障害者雇用管理等講習資料シリーズNO.180 教育機関における障害者雇用の促進について 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者の雇用を促進するため、事業所の方々を対象に雇用管理講習会やセミナーを開催しております。 この小冊子は、これら講習会の内容をテーマ別に分冊として編集し、「障害者雇用管理等講習資料シリーズ」としたものです。 この冊子が事業主、関係機関等の皆様方に活用され、障害者の雇用促進および雇用管理の向上のための参考資料として役立てていただければ幸いです。 平成26年3月 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 目次 1 教育機関における障害者雇用の現状と課題 1ページ    独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構    障害者職業総合センター       研究員           笹川 三枝子 2 株式会社WUサービスの取り組み〜大学における清掃業務〜 16ページ    株式会社WUサービス     マネージャー          伴 麻子 3 当社における障がい者雇用の取組み〜学内郵便物の仕分け、集配業務〜    26ページ    株式会社帝京サポート     取締役             勝又 勝美 4 質疑応答 39ページ    本稿は平成25年1月29日に当機構が主催した平成24年度産業別障害者雇用促進講習の講演を加筆・修正したものです。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 「教育機関における障害者雇用の現状と課題」 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 研究員 笹川 三枝子 1、障害者雇用に係る法制度と雇用状況  (1)障害者雇用促進法について 障害者雇用は、大もとになる法律があります。障害者の雇用の促進等に関する法律といい、「障害者雇用率制度」が一つの大きな法律の柱です。  世界の障害者雇用は、”差別禁止”という形でやっている国と”雇用割り当て”といい雇用率を決めて「それを守ってくださいね」という形でやっている国があります。日本は”雇用割り当て”である雇用率制度です。法定雇用率は、今日現在1.8%ですが、平成25年4月から民間企業は2.0%に引き上げられる予定です。   二つ目の柱が「障害者雇用納付金制度」です。  雇用率が未達成の企業で、ある程度の規模以上のところには、お金を納めてくださいというものです。この納めていただく「ある程度」の範囲が、以前は常用労働者301人以上の大企業から納めていただいていましたが、2010年から常用労働者200人を超える企業に範囲を拡大しました。さらに今後は常用労働者100人を超える事業主にも拡大していく予定です。  その他、この法律の内容はといいますと、2010年7月から短時間労働者が雇用率の範囲になりました。これにより雇用率算定における分母が増えました。つまり同じ数の障害者を雇っていたとしても、雇用率は下がることになります。  それから「雇用率算定特例」といい、一企業で雇用率が達成できていなくても、グループ会社でまとめて算出できるという制度があります。また後ほど詳しく述べますが、業種により”除外率”というものがあり、これは段階的に引き下げられていきます。  (2)企業規模別障害者雇用率の推移  厚生労働省が毎年報告を求めている、雇用義務のある民間企業における6月1日時点での雇用状況の集計結果が年末近くに発表されます。昨年は実雇用率が1.69%、雇用されている障害のある方は38万人以上と過去最高になり、着実に障害者雇用は進展しているとのことでした。しかし中身を詳しくみてみると、必ずしも着実に進展とはいえない部分があります。  私は今、中小企業における障害者雇用についての調査研究を行っています。  そこで、去年までの雇用率の推移を企業規模別に比べてみると、 規模によって違いがあります。300人以上の大企業は、着実に雇用率を伸ばしていますが、中小企業は、1993、4年くらいにピークに達し、その後どんどん下がっています。2004年ごろまで下がり続け、やや持ち直しているのが現状です。  過去に障害者雇用を支えていたのは中小企業で、雇用率も中小企業の方が高かったのですが、今は規模が小さいほど雇用率が低いのです。     (3)ハローワークにおける障害者紹介状況  先ほど説明したように、平成24年(2012年)の集計では雇用義務のある企業に雇用されている障害者の数は約38万2,000人と過去最高となり、そのうち約29万1,000人が身体障害者でした。すると障害者雇用は身体障害者が主なのかと思えるのですが、そうではありません。  厚生労働省から発表されているハローワークにおける障害者紹介状況をみると、就職件数、新規求職申込み数は、もちろん身体障害者が多いのですが、知的障害者、精神障害者もそれに近い数になってきています。  過去からの推移をたどっていきますと、身体障害者の就職件数、新規求職者申込み数は横ばいですが、知的障害者は右肩上がり、精神障害者はそれ以上の勢いで増えています。その他の障害者も増えていますが、その他の障害者とは手帳を持っていない方、たとえば手帳のない発達障害の方や高脳機能障害の方、難病の方などとなっています。  (4)教育委員会における雇用率  今回の講習テーマが教育分野ですので、教育委員会の状況を申し上げますと、10数年前、教育委員会は雇用率が低いということが話題になり、労働行政で積極的に働きかけをしました。その頃と比べて雇用率は上がってきています。  都道府県の教育委員会は47あります。法定雇用率は、民間企業に比べて高いのですが、雇用率を達成できている都道府県が47のうち24で、関東で達成できてない県が、茨城、栃木、埼玉、東京です。市町村の教育委員会では、74機関のうち61機関が達成しており、まだ達成できていないところがあるようです。改善はされてきていますが、雇用率が今年の4月から上がり、都道府県では2.2%、国・地方公共団体は2.3%になりました。  (5)除外率の引き下げについて  一律に法定雇用率を適用するには、職務内容からして厳しい業種があるということで、特定の業種に関して雇用義務の軽減を図る制度が除外率制度です。しかし、環境の整備もされつつあり、今後除外率は段階的に引き下げていきましょうということが平成14年(2002年)の法改正で決まり、これまで二回引き下げが行われました。  平成22年(2010年)に二回目の引き下げがあり、教育関係のところだけ抜き出しますと、幼稚園が60%、小学校が55%、特殊教育諸学校45%、児童福祉事業が40%、高等教育機関が30%です。例えば、私立大学で教職員数が1,000人いたとすると、私立の場合1.8%の雇用率ですので18人雇う必要があります。除外率が改正前の40%であれば、1,000人の40%分を引き、600人の1.8%で10人雇うことになります。ところが除外率が30%になると、1,000人の30%分を引き、700人かける1.8%ですので、12人雇う必要があります。しかも今度は雇用率が2.0%になるわけですから、かなり増えることになります。しかも段階的に除外率を縮小するわけですから1,000人の学校であれば20人雇うことに近づいていくということです。以前は10人雇ったけれど、これからは20人雇わなければならない時期が近づいているということです。  (6)教育機関における障害者雇用の課題・制約とは?  私どもで行った企業アンケート調査では、様々な業種の企業に自由記述欄を設けた調査票をお送りしたところ、大変多くの中小企業の方々にご記入をいただきました。その中から教育機関の方々のご意見だけを紹介いたします。教育機関の障害者雇用に 対する制約・課題、こういうことで困っているという声です。なお、ここでいう教育機関とは、私立の小中学校や高等教育機関だけでなく、各種学校や学習塾なども含んでいることにご注意ください。  まず一つ目は、中小企業ということもあり、健常者と同等の仕事をこなせない障害者を雇用する余裕はないという、能力不足や人件費を心配する声が多くあがりました。    次に、教師は分業が難しい、事務仕事はアウトソーシングしているといった、職務切り出しが難しいという意見がありました。  それから、既存の建物全てにバリアフリーなどの環境整備をすることは難しい、社内に支援者を付けられない、現場の従業員の理解が得られるかどうか心配であるといった声が寄せられました。  まとめていうと、中小企業に共通した課題としてバリアフリーや人件費の心配があり、業種ならではの課題として、「教師という中心的業務に対して高い能力が求められる、障害者のための職務を切り出せない」という心配があるということで、これは皆様もそうお思いになるかなと思います。 2、アンケート調査の結果から  (1)アンケート調査の概要     視点を変えて、アンケート調査についてご紹介をします。  現在取り組んでいる研究で、私たちは、やや大がかりなアンケート調査を2本行いました。一つは56〜999人の企業約5,000社にアンケートをお送りした調査と、もう一つは雇用・就職支援機関。これは全数調査で2,694機関にお送りして調査を行いました。  (2)企業規模と障害者雇用経験  このアンケート調査結果を分析してわかったことは、まず、企業規模と障害者雇用経験の関係です。グラフのとおり、企業規模が小さいほど障害者雇用経験がない、あるいは経験はあっても今は雇用していない企業の割合が高いという結果でした。  (3)企業規模と障害者雇用経路  次は、雇用経験のある企業に対して、どういう経路で雇いましたかということをお聞きしました。規模を二段階に分けて56人から300人の中小企業、301人から999人の大企業に分けて比べたグラフです。結果をみると、中途障害、例えば疾病とか事故などで受障した社員を引き続き雇用したという、“中途障害者の継続雇用”の割合が高く、特に中小企業では3分の1以上を占めています。    (4)雇用経験と雇用経路に着目してわかったこと  さらに、募集を出したら応募した人がたまたま障害者であったという内容の答えが多かった「その他」があり、先ほどの“中途障害者の継続雇用”と合わせて“非意図的雇用”と呼ぶことにします。意図して障害者を雇うのではなく、意図せずに、「社員が中途受障した」あるいは「たまたま応募した人が障害を持っていた」という非意図的な雇用の割合が、中小企業でも大企業でも多く、 とりわけ中小企業では5割以上となっています。  これらの“非意図的雇用”では雇用ノウハウが蓄積されないため、今会社にいる(多くは身体)障害者が退職された後に次の雇用につながりにくく、新たな取り組みが求められる可能性が高いと思われます。  (5)企業規模と障害者雇用開始時期  次の集計は、雇用を始めた時期に着目して行いました。「いつ障害者雇用を始めたのですか」ということを四段階の規模ごとにまとめたのがこのグラフです。どの規模も2000年以降に雇用を始めた企業が一番多いのですが、その割合は規模が小さいほど大きいです。中小企業の多くが比較的最近になって障害者雇用を始めたということです。  先ほど、規模によって雇用率の推移は違っていて、昔は中小企業の方が雇用率は高かったが、徐々に下がってきたということを言いましたので、中小企業は最近障害者雇用を始めたところが多いという結果はやや意外に思われるかもしれません。おそらく、過去に障害者雇用を支えていた多くの中小企業が倒産や廃業などによって現在は姿を消している可能性が高いのではないかと推察しています。  (6)障害者雇用開始時期と雇用障害者の障害種類  次は、企業が現在雇用している障害者の障害種類に着目してまとめた集計です。  グラフは、雇用経験のある企業を対象に、中小企業と大企業に分け、さらに障害者雇用を始めた時期によって、1969年まで、1970年代、1980年代、1990年代、2000年以降と5つのグループに分け、次にそれぞれの年代ごとに現在雇用している障害者の障害種類を調べました。     (7)障害者雇用開始時期に着目してわかったこと  企業が障害者雇用を始めた時期と雇用されている障害者の障害種類に着目して調べてみると、次のことがわかりました。  まず、どの雇用開始時期においても、中小企業の方が大企業よりも現在身体障害者のみを雇用している企業の割合が高いことです。  次に、法制度と雇用障害者の障害種類の関係です。身体障害者の雇用義務化が1976年、知的障害者の雇用率算定開始が1987年、精神障害者の雇用率算定開始が2006年ですが、1969年までに雇用を始めた企業では身体以外の障害者の雇用割合が比較的高いのに、身体障害者の雇用が義務化された1970年代に雇用を始めた企業は、今も身体障害者のみを雇用している企業の割合が非常に高いのです。企業は法制度で雇用率に算定されるようになった障害者の障害種類を強く意識して雇い始め、今の雇用状況にもその影響が及んでいるのではないかと考えられます。  さらに、中小企業をみますと、過去には雇っていたが今は雇っていないところが比較的多いことがわかりました。雇ったけれど、もう辞めてしまって今はいないという形です。その後新たな障害者を雇えていない状況があります。  (8)業種と雇用障害者の障害の種類  次のグラフは業種ごとに中小企業だけ取り出しました。回答企業数が一桁だった鉱業を抜いた16業種について、雇用している障害者の障害種類を調べたものです。上から順に、雇用経験がない、あるいは過去には雇用していたが今は障害者がいない割合が多い業種を並べました。上から順に障害者雇用に困っている業種ということになります。  厚生労働省の雇用状況報告集計によると「教育・学習支援業」は1.42%の雇用率で他の業種と比べて低い状況です。私どもの調査では、現在障害者を雇用していない企業の割合が37.0%で、困っているであろう業種の四番目でした。  障害者雇用においては、身体障害の方だけを雇っている企業も困る可能性が高いのではないかと考えられます。というのは、それ以外の障害者の雇用ノウハウがないために、もし身体障害の方が転職なり定年なりで辞めた後に、次の障害者労働者の確保という問題が出てくるからです。これを多い順に並べると「教育・学習支援事業」は四番目に当たりますので、障害種類という観点から見てもこの業種は今後工夫や努力が必要ではないかと思っています。  (9)地域と雇用障害者の障害種類  地域に関しても調べました。地域によって、雇っている障害者の障害種類に違いがあるのです。調べ方として、企業を中小企業と大企業に分け、さらに地域を200万人以上の都市(東京、横浜、名古屋、大阪がこれにあたります)とそれ以外の地方に分けて、4つの群を作って比較してみました。すると、中小企業は大企業と比べて障害者を雇用している企業の割合が全体に低く、とりわけ大都市の大企業で雇用企業割合が低くなっていました。中小企業では、大都市地方とも知的障害者、精神障害者雇用割合が低いのですが、特に地方の中小企業では精神障害者の雇用割合が5%以下と大変低い状況でした。     (10)地域と今後の雇用方針  同じ4つの群で、今後の障害者雇用方針について聞いてみますと、肯定的な答えが多かったのは大都市の大企業であり、次に地方の大企業、地方の中小企業、大都市の中小企業の順になりました。大都市の中小企業というのは、様々な統計結果からしてお困りになっているのではないかと思います。  (11)地域と雇用・就労支援が支援する企業の規模  企業アンケート調査の他に、雇用・就労支援機関の調査を行いました。知的障害者、精神障害者の雇用においては支援機関を利用することが大変重要ですが、その支援機関と企業の数は必ずしもバランスがとれていない。地方には企業は少ないけれど支援機関は多い、大都市には企業が多いけれど支援機関が少ないという状況です。  支援機関も大都市と地方に分けて、どういう規模の支援を行っているかを聞きますと、大都市の支援機関は、1,000人以上の大企業とかその特例子会社に支援しています。  しかし地方の支援機関では、55人以下の雇用義務のないところに多く支援をしていることがわかりました。障害者雇用に困っているであろう大都市の中小企業には、支援機関の手が十分届いていない状況があるのではないかと考えています。       3、教育機関における障害者雇用促進の方策とは?  (1)従来の取組みのままでは行詰まるかも・・・  ここまで、教育機関における障害者雇用の状況について、法制度や私どものアンケート調査結果からご説明しましたが、「教育・学習支援業」は現在障害者雇用に苦労していると思われます。残り時間が少なくなってまいりましたが、提案として、こういう方策案もあるのではないかということを話したいと思います。  まず、今までの取り組みでは行き詰まる可能性があるのではないかということですが、その理由として、雇用率は引き上げられ、納付金対象の範囲は拡大し、除外率は下がってきています。雇用率達成指導も強まっていくものと予想されます。では、お金を払えばいいという企業も中にはありますが、CSRということで注目されていて「この企業は障害者雇用に理解がない」などの評判   が立つのを嫌う企業も多いです。  先ほど “非意図的雇用”と述べましたが、この雇用の仕方では雇用ノウハウが蓄積されないので、その方が辞めた時に次が続かないのです。また、雇おうとしても、「能力の高い身体障害者なら雇える」とお考えのところが多いと思いますが、今の労働市場の状況を見ますと、そういう求職者の数は非常に限られていて、求人を出しても応募してくる可能性は高くないと考えられます。  それから、支援機関の方々にお話を聞きますと、大都市では大企業とか特例子会社などは動きが早いそうです。もう10人〜20人の単位で募集しているそうです。多くの障害者が既に大都市の大企業に雇用されつつあるかもしれないので、今、動き始めていかないと後れを取ってしまう可能性もあります。  (2)では、どうするか?  ではどうするかということですが、四つのご提案をしたいと思います。  一つ目は、雇用ノウハウなどの情報を収集することです。特に今まで「身体障害者だけを雇っている」という企業の方々は、始めた方がいいと思います。その雇用ノウハウの情報収集においては企業団体や同業他社に働きかけることが有効だと思います。“企業にとって一番有効な情報は、企業が持っている”のです。  二つ目は、信頼できる支援機関を見つけることです。障害者だけの立場に立つ支援は困るという企業の方の声をよく聞きますが、企業のこともよくわかっている支援機関が出てきています。埼玉に「障害者雇用サポートセンター」というところがありますが、ここはスタッフ全員が企業出身者で、企業からの相談に応じています。他にも、企業団体にみずからも加入して勉強している支援機関もあります。障害者だけでなく企業の利益にも配慮が得られるという支援機関も増えつつあるのです。  三つ目の提案は、身体障害以外の障害者に着目することです。例えば知的障害者の雇用で、特例子会社を立ち上げるという方法も一つですし、求職者の数が急激に増えている精神障害者、発達障害者に着目する方法もあります。しかし、ただ雇えばうまくいくかというと、精神障害者、発達障害者に関しては、非常に見えにくい障害である分、失敗すると本人にも企業側にもつらい結果を招くこともあり得るので、支援が重要です。信頼できる支援をセットで雇用するということがいいのではないかと思います。従来の支援機関の他に、民間企業で人材紹介や就労支援をするところが出てきています。  四つ目は、面接だけではなくて職場実習を行ってその人の採否を判断するのが大事だということです。職場実習の制度を持っているところがいくつもありますし、トライアル雇用などもご活用ください。  先ほど、発達障害者についてただ雇えばいいかというと、そうではないと言いましたが、少し補足します。発達障害者は取り上げられる機会が増えてきましたが、人数も多いというふうに言われています。文部科学省の調査では、普通学級の生徒さんで発達障害の特徴を持つ人が6.3%。これに特別支援教育を受けている人を足すと7.5%になる。先だって発達障害に大変詳しいドクターにお話しを伺ったところ、マックス人口の10%じゃないかと言われていましたが、多くの発達障害の方がいらっしゃるのです。発達障害の方で、うまく職場の環境を設定でき、支援もうまくできれば高い能力を発揮している例も多くあります。   学校の先生方のことですが、特に昨今は、先生が攻撃の矢面に立つことが多いように思います。うつ病などで休職されている先生も多いですね。雇用率のカウントはどうなるのかということを考えました。これは学校ではないんですけれども、ある企業で、中途でうつ病を発症した社員の方が障害者の認定を受けて、雇用率にカウントできるようになったという話を聞いたことがあります。  また、これは私が昔担当した方のことです。病気で休職中の先生のご相談を受けたんです。その時、教育委員会の方と相談したところ、復職に関しては「教師は100%できなきゃだめです。100%できなければ辞めてもらうんです」と言われました。前のような仕事はできないけれど、でも本人は復職したい。  そこで、私は、100%やるか辞めるかじゃなくて、第三の道があるのではないかと提案しました。結局、その方は職場を一旦退職して嘱託で再雇用となって活躍されている例がありました。  教えるという仕事は高い能力を求められますし、障害者の参入というのは難しい面もあるとは思いますが、是非皆さんにご検討いただいて、身体以外の障害者、知的障害者・発達障害者・精神障害者の方々にも雇用の場を与えていただければと思います。  ということで、私からの説明をこれで終わります。ありがとうございました。 「(株)WUサービスの取り組み〜大学における清掃業務〜」 株式会社WUサービス マネージャー 伴 麻子 1、会社概要  名前のとおり、早稲田大学の特例子会社です。2007年7月に設立、2008年3月に特例子会社として認可を受けました。業務内容としては、主にキャンパス内の清掃業務、また昨年度より学内の封入等事務作業を行っています。本日は「大学における清掃業務」というテーマをいただきましたので、清掃業務に限って報告をさせていただきます。   2、立上げ時、また現在の概況  大学本体では教員・職員の中で障害を抱える方が一定数在籍されていました。特例子会社立上げのきっかけとしては2004年の除外率切下げ(50%から40%へ)、また障害を持つ教職員の退職が重なったこともあり、法定雇用率を下回る状況となりました。そこで、学内で障害者を雇用できそうな部署がないかという検討が始まり、大学の下にいくつか子会社があるうちの施設管理・警備全般を管轄する子会社である「プロパティ・マネジメント」が「清掃なら可能では」と手を挙げたことが発端です。2007年7月に設立、10月より実際の作業を開始し、2008年3月に認定を受けるに至りました。  大まかな現状としては、教員は専門性を要するため障害者枠を教員で満たすのは難しい状況があります。また大学内での単純な事務作業は既に外注化が進んでいる事情もあり、大学本体における安定的雇用の確保が難しい状況です。2012年6月現在で、大学本体とWUサービスでの雇用を合せ50ポイントほど、雇用率は2.15%でした。     3、大学内での位置づけ  学内では、大学子会社の更に子会社という位置づけになります。社長・取締役等の役員は、先ほど出ました「プロパティ・マネジメント」との兼任で、大学本体からの出向という立場です。学内の総務、人事、財務といったいくつかの部署の役職者も役員として関わっています。現場は15名で、11名の障害者スタッフと4名のサポート社員です。スタッフ3〜4人に1人の社員が付く割合で一つの作業チームを形成し、業務を行っています。 4、障害者の雇用状況  全員が知的の障害をお持ちで、11名の方のうち職業上重度の障害の方が3名います。将来的には受入れ障害種別を広げていきたいと考えており、昨年は聴覚障害、精神障害の方を実習生として初めて受入れました。    5、沿革(事業展開)  設立当初はスタッフ7名、社員3名の計10名体制、キャンパス屋外清掃のみの担当でスタートしました。2009年度より室内清掃を担当することになり、その後順調に担当エリア、また作業種類を増やしていくことができました。2013年現在では屋外作業と室内作業の割合は1対2程度、室内のほうが多い割合になっています。 6、清掃作業概要     現在の作業内容は表のとおりです。屋外清掃を“キャンパス作業”と呼んでいますが、主にゴミの回収・分別、掃き作業です。ゴミ回収は、早稲田キャンパスの中に30ヶ所ほどゴミ箱の設置場所がある内の3ヶ所を担当しています。1つの設置場所につき5種類のゴミ箱がありまして、回収したゴミを一旦ゴミ集積所に運び、分別するという二段階で作業を進めています。掃き作業は正門から大隈銅像に至る一番メインの通りで、学生や見学者、車の通行量も多く変化に富んだエリアを担当しています。その他、植込みから落ち葉を掻出したり雑草を抜いたり、コンクリートの地面の汚れをブラシで落としたりという周辺作業も行っています。  室内作業は、現在は8号館で6フロア分の共有部分を担当しています。ここは一般教室ではなく教員の研究室フロアです。そこの共有部分に限定して作業しています。具体的には、廊下カーペットにバキュームを掛け、トイレ・ラウンジは午前、午後と1日2回清掃を行います。  ここで、作業風景をご紹介させていただきます(会場では写真で紹介)。まず、屋外清掃ですが、メインは竹ほうきでの掃き作業です。落ち葉は春先、台風シーズン、また秋から冬にかけて大変な量があります。右の写真は、学生が夏休みに入り閑散期になる頃の様子で、ゴミ箱を一台ずつ水洗いしてきれいにしている場面です。閑散期には普段手の回らないところに時間をかけることができます。下の3枚はゴミ回収・分別の場面です。よほどの悪天候を除き、ゴミ回収は必ず行います。屋外清掃は、寒さ・暑さ・蒸し暑さといった自然環境の厳しさ、作業量の変動に対応していくことが求められる現場です。   続いて室内清掃の場面です。8号館で、左から車椅子トイレ・男子トイレ・洗面台の作業です。下は廊下のバキューム、ラウンジの流し台、そしてエレベーターの扉を拭いている場面です。  これは封入作業です。まだ定型業務にはなっていないのですが、昨年12月に行った封入作業です。役割を分担し、流れ作業で行いました。これはスタッフと社員で体制を組み、一週間ほどで完了しました。  こちらは研修の様子です。毎年防災訓練、清掃研修、栄養講座等を作業時間に組込んで実施しています。真ん中の写真は “ソーシャル・スキル・トレーニング”ですね。職業センターのカウンセラーを講師に招き、作業場面で必要な応答の仕方をロールプレイしているところです。右側は作業で使うタオルを縫っている場面です。これは作業が早く終わった時、あるいは悪天候で屋外作業ができない時などに準備として行います。   ここからは行事です。4月の入社式ですね。社内のイベントや誰かの送別会等の時は、有志が残って簡単なデザートを作ることもあります。右側はクリスマス会、毎年新人が司会を務めることになっていて、こうした役割を果たすことも新しい経験になると思います。 7、清掃業務の詳細   ここからは清掃業務を少し詳しくご説明していきたいと思います。まず屋外作業では、作業環境が天候や季節によって大きく変化します。人により衣服調整や夏場の水分摂取の重要性を充分認識できないことがあり、必要に応じて声かけや具体的提案を行います。作業内容や順序についても業務前に社員が状況確認を行い、臨機応変の指示を出すことが欠かせません。繁忙期、閑散期の人員調整も課題で、代替作業を探す必要も度々生じます。   また、広いエリアを少人数で行うため、分散している作業現場を社員が巡回し、進捗状況や仕上り具合の確認、指示出しをします。   室内清掃は屋外の作業と違い、作業環境や作業量は安定しています。大体毎日同じような作業があり、同じ時間に終わることが見込まれるという状況です。階段・教室・研究室など危険、また作業困難なエリアは、調整可能な範囲で外してもらうようにしています。時間的な制約もあります。8時から体操、朝礼・準備等をしますと作業開始は8時半がやっとですが、教室は授業時間前に作業完了が必須であり、物理的に難しいということになります。この辺りの調整は親会社が学内の施設管理を担当している関係で、比較的スムーズにいきました。  続いて「エリアの選定時の留意点」に触れたいと思います。  エリアを選ぶ時に考えるべき事柄を書出しました。「スタッフの作業能力」、言うまでもなく一人一人作業能力に違いがある上、各人また総体として“年初と年末が違う”と言えます。作業理解、習得、上達に時間がかかるという特徴が全般にありますが、それぞれ確実に成長します。個人個人の成長と、またスタッフ同士で組むことの相乗効果もあり、年度の最初と最後では作業量の総体が変わってきます。その辺りの可能性、伸び代を含め、総合的に考える必要があります。「難易度」は障害特性とも関連しますが、努力して到達できる、または工夫や練習を重ねても難しい作業を見極める必要があると思います。「状況判断」「コミュニケーション能力の程度」等、これも現場により求められる程度が異なるので、スタッフの特性と併せて考える必要があります。   「安全性確保」はある程度ハード面で調整できる場合もあり、社員の関わる度合いが違ってきます。常時付添わないと危険なのか、単独でもできそうか、携帯電話を持たせ、有事の連絡でOKなのか。あるいは、最初に指示を出し最後に仕上り確認に行けばいいのか。その必要な度合いは変わり、社員の付き方に調整が出てきます。   あとは「社員フォローの可能な範囲」を挙げました。一人の社員が3〜4人とで1チームを作って動いていますが、その作業のエリアの広さ、作業の内容、確認すべき頻度、あと移動距離もあります。特にキャンパス作業では広範囲の移動が求められ、物理的にどこまで可能なのかも変わってきます。   新しい仕事を始める場合は事前の練習期間が必要です。当社の例で言うと、年度途中で作業場所を変更する必要が生じたことがありました。我々の作業能力・時間に適した新しい作業エリアを選定した上、一つの作業場所を9月末で終了した後、1ヶ月の練習期間をいただき11月から新しい作業場所で作業開始、ということを認めていただきました。前任者との引継ぎや予算の関係も影響してきますので、調整や交渉の必要な局面でした。  次にポイントは、作業現場また作業中に生じ得るリスクを検討し、それを事前にどう回避・軽減するのか、あるいは何か問題が起きてしまった際に適切な対応を取れる体制を作っておけるか、ということだと思います。言うまでもなく社員体制にも限界があるので、フォローしきれない部分は担当から外す形でも調整を図ってきました。  「開始までの準備」の段階を具体的に挙げました。ここでは「シフト編成」が一番肝心かと思います。考えるべき点は作業時間、仕事内容、担当者を何人充てられるか、適材適所、チーム編成、時間の枠、障害特性の相補性などです。例えば挨拶が苦手な方がいたとして、挨拶が得意なスタッフとペアにすれば何とか大丈夫、というようなことです。複数の面からなる諸条件を立体的に組立てるという難しいプロセスになります。たたき台を作って修正を重ね、とりあえずの最初のシフトができます。   「清掃業務における配慮点」を書出しました。  一番重視しているのが“安全”です。自分がケガをしない、周囲の方にケガをさせないことを意識してもらっています。安全には色々な面が含まれますが、特に「体調管理」「作業上のリスク軽減」を強調したいと思います。   「体調管理」については衣類調整、夏場の水分補給等、必要性を促しても自己管理が十分ではない方もあり、とても気を使う場面です。命や安全に関わる際は少し強い注意を行うこともあります。てんかん等発作のリスクを持つ方もおり、健康管理上の必要事項を確認し、実際的な対応策も検討しています。毎年の健康診断結果を受け、必要に応じて受診や体重管理のサポート等も行います。   「作業上のリスク軽減」は可能な限りハード面で調整します。掃除道具や洗剤も使い方により危ない場面があります。安全性を優先した選び方、使い方を指導します。また作業時間中に何か分からない時、困った時、危ない時の連絡手段を確保し、連絡を取合いながら作業に入ってもらっています。  ソフト面でリスク軽減のためにできることは、チーム体制を考えることです。担当社員が巡回しますが、なるべくペア作業になるようシフトを工夫しています。それから「安全が大事だ」と繰返し教示することも意識しており、実際に危険な場面があった際は作業を止めて教えます。安全や命に関わることについては重要性を認識してもらうため、時に厳しく注意をすることもあります。ヒヤリハットも時々ありましたし、今後もあると思います。リスクをゼロにすることはできませんが、事前に可能性を予見して避けられるものは避ける、対応できるように備えをする。それでもどうしても難しい部分は外してもらう、ということで対応してきました。「作業態度」、具体的には丁寧な作業、身だしなみ、適切な挨拶、報告、連絡等も重視しています。  続いて「習得、上達のための工夫」で行っていることを書き出してみました。障害を持つ方と関わる上で踏まえておくべき基本はあると思いますが、「褒められたい」「努力を認められたい」「怒られたくない」、「できることが増えて嬉しい」というのは人として全く同じだと思います。信頼して期待をかけ、努力や成長を認め、改善策を具体的に示して、育てるような意識で関わっていけば、上達に向かうと思います。大事だと思うのは、障害者の方は受身とか指示待ちの方が多いのですが、仕事をできるようになった、それを自分で実感し嬉しく思うことで“自分で自分を律していく”と言いますか、“自分で頑張り続ける力を内側に持つ”というところを目指したいと思っています。理解するのに得意、苦手なパターンがあり、伝え方は工夫をする必要があると思っています。 8、社会人としてのスキルアップ  スタッフには、作業だけでなく人として成長してもらいたいと思っています。作業指導に加えて全体目標を設定したり、定期面談で半年ごとに作業面・生活面の課題を設定して振返りの時間を持っています。また研修も大切にしており、月2回ですが「スタッフ研修」という枠を作っています。作業スキル、マナー、健康管理など様々なテーマを織り込んで伝えています。新人スタッフには別に「新人研修」を組みます。年間を通して防災訓練、清掃の集中研修、月1回の避難訓練をしています。支援機関のフォロー体制も活用しており、生活面の支援、家庭との連携、余暇活動の充実など広い分野でのサポートをいただいています。 9、今後の展開  設立して5年が経ち、清掃業務においては一定の実績を重ねてこれたように思います。スタッフも実習生もそうですが、力を持っている方であっても清掃では難しい方もあり、今後清掃だけで展開していくことには限界も感じているところです。仕事の種類を増やしていくことができれば、もっと様々な活躍をしていただけるかなと考えています。他障害の受入れ、加齢対策への備えも含め、清掃以外の業務導入も検討していきたいと考えています。   「大学らしい業務の切出し」を挙げたいと思います。私は前職で、障害者の働く様々な現場を拝見する機会に恵まれました。幾つか大学にも行きましたのでその経験も含めて大学という環境の中でこんな仕事もあるのでは?と書き出してみました。仕事の種類も量も、可能性は無尽蔵にあるではと予測できますが、やはりこれは大学本体の理解や協力、繋いでいただくということが必要になってくるのではないかと思われます。組織構成に示しましたが、清掃業務担当子会社のさらに子会社という現状では、大学本体に我々の置かれた状況がなかなか伝わりにくいというか、少々距離を感じる場面があります。大学に主体的に取組んでいただけたら少しずつ進むのではないかと期待しているところです。また 「自主制作」とも書きました。昨年より少しずつ封入や事務作業の取組みが始まったところですが、スタッフの新たな可能性を発見したり、作業時間を有効に調整するための仕事として、何か自分たちで作ることも摸索していけたらと思っております。  これで報告を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。   「当社における障がい者雇用の取り組み〜学内郵便物の仕分け・集配業務〜」 株式会社 帝京サポート 取締役 勝又 勝美 1、会社概要    本社事務所は、大学の板橋キャンパスに隣接しています。勤務場所は、板橋キャンパスの中にあります。会社の設立は2008年1月末です。事業の開始が2009年4月1日ですから、この間1年2カ月が準備期間です。その後、2009年の5月7日に特例子会社として認定されています。資本金1,000万円、出資者は、学校法人帝京大学が6割、関連会社の株式会社帝京サービスが4割。特例子会社の要件で支配力基準というのがあります。過半数を親機関が保有することが前提ですので、このような出資比率になっています。  従業員は現在33名、このうち障害者が21名、一般社員は12名です。一般社員の12名の中には、職業生活相談員が3名います。障害者は、全員が発達障害です。この発達障害の内訳ですが、手帳等級で知的3度の者が1名、知的4度の者が20名。この中で雇用対策上の重度障害者が8名、この人たちはダブルカウントになります。男女別の割合ですが、男性が18名、女性が3名です。一般社員は、男性11名の女性が1名です。年齢構成は、若年層です。24歳が1名、23歳が1名、あとは22歳以下、10代も6名ほどいます。 2、事業内容  学内郵便物の仕分け・集配、日用雑貨・文具の納入物品の検品であるとか、配達をしています。廃棄文書回収、キャンパス内掃き掃除、ゴミ回収、ゴミ分別。  なお1年後には現在整備中の大学キャンパスの4,000坪くらいが緑地になりまして、そこでのゴミ回収、分別、掃き掃除を担当する予定になっています。それから、病院の中の業務では、注射薬などのカート搬送。薬剤部の伝票整理、処方箋の整理や病棟にお茶を運んだりしています。加えて病棟から洗濯物を回収して、クリーニング業者に引き渡し、できあがったものを配達します。写真は職員のユニフォームです。あとは診断群分類のDPC用紙を配付、データ読み取りのスキャン用紙を回収しています。その他、いろいろなデータ入力をしています。また配布物の封入と部署別の仕分け。  最近出てきたのは、オープンキャンパスで行うアンケートの集計。アンケートの回収数は約3,000枚あります。こういう集計は、実は知的障害者が得意です。  (1)メール集配業務の具体的内容  従事する人数は、当日の取扱量によって午前中に配達が終了するように、臨機応変に変更しています。通常は障害者5名、それに一般社員3名の合計8名で行います。一般社員3名は、仕分け先に困るような相手先の判断や、チェック機能を果たしています。   1日の流れから申し上げますと、午前9時に全体朝礼。全体朝礼後、業務に就きますが1週間ごとに5つの業務をローテーションしています。5つというのは“配送”、“薬剤”、“クリーニング”、 “清掃”、それから“人事”です。これらをローテーションしていますので、担当するグループミーティングに参加します。このグループミーティングを含む司会進行は、すべて障害者が行います。   郵便物ですが、毎日約1,000通が届きます。まずは仕分けしていきます。その後、仕分けしたものを160カ所の部署ごとに袋詰めをします。それから書留等の重要郵便物については専用受渡簿に記入しまして、配達先別のバッグに入れます。大体1日平均書留で15通ぐらいです。宅配便ですが、受け取ったときは、該当部署がわかるようにマジックで大きく書いておきまして、郵便と一緒に、四つの配達グループの台車に載せます。二人一組の四つの配達グループにわけ、さらに付属病院では上層階と低層階に分けて行っています。  すべてを台車に載せたことを確認しまして、配達を開始するのはおおよそ10時です。  流れをまとめますと、9時から朝礼をして、仕分けは約1時間で終わります。そして10時に配達開始。完了するのは11時から11時半です。配達の帰りに預かってくる、発送する郵便物、あるいは学内への郵便物があります。預かってきた者は、これを仕分けしてポストに入れます。簡単なミーティングをして、午前中は終わります。    (2)メールの集配業務開始の経緯     どうしてメールの集配業務を開始したかを申し上げます。 特例子会社設立を検討していました時期にはまだ各部署から受け取りに出向いていました。その時期に付属病院と大学の建て替え工事が進んでいました。上層部の意向もありまして、特に医療関係従事者、中でも看護師さんのために「本来業務に専念するための配慮」という厳命が出ました。このとき事前に、看護部長や薬剤部長と随分協議をしまして出てきたのが、郵便物やクリーニング、薬剤のカート搬送です。    加えて、セキュリティーの問題があり、「不特定多数を付属病院の中に立ち入らせない」。これも病院側から出たことでして、そのためにこの「帝京サポートの配送機能を最大限に活用する」、メール集配業務はこうした経緯からスタートしています。    準備活動では、まず部署別の郵便物や宅配便、文具・雑貨の取扱量を調査しました。その上で、届け先のルート・部署を実際に回って、計測して、ほぼ同時に配達が終了するように配送体制を組みました。配達に際しましては、次のようなことを準備しました。手渡しの手順をマニュアル化するとともに、立ち入り先で、先ほどの「株式会社WUサービス」の伴さんの講話でも話に出ましたが、“あいさつ”を慣行させました。こういったものの模擬演習を何度も重ねて、よかった点であるとか、改善すべき点を現場同士で意見を出し合って、事前訓練を繰り返して本番に備えました。  (3)日常業務で配慮している事項  挨拶や身だしなみ、安全、衛生、健康面を日々チェックしています。具体的には、出勤した人の顔色をみたり、毎日の朝礼で必ず「健康状態は大丈夫か」といった声かけをしています。また、個人の特性を活かした業務の仕組みをつくっています。パソコンが得意な者もいます。清掃が得意な者もいます。郵便に限らず、仕分けが得意な者もいます。なるべく得意な分野を活かしながら、一方ではだれでもどんな仕事でもこなせる体制を構築しています。  それからマンネリ化しないための工夫をしています。具体的には、先ほど申し上げましたように“ジョブローテーション”。5つの業務を一週間ごとに交代するというような、変化を持たせるとともに、午前と午後の仕事の内容を変えています。    それと、説明は、口頭で伝えて耳から。手順は、実際の作業をしながら目で。そして新人には、先輩を手本にするようにしました。今まで経験したことのないことや、教えられたことのない場合は、そこで固まってしまって、その先に進まないことがあります。本人が処理の仕方を忘れている場合があります。そういうときには、「こういうときにはどうするんですか」と、別の人に聞きます。そのときに、正解を示して、確認しながら進めます。確認をしながら進めるというのが一つのポイントです。    次に、教えは繰り返し、根気よく続けています。易しいことから難しいことへと進めています。あとは、仲間とは協力し合う。チームワークで仕事をしていますので、1人だけ勝手な方向を向いちゃ困るよ、と。こういうことも最初からきちんと教えますので、そのとおりやります。それから“褒める・ねぎらう・気遣う・感謝する”、これを日々実行しています。働く者は給料以外に、成長の実感といった“心の報酬”、これを求めています。ですから、褒めるようにしています。できなかったというのは、なるべくとがめないようにします。できたことを褒めています。よくできた事実を褒めて、士気を高める。ただ褒めっぱなしじゃいけませんので、褒めて「やる気」が高まったら、次は新しい仕事を覚えるための背中を押します。努力・工夫や、常にできたことを肯定し、更にアドバイスとして具体的なことを言ってやると、生き生きと取り組みます。実際に配達先で「『ありがとう』と言われて、やりがいを感じた」と、学校の見学会で「先輩の声」として語っています。それから次への挑戦、「やる気」にもつながっていると言っています。  (4)ミスをしないための工夫  個人のミスを追及することは、原則しないようにします。「どうして発生してしまったのか」、その原因を整理しまして、再び同じことが発生しないように指導をしています。それから、ミスの原因を整理して、原因が判明したら夕方の一般社員によるミーティングで、今後どう対応するかを話し合って、具体的改善策を決定します。必要なときは仕組みそのものも変えています。改善策が決定した翌日の朝礼では、全員に対して「ミスがこのように発生した。今後どうするか」ということを具体的に示して、再発防止に努めています。このように時間を置かないで、タイムリーに指示すること。これが運用を円滑にしていると思います。    それから繰り返し発生するミスは、改善策を講じて定期的に正しい方法を示しています。それと、休日明けというのはどうしても、取扱量が多くなったりしてミスが多くなりがちですが、今までミスの多い例を具体的に示して、注意を喚起しています。あとは、その場で改善できるものはすぐ是正しています。一般社員は、チェック機能を果たすように各グループに配置しています。障害者には、「わからなかったら勝手に判断しないで、必ず聞きなさい」と教えています。このように対応して、ミスの発生を防止しています。  (5)イレギュラー対応  障害者には通常と異なる状況が発生した場合は、“いつ、どこで、何があったか”を、メモ帳に記録しておいて直ちに一般社員に報告しなさいと言っています。朝礼で、そういう事項を毎日チェックしながら進めています。“報告・連絡・相談”、を、毎日毎日繰り返しています。それと、“勝手に自分で判断しない・させない”ことです。そのため一般社員には、常に聞く体勢を持たせています。    (6)今後の課題  3点ありまして、1つ目は「指導体制」です。指導体制、モラールを維持し、向上していくために、だれがどのように指導するかということ。それから、それをだれがマネージメントしていくかということ、先ほど「WUサービス」の伴さんの話でも触れられましたが、法人とのパイプ作りは大事です。私は、設立準備からずっと携わっていますので、現在でも大学の上層部と直接話をします。そういうふうにしないと、なかなか事が進まない、そのように思います。    それと、指導者をどうやって育成していくかです。ここまでずっと、素人が手探りできましたが、障害者は入社して6カ月たちますと、かなり成長します。今後、障害者に考える力と、状況を判断する力をつけさせる。この辺が課題だと思っております。    いつも御評価いただきますが、私どもの成長していくためのプログラムは、簡単なプログラムです。例えば、1年間の計画、例として、4月には「明るく元気なあいさつをしましょう」というように課題を与えます。そうして、半年経ちますと、自分の目標というものを自分で言うようになります。それだけ成長をしていきます。あと、指導体制とは若干次元が異なりますが、あるセミナーで「障害者が高齢化してくると、健常者と比較して労働能力が低下し、体を使う仕事では、体力的にきつくなり休みがちになる」と聞きました。私どもの社員は、現在まだ若いですが、この点も今後の課題かなと思います。    次に「処遇」ですが、保護者の一番の期待というのは、長期安定雇用です。今後どのように処遇していったらいいかを検討しています。最初は1年契約のパートタイマーとして、時給制からスタートします。昨年4月に人事考課をしまして、それをクリアし、3年経過した社員たちを、1年更新の契約社員として月給制を採用しました。このハードルを設けるに際しまして、専門家…具体的には社会保険労務士であるとか弁護士であるとか、こういう方の知恵をお借りしまして作りました。この取り組みに対して賞賛と驚きの声をいただいています。     3つ目に、「災害時にどうするか」です。東京都では共助の視点から「帰宅困難者対策条例」を今年の4月に施行します。この中で、事業者に課す努力義務というのが3項目あります。「一斉帰宅の抑制」、「3日分の食料と物資の備蓄」、それから「集客施設、例えばデパート・映画館等、障害者を含む要援護者への対応を事業者側が検討しておく重要性」が記載されています。事業者の対応は、急ピッチで進んでいるとも報じられています。しかし、障害者を含む災害弱者支援のネックになっているのが、個人情報の壁だそうです。国は支援者を決めるよう求めていますけれども、安否確認・避難支援を頼める顔見知りがいない、負担が多すぎて引き受け手がいないという理由から各自治体は災害弱者の避難計画づくりに頭を悩ませているとも報じられています。    当社の場合、災害発生時に会社にいる場合は、無理して帰宅させません。問題は、出勤途中や帰宅途中に災害に遭遇した場合の対策の構えです。本人が、正確な情報や周囲の状況を把握できるか。自分の意思を伝えることができるのか。パニックに陥らないか。避難が必要な場合に、避難場所にたどり着けるか…といった問題点があります。周囲の助けを求めることはまず間違いありません。そこで私どもは、備えとして自助・共助・公助の考えに基づいて、まず自らの身の安全を確保するマップを作成しています。出勤経路上にあるすべての駅やバス停近くの安全な場所、具体的には公園・学校・交番などの位置の確認や道路状況を、家庭に協力を依頼して調査しマップを作成しました。これとて万全とは言えません。    このほか、個人カードを作成して携帯させています。カードには、帝京大学の障害者雇用の特例子会社の社員である旨を明記して、「御協力をお願いします」と表示しています。もちろん会社だけではなく、自宅の住所・電話番号のほか、薬を服用している場合は薬の名前も記入しています。これからもどんな対策が必要かを模索していきます。 3、障害者雇用を検討している機関へのメッセージ  障害のある者に対して雇用の機会をつくって社会参加を促すのは、教育機関の使命であると思っています。私どもは病院を併せ持っていますので、役割はさらに大きいものと感じています。そこで、まず障害を理解することから始めたらいかがかと思います。障害者が10人いれば、10人障害の程度は異なります。私どもは、幸い医療従事者の理解が得られて、「こんなことができるんじゃないか、こんなことも検討してみてください」と言われまして、業務分野を拡大してきたのも事実です。  話は少しそれますけれど、先ほど笹川研究員の講話で触れられた、発達障害は小中学生の6.5%、例えば40人学級で2人超の割合でいるといわれています。しかし個々の状況に応じた指導・支援計画が不十分とも報じられています。障害者については一般的な反応として、漠然とした不安があります。「そういう人を雇用して本当に大丈夫か」。 実は私どもも医療機関でありながら、そういう声が出たことも事実です。しかし現在では取り組みを理解して、次々と仕事が舞い込んできているということをお話ししておきたいと思います。   まず、職場実習、インターシップの受け入れをしてみてはいかがですかと御提案します。職場実習を受け入れると、きっと考えが変わります。私どもでは、通勤時間1時間圏内にある特別支援学校と連携して、職場実習を受け入れています。特別支援学校には当社の取り組みを理解していただきまして、仕事内容にふさわしい人材を実習に向け てもらっています。職場実習のメリットというのは、たくさんあります。当社を見学された皆様から、「訓練すれば、ここまでできるんですね」という声をたくさんいただいています。本人にとっては、職業や社会人に対する理解が深まってきます。企業にとっては、雇用のミスマッチが少なくなります。適性を判断して、仕事に向く人材をピッ クアップしています。その点が定着率にもつながっていると思います。 私どもがスタートしてから4年間、「辞めた人はいないのですか」という質問を時々受けます。2人ほどおり、一人は家庭の事情で辞めざるを得なかった。もう一人は病気が再発しまして、就労困難になった。この2名だけです。  以上ですが、まだちょっと時間がありますので補足します。皆さんが一番関心あるのは、「なぜ特例子会社にしたのか」、「立ち上げの苦労はないのか」であろうかと思います。なぜ特例子会社にしたのかといいますと、ハローワークから法定雇用率を下回っていると再三指導を受けたことです。もう一つは、親会社と異なる労働条件の設定が可 能であるということです。それから、障害者の特性を生かして仕事の確保、拡大ができる。まさに私どもは、特性を生かして仕事の確保、拡大をしている状況です。それでは、どうして特例子会社でスタートするよう指示が出たかといいますと、これは人事部門が大学の上層部に報告して、「それだったら特例子会社でいこう」と、言ってみれば トップダウンで決まっています。そのときに特例子会社のプロジェクトチームをつくることと、チームメンバーも同時に指名がありまして、「プロジェクトチームのチームリーダーに、勝又」ということになりまして、現在に至っているのが状況です。  あと、立ち上げの苦労です。皆さん、どんな仕事をするかが一番お困りだと思いますが発想を転換してしまえばいいと思います。例えば、取りにきてもらっているものだったら、こちらから持っていけばいいじゃないかということです。そういったものがあると思います。準備段階で業務についていろいろ検討しましたけれど、そのとき多く出た のはスポット的な仕事が多かったです。恒常的なものがなかったので、人を雇うのだったらやっぱり恒常的にある仕事を扱うべきじゃないかということを主張しまして、恒常的にある仕事に取り組んできました。   あとはこういった取り組みを「組織の中でどう浸透させるか」ということが、皆さん関心がおありのところだと思います。実は、私どもの特例子会社の社長は、大学の事務局長に就任してもらっています。これは浸透させるための意味合いもあります。社長命令で、立ち上げを学内に「いつから、どんな仕事をする」ということを通知しました。またスタート後、担当してほしい業務を申告してくださいということも3回ほど通知しました。そのうえで、スタート前には付属病院の看護部長や薬剤部長と、本来業務に専念できることを前提に何回も協議をしました結果、かなりの業務が出てきました。残念ながら事務部門というのは一番進まなかったのですが、立ち上げて1年ぐらい経過したところで、当社の社員が「明るく元気にあいさつする、はつらつと仕事に取り組んでいる」という声をたくさん聴くようになり、「こんなことは、これはどうか」と寄せられているのが現状です。先ほどの、オープンキャンパスでの3,000枚のアンケートの集計、こういったものもその一環です。最近の事務部門での評価は、「明るく素直で気持ちがいい」。加えて、子を持つ親の立場からすると、「こんなありがたい取り組みはない」ということを、何人からも聞いています。それから、「障害者の採用をどうするか」ということがよく話題になりますが、全くの素人が手探りで始めましたので、ノウハウがありません。協力をお願いしたのは、特別支援学校です。以前から、特別支援学校の先生から「ぜひ実習生を受け入れてください」と依頼されてきました。受け入れながら、どんな取り組みをしていくかを検討していく。実習生を受け入れた際、最初は「WUサービス」様が使用されていました“実習生のチェックシート”を参考にさせていただきました。複数名でスコアリングをして、採用に向く人物であるかどうかというのを判断しています。   それから「採用後の教育指導」、これをどうしていくかというのも課題だろうと思います。まず私どもは、特別支援学校の先生から、一般社員に“障害者と、どう向き合っていくか”というのを話していただきました。あとは本格稼動してから2年近く、東京ジョブコーチさんのアドバイスをいただきました。ここで非常に参考になったのは、例えば女性に対する配慮であるとか、「このあたりで休憩を入れましょう」といったことです。健常者では、なかなか気づかないことがたくさんありました。   さらには、居住地を管轄する地域の支援機関とは年2回定例会を開催して、情報を交換しています。この中の会議にはハローワーク担当者であるとか、特別支援学校の先生も参加をいただいています。特別支援学校の卒業後支援は3年間です。その後の支援は地域の支援機関にバトンタッチしますので、地域の支援機関との連携も密にしていま す。  あと入社後1年間は、各人別日誌をつくっています。社会人になったら、もう日誌なんかいらないじゃないかという御意見もありますけれども、今日の出来事を簡単に本人が記入して、一般社員がコメントして、家庭に持ち帰って、家庭からも簡単なコメントをもらって、翌日提出します。体調であるとか、帰宅後の様子、休日の過ごし方がわ かって、これは、非常に参考になります。  それでは時間が来ましたので、ここで終わらせていただきます。  御清聴、ありがとうございました。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------ [質疑応答] (質問者)  「WUサービス」にお聞きします。WUサービス様は早稲田大学さんの子会社の、そのまた子会社とお伺いしました。グループ全体の障害者雇用率の算定方法はどのようになるのでしょうか。差し支えなければ教えていただきたい。 (WUサービス伴氏)  直接の子会社ではないので、通常よりも付加的な手続が必要だったようですが、一応グループ企業ということで算定されていると聞いております。 (質問者)  そうしますと実質的には早稲田大学さんの特例子会社として扱われており、早稲田大学さんで仕事をされている教職員がすべて分母に含まれると、こういうことでございますか? (WUサービス社長小倉氏)  雇用率の分母は、大学の教職員に特例子会社の者員を加えております。 (司会)  補足させていただきます。ご質問は、孫会社を特例子会社にする形でグループ認定がなされるのかどうか、疑問に思っておられるということからではないかと推察いたします。現在、基本的にはこのスタイルでは、労働局では認定されません。  私の推測になりますが、早稲田大学さんが大学の特例子会社第1号を立ち上げられるということがあって、いろいろ議論をされた結果、特別に認定を得られたのではないかと思います。  企業からのご相談の中には、「第1次子会社のさらに子会社として、特例子会社をつくりたい。できれば、その1次子会社、全部算定の中に入れたい」という意向のところは結構あります。ですが基本的には、労働局は認定しません。例外がないかと言われたら、一、二、聞いたことがありますが、そこはあくまでも個別の相談だろうと思います。よろしいでしょうか。 (質問者)  立ち入ったことをお聞きしまして、申しわけございませんでした。ありがとうございました。 (司会者)   いえいえ。ほかにございませんでしょうか? (質問者)   WUサービスと帝京サポートにお聞きします。それぞれの会社で雇用されている障害者の方の雇用形態と給与水準をお話いただけるようでしたら、参考にお聞きできればと思います。 (WUサービス伴氏)  WUサービスでの雇用形態は、一年間の有期契約を更新するという形です。最初の3カ月間の試用期間を設けますが、その後は基本的に一年契約を更新するという形を取っております。  給与は、時給で計算をしております。最初は、最低賃金でスタートします。次年度以降の時給については勤務評価に基づいています。生活面、作業面、5項目ずつ、計10項目ですが、それを年に4回、各スタッフ全員分の評価を出しております。年に一度、評価をもとに次年度の時給に反映させています。 (帝京サポート勝又氏)  帝京サポートの雇用形態は、パートタイマーと1年更新の契約社員の2種類です。  パートタイマーの勤務時間は9時から16時までの実働6時間、昼の休憩1時間です。現在、時給は855円です。(当時の最低賃金850円)最低賃金を若干、上回る水準です。最近、毎年のように最低賃金上がりますので、実質的に時給がアップしているという状況です。  人事考課を実施しまして、パートタイマーの中で一定水準に達した者を1年更新の契約社員としています。契約社員は、一般社員と同じ勤務時間である8時半から17時までが勤務時間で、実働7時間30分です。給与水準でございますが、これは国家公務員の高卒初任給、行政職の1の5を適用して、現在、14万0100円が水準です。 (質問者)  ありがとうございました。 (司会者)  答えにくい質問にも関わらず具体的な数字を出していただきありがとうございました。ほかに御質問ございませんでしょうか。   では私から御質問させていただきます。現在、特別支援学校からだけの採用に絞ってらっしゃるのは、何か理由がございますか。 (帝京サポート勝又氏)  現在、特別支援学校の新卒者だけに限定をしています。過去に大学が選考して採用した者が現在帝京サポートに転籍しています。実はこの人の教育に非常に手こずっています。染まった人を新たに教育する。これが非常に労力を要するということがわかっております。「前の場所ではこんなことはしてなかった。こんな、こういうふうにやっていた」とこだわってしまい、それを修正するのに、なかなか時間がかかる。理由は最初から訓練・教育がなされていなかったからです。最初からきちっと訓練・教育ができれば、先ほど申し上げましたように、「訓練すれば、ここまでできる」というふうになります。以上のような現状がございまして、新卒にこだわっております。 (司会者)  ではWUサービスにお聞きします。私が以前見学させていただいた際には、どちらかというと既卒の方のほうが圧倒的に多かったように、記憶しております。帝京サポート勝又様と逆の御意見もおありになろうかなと思うのですがいかがでしょうか。 (WUサービス伴氏)  立ち上げ当初は、支援機関からの既卒者の実習が多かったです。特別支援学校からの見学や実習の問い合わせを受けまして、徐々に受け入れるようになってまいりました。1校の特別支援学校からの受け入れをしますと、「来年度も」と続くこともあります。また、そこから別の特別支援学校からも連絡を受けることもあります。このように少しずつ新卒者の受け入れが広がってきているような状況です。  特別支援学校と支援機関と新卒と中途採用ということですが、それぞれメリット・デメリットがあります。帝京サポート勝又さんがおっしゃったように、中途の方がちょっと難しい場面もありますが、でもメリットもあるなというふうにも感じているところです。また特別支援学校でも支援機関でもない、職業訓練校からも時々実習を受け入れて、採用をしているところです。 (司会者)  ありがとうございます。 (質問者)  特例子会社が当然、障害者雇用の雇用率の中心になろうかと思うのですが、大学本体の中でどのくらいの障害者数がおられるのでしょうか。  実は私どもの大学でも特例子会社設立の検討を進めていますが、特例子会社の従業員だけで雇用率を達成できるかというと難しいかなというような気もしているのですね。もし、差し支えなければ教えていただけたらと思います。 (WUサービス伴氏)  大学には、教員と職員の方がいます。教員の方に対して、定期的に障害者手帳を持っている方は申告していただくように促しているところです。  職員については、障害者雇用枠での募集を随時行っております。こちらは非常勤の雇用条件で採用を進めているところです。大学本体と「WUサービス」の障害者雇用している割合ですが、概ね3:1ぐらいの割合というふうに聞いております。本体で3/4、「WUサービス」で1/4という割合であると聞いております。 (質問者)  3:1ですか。そうすると、本体での障害者雇用が多いということですね。 (WUサービス伴氏)  はい、そうです。 (質問者)  はい、わかりました。 (司会者)  帝京サポートではどうなっていますか? (帝京サポート勝又氏)  私どもは、まさに御指摘の点が今、問題になっております。本体には現在、40人の障害者がいます。帝京サポートには21人います。当社には雇用対策上の重度障害者が9名おりますので、障害者29名としてカウントできます。実は特例子会社を設立したために、特例子会社にどんどん依存してきます。今朝も、人事課長に「特例子会社にだけ依存するのではなくて、大学本体も、もっと積極的に取り組むべきではないのか」と、申し入れてきたばかりです。  障害者手帳を持っているかどうかは、年末調整のときの障害者申告、これが一つの手がかりになるかと思います。これを元に障害者を把握することができまして、年間新たに数名出てくるようです。お答えになりましたでしょうか。 (司会者)   今の話題で、さらに御質問はございませんか? 学校法人に限った話ではないと思います。特例子会社をつくったときに、分母の大きい企業であれば、当然この問題出てまいります。  特例子会社だけで雇用率が賄えるということは、大手企業ではまず考えられません。「いかに本体で雇うか」ということは、重要な部分だと思います。そこで、「特例子会社ではどんな仕事をするのか」、「では本体では専らこういう障害種別の方を採用して、こんな仕事をしてもらう。特例子会社では、こんな仕事をするから、これに適性のあるような障害の種類の方を雇用していく」っていうような住み分けみたいなものがどこかで必要なんだろうなと思っています。  ほかに御質問はございませんか。 (質問者)  就労支援機関職員として、企業や教育機関等から相談を受けている者です。  帝京サポートにお聞きします。特例子会社設立するにあたって、プロジェクトチームを最初に設立されたと聞きましたが、どういった方で構成されていたか教えてください。 (帝京サポート勝又氏)  板橋キャンパスにある付属病院と同キャンパスにある各学部の各総務担当責任者に集まってもらい、検討委員会を設置しました。私は別の関連会社を担当しておりましたが、そこにメンバー入りをしまして、プロジェクトチームのプロジェクトリーダーとして進めてきました。  検討委員会は月に2回ぐらい、6カ月間開催し、メンバーの総務担当責任者に仕事の切り出しを求めました。その後、会社の設立については私がいろんな会社をつくった経験がありますので担当いたしました。「会社の設立までは、私がやります。設立後、誰かに引き継ぎたい。」と申し入れましたが、「引き続きあなたがやりなさい」と指示されまして、今日に至っております。 (質問者)  ありがとうございました。WUサービスはいかがでしたか。 (WUサービス社長小倉氏)  WUサービスの社長を務めております、小倉と申します。私も途中からこの任務についておりますので、設立時の話は詳しくは聞いておりませんが、先ほど申し上げました「プロパティ・マネージメント」と大学の人事部とが検討チームをつくって、立ち上げの準備をしてきたと聞いております。 (質問者)  ありがとうございました。 最近の障害者雇用管理等講習資料シリーズ一覧 176 聴覚障害者の職場定着、雇用継続について  群馬大学教育学部 障害児教育講座准教授  金澤 貴之  株式会社リクルートオフィスサポート 事業推進室オフィスサプライグループマネージャー 近藤 康昭  株式会社マルイキットセンター取締役社長 武居 哲郎 177 精神障害者の募集・採用について  株式会社日立製作所 労政人事部労務課主任  藤原  敏  労政人事部労務課    五味渕律子  清水建設株式会社 人事部 杉浦 光夫              川村 由佳  中央労働金庫 総務人事部主任調査役  山本 富子178 小売業における障害者雇用の促進について   株式会社 良品計画 総務人事J・SOX担当  成澤岐代子  株式会社 いなげやウィング 管理運営部長      石川 誠179 医療・介護業における障害者の雇用促進について  中央障害者雇用情報センター 障害者雇用エキスパート 名田 敬  横浜市立二つ橋高等特別支援学校 進路専任主幹教諭    犬山 貴文  医療社団法人愛友会 上尾中央総合病院 人事課長  七島 清孝  千葉障害者職業センター 上席障害者職業カウンセラー 中村 孝志 ※そのほか発行しておりますシリーズにつきましては、当機構ホームページにて公開しております。ご希望の際は、発行元へお問い合わせください。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 障害者雇用管理等講習資料シリーズNo.180   教育機関における障害者雇用の促進について         発行年月日 平成26年3月31日     発行  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構           雇用開発推進部 雇用開発課           〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−3                     障害者職業総合センター内           TEL:043-297-9514           FAX:043-297-9547           URL:https://www.jeed.go.jp