---------------------------------------------------------------------------- 障害者雇用マニュアル コミック版6 高次脳機能障害者と働く 確かな理解と適切な配慮で、ともに働く職場環境づくり ---------------------------------------------------------------------------- ● リハビリ出勤を経てスムーズに職場復帰 ● 職場実習から雇入れ、安定した継続就労に至るまでの取組 ● 失語症や疲労への対応 ● 障害の認識やコミュニケーション上の課題への対応 ● 支援機関やジョブコーチ支援を活用して課題を改善 ---------------------------------------------------------------------------- はじめに ----------------------------------------------------------------------------  本マニュアルは、高次脳機能障害者の雇用促進、職場復帰及び安定した継続雇用を実現することを目的として、高次脳機能障害者の雇用管理等のノウハウをわかりやすいコミック版の形式で解説したものです。  高次脳機能障害は「見えない障害」と言われるように、一見して障害とわかりづらい特性を示す一方で、記憶障害、注意障害、遂行機能障害など症状が多岐にわたり、さらに個人によってその症状が様々であることから、企業ではその障害特性や雇用管理の手法を理解したいとのニーズが高まっています。また、高次脳機能障害は、従来から精神障害者保健福祉手帳制度における器質性精神障害として手帳の交付対象であり、手帳所持者については障害者雇用率の算定対象となります。障害者法定雇用率の引き上げなどの動きの中で、今後とも、高次脳機能障害者の雇用の拡大が期待されます。  本マニュアルにおいては、医学的リハビリテーションから職業訓練などを経て採用または職場復帰、職場定着にいたるまでの流れを取り上げるとともに、実際の職場における作業面やコミュニケーション面などの課題を取り上げ、メモリーノートをはじめとした支援ツールや各種支援機関を活用した効果的なサポートのあり方について解説しています。  本マニュアルが、できるだけ多くの企業などで活用され、高次脳機能障害者の雇用促進、職場復帰、雇用継続につながるよう役立てていただければ幸いです。   令和2年2月  独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 ---------------------------------------------------------------------------- CONTENTS ---------------------------------------------------------------------------- 高次脳機能障害者と働く ―確かな理解と適切な配慮で、ともに働く職場環境づくり― はじめに   1 目次     2 主な登場人物 4 基礎編  シーン1 高次脳機能障害とは              6  シーン2 就労上の影響と雇用管理上の配慮        12  シーン3 就職や職場復帰までの流れと、支援機関との連携 18 実践編 事例1 リハビリ出勤により職場復帰を果たした事例  シーン1 職業訓練の実施 22  シーン2 職場復帰に向けた事業所の取組  27  解  説 職場復帰までの流れとポイント  33 事例2 ジョブコーチ支援を活用して倉庫内作業で就職した事例  シーン1 職場実習開始までのプロセス    34  シーン2 職務における障害特性への対応   40  シーン3 安定した雇用継続を図るための対応 46  解  説 メモリーノート          48 事例3 失語症と右半身まひの障害がありながら、職種転換を図って職場復帰した事例  シーン1 失語症への対応  50  シーン2 疲労への対応   55  解  説 体調管理への配慮 57 事例4 障害の認識やコミュニケーション面に課題があったが、 周囲の関わり方により改善された事例  シーン1 障害に対する自己認識             58  解  説 高次脳機能障害における障害の自己認識について 61  シーン2 感情のコントロール              62 事例5 身体障害者として就職したがうまく仕事ができず、 後に高次脳機能障害があると判明し、 支援機関のサポートを受けながら課題が改善された事例  シーン1 高次脳機能障害の把握 66  シーン2 具体的な取組     70 資料 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構  地域障害者職業センター、広域障害者職業センター一覧 74  高齢・障害者業務課一覧               75  高次脳機能障害支援拠点機関一覧           76  職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業の紹介 78  障害者雇用に役立つ資料               79  委員会委員一覧、引用・参考文献一覧         80 ---------------------------------------------------------------------------- 主な登場人物 ---------------------------------------------------------------------------- 小谷 真一さん(42歳) 疾患名  脳血管障害(主な障害は記憶障害、注意障害) 精神障害者保健福祉手帳3級 株式会社大林商事(社員数800人)の経理部で、経理全般の業務の調整役を担っていた。 発症後はリハビリ、職業訓練に取り組み、リハビリ出勤を経て職場復帰することとなった。 安森 江里さん(24歳) 疾患名 外傷性脳損傷(主な障害は記憶障害、注意障害、遂行機能障害) 精神障害者保健福祉手帳2級 受障後に大学を中退し進路を決めかねていたが、主治医や就労支援機関からのアドバイスや支援により、ジョブコーチ支援を活用した職場実習を経て、鶴田運輸株式会社(社員数200人)において倉庫内でのピッキング作業員として働きだした。 中越 健司さん(44歳) 疾患名 脳血管障害(主な障害は失語症、右上下肢のまひ) 身体障害者手帳3級 株式会社アラカワレンタル(社員数500人)で、レンタルDVDのフランチャイズ店舗のスーパーバイザーとして働いていたが脳血管障害を発症する。障害状況と職務の適性を見極め、本社での事務補助業務を担当することとして職場復帰した。 与野 琢郎さん(21歳) 疾患名 頭部外傷(主な障害は記憶障害、注意障害、社会的行動障害) 精神障害者保健福祉手帳2級 受障後は地域の障害者支援施設に通いながら一般就労を目指していたところ、機械部品の金属加工をしている鈴木金属株式会社(社員数100人)において職場実習を経て採用された。 事業所と障害者支援施設が連携して、職務上の課題改善に向けて取り組んでいる。 中田 渉さん(35歳) 疾患名 脳血管障害(主な障害は左上下肢軽度のまひ) 身体障害者手帳6級 化粧品の製造、販売を行う株式会社ハッセー化粧品(社員数1,000人)で事務職として就職。職務上の課題があるため医療機関を受診したところ高次脳機能障害と診断され、その後ジョブコーチ支援を活用することとなった。 ---------------------------------------------------------------------------- 基 礎 編 ---------------------------------------------------------------------------- ● 高次脳機能障害とは ● 就労上の影響と雇用管理上の配慮 ● 就職や職場復帰までの流れと、支援機関との連携 ---------------------------------------------------------------------------- 基 礎 編 ---------------------------------------------------------------------------- シーン1 高次脳機能障害とは はい人事課清河です お久しぶりです 経理部の小谷です 小谷さん! 調子はどうですか 経理部の小谷真一さん 半年前に脳血管障害を発症し、 現在もリハビリ通院を行っています おかげさまで順調に回復しています それはよかった! まだリハビリ中ですが そろそろ職場復帰のことについて、 一度相談させていただきたいと思っています 事故による後遺症などはどうですか? 身体にまひはないのですが 「高次脳機能障害」があると診断されていますので 近々病院の方と一緒に お伺いして説明できればと… 高次脳機能障害か… 以前テレビ番組で特集が組まれていたな たしか交通事故や脳卒中で 脳に損傷を負ったときの後遺症だと思ったけど まずはどんな障害なのか調べてみよう どこかで高次脳機能障害に関するセミナーとか 行ってないかな… その後清河さんは 以前障害者を雇用した際に支援を受けた就労支援機関から 高次脳機能障害者支援センターで セミナーが開催されるという情報を得ました すごい人だな これだけたくさんの会社が、 うちの会社のような問題に 直面しているということか… 本日はお集まりいただきまして ありがとうございます 高次脳機能障害という言葉は 近年メディアでもしばしば取り上げられているので 聞かれたことがあるかもしれません 高次脳機能障害者の数は 各調査によりさまざまではありますが 全国で約27万人いると言われており、 そのうち18歳以上65歳未満は 少なくとも約7万人※と 推定されています 高次脳機能障害は よく「見えにくいわかりにくい障害」 と言われていますが 具体的にどのような障害なのか、 原因、特徴などを説明いたします ※『高次脳機能障害ハンドブック』(中島八十一、寺島彰編 医学書院 2006)より引用 高次脳機能障害の原因 脳血管障害 脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」、脳の血管が破裂して起こる「脳出血」、 動脈瘤などが破れて脳の表面を中心に出血を生じる「くも膜下出血」に分けられる。 外傷性脳損傷 交通事故や転倒、転落などにより脳が直接損傷を受けたり、 脳を包んでいる硬膜の外に血が溜まって脳が圧迫されて損傷を受ける。 そのほか、心肺停止状態が長かったときなどに脳の神経が障害を受ける低酸素脳症や、脳腫瘍などが原因となることもある。 高次脳機能障害は 脳の血管に関連した病気や 交通事故などによって、 脳に損傷を受けたことにより起こります なるほど 小谷さんの場合は「脳血管障害」だな… 高次脳機能障害に 医学的に統一した定義はなく、 専門家によっても 高次脳機能障害を示す範囲は異なっています 現在、行政的な定義としては 「記憶障害注意障害遂行機能障害社会的行動障害などの認知障害」 となっています ■ 高次脳機能障害診断基準■ T.主要症状等  1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。  2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。 U.検査所見  MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。 V.除外項目  1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(T-2)を欠く者は除外する。  2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。  3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。 W.診断  1. T?Vをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。  2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。  3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。 出典:「高次脳機能障害者支援の手引き」(2008年11月)厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障害者リハビリテーションセンター ※なお、本マニュアルでは、脳損傷に起因する言語の障害である失語症についても触れています。 それぞれの障害の具体的な症状について ご紹介したものがこちらです これらの障害に典型的な症状の一つである 「失語症」も加えて説明します それぞれの障害の症状 記憶障害 見たことや聞いたことをすぐに忘れてしまう、 忘れたことの自覚がない、昨日までできていたことが 今日忘れている・できなくなる、 過去の記憶の順番に混乱が生じやすい 注意障害 1つのことに集中できない、 同時に物事をこなせない、 他のことに行動を切り替えられない 遂行機能障害 計画が立てられない、 課題や作業を正しい方法で続けられない、 実行できても仕上がりに無頓着 社会的行動障害 子どもっぽくなったり周囲に依存的になるほか、 怒りっぽくなる・突然泣き出すなど感情のコントロールに問題をきたす、 このほか、周囲への反応が乏しく意欲に欠ける場合もある 失語症 話そうとしても言葉が出てこない、 相手の言っている言葉の意味が分からない、 文章が読めない、文字が書けないなど、 「話す」「聞く」「読む」「書く」という 言葉によるコミュニケーションの障害 これらの症状はいずれも認知機能に関わっています 認知機能とは脳の中で理解し考え、 決定してどのように行動に移すのかというもので 誰にもその過程は見えません それが高次脳機能障害が 「見えにくいわかりにくい障害」といわれるゆえんであり 周囲からは理解されにくく気づきにくい障害といえるのです 高次脳機能障害 ↓ 「見えにくい わかりにくい障害」 なお、これらの症状は単一的に現れるのではなく 複合的に組み合わされて現れますし、 脳の損傷部位などにより 人それぞれ症状の現れ方が異なります さらに受障している本人が その症状を自覚しにくいことも特徴です 高次脳機能障害があると診断された場合 器質性精神障害として 精神障害者保健福祉手帳の交付対象※になります なお、脳の損傷によりまひや失語症があるなど身体に障害のある方は 身体障害者手帳の交付対象※にもなります ■ 障害者手帳 ■ 高次脳機能障害と診断 ↓ 器質性精神障害として 『精神障害者保健福祉手帳』の交付対象 交付されるには、お住まいの市町村等の担当窓口で申請が必要 ※ 精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳いずれにおいても、 個人の障害の状態等によって判断されるため、申請すれば必ず交付されるものではないことにご留意ください。 ■ 改善の見込みについて■ 「リハビリを続ければいつかは発症・受傷前の状態に戻るのですか」 という質問を受けます 高次脳機能障害はその名のとおり「障害」ですので、 リハビリを継続することで 症状が大幅に改善することは難しいといえます ただし、周囲の適切なサポートや 失われた機能を補う代償手段を獲得することによって できなかったことや できづらかったことが できるようになることはあります シーン2 就労上の影響と雇用管理上の配慮 次に 高次脳機能障害者が就労する際 その症状による影響が どのように現れるかについてご説明します 高次脳機能障害者の就労上における一般的な特性 ※高次脳機能障害の特性は個別性が高いため、全ての高次脳機能障害者が以下に示す特性の全てに当てはまるものではありません。 ● 新しい作業の工程や留意すべき点が覚えられなかったり、 短時間で忘れてしまうことがある 作業内容によって、習得するのに時間がかかる場合がある これ…どうするんだっけ? あれをこうしてこれを… ● 口答のみでの指示が理解しにくい ● てきぱきと作業を処理することが苦手である (自発的な行動が苦手、周囲のことに気が散ってしまうなどによる) ● 接客や電話応対などでの臨機応変な対応が苦手である … どれから手をつける? ● 同時に複数の作業をこなすことが苦手である ● 集中力が続かない、作業にムラが出やすい ● 周囲の状況に気づけなかったり逆に余計なことに気が向いてしまうなど、 注意の向け方にアンバランスさがある 左上留めで100枚コピー 待ってるんですけど ● 疲れやすい(本人は気づいていないことがある) ● 気持ちの面で意欲が湧かない、気分が沈みがち、イライラしてしまいがちなことがある ● 職場での適切なコミュニケーションが図りにくい ● 会話などで適切な応答が苦手である ● 場の空気を読むことが苦手である ● 発症・受傷前の能力を現状でも維持していると捉えがちで 現在の自身の状況を客観的に把握することが苦手である 飲み会楽しみだね そ…そうだね… いそがしいのに… ただし、高次脳機能障害は個別性が高くこれらの特性は 一般的な特性を列挙したものですので、 全ての高次脳機能障害者に当てはまるものではないことに 注意してください 小谷さんはどんな症状があるのだろう 元の職場に復帰することができるのだろうか… 職場ではどのような雇用管理上の配慮が 求められるのでしょうか 代表的なものをまとめてみました ■高次脳機能障害者の雇用管理上の配慮■ 全 般 ● スケジュール帳やメモリーノートの活用 ※ メモリーノートに関する詳細は、P48の解説ページを参照ください。  ◆ 対象者が、1日のスケジュールや覚えておくべき事項を視覚的に把握することで、いつ何をすべきかが理解されやすくなります  ◆ 担当者がこれらを対象者と常に共有することで、対象者が記載した事項に誤りがないか、確実に遂行されているかを確認することが、よりよい活用の仕方につながります 作業の進め方 ● 作業の定型化 ● 作業マニュアルの作成 ● チェック表による作業の確認 作業に対する指示の仕方 ● 作業は一つずつ行うようにする  ◆ 複数の作業を同時並行で行うことを苦手と感じる対象者が多いです ● 口答での指示は、端的かつ明確にする   ◆ 対象者が指示内容を理解しやすくなりメモを取りやすくなります ● 指導担当者を決める(複数でも可)  ◆ 指導、指示内容に一貫性があることが重要です ● 作業や仕事ぶりに対するフィードバックをきめ細かく実施する  ◆ ここでいうフィードバックとは、評価結果だけではなく、 実際の行動や事実のほか、課題点やほめられるべき内容等について、 改めてじっくりと話し合ったり、動機づけたりしながら、 今後の成長につながるアドバイスを与えることをいいます コンテナに入れる…にチェックして 次は… 働きやすい環境づくり ● 就業時間の設定を、対象者の様子を見ながら段階的に延長 ● こまめな休憩の確保 ● 職場の上司等による日常的な声かけ   ◆ 作業中に突然声をかけるのはできるだけ避け、作業のきりがいいときや休憩の時間などを活用することが望まれます ● 定期的な面談や相談の実施   ◆ 不安などを受け止めるほか、 できていることをきちんと認めることで自信や安心感を与えたり、会社の中で役割をきちんとこなしていることをフィードバックしながら本人の職場への帰属意識を醸成することが望まれます ● 指導担当者や相談役などの役割を分担する  実務指導者 相談役   ◆ 社内での役割を分担することで、 一人(一部署)にかかる負担を軽減するとともに、対象者としても誰に何を相談するのがよいかを明確にすることで 安心感を与えることができます 先ほどもお話ししたとおり 一般的な対応が全ての高次脳機能障害者に 当てはまるわけではありません 対象者の状況を見極めながら より良い配慮の方法を検討する必要があります また、できないことよりもできることに目を向けて 能力の活用を図ることがポイントとなります 職務内容を決定する際の判断要因 1) 障害の状況 2) 職務経験・スキル 3) 本人の希望 4) 会社が提供できる職務 高次脳機能障害者を雇用する、または 職場復帰させるに当たり 会社が悩まれるポイントの一つに 「職務内容の設定」が挙げられます 一般的には「手順に沿って一連の流れで遂行できる作業(定型作業)」 「判断を伴わないまたは判断基準が明確な作業」 が向いていると言えます しかし、雇用管理上の配慮と同様に 高次脳機能障害は個別性が高いため 「向いている仕事はこれです」と一概には言えません 本人の障害状況に加えて、職務経験やスキル、 希望する職務を把握して 会社側が提供できる職務との関連性の中で 決めていくことが望まれます 提供できる職務とは… 職務内容を決めるには いろいろなことを考慮する必要があるんだな 小谷さんともよく話し合わなければ…… ここでは 高次脳機能障害者が実際に従事している職務について、 参考までにご紹介します ■高次脳機能障害者が従事する職務内容の例■ 事務的な作業 ● PCによる定型的なデータ入力 (顧客情報、アンケート、出退勤データ、伝票等の入力) ● 紙媒体の電子データ化(スキャニング)とデータ整理 ● 会議資料のコピー ● 消耗品や備品等の管理・補充 ● コピー機の用紙補充 ● 郵便物の仕分け・配付・発送 ● ダイレクトメールの封入・封緘 ● スタンプ押し ● 給茶器や給湯室の管理 ● リサイクルペーパーの仕分け、メモ用紙の作成 製造関係 ● 手順が定型化した組立作業 ● 梱包容器の組立・解体 ● ラベル貼り ● 袋詰め、判断が明確な分別作業 労務系の作業 ● 会議室や休憩所、駐車場等の清掃 ● 生花の水やり ● リサイクルペーパー等の回収・分別 ● カートやかごの洗浄 ● 洗車 その他 ● スーパーマーケットでの品出し作業、バックヤード作業 (野菜や惣菜などのカット・計量・袋詰め・結束・値札シール貼り、段ボール整理など) ● 衣料店などでの商品出し、バックヤード作業 (POPのカット、ハンガーかけ、サイズチップ整理、袋出しなど) ● 倉庫内作業 (ピッキング作業など) ● 介護補助業務 ● 調理補助業務 ● 印刷補助業務 など シーン3 就職や職場復帰までの流れと、支援機関との連携 就職・職場復帰までの流れ 手術などの治療を終えた後 高次脳機能障害者はどのような流れをたどって 就職や職場復帰をするのかをご説明します これから小谷さんを どのように職場復帰させればいいんだろう…? 1 医学的リハビリテーション 〈主にリハビリテーション病院などで実施〉 ・ 薬物治療や外科的治療の実施 ・ 記憶や注意力など認知面の機能の状態を把握し、回復を図る ・ 認知面で障害が残る場合の代償手段の獲得を目指す 2 社会リハビリテーション 〈主に障害者支援施設で実施〉 ・ 日常生活や社会生活を送る上で必要な能力 (調理・洗濯・掃除・公共交通機関の利用・金銭管理などの生活に必要な活動)を高める ・ 作業等を通して生活リズムの確立や体力の向上を図る ・ 他者とのコミュニケーションを通じて対人技能の向上を図る 8時までに図書館へ行くには… JR? 地下鉄? 時刻表と料金は… 3 職業リハビリテーション 〈主に就労支援機関で実施〉 ・ 職業訓練、模擬的な作業場面や職場実習を通して 職場における課題や配慮事項などの把握代償手段の獲得を目指す ・ 適切な職務の選択や職場環境の調整により 就職や職場復帰を目指す ・ 就職や職場復帰後のフォローアップを実施する この流れは一般的な例であり、個人の症状や支援の方針、 社会資源の状況などによって 利用する機関や施設は異なります。 また、病院や施設、支援機関によっては この三つのリハビリテーションのうち、 複数を織り交ぜながら実施している場合もあります リハビリテーションに関わる機関は 高次脳機能障害に関する知識や高次脳機能障害者のことを 詳しく把握しています 高次脳機能障害者の雇用を検討する場合や 職場復帰を進める際には企業だけで悩まず これらの機関に今後の進め方について 積極的に相談しともに進めていくことが望まれます もし、どこに相談すればよいかわからない場合は 高次脳機能障害支援拠点機関または 地域障害者職業センターへ相談することを お勧めします 用語解説 ○ 地域障害者職業センター  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、各都道府県に設置されています。  障害者職業カウンセラーが配置され、ハローワーク等の関係機関と密接な連携の下、障害者に対して職業評価、職業指導、職業準備支援、ジョブコーチによる支援事業等の専門的な職業リハビリテーションを、また事業主に対して雇用管理に関する助言等を行っています。 ○ 高次脳機能障害支援拠点機関  障害者総合支援法に基づき専門性の高い相談窓口(支援拠点)として、各都道府県のリハビリテーションセンター、大学病院、県立病院等に1箇所?複数箇所設置されています。  支援コーディネーターが配置されており、高次脳機能障害者やその家族、関係機関等からの相談を受け付け、生活や就労などに関して地域の福祉・医療機関等と連携しながら支援したり、高次脳機能障害への理解促進のための普及啓発や、相談支援の実務に役立つ研修等を実施しています。  この他、支援拠点機関の中には、医療や福祉と一体的なサービスを行うこととしている機関もあります。 ※高次脳機能障害支援拠点機関及び地域障害者職業センターの一覧については資料P74?77を参照ください これまでいろいろと説明してきましたが いかがでしたか 近年、医療の進歩により 身体の機能が一定程度回復する一方で 高次脳機能障害者は増加しています そして、事故に遭ったり脳血管障害を発症して 高次脳機能障害者になる可能性は誰にでもあります 高次脳機能障害への理解と一定の配慮があれば、 一人の社員として十分戦力となる人が たくさんいることを理解していただきたいと思います 参加してよかったなぁ そうですね とても勉強になりました わが社としても まずは小谷さんや病院のスタッフと話し合って 状況をきちんと把握することから始めないといけないな よし! 帰ったら上司にも報告して 小谷さんの職場復帰について 社内でも前向きに検討を進めていこう!