就業支援ハンドブック実践編アセスメントとプランニング 障害者の就業支援に取り組む方のために 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 はじめに 就業支援ハンドブックは、これから就業支援に携わる方々への入門書として、平成21年3月の発行以降、より読みやすい構成内容とした新版を発行する等の改編を毎年度行い、労働、福祉、教育、医療等様々な分野において、就業支援に携わる方々にご活用いただいているところである。 この間、福祉分野においては、平成24年6月に、障害者の範囲の見直しによる難病等の追加、障害福祉サービス基盤の計画的整備を主な内容とする「障害者総合支援法」が、平成25年6月に、障害者の差別禁止を行政機関に義務づけ、民間事業者に努力義務を課した「障害者差別解消法」が成立するとともに、平成28年5月には、就労定着支援の創設を含む「改正障害者総合支援法」が成立した。 また、雇用分野においては、平成25年6月に、1雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮)の提供義務(平成28年4月施行)、2精神障害者を法定雇用率の算定基礎への追加(平成30年4月施行)を主な内容とする「改正障害者雇用促進法」が成立した。 これらの施策を背景に、精神障害者等の個別性の高い支援を必要とする求職者や労働者が増加するとともに、支援機関の裾野も拡大している状況を踏まえ、既刊の就業支援ハンドブックに加え、多様な障害特性に対応したより実践的な支援ノウハウを提供することが必要と考えたところである。 このため、障害者職業総合センターに設置した作成委員会での議論及びこれまで就業支援ハンドブックをお読みいただいた読者の方々へのアンケート調査等を踏まえ、利用者のニーズや特性に応じた支援を行うために必要とされるノウハウである「アセスメントとプランニング」をテーマとした「就業支援ハンドブック実践編」を作成した。 本ハンドブック実践編においては、知的障害者、精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者の障害特性と職業的課題及びその対応方法について、全国で支援実績の豊富な就業支援機関の協力を得、各支援事例を取り上げるなかで、これらの支援ノウハウを随所に掲載することを目指したところである。 日々のアセスメントやプランニングにおいてお困りの際のヒントとして、また各就業支援機関に所属する皆様の研修等において、就業支援ハンドブックと併せてご活用いただければ幸いである。 最後に、執筆やヒアリング等に御対応いただいた各就業支援機関の担当者の皆様には、日々の就業支援業務で大変ご多忙な中、多大なるご尽力をいただいた。ここに厚く御礼申し上げる次第である。 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 目次 第1章アセスメントとプランニングの概要 1本書で解説するアセスメントの概要 2本書で解説するプランニング(支援計画の策定)の概要 3アセスメントとプランニングの現況等 第2章事例から学ぶ障害別のアセスメントとプランニング 発達障害 事例1ワークサンプル幕張版(MWS)等を活用したアセスメントとプランニング 概要 地域障害者職業センターにおいて、ワークサンプル幕張版等を活用したアセスメントを行い、職業上の課題への対処方法の習得等に向けたプランニングを行った。 発達障害の特性を踏まえたアセスメント結果等の解説でのポイント等を紹介する。 (参考事例)グループワーク、模擬的就労場面の活用等によるアセスメントとプランニング 概要 地域障害者職業センターにおいて、模擬的就労場面を活用した行動観察等によるアセスメントを行い、職業上の課題を踏まえた就職活動の方向性に関するプランニングを行った。 重度知的障害 事例2施設内作業、職場実習等におけるアセスメントとプランニング 概要 就労移行支援事業所において、対象者(特別支援学校高等部3年生)に対し、施設内作業の場面を利用したアセスメントを行い、就業意識の向上等に向けたプランニングを行った。 就業意識の向上に向けた個別目標を設定する際のポイント等を紹介する。 精神障害 事例3体験利用プログラム、医療機関からの情報収集等によるアセスメントとプランニング 概要 就労移行支援事業所において、各種検査の活用等によるアセスメントを行い、職業上の課題に関する自己理解の促進等に向けたプランニングを行った。 医療機関から情報収集を行う際のポイント等を紹介する。 高次脳機能障害 事例4各種検査、体験利用プログラム等によるアセスメントとプランニング 概要 就労移行支援事業所において、各種検査の活用等によるアセスメントを行い、職業上の課題に関する自己理解の促進等に向けたプランニングを行った。 高次脳機能障害の特性を踏まえた自己理解を促すための支援のポイント等を紹介する。 軽度知的障害 事例5就業支援ネットワークを活用した情報収集によるアセスメントとプランニング 概要 障害者就業・生活支援センターを利用する対象者に対し、就労移行支援事業所と地域障害者職業センターにおいてもアセスメントを行い、それぞれの機関におけるアセスメント結果を活用してプランニングを行った。 ネットワークで支援を行う際の情報共有や役割分担のポイント等を紹介する。 (参考事例)自治体のネットワークにおける事業所情報を活用した職場実習による アセスメントとプランニング 概要 ネットワークの構成機関(障害者就業・生活支援センター、特別支援学校、ハローワーク等)が有する事業所情報によりマッチングした職場実習を行い、ケース会議を通じて、就職に向けたアセスメントとプランニングを行った。