はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~
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112(9)高次脳機能障害1 高次能機能障害とは 高次脳機能障害は、病気や事故などのために脳の一部が損傷されることにより生じる認知機能の障害です。高次脳機能障害の原因となる病気としては、脳卒中、脳炎、脳腫瘍などがあります。 病気や事故からしばらくの間は、症状が少しずつ回復しますが、多くの場合、完治することは期待できません。後遺症を補いながら職業生活を始める(再開する)ためには、周囲の理解と配慮が必要です。 高次脳機能障害者に対しては、精神障害者保健福祉手帳が交付されますが、合併する身体障害(上下肢の麻痺など)に対して身体障害者手帳が交付される場合があります。また、高次脳機能障害の原因となる病気や事故の発生が18歳未満であるときは、療育手帳が交付される場合があります。日々のできごとや新しい情報、予定などを覚えることが難しくなります。毎日繰り返し行う作業の手順は少しずつ定着することが期待できますが、定着まである程度の長い目で見ていく必要があります。物事の細部に注意を払うことや、集中力を長時間維持すること、複数の対象に同時に注意を向けることなどが苦手になります。その結果として、作業手順の抜けや見落としなどが生じやすくなります。注意力は、周囲の環境(騒音など)や本人の疲労の程度にも影響を受けます。左右どちらかの空間(多くの場合は左)への注意力が弱くなる症状です。例えば、通路の左側にある物にぶつかる、左側に置いた持ち物を置き忘れる、書類の左端の欄を見落とすといったことがあります。見えないわけではなく、左側(または右側)に注意を向けたり維持したりすることが難しいのです。2 障害特性 脳の損傷部位の違いにより、症状や重症度は一人ひとり異なります。症状としては、例えば以下のようなものがあり、一人において、複数の症状が重複する場合があります。〇記憶障害〇注意障害〇半側空間無視

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