんな中どうしたら障害の壁を乗 り越えられるだろうかと悩んでいます。 (25歳 女性 中途失聴者) 職場に 手話の輪を広げる 社内で手話を習得する方法 社内の聴覚障害者に教わる 講習会、サークル活動  定期的または不定期的に手話講習会を開き、社内の聴覚障害者、手話のできる人から手話を教わる方法が よくとられています。また、昼休みや時間外などに自 主的に集まって、サークル活動として手話を習得する ところも増えています。  これらをきっかけに、聴覚障害者が職場適応への自 信を持つとともに、いろいろな人との関わりが広がる ことにより、聴覚障害のない社員にとっても「聞こえ ないこと」「聞こえない人」に対する理解がよりいっ そう深まることが期待されます。 計画的な講習会が効果を生む  週1回、終業後2時間程度、外部から講師を呼んで手話講習会を行っています。期間は2~3か月で、内容は初心者コースは基礎学習中心、中級は聴覚障害者とのフリー・トーキングです。 〈効果〉 職場の人々が気軽に聴覚障害者に語りかけるように なりました。 聴覚障害者とのふれ合いの中から、お互いに一体感 が深まりました。 手話講習会修了者のいる職場に配属された聴覚障害 者が、手話がわずかでもできる人がいることに安心 を覚え、職場への適応を早めました。 社内の雰囲気が明るくなりました。 〈講習会の育成〉  講習会の育成を図るため、次のような方法を取って います。 手話講習会のワッペンを作り、メンバーにつけさせ、 参加意識を高めました。 手話講習会修了者を会社として表彰し、メンバーの 意欲を高めました。 (T社のヒアリングより) 講師を社外へ依頼する場合  講師を社外の人に依頼する場合には、講習会の目的 や条件に合った講師を派遣してもらえるよう、(一財) 全日本ろうあ連盟加盟団体など(66、67ページ参照) などに相談するとよいでしょう。 コミュニケーションの促進のために 欠かせない会社の援助        聴覚障害者とのコミュニケーションのために会社が 行う援助としては、 ●就業時間中、あるいは昼休み、時間外などに、従業 員が手話を学習するのに必要な場所や物品を提供す ること ●社内の手話サークルに講師派遣元を紹介したり、謝金などの援助をすること ●従業員が社外で手話を習得するための休暇や職務免 除を認めたり、受講費の援助を行うこと  以上のように、状況に応じていろいろな方法がある と思われますが、社内に手話の輪を広げるためには、 日常的な「細かい配慮の積み重ね」が何より大事です。 *手話に早くなじむポイント* 1簡単な手話から  手話を早く確実に身につけるためには、まず、仕事や日々の生活で使っている言葉の中から簡単な手話を選び、それを毎日使うことです。こうして一つひとつ、数を増やしていけば、コミュニケーションがスムーズになり、自然と手 話による会話の技術もついてきます。 2それは何の形をしているか  手話は、ものの形や動きをジェスチャーのように表現するものが多くあります。手話の単語を覚えるときは、その手話の形がどんなことを模写してきたの かを考えながら行うと、早く楽しく覚えることができます。 3手話と同時に言葉も  手話で会話をするときは、手の動きと同時に身振りや表情をつけることが非常に大切です。また、伝える言葉をゆっくりと言いながら行うと、伝わりやす くなることがあります。 4大切なことは筆談を併用して  専門的な内容や複雑な内容、あるいは、もし間違って伝わると機械や製品を壊した り、ケガをする恐れがある場合などは、筆談やイラスト、図解も併用して伝えましょう。 5伝えた後は相手から確認を  内容が正確に伝わったかどうか、筆談で確かめたり、指示した作業をまず やって見せ、本人にやらせてみて確認を取ることも重要なポイントです。 目的やレベルに合わせて選択できる 社外で手話を習得する方法 ボランティアから手話通訳まで 多種多様な選択肢  市区町村や都道府県などの自治体では、各種の手話 講習会を行っています。小学校、中学校、高等学校、 大学などでも自主的に手話クラブを作っているところ もあります。  一般に、社外で手話を取得するには次のような方法 があります。 NHK教育テレビ、手話に関する各種のDVD・書 籍、インターネット、通信講座、個人から教えても らうなど独学で習得する 手話講習会、手話サークル、カルチャー・スクール などに参加して習得する 市区町村の手話入門・基礎課程の講座を受講する 都道府県の手話通訳者養成講座を受講する 厚生労働省認定の手話通訳技能認定試験(手話通訳 士試験)を受けて手話通訳士となる  なお、手話サークルは、手話や聴覚障害者問題を多 くの人々に広め、理解を得ることを主な目的とするボ ランティア活動です。  現在、手話のできる人は大まかに分けると次のよう な人たちがいます。 ●手話奉仕員……市町村及び都道府県で手話奉仕員養 成講座を修了し、手話奉仕員として 登録している人。主に手話サークル などに入ってボランティア活動をし ている ●手話通訳者……都道府県で手話通訳者養成講座を修 了し、手話通訳者全国統一試験※1に 合格して登録通訳者となって手話通 訳活動をしている人 ●手話通訳士……厚生労働省認定の手話通訳技能認定 試験(手話通訳士試験)※2に合格して 手話通訳士として登録している人 ※1 社会福祉法人全国手話研修センターが実施している試験 ※2 社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施している試験  社外での手話の学び方の詳細は、下記にお問い合 わせください。 都道府県、政令指定都市、市区町村の障害福祉担当課 各都道府県の(一財)全日本ろうあ連盟加盟団体(66ページ参照) 聴覚障害者情報提供施設(67ページ参照) *手話奉仕員、手話通訳者、手話通訳士になるためには*  手話奉仕員、手話通訳者の養成は、厚生労働省で定められた「手話奉仕員及び手話通訳者養成カリキュラム」に沿って手話を学びます。 1手話奉仕員養成講座の入門課程、基礎課程を継続して学ぶ 2講座修了後、手話奉仕員として活動する 3さらに、手話通訳養成講座の基礎課程、応用課程、実践課程を継続して学ぶ 4講座修了後、手話通訳者全国統一試験を受け、手話通訳者になる といったコースが整備されています。またさらに、手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)に合格した人が手話通訳士として活動しています。 奉仕員養成 手話奉仕員として 手話奉仕員として 聴覚障害者・聴覚障害者団体と ろう者・ろう協会とともに歩む地域活動 ともに歩む地域活動 通訳者養成 全国統一試験 登録手話通訳者としての通訳活動 手話通訳者現任研修 手話通訳士試験 手話通訳士としての 通訳活動 Section 3 聴覚障害者のスキルアップ・キャリアアップ 働く意欲を高める スキルアップ・キャリアアップ スキルアップ・キャリアアップは聴覚障害のない社員と同様に必要なもの  スキルアップ・キャリアアップを図るため、社員への研修を設ける場合には、聴覚障害者にも聴覚障害の ない社員と同様の研修の機会を提供することが必要で す。  また、機会はあっても、その研修に情報保障がされ ていなければ、聴覚障害者はその希望と能力にもかか わらず、研修内容を聴覚障害のない社員と同様に学ぶ ことができず、その結果、聴覚障害のない社員に比べ てスキルアップが難しくなってしまいます。  聴覚障害のない社員と同等の機会および情報量で研 修を受けられることによってはじめて、社員がみな同 じスタートラインに立てるといえます。 キャリアを活かし、モチベーションを 維持・向上するための工夫  キャリアアップをして管理職になった場合、部下へ の指示や会議での交渉など、周囲とコミュニケーショ ンを図る機会が多くなります。  コミュニケーション上の配慮を行うことによって、 聴覚障害者も管理職の業務をこなすことは可能です が、キャリアを活かし、かつモチベーションを維持・ 向上するために、本人と話し合いのうえ、以下のよう な工夫を行っている会社もあります。 チームの中でリーダー的な役割を担ってもらう ?専技門を術価評たしで形、管理職相当のポジションに登用をする スキルアップ・キャリアアップのための研修方法 ◆社内研修 ●同期や同年代の社員を集めた研修 ●聴覚障害者がいる支社や支店ごとの研修 ●週、あるいは月に数回の勉強会 ●OJTによる指導 聴覚障害者の先輩によるマンツーマン研修 ●論文の提出 ●通信教育を利用 ●社内の訓練機関を利用 ●自社で取り扱っている商品を製造している会社 の製造工場の見学 ◆社外研修・自主研修・自主学習 障害者の訓練機関へ派遣して研修を受けさせる 民間・NPOなどの聴覚障害者向けの講習会な どを受けさせる スキルアップに役立つ資料を会社で購入する 通信講座を利用する ◆研修の際の情報保障 社外の手話通訳者を研修につける 手話通訳のできる社員を通訳としてつける 要約筆記者をつける 聴覚障害者の社員による講習(聴覚障害者から 聴覚障害者へ教えると飲み込みが早い) 演習ではコミュニケーションボードなどを利用し、細かい情報を得られるように配慮する 質問などについてはパソコン筆記をしてもら い、プロジェクターで画面に映し出すなど、参 加者全員が共有できる方法を用意する 積極的に技能検定へ挑戦  当社では、製品の品質力を高めるには、個人の「は んだづけ」技術のキャリアアップが不可欠です。その ため、技能検定への挑戦に力を入れ、年間を通して国 家技能検定、親会社の技術技能競技会、障害者技能競 技大会(アビリンピック)に参加しています。  また、はんだづけ行程におけるスキル表を活用し、 個人の能力を把握して計画的な人材育成にも着手して おり、加えてスキルアップした社員の昇給や、責任の 重い職務にシフトさせるなどの取組も行っています。  本人の自己啓発による取組を奨励し、検定準備のた めの練習は休日を活用していますが、聴覚障害者への 実技指導は、手話通訳を介して理解を高めるなどの配 慮を行っています。  結果として、個々人のスキルが向上してきており、 それに伴って生産性も向上しています。 (S社のヒアリングより) 年に3回の面談で目標を設定し、 業務を評価  当社では、障害のあるなしに関わらず、社員に対し て毎年、6月の年初面談、10月の中間点検、翌年2 月の年度末面談という3回の面談によって、個人の 聴 目標設定や業務評価を行い、スキルアップ、キャリア アップを図っています。年初面談で本人の能力の現状 や目標を確認し、中間点検で調整、年度末面談で最終 確認を行って次年度につなげています。  面談ではシートを活用し、自己の能力開発状況を確 認しています。シートには、基本的な基礎能力、職場 のマナー・業務遂行力、委員会活動や業務改善提案、 通信講座などの自己啓発についての自己評価を書き込 んでもらい、それをもとに年初に目標を設定していま す。シートは、聴覚障害者の場合、プロパー社員(障 害のある社員)の主任が中心となって改訂したものを 使用しています。  聴覚障害者が面接を受ける場合は、手話通訳者を同 席させています。  人材育成としては、研修、OJT、自己啓発支援を 3本柱として行っています。中堅研修には社外に手話 通訳者を依頼し、当社独自の通訳表現が必要な場合は 手話のできる社員が担当しています。  管理職の登用も一定の基準で公平に行い、その1つ の条件として論文を書いてもらっています。 (N社のヒアリングより)