実務編 1 新規雇用事例  12 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 2 新規雇用事例  32 特別支援学校の職場実習を受け入れ 3 職場定着事例  43 遅刻が増えて、家族と協力して解決 4 職場定着事例  52 指導担当者の異動がきっかけで、作業遂行に課題が発生 5 職場定着事例 親の高齢化のためグループホームに入居 エピローグ  68 P12 1  新規雇用  事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 職場:スーパー 従事作業:商品の品出し、陳列、清掃作業 対象障害者 上田一郎さん シーン1 求職活動 上田一郎さんは特別支援学校高等部を卒業後、就労移行支援事業所『希望の家』に通いだ した。 就労移行支援事業所『希望の家』 上田さん、袋詰めのクッキーをお店に運び並べてくださいね はい カララン こんにちは あら、おいしそうに焼きあがっているわね ありがとうございます P13 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 一郎もそろそろどこかに就職するっていうわけにはいきませんか うちへ来てもう2年になりますね就職を目指すために地域障害者就職センターに相談して みたんですよ 職業準備支援というものを利用してみませんか 用語解説 職業準備支援 作業体験、職業準備講習などを通じて、職業に関する知識の習得や社会生活技能等の向上 を図るもの わかりました やってみます 地域障害者職業センター P14 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 上田さんは作業は几帳面 決められたことは確実にできますね また、作業量も安定していますね いってらっしゃーい お疲れ様でした P15 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 加藤さん 自信もわいてきたので早く就職を… 一緒にハローワークに行ってみましょう スーパーマーケット井上で商品の品だし 陳列、清掃作業の求人がでているよ 商品を並べる作業をやってみたいです このスーパーマーケット井上の仕事を、やってみたいです 上田さんは経験もしているし先方に連絡してみましょう 先日もお電話したハローワークの江川です 求人の作業内容に十分対応できます はじめて障害者雇用をされる企業に向けて さまざまな支援制度がありますよ では面接をしてみましょう ありがとうございます P16 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 解説 支援機関の名称と主な業務内容    知的障害者の雇用に関して、本人と事業主との橋渡し役となる以下のような支援機関が あります。雇用の際や雇用してからの職場定着に関して、支援機関を活用してよりよい雇 用・職場環境を築いていくことが大切です。 1. ハローワーク(厚生労働省が運営) ■ 職業相談・職業紹介  就職を希望する障害者の求職登録を行い、技能、職業適性、知識、希望職種などの状況 に基づき、ケースワーク方式によるきめ細かな職業相談・職業紹介を実施しています。 ■ 障害者向け求人の確保  障害者向け求人の開拓を行うとともに、一般求人として受理したもののうちから障害者 に適したものについて障害者求人への転換を勧め、求人の確保に努めています。 ■ 雇用率達成指導  毎年、事業主からの雇用状況報告を求め、雇用率未達成の事業主に対して指導を行って います。 ■ 雇用率達成指導と結び付けた職業紹介  事業主に対して雇用率達成指導を行う中で、職業紹介部門、事業主指導部門が連携し、 雇用率未達成企業からの求人開拓、未達成企業への職業紹介を行っています。 ■ 職場定着・継続雇用の支援  職業紹介により就職した障害者が職場に適応して就労していけるよう、支援を行ってい ます。 2. 地域障害者就業センター  ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が各都道府県に設置)  障害者職業カウンセラーが配置され、障害者に対して、職業評価、職業指導、職業準備 支援、ジョブコーチによる支援等の専門的なリハビリテーション、事業主に対する雇用管 理に関する助言等を実施しています。 ■ 職業評価・職業指導  就職の希望等を把握した上で、職業能力等を評価し、必要な相談・指導を行い、これら を基に、就職して職場に適応するために必要な支援内容・方法等を含む個々人の状況に応 じた「職業リハビリテーション計画」を策定します。 ■ 職業準備支援  個別カリキュラムに基づき、就職又は職場適応に必要な職業上の課題の把握とその改善 を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援、社会生活技能等の向上を図る ための支援を行います。 P17 ■ ジョブコーチ支援  障害者が職場に適応できるよう、ジョブコーチが職場に出向いて、障害者および事業主 に対して支援や助言などを行います。 ■ 事業主に対する雇用管理に関する助言等  事業主が障害者の雇用管理に課題を有し、その解決に継続的な支援を必要としている場 合には、事業主のニーズや雇用管理上の課題を分析し「事業主支援計画」を策定して、体 系的な支援を行います。  特に専門性の高い障害者の雇用管理に係る事項については、地域の専門家である「障害 者雇用管理サポーター」の協力を得て助言等を行います。 3. 障害者就業・生活支援センター  (都道府県知事が指定する一般社団法人もしくは一般財団法人、社会福祉法人、NPO 法人など)  就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職 場・家庭訪問などを実施します。 ■ 就業面での支援  就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)、就職活動の支援、職場定 着に向けた支援、障害者それぞれの特性を踏まえた雇用管理についての事業主に対する助 言、関係機関との連絡調整 ■ 生活面での支援  生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などの日常生活の自己管理に関する助言、住居、 年金、余暇活動など地域生活、生活設計に関する助言、関係機関との連絡調整 4.特別支援学校  障害の程度が比較的重い児童・生徒を対象として専門性の高い教育を行う学校です。幼稚園 から高等学校に相当する年齢段階の教育を、特別支援学校のそれぞれ幼稚部・小学部・中 学部・高等部で行います。高等部においては、家庭生活、職業生活、社会生活に必要な知 識、技能、態度などの指導を中心とし、例えば、木工、農園芸、食品加工、ビルクリーニン グなどの作業学習を実施し、特に職業教育の充実を図っています。 5. 就労移行支援事業所  一般就労などへの移行に向けて、就労移行支援事業所内での作業や、企業における実習、 適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援を行います。利用期限は原則2年 以内です。 6. 障害者職業能力開発校(国立13校、都道府県立5校)  一般の職業訓練校で職業訓練を受けることが難しい障害者に対し、それぞれの障害の状 態に応じて科目やカリキュラムに特別の配慮を加えた職業訓練を実施しています。また、 企業に雇用されている障害者に対して、多様な職務内容の変化にも迅速に対応できるよう、 在職者訓練を実施しています。 P18 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート シーン2 面接 どうしてうちの会社で働きたいと思ったの? 『希望の家』でパンやクッキーを作ってお店に並べていました お菓子を売っているスーパーに興味があって働きたいと思いました 当施設では接客もしてお客様の評価も良かったですよ 食品を扱う作業ですので作業時には白衣に着替えたり、手洗い髪の毛のチェックをしたり  身だしなみもしっかりしています。 実際、うちの仕事はできそうかな 当センターに約2か月通ってもらって様々な作業を体験してもらいました 丁寧な作業で確実性はあると思います また、熱心に作業に取り組みますので安定した作 業が可能だと思います ただ P19 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 初めての場面では緊張をしてしまうことがあるので作業に慣れるまでの時間をいただけれ ばありがたいです うーん 飯野部長 トライアル雇用という制度をご存知ですか? まず 3か月間有期雇用していただいて3か月後に常用雇用に移行するかどうか判断する ことが可能です その間に作業がどれだけできるか職場に慣れるか見てください それに初めての受け入れでご不安な点がございましたら 当センターではジョブコーチというスタッフを定期的に訪問させ 上田さんが作業や職場の人間関係になれるためのサポートをしたいと思います トライアル雇用とジョブコーチ支援を活用して まずは上田さんの仕事をする力を見てい ただけないでしょうか … 上田さんうちの会社で働いてみたい? はい 働きたいです! わかりました 社長にかけあってみましょう 結果は、後日ご連絡します よろしくご検討ください P20 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 解説  障害者を雇用する場合に活用できる支援制度 1. 障害者トライアル雇用事業 問い合わせ 都道府県労働局、ハローワーク  障害者雇用の経験が少ない事業主は、障害者に関する知識や経験に乏しいことから、障 害者雇用に取り組む意欲があっても雇い入れることに躊躇する面もあります。  また、障害者の側でも「どのような職種が向いているかわからない」「仕事に耐えられる だろうか」といった不安を感じている場合もあります。  そこで、障害者を短期の試行雇用(トライアル雇用)の形で受け入れることにより、事 業主の障害者雇用のきっかけをつくり、常用雇用への移行を促進することを目的とする制 度です。 ■期間  トライアル雇用の期間は原則として3か月間で、ハローワークの職業紹介によ り、事業主と対象障害者との間で有期雇用契約を締結します。 トライアル雇用期間中の労働条件は、労働基準法などの労働関係法令に基づき定めなけれ ばなりません。 ■助成金 トライアル雇用を実施した事業主に対して、トライアル雇用終了後、原則とし てトライアル雇用者一人につき、月4万円の助成金が支給されます。 ※ 対象となる事業主の要件がありますので、詳細についてはハローワークにお問い合わせ ください。 障害に応じた職場の配慮事項が分からない 障害者への接し方、雇用管理が分からない どのような仕事が適職か分からない 不安  事業主  不安  障害者 どのような仕事を担当させればよいか分からない 身体障害者は雇用しているが、知的障害者を雇うのは初めて 訓練を受けたことが実際に役立つか不安 就職は初めてなので、職場での仕事に耐えられるか不安 トライアル雇用(3か月間の有期雇用) 不安の解消・軽減 常用雇用 P21 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 2. ジョブコーチによる支援 問い合わせ 地域障害者職業センター  障害者が円滑に職場に適応することができるよう、ジョブコーチが事業所に出向き、職 場内において様々な支援を行う制度があります。 ■ 「作業手順を覚える」「作業のミスを防ぐ」などの職務を遂行するための支援や、「質問 や報告を適切に行う」などの仕事をするうえで円滑にコミュニケーションをとるための支 援など、障害者の課題に応じた支援を行います。 ■ また、障害者だけでなく、「障害を理解し、適切な配慮をするための助言」や「仕事内 容や指導方法に対する助言」など、事業主や職場の従業員に対しても支援を行います。 ■ 支援期間や支援頻度は、課題に応じ個別に設定しますが、標準的な支援期間は2〜4か 月程度です。 支援頻度を徐々に減らし、最終的には事業所内のサポート体制をつくることを目標として います。 ■ 地域障害者職業センターに所属するジョブコーチ(配置型職場適応援助者)と社会福祉 法人などに所属するジョブコーチ(訪問型職場適応援助者)が各地域に配置されており、 必要に応じて両者が連携して支援を行います。 右記のジョブコーチ以外に事業主が自ら雇用する障害者(在職者)のために、職場適応援 助者を配置することができます(企業在籍型職場適応援助者)。また、訪問型及び企業在籍 型職場適応援助者配置に関し、助成金制度が設けられています。 ・ 障害特性に配慮した雇用管理に関する助言 ・ 配置、職務内容の設定に関する助言 事業主 (管理監督者・人事担当者) 上司  同僚  同僚 ・ 障害の理解に係る社内啓発 ・ 障害者との関わり方に関する助言 ・ 指導方法に関する助言 ジョブコーチ ・ 職務の遂行に関する支援 ・ 職場内のコミュニケーションに関する支援 ・ 体調や生活リズムの管理に関する支援 障害者 家族 ・ 安定した職業生活を送るための家族の関わり方に関する助言 集中支援 職場適応上の課題や事業所の環境整備等について集中的に改善を図る 週3〜4日訪問 移行支援 支援ノウハウの伝授やキーパーソンの育成により、支援の主体を徐々に職場に移行 週1 〜2日訪問 フォローアップ 数週間〜数か月に一度訪問 ※個別に必要な支援期間を設定 ※雇用の前後を問わず、必要なタイミングで支援を実施 P22 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート シーン3 ジョブコーチ支援スタート トライアル雇用を活用して上田さんを試しに雇用してみたいのだが…それとジョブコーチ の支援も欲しいね ありがとうございます 早速、カウンセラーの加藤とジョブコーチをお伺いさせます 飯野部長 このたびはジョブコーチ支援とトライアル雇用を活用して上田さんを受け入れ てくださりありがとうございます 上田さんが面接ではっきりと「働きたい」って言ってくれたからね やる気のある人であれば、試しに雇用してみてはどうかって社長に相談してみたんだよ 社長もまずは仕事をやらせてみろって言ってくれました 今日は御社に訪問するジョブコーチのご紹介と具体的な支援内容の打合せでお邪魔いたし ました P23 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート ジョブコーチの奥田です よろしくお願いします 3か月間のトライアル雇用中ジョブコーチ支援を実施したいと考えております 上田さんは、初めての場面では緊張が高まりやすいので仕事の報告・連絡がスムーズにで きるようサポートしたいと思います 初めての障害者雇用ということで現場のスタッフの方々もどのように作業指示を出したら よいか戸惑いもあるかもしれません そういえば主任の中沢さんもどのように声かけすればいいか気にしていたな ジョブコーチさんよろしくお願いします 現場の方に上田さんのことを理解していただけるよう中沢主任とも情報交換を蜜にしてい きたいと思います 失礼します 中沢です よろしく お願いします P24 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート シーン4 通勤時の配慮 それと、上田さんは一人で通勤することは大丈夫なのだろうか はい それは大丈夫です 障害者職業センターに2か月間通所していたときは 一人で電車、バスを乗り継いで通っ ていました 電車が遅れたときも駅から電話連絡をしてくれました 電車が遅れて 今、駅につきました 会社に遅れるような事態が発生したときに備えて 連絡用のカードを携帯させようと思っ ています P25 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 緊急時の連絡先 担当者を教えていただけませんか? 〈連絡カード〉 ◎ 電車・バスが遅れたとき会社へ電話する 電話番号 担当者 ※ 遅れた理由を伝える なるほどこれならすぐ連絡先がわかるね 解説 通勤時の配慮 1. 通勤ルートの確認  企業で働く(あるいは働こうとする)知的障害者は、基本的に一人で通勤が可能と考え て間違いありません。ただし、知的障害者は慣れるのに時間がかかるので、人によっては 通勤の練習が必要です。事前に利用するバス・電車などの交通機関、乗降時刻などを確認 しておくことが大切です。 2. 交通機関の遅れなどの時に備えて  交通機関が遅れた時に通勤途中から連絡できるよう職場の連絡先を教えておきます。困 ったときや異常のあったとき、職場や自宅へ電話連絡したり、交番や駅員などに相談した りするよう伝えます。近年は携帯電話も普及したので、企業側も本人の連絡先を把握して おくとよいと思います。  なお、連絡体制を整えているにもかかわらず、無断欠勤や遅刻をする場合は、適切に指 導する必要があります。 P26 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート シーン5 わかりやすい教え方 トライアル雇用初日 事務室 おはようございます 今日から、上田さんがトライアル雇用でお世話になります 中沢です よろしくね上田さん 上田さんがお仕事に慣れるための方法を会社の皆さんと一緒に考えていきたいと思います  定期的に会社にお邪魔することになりますがよろしくお願いいたします こちらこそ よろしくお願いします 上田さん 一緒にがんばっていきましょう わからないことがあったら何でも聞いてね はい! 用語解説 トライアル雇用 障害者を試行雇用の形で受け入れてもらうことで、本格的な障害者雇用に取り組むきっか けづくりを進める事業。 P27 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 食品売場 奥田さん、私もわからないことが出てくると思いますがそのときは教えてくださいね わかりました よく見てね じゃ やってみてくれる? はい! あら、上手じゃない 昔、『希望の家』でお菓子の陳列作業をやったことがあります そうなの! ポイント@わかりやすい教え方 ● 実際にやり方をしめす ● 一緒にやる ● 一人でやってみるをくり返すと上達します。 P28 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート きちんと並べてあってとても上手ね じゃあこの台車にあるやつを全部やってもらおうか な はい あ 中沢主任 陳列作業をする上で注意するところはありますか? そうねぇ… 大切な商品だから床に落としたり汚したりしないこと もし商品が汚れていたら取り除く こと それとお客様から質問を受けたら『少々お待ちください分かるものに確認します』といっ て私を呼ぶこと――かな 上田さん、今、中沢主任が言った注意点言ってみようか 商品を落とさない汚さない お客様からの質問は中沢主任に報告、です ばっちりね! じゃあお願いします はい ポイントAわかりやすい教え方 ● やり方を示す際には、簡潔で具体的な説明も加えるとよい ● 正しくできたらその場で褒める ● わからなくても「はい」と返事をしてしまう場合があるので、本人に手順を説明しても らう、実際の行動をみて、理解したか確認することも大切 休憩室 上田さん陳列作業は大丈夫そうね きっと中沢主任の指導が上手だからですよ P29 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 私の教え方が…? 実際にやり方を見せてくれたので上田さんもとてもわかりやすかったと思います きちんと並べてあってとても上手ね それとできたところを褒めてくださったでしょう 上田さん自信になります はい 他に何か心がけておくことは? そうですね 初めての場面では緊張からミスをすることがあると思うのですが そんな時はどこをどうすればいいのかなるべく具体的に指示してあげてください  奥のほうから順番につめてね 手前には… ただ注意されるだけだと萎縮してしまうだけなので  ダメじゃないの!こんな置き方! 確かに 頭ごなしにしかられるだけじゃどうしていいかわからないものね 人によって教え方が違ったり手順がころころ変わったりすると手順の理解が不十分になる ことがあります そうねまわりのみんなにも徹底しておくわ P30 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 仕事の習熟をサポートするポイント 1. 作業工程の細分化  複数の工程にまたがる業務を任せようとしてうまくいかない場合は、その中の1つの工 程だけを任せるようにしてみます。職務内容を細分化することで業務をマスターできる可 能性があります。また、数工程を通常1人で行う作業を、細分化でて数人でそれぞれ同じ 量をこなせば、作業の間違いを減らし、生産性をあげることができます。 スーパーのバックヤードで商品を箱から出し、売り場に出て商品を陳列する仕事 作業工程の細分化 パックヤードで商品を箱から出し、 空き箱を片付ける仕事 2. 抽象的な表現ではなく具体的な言葉で  作業の指示を出す際には具体的に行い、知的障害者に理解できる言葉やサインに翻訳す ることが大切です。「適当なところで」「いい頃合いで」「大体のところで」といった曖昧な 指示は避けなければなりません。知的障害者が上手に仕事ができない場合、作業の指示や 情報が正確に伝わっていないことが考えられます。  知的障害者の理解できる、わかりやすい言葉を探り当て、指導者が伝えると、作業能率 が向上します。 商品の陳列がで「きちんと並べて」 「商品の向きを揃えて並べる」と具体的に指示 P31 実務編 1 新規雇用事例 ジョブコーチ支援で受け入れをサポート 3.数や量の計算が苦手な場合は、動作に置きかえて  数や量の計算など抽象的な思考が得意ではない人もいます。しかし、具体的なものを通 しながら物事を考えていくことは、けっして苦手ではありません。したがって、「数や量の 計算」をさまざまな補助器具を使って、具体的な「動作」に置きかえる工夫をすることで 効果をあげることができます。 【数量の処理についての工夫の一例】 ●仕切りの中に一つずつおさめれば、所定の数になる箱を用意する。 ●できあがったら、カウンターを1回押すことにより、完成した個数が数えられる。 ●5までは数えられる人の場合、20枚束ねる仕事で、5枚の束を4組つくって束ねる。 ●製品1個あたりの重量を記憶させると、乗せた製品の個数が表示される計測器(カウン ティングスケール)を準備し、数え間違いをなくす。 ●秤の目盛りの所定の重さのところに色のついているテープを貼り、重さを計る。 ●時間を砂時計やタイマーを使って計る。 4.分類をするときは手がかりを  多種類の商品を区別するため、文字情報に加え「手がかり」となる色、記号をつけ、置 き場所を区分けすると良いでしょう。類似部品は分けて保管します。倉庫での配送作業も 品物や配送場所を「手がかり」で区分することで対応可能となります。 5.手順を理解するためにマニュアルを整備  図や写真を盛り込み、手順を簡潔にまとめたマニュアルを整備することで手順の理解を 助けます(38ページの「マニュアルの効果」参照)。