第2章 実践編 事例2 雇用して半年後、職場環境の変化による不安や悩みに よる離職への危機を、支援機関との連携で乗り越えた事例 シーン2 − 1 職場環境・職務内容の変化による 不安への対応 森高 さとえさん(26歳) うつ病 職場:株式会社 カワサキレコード (従業員800人の CDショップ) 大学卒業後 一般企業に就職しましたが しばらくしてうつ病と診断され退職し その後も離転職を繰り返しました 無理なく安定して働きたいとの 思いで、精神障害者保健福祉手帳を 取得し、障害者求人で応募し カワサキレコードに 就職しました 店長が指導担当者となり 森高さんの体調に配慮しつつ丁寧に 指導し、相談にもこまめに 応じました 周囲も温かく迎え入れ 不安を感じることなく 順調に作業をこなしてきました 働き始めてから半年後ー 最近の 体調はいかがですか はい おかげさまで 順調です 店長 相談なのですが、私の 作業や就業時間は 他のスタッフと 違います できればみんなと 同じ時間で 同じ仕事をさせて くれませんか 無理はしてほしく ありませんが… 検討してみましょう こうして 翌月から1つのコーナーの 商品管理を 任されることになり 就業時間も週30時間から 40時間に変更となりました しかし、その直後…           倉持店長が 異動することになりました 後任の店長には 松木副店長が昇格し 森高さんの指導担当も 引き継ぐことになりました あとは松木さんに よろしくね それから1か月が経った頃 森高さんは体調不良を理由に 欠勤する日が続くように なってしまいました 松木店長は 森高さんの 欠勤について ハローワークに 相談することに しました ・・・というわけで 『体調が悪くて 出勤できない』としか 返答がなく原因が わからないのです とりあえず 体調が良くなるまで 休暇を取って もらっていますが 今後どうしたら よいでしょうか それでは 地域障害者職業 センターに 相談してみては どうでしょうか 障害者職業センター よろしく お願いします こちらこそ よろしくお願いします 松木店長はこれまでの 経過を伝えました 狩谷カウンセラー わかりました まずは森高さんの 意向を確認して ください 松木店長は森高さんに 地域障害者職業センターによる 支援を提案し了解を得ました はい… わかりました 早速、松木店長と森高さん 狩谷カウンセラーで 話し合いが行われました 頑張ってくれているので 今後も 継続して働いて もらいたいのですが 少しお時間をいただき 森高さんと相談させて いただいても よろしいですか ええ よろしく お願いします 狩谷カウンセラーは森高さんの気持ちを 聞き出すことにしました 松木店長は 店長になった ばかりなので忙しく 前の倉持店長のようには 相談に乗ってもらえません それから、新しい業務に 変わってから 他のスタッフに聞いても みんな作業の進め方が違うので 作業の方法が よくわからなくて… あるスタッフからは 『そのやり方ではダメだ』と 注意されたこともありました 狩谷カウンセラーは 森高さん了解のもと松木店長にも 森高さんの気持ちを 伝えることにしました そうだったんですね 森高さんの仕事ぶりが 他のスタッフと 変わらないので大丈夫だと 思っていました 今後どのように 対応したらいいのでしょうか 体調面は 大丈夫なのでしょうか 森高さんの体調不良への 対応や今後の留意点に ついて主治医から アドバイスを もらいませんか そうですね 森高さんに継続して 働いてもらえるよう 主治医からお話を 伺いたいです 森高さん よろしいですか はい 主治医には 仕事に関する相談を したことがなかったので 私からも お願いします 狩谷カウンセラーと松木店長は 森高さんの診察に同行し 主治医に相談することにしました 主治医に 相談したい内容を 文書にまとめ森高さんに 確認してもらいました 松木店長は文書に 沿って職場での状況と 相談したいポイントを 説明しました 1 職場での状況について ●今年4月に、障害者求人で採用 ●当社の業種:CD・書籍販売 ●職務内容はバックヤードでの入荷作業 から始めた。6か月後に森高さんの意向 により他のスタッフと同様に商品管理 業務を行っている。 ●就業時間:週30時間(月〜金で1日6時 間)から始めて、6か月後に週40時間(シ フト制で週5日、1日8時間)としている。 ●当初は順調に作業を覚えて積極的に業 務をこなしていたが、職務内容を変更 し、就業時間を延ばしてから体調不良 を訴えるようになり、出勤できない日 がある。 ●森高さんからは、指導担当者の交代も あり、仕事上の相談をする機会がなく なったことが要因と聞いている。 2 伺いたいポイントについて ●現在の体調不良について、どう対応し たらよいでしょうか(例えば、就業時 間や出勤日数を一定期間減らす、もし くは一定期間休んでもらう)。 ●今後体調不良を起こさないために当社 が留意することはありますか。 うまくまとめ ましたね 会社の考え方と 職場の状況が 分かって助かりました まず 体調不良についてですが 一定期間休職する 必要はないでしょう 今はまだ仕事の幅を 広げるより 無理せず継続して 働くことを 目標にしましょう 森高さん 業務上の疑問や悩みが あるときはできるだけ 早く指導担当者に 確認してもらうことが ベストです それが難しい場合は 不安や悩みを ノートに書き留めて 気持ちを整理して みましょう 悩みや不安な気持ちが 出てきたら 私にも相談してください 障害者職業センター 松木店長と 狩谷カウンセラー、森高さんは 主治医の意見を踏まえ 雇用管理の方法について 再度整理することにしました それでは このように進めて いきましょう @ 業務と就業時間を当面元に戻す A 定期的な業務の進捗の振り返りと、疑問への対応に係 る相談時間を確保する B 業務連絡帳を活用する C 森高さんの様子がいつもと異なると感じたら声かけし 必要に応じて職業カウンセラーまたは主治医に連絡する D 作業に空きができた場合に限り、商品管理業務を補助 的に実施する その後 森高さんの体調不良は 改善していきました あれから2週間 経ちますが いかがですか 安定して 出勤できるように なってきました それは よかったです 不安や悩みを 私たちと共有できた ことで安心感が 得られたようです コミュニケーションって 大事なのですね 狩谷カウンセラーと 主治医からのアドバイスで 森高さんも私も とても助かりました いろいろな機関の サポートを受けられて とても心強かったです