表紙 障害者雇用マニュアルコミック版4 精神障害者と働く 〜理解と思いやりの職場環境づくり〜 ■精神障害者を雇い入れ  職場での受入れ体制を構築 ■職場環境の変化による不安や悩みを  支援機関との連携で解決 ■雇用継続に向けた、仕事に対する  モチベーション維持・向上の取組 ■職場におけるてんかん発作への  対応・未然防止の取組 ■メンタル不調による休職から  職場復帰への流れ ■職務の変更による  2回目の休職からの職場復帰 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 はじめに  精神障害者の雇用につきましては、改正障害者雇用促進法により平成30年4月から精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加わり、法定雇用率が2.2%に引き上げられるなど雇用支援制度・施策の拡大が図られていることにより、今後も就職の機会がさらに増加し、特性に応じて活躍できる場が広がっていくと考えております。  また、保健医療、福祉の進展等により精神障害者の社会参加が進み、就業ニーズも年々高まりを見せており、令和元年度の厚生労働省の障害者の職業紹介状況によれば、ハローワークを通じた精神障害者の就職件数は49,000件を超える(前年度比3.3%増)など働く精神障害者の数は増加しています。  このような中で、精神障害者の雇用については職場定着の難しさがしばしば指摘されており、事業主にとっては精神障害者の職場定着をいかに図っていくかが大きな課題となっています。また、企業に就職後、うつ病などのメンタルヘルスに不調を来して休職した従業員に対する適切な雇用管理の手法を知りたいというニーズも高まっているところです。  本マニュアルでは、近年の新たな動きや雇用支援制度の情報を取り入れつつ、精神障害者の雇用促進、職場復帰及び職場定着に当たって必要な雇用管理、職務内容の設定や職場の配置、作業指導の方法、職場環境の設定などについて解説し、わかりやすく読みやすいコミック版の形式で紹介しています。  本マニュアルができるだけ多くの企業などで活用され、精神障害の特性や雇用管理上の配慮点について理解を深めていただくとともに、実際の取組場面などにおいて役立てていただければ幸いです。  今後とも、精神障害者の雇用促進、職場復帰等についてご尽力いただきますようよろしくお願いいたします。 令和2年9月 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 精神障害者と働く ―理解と思いやりの職場環境づくり― はじめに 1 目次 2 主な登場人物 4 第1章 基礎編 5 シーン1 精神障害者の雇用 6 シーン2 就業上の特性、採用時や雇用管理上の留意点 10 シーン3 精神障害者の主な従事業務 16 シーン4 メンタル不調者の職場復帰 18 第2章 実践編 精神障害者の新規雇入れ〜雇用継続 21 事例1 精神障害者を雇い入れ、職場での受入れ体制を構築した事例 シーン1‐1 採用までのプロセス 22 シーン1‐2 受入れに係る準備 25 シーン1‐3 作業指導と雇用管理 28 【解説】 障害者トライアル雇用事業、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援 33 事例2 雇用して半年後、職場環境の変化による不安や悩みによる離職への危機を、 支援機関との連携で乗り越えた事例 シーン2‐1  職場環境・職務内容の変化による不安への対応 34 事例3 雇用して2年後、さらなる雇用継続に向けて、仕事に対する モチベーションの維持に取り組んだ事例 シーン3‐1 モチベーションの維持・向上に向けた取組 40 シーン3‐2 周囲の従業員の理解 45 【解説】 雇用管理に役立つツール@ 47 事例4 職場におけるてんかん発作への対応と未然防止に取り組んだ事例 シーン4‐1 てんかん発作への理解と対応 48 第3章 実践編 精神障害者の職場復帰 53 事例5 メンタル不調による休職から、職場の上司と産業保健スタッフのサポートにより 職場復帰した事例 シーン5‐1 休業開始から職場復帰できる段階までの回復の過程 54 シーン5‐2 職場復帰の決定 59 シーン5‐3 職場復帰後のフォローアップ 62 【解説】 雇用管理に役立つツールAB 64 事例6 職務の変更を行うことにより、2回目の休職から職場復帰した事例 シーン6‐1 リワーク支援に至るまでの経緯 66 シーン6‐2 リワーク支援の取組  70 シーン6‐3 職務を変更して職場復帰  74 【解説】 プライバシーの配慮と、情報提供の範囲 77 資料 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 地域障害者職業センター、広域障害者職業センター一覧 78 都道府県支部 高齢・障害者業務課一覧 79 障害者雇用に役立つ資料 障害者雇用に役立つ資料 80 委員会委員一覧、引用・参考文献一覧 81 主な登場人物 辻堂 明夫 さん (32歳) 疾患名:統合失調症 高校在学時に統合失調症を発症し、卒 業後の在宅療養を経て就労移行支援事 業所に通い障害者就業・生活支援セン ターに登録。 ハローワークの紹介で株式会社磯山製 作所に採用された。 森高 さとえ さん (26歳) 疾患名:うつ病 障害者求人で応募した株式会社カワサ キレコードに就職。 半年間順調に就労していたが、指導担 当者が交代した後欠勤が続くように なった。職場や支援機関のサポートを 受け、仕事への不安や悩みを乗り越え る。 小越 賢也 さん (38歳) 疾患名:統合失調症 障害者求人で応募した千波苑で介護補 助職として就職。 2年が経過し、モチベーションの低下 がみられるようになったことから、支 援機関のアドバイスを受け、モチベー ションの維持・向上に向けた取組を行 うこととなった。 清野 啓司 さん (21歳) 疾患名:てんかん 幼少時から学童時までてんかん発作の 頻度が多かったが、高校以降は服薬の 調整ができ、発作は1年に1回程度と 落ち着いている。 ビジネス専門学校を卒業後、ハロー ワークの紹介で妙典商事に応募し、採 用された。 綱山 加奈子 さん (32歳) 疾患名:うつ病 株式会社庄田の営業・企画部門に所属。 職場ではリーダーとして意欲的に仕事 をこなしていたが、心労が重なりうつ 病と診断され休職となった。 職場の上司や産業保健スタッフの計画 的な支援のもと職場復帰する 大林 幸弘 さん (23歳) 疾患名:うつ病 株式会社サイナックソリューションにSE として就職後、うつ病を発症し休職。 その後一度は復帰するものの再度休職と なり、リワーク支援を活用し職場環境 や職務内容等の調整を行って職場復帰す ることとなった。 ※この作品で登場する人物、企業等はすべて架空のもので実在するものではありません。 第1章 基礎編 シーン1 精神障害者の雇用 シーン2 就業上の特性、採用時や雇用管理上の留意点 シーン3 精神障害者の主な従事業務 シーン4 メンタル不調者の職場復帰 シーン1 精神障害者の雇用 磯山製作所の 北澤と申します 障害者の雇用を 考えているのですが 今回の求人では どのような職務を 想定されていますか 主には製造職ですが 職務内容は 障害者の状況に応じて 検討するつもりです 障害の種別は 問いませんが 当社では以前から 雇用している 身体障害者以外は 雇用経験がなくて… 来週 精神障害をテーマに 障害者雇用セミナーが 開催されますので 参加してみませんか? 精神障害…ですか 聞いたことはありますが 具体的なイメージは… ただ どのような障害か 知ることも大切ですよね 参加させてください 翌週ー 本日は お集まりいただきまして ありがとうございます 精神障害者を 雇用する企業は 年々増加しています 令和元年度には 精神障害者の 就職件数が 49,000件を 超えました また 障害者雇用促進法の 改正によって 平成30年4月から 雇用率の算定基礎に 精神障害者が 加わりました※1 本日は 精神障害とは どのような障害か 精神障害者を雇用する際の ポイントなどを 解説していきます 精神疾患名 ● 統合失調症 ● 気分障害 うつ病、そううつ病 ● 神経症 パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害 など ● 依存症   アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存 症など ● パーソナリティ障害   境界性パーソナリティ障害など ● てんかん ● 発達障害※2 ● 高次脳機能障害※3 ※2、3 発達障害、高次脳機能障害については、当 機構でそれぞれ「障害者雇用マニュアルコミック版」 を作成しておりますので、そちらをご参照ください 精神疾患には このような ものが あります ※1 平成30年4月からは民間企業における法定雇用率は2.2%となり、平成33年4月までには更に0.1%引き上げになります。 雇用支援対象となる精神障害者 ○ 統合失調症 ○ そううつ病 ( そう病及びうつ病を含む) ○ てんかん   以上のいずれかにかかっている者か ○『精神障害者保健福祉手帳所持者』 雇用支援の対象となる 精神障害者について 障害者雇用促進法では この図にある方であって 『症状が安定し就労が 可能な状態にあるもの』と なっています 雇用率の 算定対象となるのは 精神障害者保健福祉 手帳所持者であり カウントはこの図の とおりです (一人あたりの算定数) 週30 時間以上 の常時雇用する 労働者 週20 時間以上 30 時間未満の 短時間労働者 身体障害者1人0.5 人 重度2人1 人 知的障害者1人0.5 人 重度2人1 人 精神障害者1人0.5 人(注) それではまず 統合失調症、気分障害 てんかんの主な症状等について 説明します※4 統合失調症 ●主な症状 発症初期や調子を崩した際に現れやすい症状として、幻覚、妄想、思考の混乱など。また、慢性的な症状として、意欲の低下、感情や表情の平板化など。 ●発症の特徴 10 代から30 代の若い世代で発症することが多く、この疾患に罹る確率は1%弱とされている。 ●通院・服薬 服薬による治療が中心で、症状が改善された後も一定期間継続する必要がある。 ※4 その他の精神疾患については、「精神障害者雇用管理ガイドブック」(障害者職業総合センター、2014)をご参照ください (注) 精神障害者である短時間労働者であって、新規雇入れから3年以内又は精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者については、原則として、平成35年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した場合に限り、1人を0.5人ではなく1人として算定します。 気分障害 ●主な症状 気分障害とはうつ病やそううつ病の総称で、うつ状態では、「憂 うつ・悲観・絶望感・自己を責める・興味や関心がなくなる・考 えがまとまらない・判断や決断ができない・集中力に欠けるなど」 (思考や意欲の変化)、「不眠や熟睡できない・疲れやすい・食欲 低下・頭痛など」(身体症状)がみられる。そう状態では、「気分 の高ぶり・イライラ感・飛躍した考え」(思考面)、「落ち着きが ない・口数が多い・外出や電話を頻繁にする、浪費など」(行動面)、 「不眠、食欲亢進など」(身体面)がみられる。 ●発症の特徴 うつ病は一生のうちに15 人に1 人は罹ると言われるほど頻度の 高い疾患で、そううつ病はうつ病に比べて頻度は低い。うつ病は 若いときに発病することが多いが、中高年での発病も少なくない。 ●通院・服薬 うつ病では服薬と休養による治療が基本となる。そううつ病で は服薬による治療が中心となる。いずれの場合も一定期間服薬 の継続が必要。 てんかん ●主な症状 さまざまな成因による慢性的な脳の疾患で、てんかん発作は脳の神経が 一時的に激しく活動することにより起こるもの。「全身けいれんを起こ して倒れる」というイメージがあるが、発作には多くの種類があり、大 きく分類すると以下の2 つに大別される。 部分発作:脳のある部分から始まる発作で、意識が保たれたままであっ たり、徐々に意識が消失したり、全身のけいれんに進展する場合がある。 全般発作:発作のはじめから、脳全体で神経が激しく活動するため、意 識が最初からなくなることが多いという特徴がある。 ●発症の特徴 3 歳以下の発病が最も多く8 割が18 歳以前に発病するが、近年は脳血管障 害等による発病も増えており、発症率は100 人に1 人程度と言われている。 ●服薬・通院 個々人の状態に応じた薬を選択し、継続的な服薬による治療が行われる。 ハイ! 病気だったら 病気を治してから 仕事をするのが よいのでは… 精神障害の場合 慢性的な疾患と捉えて 服薬や定期的な通院を 継続するとともに さまざまな配慮や 工夫をしながら職業生活を 送ることができます また、障害についての 考え方は近年大きく変化し 症状の変動や 治る可能性があっても 一定期間以上 生活面や対人関係上の課題 仕事や社会活動に制限が ある状態は障害とみなす という捉え方が一般的です シーン2 就業上の特性、 採用時や雇用管理上の留意点 これから紹介する精神障害者の 就業上の特性や留意点について 覚えておいていただきたいことが あります ご説明したとおり 精神疾患の種類は多岐にわたり 疾患が同じでも症状や程度 特性は一人ひとり違いますし もともとの能力や性格 発病前に身につけていた技能 経験なども異なるため 一括りに説明することは 難しいのです しかし ある程度共通項となりうる ポイントがあります 皆さんが 精神障害者を 採用し雇用管理を 進める際には それらの共通項を 踏まえつつ 一人ひとりの 状況を把握しながら 個別に対応することと なります なるほど 精神障害者が就労する際 障害による影響が どのように現れるのか その共通項について ご説明します 全ての精神障害者に 当てはまるものでは ありませんが 一般的に… ●疲れやすい はぁ・・・ ●環境の変化に  慣れるのに  時間がかかる ●失敗により  自信を失いやすい ●あいまいな状況で  困惑しやすい などがあると 言われています こうやって この方が やりやすい どうすれば いいんだ? 次に 採用時の留意点に ついてご説明します 精神障害者の採用時の留意点 面接等での聴取事項 病気や障害については 「聞いてはいけない」 「聞きづらい」と 思われるかも しれませんが 障害者手帳を 所持していると言っても 一人ひとり障害の 状況が異なるため できる限り 把握することが重要です 「担当業務を決めるため」や 「働きやすい職場環境を 整えるため」など 質問する理由 を伝えましょう ●自分自身の精神疾患や  障害の理解度 ●普段の生活や  仕事における健康管理上の留意点  通院・服薬がきちんと  できているか  調子が悪くなった  ときに適切に  主治医などに  相談できるかなど ●雇用された場合に必要な  配慮や支援 面接以外での把握 職場実習や各種制度を活用して 常用雇用の前に試行的に 働いてもらい 様子を見ることが 有効な場合があります 対象者の意向も確認した上で 制度を実施している機関へ 問い合わせてください このほか 本人の緊張を 解きほぐすような 雰囲気を作ることも 効果的です                         ●就労支援機関などが設定する職場実習 ●障害者トライアル雇用 ●各種訓練制度  障害者委託訓練   職場適応訓練   など 支援機関からの情報収集 求人に応募してきた 精神障害者を支援している 支援機関がある場合 ●これまでの支援内容 ●職業上の特性 ●現在の病状、調子を崩す  きっかけやサインとその対応方法 ●生活面を含めた支援体制 これらの項目は 本人の同意に基づいて 情報提供してもらいます なるほど・・・ 雇用管理では 何に留意すれば よいのでしょうか 一般的な項目を まとめてみました 精神障害者の雇用管理上の留意点 雇用管理では 何に留意すれば よいのでしょうか 一般的な項目を まとめてみました 職務の設定 ●負荷が比較的軽い業務  の設定から始める 本人の仕事ぶりを判断して 段階的に仕事内容の幅を広 げることなどを検討します ●職務を作り出す  (作業内容を切り出す) 既存の職務に配置させること が難しい場合、他の社員や多 数の部署から対応可能と思わ れる作業を切り出して設定し ます ●作業を標準化する 作業マニュアルや手順書を 整備し、作業の仕方や 留意点を明確化します 作業スケジュール表を整備す ると、行程が見えることで先の 見通しが持ちやすくなります 手順書 1==== 2==== 3==== ●数種類の作業を  設定する 作業のマンネリ化を防ぐこと につながる場合があります 封入はできそうですか リサイクルペーパー の回収も いいですね コピーを お願いしましょう 指示の出し方や教え方 ●指導担当者を設定する 指導、指示内容に一貫性を 持たせます ●指示は具体的に、確認  しながら、一度に言わない 1 書類を揃える 2 封筒に入れる 3 数を数える 大丈夫そうですね ●できたことは認める(ほめる) 認める(時にはほめる)ことに よって自信につなげることが重 要です ●慣れるまでは確認を促す ●ミスをしたら対応策を  一緒に考える ミスをすると自信をなくしたり 落ち込んでしまう場合がありま すので、ミスをした原因とその 対策を一緒に考えます ●定期的な振り返りと  目標を設定する できていることと課題を共有し 今後の目標を明確にすることで 不安の軽減や安心感、仕事への 意欲につながります 間違えた〜! 一緒に考えましょう 健康管理面への配慮 ●通院時間を確保する ●就業時間を段階的・柔軟に  設定する 短時間での就労から開始し、段 階的に時間を延ばしていくこと が有効です 体調に波が出やすい人には一時 的に就業時間を短縮し、安定し てきたら元の時間に戻すなどの 柔軟な時間の設定を行う企業も あります 9:00始業 15:00終業 お先に 失礼します ●体調の変化に気を配る ●調子を崩す際の状況等を  把握しておく 調子を崩しやすい状況や崩す際 のサイン、調子を崩した際の対 応方法など、本人や支援機関の 担当者から情報収集しておきま す 落ちこんでいるみたい だけど何かあったかな… ●体調不良時の対応は支援機関  等と連携しながら検討する ●産業保健スタッフを活用する 産業保健師などがいる場合は、 本人との面談をお願いしたり医 療機関との連携のアドバイスを 得ることができます コミュニケーション(接し方) ●定期的に相談できる場を  設定する 本人の気持ちを受け止める機会と して捉えることがポイントです 必要に応じて支援機関の担当者 の同席や、本人と支援機関担当 者だけで相談 の機会を設定する ことも有効です ●休憩時間の接し方に配慮する コミュニケーションを取りたい 人もいれば、一人になって落ち 着きたい人もいます 本人の意向を確認しておくこと が望まれます ●本人の話に耳を傾ける ●職場の雰囲気を和やかにする ●環境の変化に適切に対応する 指導担当者が異動となる場合 指導方針が変わらないように引 継ぎを行い、本人を含めて相談 する機会を設定して関係づくり を行います 交代→ そのほかの職場環境の変化について も、伝えられる範囲で事前に情報を 共有して、不安や心配事があれば 相談に乗るなどの対応が望まれます ご紹介した留意点のほかに 本人を知る支援機関から助言や サポートを得ることがとても有効です 本人の状況を詳細に把握でき 特性に応じたサポートが得られます また、事前に職場環境や体制整備について 企業の状況に応じたアドバイスが受けられます さらに 精神障害者の雇用と その後の職場定着を 進めるためには 人事担当者だけではなく ともに働く従業員の理解と 配慮が必要です そのためには 次のような取組が ポイントとなります ともに働く従業員への理解促進とサポート ●精神障害に関する  基礎的情報を  提供する 特性や就業上の 留意事項等の情報が わかると不安の 緩和につながります 社内の研修会などで 支援機関の職員から 情報提供してもらうのも いいでしょう ●指導担当者をサポートし  周囲の従業員の不安や  悩みに対応する 指導担当者の負担感や 指導上の悩みなど 人事担当者や上司が 把握した場合には 早期に対応するなど 適切なサポートが 望まれます また、障害のある社員と 周囲の従業員との 関係づくりにも配慮が 必要です 周囲の従業員に 障害に関する情報を 提供することについて事前に 本人の意向を確認して おくことを 忘れないでください その際には 情報提供する理由 そのタイミングと 対象範囲、伝える内容 説明の仕方等について 本人が不安を 感じないように丁寧に 伝えましょう 特性に ついては… 留意事項 としては… 変わりは ありませんか シーン3 精神障害者の主な従事業務 従事業務については これらのポイントを 踏まえた上で 決めていくことが 望まれます 本人の希望 障害の状況 職務経験や 身につけている技能 会社が 提供できる職務 職場環境 参考として 精神障害者が 従事している例が 多い業務を ご紹介します 精神障害者が従事する職務内容の例 事務的作業 ●PCによる  データ入力・集計 顧客情報、アンケート 出退勤データなど ●経理関係伝票の処理 ●文書管理 契約書等のデータ化 保管、整理 ●郵便物の仕分け・  配付・発送 ●庶務的業務 消耗品や備品等の 管理・補充 名刺の作成・発注 会議資料のコピーなど サービス系の作業 ●介護施設等での介護補助業務 共用部・居室の清掃、洗濯 シーツ交換 レクレーション補助 見守り支援 配膳・下膳 送迎補助など ●飲食店等での調理補助業務 調理やその下準備、盛りつけ 食器洗浄など ●クリーニング業務 ●ホテル等での客室清掃  ベッドメイキング ●小売業店舗での  品出し・バックヤード  での作業 計量、袋詰め 値札シール貼り 結束、POP作成 サイズチップの整理 段ボールの整理など 製造・労務系の作業 ●生産工程における  組立・加工・結束・  分別・検査等の作業 ●物流倉庫等での  ピッキング作業  包装・梱包  カートの移動作業 ●清掃業務 ●カートやかごの洗浄作業 精神障害者を雇用する場合 受入れ体制を整えて 本人が作業を 習得できた後の かかわり方も重要です 周囲が温かく迎え入れ 日頃から仕事ぶりや 体調面等に配慮し 仕事の成果を適正に 評価して フィードバック していくという いわゆる 『新入社員への教育』にも 通じる雇用管理を 行うことが大切です シーン4 メンタル不調者の職場復帰 近年 うつ病などの メンタル不調※5で 休職する人の増加や 休職後の職場復帰が スムーズに進まないなどの 調査結果もあり 休職した人の職場復帰の 問題に対する関心が 高まっています メンタル不調で 休職している 従業員がいる場合 会社としては 次のリスクがあります ※5本マニュアルでは、「メンタル不調」の範囲として、精神障害に限らず、ストレスや強い悩み、 不安などの精神的及び行動上の問題を幅広く含みます。 メンタル不調者がいる会社のリスク ●休職した従業員分の生産性のダウン ●休職した従業員が担当していた業務を 代替する従業員の疲労やストレス ●医療費や代替従業員の人件費の増加 ●労災認定や訴訟等による企業イメージ の低下 これらのリスクを少しでも 軽減するために 会社としては休職者の職場復帰を スムーズに進め その後の職場定着に つなげていくことが求められます 職場において 心の健康を保持することを含めた 安全配慮義務の観点から メンタルヘルスケアの 教育研修・情報提供や 職場環境等の把握と改善 (ストレスチェック制度の活用など) メンタル不調への気づきと対応も 求められるところです※6 ※6 メンタルヘルス対策については、厚生労働省が取りまとめた『職場における心の健康づくり〜労働者の    心の健康の保持増進のための指針〜』などをご参照ください つづいて メンタル不調により 休職した従業員の 職場復帰に向けた 流れについて ご紹介します 職場復帰支援の流れ 第1ステップ 病気休業開始 及び休業中のケア ア 病気休業開始時の労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出 イ 管理監督者によるケア及び事業場内産業保健スタッフ等によるケア ウ 病気休業期間中の労働者の安心感の醸成のための対応 エ その他 第2ステップ 主治医による職場復帰可能の判断 ア 労働者からの職場復帰の意思表示と職場復帰可能の判断が記 された診断書の提出 イ 産業医等による精査 ウ 主治医への情報提供 第3ステップ 職場復帰の可否の判断 及び職場復帰支援プランの作成 ア 情報の収集と評価   (ア)労働者の職場復帰に対する意思の確認   (イ)産業医等による主治医からの意見収集   (ウ)労働者の状態等の評価   (エ)職場環境等の評価   (オ)その他 イ 職場復帰の可否についての判断 ウ 職場復帰支援プランの作成   (ア)職場復帰日   (イ)管理監督者による就業上の配慮   (ウ)人事労務管理上の対応   (エ)産業医等による医学的見地からみた意見   (オ)フォローアップ   (カ)その他 第4ステップ 最終的な職場復帰の決定 ア 労働者の状態の最終確認 イ 就業上の配慮等に関する意見書の作成 ウ 事業者による最終的な職場復帰の決定 エ その他 職場復帰 第5ステップ 職場復帰後のフォローアップ ア 疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認 イ 勤務状況及び業務遂行能力の評価 ウ 職場復帰支援プランの実施状況の確認 エ 治療状況の確認 オ 職場復帰支援プランの評価と見直し カ 職場環境等の改善等 キ 管理監督者、同僚等への配慮等 職場復帰を 支援する際に 企業が検討・留意 すべき点は 次のとおりです 職場復帰支援に際して検討 または留意すべき事項 ●主治医との連携の仕方 主治医に対して事業所の制度や本人の業 務状況を説明することが効果的です また、企業として職場復帰を前向きに進 める立場であることを明確にしておくと よいでしょう なお、主治医と情報共有するには、事前 に本人への説明と同意を得ておくことが 必要です ●職場復帰可否の判断基準 本人の職務遂行能力が完全には 改善していないことも考慮しつ つ、社内の制度や受入れ体制を加 味しながら判断してください 主治医 本人 事務所   判断基準の例 ● 労働者が十分な意欲を示している ● 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる ● 決まった勤務日、時間に継続して就労が可能 である ● 業務に必要な作業ができる ● 作業による疲労が翌日までに十分回復する ● 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に 眠気がない ● 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復して いる  出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者 の職場復帰支援の手引き」 ※詳細は第3章「精神障害者の職場復帰実践編」の事 例で解説しています ●リワーク支援の活用 リワーク支援は、医療機関 や障害者職業センターなど が実施している職場復帰に かかる支援プログラムで 一定程度症状が改善してき た休職中の従業員が、職場 復帰に向けて取り組む際に 活用できます 生活リズムを取り戻し、ス トレスへの対処方法を学 び、復職への意欲と自信を 高めることが期待できます ●職場復帰後の  就業上の配慮 職場復帰の際は、元の慣れた職場へ の復帰が原則です ただし、異動や職場でのトラブル等 が誘因となって発症した場合は 個別の状況に合わせて検討します 職場復帰後は、主治医や産業保健ス タッフ等の意見を踏まえ、負荷を軽減 した業務から始めて、段階的に元へ 戻すなどの 配慮が望ま れます 職場復帰を円滑に 進めるには休職者に 100%の状態で 復帰してもらおうと 考えるのではなく 最初は就業上一定の 配慮をしながら 段階的に元の状態に 戻れるように 支援することが ポイントです 休職者が出てから 検討を始める のではなく 日頃から 社内の理解と 受入れ体制の 準備をして おくことが 必要です 就業上の配慮の例 ● 短時間勤務 ● 軽作業や定型業務への従事 ● 残業・深夜業務の制限 ● 出張制限 ● 交替勤務制限 ● 危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務  苦情処理業務などの制限 ● フレックスタイム制度の制限または適用 ● 転勤についての配慮 以上 これまでいろいろと 説明してきましたが いかがでしたでしょうか 精神障害者の雇用と メンタル不調者の職場復帰には 本人の努力だけではなく 企業の方々の理解と 配慮が必要です みなさまの企業でも 精神障害者の雇用が進み メンタル不調者の 職場復帰がスムーズに 行われるよう願っています とても 参考になったな いろいろ準備も あるが 受入れも 検討できそうだ 帰ったら 社長にも 報告しよう