事例. 1 カナツ技建工業株式会社 島根県 建設業(総合工事業) ポイント @ 地域貢献への思いから障害者雇用を展開 A 社内の理解促進により雇用創出と職場定着につなげる 経営者の声 代表取締役社長 金津 任紀さん  障害者雇用は法律上の義務ですが、雇用率を達成するだけでなく、働く意欲のある方を可能な限り積極的に雇用することが重要だと思います。地域社会が元気になるためには、そこで働く人が元気であることが必要であり、お互い助け合っていくことを通じて、いい人間関係ができ、地域の活性化と発展につながるものと考えています。企業も地域に生かされている存在であり、当社では「社業を通じて社会に貢献する」「人の和で心の豊かさと生活の安定向上をはかる」という経営信條のもと、それを具現化するために障害者の雇用や社会参加の促進に努めています。障害者が制作した絵画の購入など、障害者の皆さんの活動への協力や支援も行っており、障害者雇用と相まって、活躍の場が広がるよう取り組んでいます。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定(佐藤さん)  佐藤さんは、入社して約3年であり、主に産業廃棄物管理票(マニフェスト)の作成と社員の名刺作成の業務を行っている。もともと施工管理関係の資格・経験があり、今後はそういった分野の職務を担うことも検討されている。 視野狭窄により自動車の運転ができないため、通勤のバス時間に合わせた勤務時間の設定という配慮がなされている。 2 担当職務の設定(門脇さん)  門脇さんが勤務する宍道湖東部浄化センターは、松江市及び近隣の家庭や事業所から出る下水を浄化して自然に還元する施設である。4人のチームで水質検査を行い、門脇さんはその補助的業務を担っている。  門脇さんが入社した8年ほど前は、法定雇用率に達しておらず、これを充足するために公共性の強い同センターで受け入れることとなった。  門脇さんの1日は、まず、採水と各種機械の電源を入れるといった準備作業から始まる。採水は、250mほど離れた屋外の設備から、前日から溜まった2Lほどの処理水を運んでくる。次に、水質検査のため、ビーカーにセットする濾紙を作り、ビーカーに漏斗を挿し、濾紙をセットして、電導度やPH値を測定する。さまざまな処理段階の検体を測定し、その値を紙に書き写す作業である。四捨五入の扱いが難しい。さらに、前秤量作業という、SS(浮遊物質)を図るために事前に濾紙の重さを測る作業がある。専用の濾紙をピンセットで電機秤に乗せ、重量とパソコンに表示される番号を確認し、濾紙を取り出しアルミホイルに挟んで保管する、という流れである。工程が複雑で、難しい作業である。  そして、ポリ瓶、ビーカー、試験管等器具全般の洗浄作業と清掃である。洗浄といっても、検体を捨てる、すすぐ、洗浄機にかける、乾燥機にかける、という工程があり、器具の種類も多いため、時間や回数がそれぞれで異なる。  職務の創出・拡大に当たっては、地域障害者職業センターに職務の分析を依頼し、難しい作業はジョブコーチの協力を得てマニュアルを作成して対応した。  門脇さんの入社直後は、洗浄作業と清掃だけであったが、指導者の高橋さん曰く「真面目にコツコツ取り組んでいる」、「気づかれにくいよう、少しずつ仕事を増やしていった」、「職場の雰囲気が明るくなった」とのことである。 3 共通理解促進のための社内教育  知的障害者の採用に当たって、社内報で障害者雇用について解説するとともに、地域障害者職業センターの講師による社内研修を実施した。 雇用管理担当者の声 総務部総務・人事グループマネージャー 三角 敦嗣さん  皆さんそれぞれの持ち場で力を発揮していただいています。建設業は多くの現場があり、障害者の方が働きにくい環境もありますが、できるだけ働きやすい環境を整えることが重要だと思います。企業イメージの向上にもつながります。  今後も、例えば施設管理や社員の福利厚生に関する業務で、障害者雇用の拡大の可能性について検討したいと考えています。 従業員の声 総務部 勤続3年目 佐藤 勝美さん 外見では視野狭窄があると気づかれにくいので、外を歩く時など困ることはありますが、仕事上で大きく困ることはありません。今の仕事には慣れてきたので、今後は施工管理に関する知識や経験を活かせるような仕事の幅が広がればと考えています。 従業員の声 宍道湖東部浄化センター 勤続8年目 門脇 信弘さん  地道に取り組む仕事がしたかったので、ハローワークの求人に応募して、この仕事に就きました。測定値の四捨五入や急な変更などが苦手でミスもありましたが、作業も増えて、毎日充実して仕事をしています。これからも継続して働いていければと思います。 活用した制度 トライアル雇用、ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、地域障害者職業センター 労働条件等:1日6時間、週5日間勤務、契約社員 法人データ ■ カナツ技建工業株式会社 ●所在地 島根県松江市 ●従業員数 247人 ●障害者雇用者数 4人 ●障害種別 視覚障害、聴覚障害、知的障害 ●事業内容 建設工事の企画・設計・監理・請負・コンサルティング、住宅の建設・販売・賃貸及び管理、環境調査・アセスメント、汚水処理場の運転維持管理、産業廃棄物の収集運搬・処分等 事例. 2 神町電子株式会社 山形県 製造業 (電気機械器具製造業) ポイント @ わかりやすい専用マニュアルを作成し職務を習得した A 体調管理表を用いた振り返りで安定勤務につなげる 経営者の声 代表取締役社長 板垣 政則さん  事業所として障害者の雇用率を達成しなければならないと考えています。ただし、顧客のニーズの変化に対応して業務内容も常に変更することになるため、職務とのマッチングは難しく、通常の採用活動では採用にこぎつけることが難しいのです。ハローワークの担当者に当社の業務内容を見学して理解してもらうことで、合う方を紹介してもらいました。それでも、本人の特性と作業環境が合わず離職となってしまったこともあります。ただ、私は、兄弟が経営する特例子会社で障害者が働く姿を見て知っていることもあり、やってみなければ仕事が合うかどうかの判断はできないこと、そして、職務は探せばあると考えて取り組んでいます。  障害者雇用を継続するためには、変化していく職務内容とのマッチングが今後も課題ですが、障害のある方の雇用に取り組むことはその時々の状況を見る目を養うことができ、部下を育てるための接し方や対応を学ぶこととなり、結果的に人材育成スキルを身につける契機となったと考えています。 職務内容と工夫 1 マニュアルを作成し職務を習得  Aさんは、回収されたリサイクル用電子部品の分解、清掃、消耗部品・破損部品の交換、組立作業等に従事している。Aさんの職務内容習得のために、現場担当者の吉泉さんは、詳細な写真や図解を多用した「Aさんの専用マニュアル」を作成した。専用マニュアルは、使用する工具の使い方(持ち方、角度、動かし方等)、検品の確認ポイント、作業のコツなども矢印や番号を使って写真に書き込んでいる。製品の仕上がり状態に迷い、考えこんでしまった際にも、良品・不良品の双方の例をマニュアルで明示した。  この取組により、Aさんの仕事ぶりは不良品の発生率ほぼ0%。ミスが発生するかもしれないという不安は専用のマニュアルで解消され、判断に迷った時の停滞もなくなった。 2 目標を可視化し作業スピードを向上  作業スピード向上のためには、作業工程を3つに区切り、区分ごとの目標値を設定した「目標個数早見表」を作成した。  Aさんの所要時間を計測、記録することにより、結果を可視化した。作業効率は他の従業員と同等のレベルに達する時もある。 3 体調管理表を活用した振り返り  Aさんは作業中の眠気により、身体が作業器具などに接触することがあったため、通常1日3回(3回中1回の昼休憩は40分)休憩するところ、Aさんにはその他に3回(各5分)の休憩を追加し、眠気への対応を行ってきた。これに加えて、Aさん自身が生活リズムを確認し、意識できるように作成したのが「体調管理表」。作成当初、Aさんは体調管理表の記録に積極的になれなかったが、何故眠気が生じたのかなどについて、現場担当者と一緒に振り返りを行うことを通して、現在は自発的に生活リズムを整えるよう心がけられるようになった。 現場担当者の声 品質技術係 係長 吉泉 智美さん  雇用当初は、発達障害のことはあまり知らず、何故できないのかとの思いもありましたが、マニュアルを見ながらの繰り返しの指導、注意力が欠けたときの声かけの重要性、表現の仕方、障害のタイプなど障害者と接するときのポイントを知ることができました。  Aさんが安定して仕事を行うまでには、きめの細かい指導が必要でしたがジョブコーチと連携したことが功を奏したと思います。余裕がない中での指導でしたが、現場の同僚のフォローがあったこと、業務とのバランスが取れたこと、障害のない社員のためのマニュアル作成にも参考になり勉強になったことが良かったと思います。 従業員の声 勤続2年目 Aさん  神町電子に入社して1年7か月になります。正社員であること、フルタイム勤務であること、作業内容が部品の組立作業だったことから応募し、トライアル雇用で自分に合っていると思いました。入社当初は、組立作業でしたが、今は、インクリボンの交換、部品の塗装などに変わり、入社当時の作業より難しくなりました。仕事が変化する、広がることは大変ですが、一つひとつ確実にできることでやりがいを感じています。与えられた作業に集中して、正確に、安定した仕事をしたいと思っています。  入社して良かったことは、夏の納涼会に参加して楽しかったことです。会社の行事に参加でき、職場の一員であることを強く感じました。この会社に就職して良かったと思います。 活用した制度 トライアル雇用、ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、地域障害者職業センター 労働条件等:1日8時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 神町電子株式会社 ● 所在地 山形県東根市 ● 従業員数 94人 ● 障害者雇用者数 1人 ● 障害種別 発達障害 事例. 3 アイ・エイチ・ジェイ株式会社 鹿児島県 情報通信業(通信業) ポイント @ 障害者雇用で社内の雰囲気が良くなった A 指導担当者を障害のある社員の隣の座席に配置して頻繁にコミュニケーション 経営者の声 代表取締役 高岡 和也さん  当社は情報通信業の中で営業を専門にしている非常に若い会社です。設立は2007年12月。平均年齢は28歳。そのような中で障害者雇用と言っても、当初はあまり理解が進んでいなかったのですが、先進的な会社の雇用事例などを見て、障害者雇用はポジティブなもので、会社にとってプラスになると考えるようになりました。  実際、障害者雇用を進めたことで、社内の雰囲気が良い方向に変わりました。まず、お互いに気を遣うことができるようになりました。具体的には、声が大きく元気な社員が多い中で、障害のある社員に向けての電話の口調や声の大きさなど、本人にとってどこからがプレッシャーになるのか、どこまでなら大丈夫かを考えるようになり、どう接していけばいいのかが徐々に分かるようになりました。   障害者雇用をネガティブと考えず、本人の能力を発揮できるようにしていくことが大切だと思っています。時には「良くできたね!」と本人に伝え「自分が会社の役に立っている」と実感してもらうことが大切だと思っています。会社でどう活躍してもらうことができるか、ターゲットを絞っていくことが重要だと考えています。 職務内容と工夫 1 勤務時間の変更・調整  Yさんはホームページのコンテンツ更新、本社や支社のパソコン等の機器管理、会社新聞「アイ・エイチ・ジェイ“プラス“」の原案の作成等、管理本部の幅広い事務を担当している。納期が厳しくなく、マイペースでできる。勤務時間について当初、ハローワークへの求人は10:00〜17:00だったが、朝礼に参加したいという本人の希望に沿って9:00〜16:00に変更。体調がすぐれない時には15:00までの時短勤務にするなど、働きやすい環境を整えている。 2 週1回のミーティング  毎週金曜日、現場担当の課長がYさんからマンツーマンで30分〜1時間話を聞いている。本人が聞いてほしい部分をこのミーティングで引き出すことができる。次週の仕事の進め方、体調、薬の効き具合、プライベートも含め、Yさんは課長に細かく話している。 3 座席の配慮  Yさんが安心できるよう、Yさんの座席は現場担当の課長や課長代理の近くに配置。  「隣に座っているので、本人が仕事中に手が止まっていたり、手が震えていたりすると、状況をみて声をかけるようにしています。席が近いので、本人の体調は見ればわかります。」(写真は現場担当者 小畑 実津子課長) 雇用管理担当者の声 取締役管理本部長 島田 正弘さん  障害者雇用に当たっては、担当業務を本人の秀でている分野に特化し、適切な指示をすれば良い成果が出ると考えています。  指示に当たっては、「あれやっておいて」「あれどうなった?」といった曖昧な言葉は控えていますが、それは他の社員に対しても同じことです。  Yさんは自己表現が苦手ですが、能力が高く、よく仕事をしてくれるので会社としては本当に助かっています。 従業員の声 勤続3年目 Yさん  月に1回、地域障害者職業センターの方やハローワークの方が面会してくれます。この面会では、入社前から自分のことを知ってくれている方々が、入社後の自分の状況を見てくれるので不安がやわらぎます。  周囲の方々には本当によくしていただいています。  会社は仕事を任せてくれるので、もっと質を上げて今後もこの仕事を続けていきたいと思っています。 活用した制度 精神障害者雇用トータルサポーター、ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、地域障害者職業センター 労働条件等:1日6時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ アイ・エイチ・ジェイ株式会社 ● 所在地 鹿児島県鹿児島市 ● 従業員数 171人 ● 障害者雇用者数 2人 ● 障害種別 精神障害、身体障害 ● 事業内容 OA機器販売事業、移動体通信事業、法人向け携帯電話販売事業、携帯電話ショップの運営 事例. 4 株式会社SBS情報システム 静岡県 情報通信業 (情報サービス業) ポイント @ できる職務を積み重ねてキャリアアップを図る A 戦力となって活躍してもらうために雇用支援制度を活用 経営者の声 代表取締役 渡邊 治彦さん  当社は1999年に親会社から分社化した経緯があります。独立した以上、雇用率を達成したいと考え、当時ハローワークやNPO法人などに相談しながら障害者雇用に取り組み、現在3人を雇用しています。企業として障害者の職務選定には悩みますし、長く雇用するためには周囲の従業員の理解を継続的に求めていく必要を感じています。  当社では、障害者を雇用することによって社内のコミュニケーションが増えました。また、外国籍の方の雇用への理解など、多様な働き方を受け入れる社風となってきました。  障害者雇用について、“理念”や“法定雇用率”だけを契機とした取組ではいけないと考えています。職務のマッチングは難しいですが、彼らを戦力として受け入れることが重要です。現在は、IT技術も進み障害特性による課題をサポートできる環境や雇用を支援してもらえる制度があるのですから、それらを積極的に活用すると良いと考えています。 職務内容と工夫 1 できる職務を積み重ねてキャリアアップを図る  勤続13年目の内野さんは視覚障害者。会社として初めて受け入れる障害で不安もある中、内野さんのスキルや意欲に応じた職務内容をその都度検討しマッチングを行い、さらにはキャリアアップを図っている。 (1)障害者トライアル雇用(3か月)活用時の職務  総務部に所属。2〜3週間ずつ社内の各部署を体験しながら、資料・議事録の作成、電話応対、受発注の管理などの職務を主担当について補助的に担った。当初は慣れないIT用語などもあったため、業務遂行には時間を要したとのこと。 (2)総務部の職務  内野さんは中途での受障で、前職では営業の経験があった。それを活かせる職務は何かを検討し、購買関係の職務を設定。物品等の見積りを取得し、業者を決定し、発注する職務を、介助者とともに担当した。  その後、営業支援業務を担当。顧客向け資料の発送、顧客との電話によるやり取りの他、事業部門の収支資料のチェック等の職務を担当。6年目にはチーフに昇格。 (3)事業本部の職務  内野さんのスキルアップ希望もあり、勤続8年目に事業本部へ異動。顧客に対する見積作成等の営業支援業務の他、請求書発行システムのデータを管理し他の従業員の誤りを指摘し修正を指示する役割も担っている。11年目にサブプロデューサーに昇格。 2 戦力となって活躍してもらうために雇用支援制度を活用  内野さんのスキルを活かすために障害者雇用を支援する様々な制度を活用し戦力化を図っている。 (1)職務とマッチングを図るために就労支援機器を整備  内野さんは、視力0.01で水中を歩いているような見え方である。慣れにより通勤や社内の移動に大きな問題はないものの、見積り作成やデータ管理業務には必須のワープロソフトや表計算ソフト等の使用には、視覚障害者用の就労支援機器が不可欠であった。  そのため、採用当初に「視覚障害者向けノート型パソコン」「パソコン接続型カラー拡大読書器」「卓上型カラー拡大読書器」を借り入れ(約1年)、後に作業施設設置等助成金を活用して就労支援機器を購入した。 2 (2)レベルの高い職務遂行のために介助者を 雇用  トライアル雇用開始と同時に、職場介助者として障害者施設の指導員の経歴を持つ社員を介助者として雇用。介助者の支援により入力業務等の効率化が進んだ他、介助者とともに職域の拡大を検討したことが総務部内での担当職務の選定につながり、内野さんのキャリアアップに大きな影響を与えている。介助者の雇用にあたっては「障害者介助等助成金」を活用し、費用の一部について助成を受けた。 雇用管理担当者の声 総務本部長 鈴木 逸さん  総務本部副部長 小泉 真理さん  障害のある従業員にとって必要な改善には取り組みましたが、特別に何かしている、という雰囲気は職場にありません。それは、仕組みとしてやっているのではなく、その時その時に臨機応変な対応をしているからだと思います。常に順調だったということでもなく、周囲も本人も悩む出来事はありました。その解決に取り組むことは、障害があるからということではなく、企業の人事が従業員に対する姿勢として一般的なのだと考えています。 従業員の声 勤続13年目 内野 博康さん  当社で働き始めてから、13年になります。職務を習得するごとに、会社が職域を拡げてくれました。障害の有無に関係なく対等に仕事を任せてもらえるので、職場の一員であると実感しています。また、周囲の方が気兼ねなく接してくれるため、職場での疎外感は全くありません。今後も、求められる役割に対して積極的に取り組んでいきたいと考えています。 活用した制度 トライアル雇用、ジョブコーチ支援、就労支援機器貸出し、障害者作業施設設置等助成金、障害者介助等助成金、特定求職者雇用開発助成金 活用した支援機関 ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター労働条件等:1日8時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 株式会社SBS情報システム ● 所在地 静岡県静岡市 ● 従業員数 178人 ● 障害者雇用者数 3人 ● 障害種別 視覚障害、聴覚障害、内部障害 ● 事業内容 システムインテグレーションサービス、総合行政情報システム他 事例. 5 有限会社奥進システム 大阪府 情報通信業 (情報サービス業) ポイント @経営者のビジョンと戦略で障害者雇用が実現 A働きやすい職場づくりを目指した職務設定と勤務制度の整備 経営者の声 代表取締役社長 奥脇 学さん  2000年の創業当時、働く時間や場所を選ばない働き方を志向する人材を集めて在宅勤務を基本とする会社を考えていたところ、身体障害者と出会って雇用したことが始まりです。その後、特例子会社や就労支援施設の見学やセミナーなど様々な情報収集をしてみると、当社でも取り組めることだと思い、現在は社員11人中9人が障害のある従業員です。  企業経営には「ビジョンと戦略」が必要です。当社は「時間と場所に縛られない」「働きにくい人が働きやすい環境づくりをする」という基本理念の実現を目指して取り組んでおり、その結果として制度が整い利益も上がっています。  障害者雇用についてのノウハウは世の中にあふれているので、「雇用する」と決めたら、それを実直にやればできることだと考えます。また、できることから始めるのが良く、まずは実習を受け入れて、実際に触れあってみるといいでしょう。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定   障害のある従業員に対する職務設定は「できることを任せる」方針で行っている。障害特性を確認して職務を検討するのではなく、少しでもできそうであれば試しに取り組ませて検討している。この方法のベースには、従業員本人が判断できるように、社内のルールとして「苦手なことはやらない」ことが明確に設定され、共有されていることによる。  具体的には、精神障害のあるAさんはSEとしての前職のスキルを生かしてプログラミングの実現部分のシステム開発を担当としている。一般的なSEの職務内容には、顧客からのニーズを把握し基本設計を提案する工程が含まれるが、Aさんが苦手とする顧客対応部分の工程は担当しないことで、Aさんのスキルが発揮できるような職務となり、継続勤務が可能となっている。  また、発達障害のある浦田さんはホームページのデザインを担当。入社後に試しに経験した上で向いている職務の担当となり、採用当初の6時間勤務から8時間勤務へ就業時間を延長することができ、職務内容も拡大しつつある。 2 従業員の個々が持つ事情に配慮したルールづくり  車いすを使用する身体障害の従業員に対してスロープの設置や事務所ドアの引戸への変更等バリアフリー化の取組の他、体調や通院等への対応として在宅勤務や短時間勤務制度等の就業制度面の整備にも取り組んでいる。  これは、従業員が労働条件等で問題を抱えた場合に、職場全体の問題と捉えて就業規則の改定に反映してきた結果とのこと。  現在、整備されている勤務制度は次のとおり。  Aさんは、8時間勤務のところを毎日1時間超過の勤務とし、8日勤務した時点で1日(8時間)休暇とする変形労働時間制度を活用している。これにより、平日の通院や休養をとることが可能になっている。 従業員の声 勤続6年目 Aさん  担当する職務内容は同じものですが、顧客の要望が上がるのに伴って業務量は増え質的な面でもスキルアップしていると考えます。  最近は、実習生に仕事を説明する講師の役割も担当しました。ただ、体調の波があるので、職務の拡大が調子を崩す契機とならないよう、調整が大切です。自身による調整力もついてきていて、働き続けることをいつも意識しています。 従業員の声 勤続2年目 浦田 梨佐さん  初めての就職で続けられているのはこの会社だからだと思っています。毎日記入する日報に困ったことを記入すれば、社長から声をかけてもらえます。仕事なので辛いこともありますが、デザインの技術力や顧客用マニュアル作成のための文章力についてスキルアップしたいと考えています。 活用した制度 トライアル雇用 活用した支援機関 ハローワーク、就労移行支援事業所など 労働条件等:1日8時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 有限会社奥進システム ● 所在地 大阪府大阪市 ● 従業員数 11人 ● 障害者雇用者数 9人 ● 障害種別 身体障害、精神障害、発達障害 ● 事業内容 中小企業向け業務管理システム開発、ホームページ作成