入職時  コミュニケーションの促進@ コミュニケーションの基本は確認から このストーリーの主人公 木村美雪さん(40歳) 食品会社五味食品 総務部人事課勤務 転職してまもない 中途失聴 (障害等級3級) はい 人事課の小泉です! あっ 八島係長! ああ、小泉さんか あさっての会議が急に 明日になったので 頼んでおいた資料を 今日中につくっておくように 木村さんに伝えてくれる? それから、ぼくの 机の上のファイルも 木村さんに渡して おいてくれる? はい わかり ました! 木村さん、出張先の 八島係長から電話で このファイルを木村さんに 渡すようにって… それから あさっての会議が 明日になったんで 例の資料を 今日中に作成して おくようにって ああ、これが あのファイルで ……!? ここに書いて もらえますか? じゃあ 木村さん よろしく お願い します すぐ 行きます 課長! えっ! はっはい … 資料を どうすれば いいの!? 明日 係長に 聞こう… 翌日の朝― えー? 資料できて ないの!? 昨日ちゃんと 伝言しておいた んだけど… 私、聞いて ませんけど …… 小泉さん 昨日木村さんに 伝言してくれ なかったの? すぐに 伝えました けど… でも 木村さんは 聞いてないって 言ってるよ! えーっ そんなあ…! …なるほど 小泉さんも木村さんも 内容が伝わったかどうか きちんと確認すべき だったね 特に大事な 業務連絡は メモを利用する ようにした方が いいな ごめんなさい わかったと思い 込んでしまって … 私も わかるまで ちゃんと聞き かえせばよかった んです ぼくも携帯から メールを送って しっかり確認 すべきだった そう、みんな おたがいにしっかり 確認し合うことが 大切だね 入職時  コミュニケーションの促進A コミュニケーションの壁をなくすには キミ この書類は 今年から新しい 書式になったと 言っておいたじゃ ないか!! ちゃんと話を 聞いてないから こういうミスを するんだよ! 私も 気をつけ なくちゃ… 数時間後のこと― 課長 書類が できました ムッ! なんだ これは! キミたちは 何度同じことを 言わせるんだ!! 書き直して きなさい! どこが いけないんで しょうか …… どうして? 木村さん … ごめんなさい さっき… この会社も やっぱり… 前の会社では 私は中途失聴なので 発語がきれいということで 実際よりもよく聞こえる と思われていた。 えーっ うっそー !! ねえ 木村さんも そう思わ ない? 聞こえないこと わからないことが きちんと理解して もらえず 情報センターに 転属されて しまった わーっ わからない! どうしよう! はーい どうぞ! 失礼しま… あっ森さん!? あら、木村さん あなたの様子が 気になって 今日は定期訪問に 来たのよ 木村さん ごめん… あら 桜井さん?! 2人とも どうしたん だね? まあ 入りたまえ はい 失礼します さっきは ごめんなさい あの書類は書式が 変わったのよ 少し前に山田さんが 同じミスで課長に 怒られたときに 教えてあげるべき だったの いくらペアで 仕事を教える 役目でも 同僚が怒られて いることまでは 伝えにくいわ よね はい なんだか 告げ口してる みたいで… そういえば こんなことも ありました 何をやって いるのかしら? 2千円で いいかしら? 私も 2千円 … さっき、何の お金を集めて いたの? あっ知らなかった んだ! 経理部の 藤井さんのお母さんが 病気で亡くなった のよ! えーっ 知らなかった …! だから、みんなで お香典を集めて いたのよ。知ってると 思ってたの …… …… 確かに 結婚や出産の ようなおめでたいことは みんな話題にするけど ご不幸はあまり口に しないしなあ…! だから 私だけ 全然知らずに いることがある んです そういうところで 聴覚障害者は 社内のコミュニケー ションの輪にうまく 入れないことが けっこう 多いようです そうなんです たとえ小さな情報でも それが職場の雰囲気を 変えることもあり そのコミュニケーションの 輪に入れないと 何となく 自分の居場所じゃない ような気がしてしまう んです そういうことも話し 合える仲間をつくる には待っている だけじゃだめだと 思うの! 自分からも 話しかける ようにしなく ちゃね でも、聴覚や言語に 障害があることで コミュニケーションを とることに臆病になったり 緊張したりする人が 多いのも事実だから まず周囲が受け入れる 努力が必要だね ところで木村さん 私に何か 用事があって 来たのでは? いいえ、もう いいんです 私頑張り ます! フフフ 入職時  コミュニケーションの促進B 誤解は相互理解のチャンス ある日のこと― キャッ!! コピー こ・しょ・う・ちゅう メ・ン・テ・ナ・ン・ス た・の・ん・だ・わ! あーっ びっくりした… まあ なんて乱暴な 人なんでしょう! そして― あら? 開かないわ! そのロッカー 開けるの コツがある のよ! 困ったわ ちょっと 貸してごらん なさい! わあ! 何するん です! ほら 開いた! いきなり ひどいわ どうして 意地悪ばかり するんだろう? 翌日の 退社時のこと― はっ! 昨日は ごめんなさい! あなたにどう 声をかければいいのか わからなくて… ! 話し合える 仲間をつくるには 待っているだけじゃ だめだと思うの 自分からも 話しかけるように しなくちゃね 仕事で何度も 聞き直したら それからあまり 話をしてくれなく なった人もいるし … もう一度 お願い します 仕事で必要な 話はちゃんとして くれるけど それ以外では あまり話を してくれない 人もいる… でも この人は 私に謝るために 「ごめんなさい」と いう手話まで 覚えてくれて おたがい理解を し合うことが大切 なんだ…! 私は大人になってから 聞こえなくなったので 手話はできません。 でも 大きな声で はっきりとゆっくり 話してくれれば 会話もできます わかった・ 私・綱島・と いうの・ よろしく・ね! それから 昼休みや就業時間後に 楽しそうに会話をする 木村と綱島の姿が 見られるようになった あなたのおかげで やっと自分の ことが伝えられる ようになったわ 心のバリアフリー ◎聴覚障害者の気持ち  コミュニケーションの困難さや情報不足の不安などから、聴覚障害のない人との交流に強い緊張感を抱いたり、失敗を恐れてなかなかうまく心を開けない人がいます。 ◎聴覚障害のない人の気持ち  聴覚障害者とどのようにコミュニケーションをとってよいかわからないために、積極的に接することを避ける人がいます。 ◎心の壁を取り除くためには  特に周囲の聴覚障害のない人からの積極的な働きかけが大切です。おたがいに同じ職場の仲間であることを意識するとともに障害についての理解を深め、広い心で相手を受けとめる気持ちが必要です。また社内の行事をはじめ、勤務時間以外の余暇活動などにも聴覚障害者が気軽に参加でき、打ち解けた雰囲気の中で心を開くことができるように配慮することが望まれています。