事例. 6 株式会社十勝毎日新聞社 北海道 情報通信業(映像・音声・文字情報制作業) ポイント @ 担当する職務を本人も交えて検討・設定。職場定着と職域拡大につなげる A 一人ひとりの特性に合わせ働きやすい職場環境を整備 経営者の声 代表取締役社長 林 浩史さん  米国勤務の経験から、社会ルールの遵守は当然との考えがありますし、報道機関の使命としても社会的弱者が活躍できる場所を社会に広める役割があると思っています。それには自らの実体験として障害者を雇用する必要があります。障害のある従業員には現在、記事のデジタルデータ化の職務を担ってもらっています。この職務は定型的なものですが、限定するものではないので、次のステップとして他部署への異動もあると思います。ただし、我々新聞業界は販売部数の減少という課題があって、雇用確保のためには生産性のアップを求められています。  障害者雇用のためには、障害者の方々を身近に感じることがすごく重要だと思います。彼らがどのように考えるのかをコミュニケーションを通じて理解し、皆が幸せになるための社会の実現、誰もが働くことが当たり前になるための取組が大切です。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定(柳澤さん)  紙媒体などで保存されている過去の記事等をデジタルアーカイブ化する部門を設置。現在は障害のある社員5人を含む全7人体制で職務を担当している。職務内容は、当日紙面及び過去紙面のデジタルデータ入力と入力記事の整形。  広汎性発達障害のある柳澤基さんは、データ入力や写真の加工作業を主業務としている。柳澤さんの作業遂行スピードや正確さは優れており、職場で培った技能を競う「アビリンピック北海道大会」のパソコンデータ入力部門で最優秀賞を2度受賞した経歴もある。 2 担当職務を障害のある従業員とともに検討(Aさん)  発達障害のあるAさんは、営業マンとして在籍していた広告部門では時間管理が苦手で、渉外に苦労することが重なったため、異動となり勤務している。異動に伴い正社員からパートタイム社員へと勤務形態の変更があったものの、Aさんの特性に合った職務内容について会社と話し合いを重ね検討した。  現在の職務はタイトな期限設定が少なく、顧客への対応もなくなったことからAさんにとって仕事をしやすい環境になっている。異動後1年半が経過し、社内報の編集やデータベースの作業を支援するプログラム作成など職務が拡大している。 3 一人ひとりの特性に合わせた職場環境を整備  柳澤さんは続けて集中することが難しかったため、職場ではクラシック音楽を流し、50分ごと10分の休憩時間を設定することで、データ入力の精度と速度を保てるようになった。  Aさんは時間管理を苦手としていたが、Aさんが立てるスケジュールを担当の石田さんが確認し漏れが発生しないように声をかけることで、記憶を補完し適切な判断ができるようになっている。  その他、身体障害のある従業員の受け入れ時には、エレベーターに車いす用ボタンや障害者用トイレの引き戸を自動開閉に改修するなどの設備改善の他、温度・湿度に敏感な特性に対し、ヒーターの設置やエアコンの吹き出し口にダクトを取り付けて空調に配慮している。 雇用管理・現場担当者の声 総務局人事部 副部長 井上 朋一さん  デジタルメディア局デジタル編集部 石田 静子さん  会社が障害者雇用に取り組んだ後に担当者となりました。障害のある従業員にとって働きにくい問題が発生した時々でできることをするという対応で、社内のシステムや制度づくりは後付けだと考えています。  現在は、創立100周年に向けた職務がメインですが、今後は労務や総務、庶務系の職務を作り出せると考えています。 従業員の声 勤続5年目 Aさん  現部署に異動になる前は悩みました。ただ、どんな選択が自分にとってより良いのか人事と話し合いながら決めています。現在、勤務時間内に対人関係に関する外部研修の受講を認めてもらっています。できる仕事から今以上の仕事をできるようになりたいです。 活用した制度 トライアル雇用、障害者作業施設設置等助成金 活用した支援機関 ハローワーク、障害者就業・生活支援センター 労働条件等:1日7〜8時間、週5日間勤務、パートタイム社員 法人データ ■ 株式会社十勝毎日新聞社 ● 所在地 北海道帯広市 ● 従業員数 177人 ● 障害者雇用者数 5人 ● 障害種別 身体障害、知的障害、発達障害 ● 事業内容 日刊紙や地域誌の制作・販売 事例. 7 トピー海運株式会社 愛知県 運輸業(運輸に附帯するサービス業(港湾運送業)) ポイント @ 新設ラインにおいて職務を細分化、単純化。安全性や効率性を考慮 A 経営者のトップダウンだけでなく周囲を含めた会社全体での理解により職場定着につなげる 経営者の声 取締役管理本部長 毛塚 真敏さん  当時の社長が親会社で障害者雇用の経験があり、当社でも積極的に取り組むこととしました。ちょうどその時期に、付加価値のある新しい業務として、自動車用ホイールの保管、梱包、出荷の業務を請け負うことになり、安全性の確保や効率性を考慮して、新たな梱包ラインを創設することにより、その業務を担ってもらうこととしました。ハローワークや地域障害者職業センターのジョブコーチなどの支援を得て、トライアル雇用を利用した上で、計4人を採用しました。採用前や直後には、とのように接したらいいかといった不安もありましたが、実際には特段の大きな問題もなく、採用後8年近く経過する現在も4人とも継続して働いてもらっています。  港湾物流業務は、特に安全管理が重要ですが、ラインでのミーティングや管理者によるパトロール等を日々行っています。障害者の雇用と定着のためには、経営者のトップダウンだけでなく、周囲の理解も加えた会社全体の理解が重要だと考えます。今後については、特別支援学校との連携等により、雇用の拡大を検討していきたいと思っています。 職務内容と工夫 1 職務内容を細分化、単純化  Aさんを含めた4人の知的障害者は、作業指示者(現場担当者)の上田さん、作業量が多い時にはもう1名の作業員とともに、通常5〜6人のチームで自動車用ホイールの梱包作業を行っている。  まず、工場から運ばれたホイールを、キズなどをつけないように慎重に、一つひとつラインのレールの上に乗せる。  次に、ラインに乗せられたホイールにバルブをすき間なく真っすぐに取り付ける。細かい作業なので丁寧に 行う必要がある。  そして、それらをクッション材で包み、2個1組で段ポールケースに入れていく。一定のペースを保ち、ここでもキズをつけないよう慎重さが求められる。  さらに、段ボールケースのフタを専用の機械を操作しながらクラフトテープで閉じる。ここでは、機械操作のスキルが求められる。最後に、段ボールケースをパレットに乗せ積み上げる。かなりの重量があるので、体力を必要とする。  知的障害者でもスムーズに作業できるよう、職務を細分化、単純化し、それぞれを一定のローテーションで担当する。  そして作業全般の確認や、トラブル発生時の対応、梱包前後のフォークリフト操作などは、上田さんが行っている。 2 バルブの取り付け作業について、ライン上に正常・異常をわかりやすく掲示  バルブの取り付けは、間違えれば自動車事故にもつながる重要な作業であり、ラインが動く中で、一定のペースで丁寧に作業する必要がある。このため、ライン上に大きな写真を掲示し、正常な状態(正常品)と異常な状態(異常品)について、「スキマなし」や「バルブが斜めになっている」のように、それぞれ簡潔なコメントを付けることで、自らの作業が正しく行われているかをその場で確認できるよう工夫している。 雇用管理担当者の声 管理本部総務グループ長 丹治 智詞さん  梱包ラインの創設とそれに伴う知的障害者の採用から約8年になりますが、皆さん仕事にも慣れ、効率は上がっていると思います。今では、障害者雇用という特別な意識をすることはほとんどありません。  人手不足の中、特別支援学校の職業コースに通う生徒を見学にも行きましたが、問題なく働けると感じています。採用が難しい今の時代には、自社でどのように働いてもらえるか、会社全体で、統一した思いをもって取り組むことが必要だと思います。 現場担当者の声 上田 隆志さん  Aさんをはじめ4人とも真面目にコツコツ仕事に取り組んでいます。一人ひとり性格が違い、それぞれに得意な仕事と苦手な仕事とがありますが、全体として作業のスピードは早くなっていると感じています。  気をつけているのは、それぞれの顔や動きを見ながら、普段と違っていることがないかを確認することです。体調が悪かったり、安全面が疎かになったりすることが、普段との違いに表れるからです。  特別なことではなく、「普段どおり」仕事ができるよう気を配ることが一番重要だと思っています。 従業員の声 勤続8年目 Aさん  入社して8年近くになります。自動車用ホイールは重く、繰り返しラインに積み込まなければならないので大変ですが、楽しく仕事をしています。休みの日はゲームなどで気分転換をしています。できるだけ長く勤務できるといいと思っています。 活用した制度 トライアル雇用、ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、地域障害者職業センター、特別支援学校 労働条件等:1日6時間、週5日間勤務、パートタイム社員 法人データ ■ トピー海運株式会社 ● 所在地 愛知県豊橋市 ● 従業員数 287人 ● 障害者雇用者数 4人 ● 障害種別 知的障害 ● 事業内容 港湾物流、構内物流、内航海運、自動車運送、金属加工、石油製品販売 事例. 8 西九州ハートフルサービス株式会社 熊本県 卸売業・小売業(飲食料品卸売業) ポイント @ 職務の切り出しをせず、適材適所に配置 A 本人の強みを見極めながら徐々に職域を拡大 経営者の声 代表取締役社 森下 義弘さん  当社は、以前は青果物を扱う選果場でした。選果場は年間を通して仕事を安定的に確保することが難しく、パート職員の離職が多かったのですが、特例子会社を設立したことで、法定雇用率の達成だけでなく、作業環境の整備と安定的な雇用の確保が可能となりました。  青果物を扱う市場は気性の荒い人が多いため、当初は障害のある人がやっていけるか心配したこともありましたが、皆、まじめで素直なので、今では農家の方々からとても喜ばれています。  プレッシャーにならない程度に仕事を任せていきたいと思っています。本人の不安を軽減することが大切なので、一人ひとりの状況をこまめに聞くようにしています。  年1回のボウリング、グランドゴルフ、カラオケ大会などには皆、積極的に参加してくれます。食堂では障害のある社員も障害のない社員も一緒に食事をとり、日々、特にお互いを意識せすに仕事をしています。おかげで、今は会社に活気があります。 職務内容と工夫 1 仕事の切り出しはせす、既存の業務の中で本人ができることを担当してもらう  岡本さんは、なす加工部門のリーダーに昇格した。作業の進行を見ながら原料や箱、袋などを供給。同時に終わったところを片づけ、作業が終わると明日の準備をする。まさに目配り、気配りの岡本さんだからできる業務である。 2 本人の強みや長所を見極め、職域を拡大  障害のある社員には、障害特性に関わらす様々な業務をやってもらいながら、キャリアアップを図っている。  選果の業務を担当していた松村さんは、トラックの運転もできたので、2年目以降は集荷も担当している。その後、フォークリフトの免許を取得してさらに職域が拡大。今は症状も安定し、嘱託社員に昇格。集荷業務の準責任者を務めている。 雇用管理担当者の声 管理部長・生活相談員 田原 昌昭さん  朝礼で話をしたり、社員と個別に話をしたりして1〜2年間かけて障害者雇用を浸透させていきました。  社内理解を得ることは非常に大切だと考えています。1年かけて仕事を覚える人もいれば3年かけて覚える人もいます。早急に結果を出すことを考えず、配慮と思いやりをもって取り組んでいきたいと思っています。 現場担当者の声 主任・ジョブコーチ・産業カウンセラー 田中 自子さん  就業時間を柔軟に設定し、体調管理を個別に行っています。  当初は本人がどの仕事ができるのか、どこまでできるのかがわからず手探り状態でしたが、本人が困ったことを把握し、課題があれば随時話し合い、支援機関や家族と連携して対応しています。  本人の強みや長所を認め、本人を受け入れる雰囲気をつくることが大切だと思っています。 従業員の声 勤続5年目 岡本 友揮さん  選果とコンテナ積みを担当しています。今の仕事は結構楽しいです。体調も良く、これからもこの仕事を続けていきたいと思っています。 従業員の声 勤続9年目 松村 透さん  当初はこんなに長く働けるとは思っていなかったので、ありがたいと思っています。体調が良い時も悪い時も、いつでも上司に相談することができ、とても助かっています。今後も安定して働いていきたいと思っています。 活用した制度 ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、各種訓練校、特別支援学校 労働条件等:1日6時間〜8時間、週5日勤務、嘱託社員 法人データ ■ 西九州ハートフルサービス株式会社 ● 所在地 熊本県熊本市 ● 従業員数 61人 ● 障害者雇用者数 23人 ● 障害種別 身体障害、知的障害、精神障害 ● 事業内容 農産物の選果及び加工 事例. 9 朝日土地建物株式会社 東京都 不動産・物品賃貸業(不動産取引業) ポイント @ ハローワークや就労支援センターとの連携により採用時のマッチングと職場定着につなげる A 精神障害者の特性に配慮し能力を活かすことで業績も向上 経営者の声 副社長 若林 剛さん  今から10年前のこと、ハローワークから障害者雇用の相談を受けたのがきっかけで具体的な取組を始めました。「企業の社会的責任」、「法令遵守」などの世の中の流れ、今後の会社のあり方を考えたとき弊社社長より「すぐに障害者雇用に取り掛かるように。」と会社として推進するように指示がありました。しかし、現場の反応は否定的で社内では「どうして精神障害者の雇用なのか。」との反応でした。実際に教育をする担当者達にはそれぞれ戸惑いがあったようです。障害者の中には、突然泣き出す人やいなくなってしまう人、周りと調和がとれない人、その度に現場の担当者達は四苦八苦していたようです。その際に助けていただいたのが地域の就労支援センターの方々です。精神障害者に対する沢山のノウハウや病気の特性をよく知っているのでアドバイス等は大変参考になりました。精神障害者の方は職場(人)とのマッチング、教育担当者達の配慮があれば高い能力を発揮します。実際に業績向上にも繋がっています。当社では精神障害のある社員を採用することで、社員、職場の雰囲気が変わったことを実感しています。引き続き障害者雇用(職場定着)に取り組みたいと考えています。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定(Aさん)  Aさんは入社5年目。入社当初は、説明のときに使うパンフレットの準備、資料のマーカー処理などの比較的簡易な作業に従事していたが、現在は、保険見積書の作成、電話応対、書類の整理などの職務に従事し、職務の広がりとともに、責任も重くなるなど着実なキャリアアップを図っている。 2 担当職務の設定(Bさん)  Bさんは入社2年6か月。入社当初は、説明資料の準備(パンフレットのセット)、ファックスの送信など比較的簡単な職務に従事していたが、現在は火災保険のサポート、保険の見積書の作成、社員のスケジュール管理、郵便物の集計などの職務に従事している。職務の広がりとともに、自分のスキルを活かしながら職場の重要な一翼を担っている。 雇用管理担当者の声 北見 泰子さん  初めての障害者の採用で苦労しましたが、雇われる人も不慣れ、雇う人も不慣れ、いわば双方不慣れの中では、最初から上手く行かないのが当然と今になって思います。  指導に際しては、幾つかのポイントがあると思います。一つ目は、地域の就労支援センターを積極的に活用することです。特に、支援者に実際に職場を見てもらうことは、本人と職場とのマッチングに繋がります。  また、本人の状況を第三者の目で客観的に判断してもらうことで課題解決に役立ちます。二つ目は、指導者が本人の「できる仕事」と「やりたいと思う仕事」を見極め、本人ができる仕事から始めること。  また、指導者の選任については、指導者自身の責任が過重にならないための配慮が大事だと思います。三つ目は、家族の協力を得ることです。体調が悪い場合や災害時の連絡など、家族の協力が大事だと思います。  当社の精神障害者雇用に対する考え方として、「トライアングル」の視点があります。それは、障害者一人を雇用するには、「会社」だけではなく、本人を取り巻く「支援センター(支援機関)」、「家族」の協力を得ることが職場定着を図る上で、必要不可欠であるということです。 従業員の声 勤続5年目 Aさん  入社の時から比べて、仕事の幅も広くなりました。新しい仕事をするときには、不安もありますが、任せてもらえることにありがたさとやりがいを感じています。  健康管理は、運動することです。続けられないかもと思ったときが何度もありますが、そんなときは、支援スタッフと相談することで冷静、客観的になり、ハッと気づいたりします。人と話すことで頑張れると思うことが多く、会社の人が自然に受け入れてくれる、理解してくれるから仕事が続けられると思っています。 従業員の声 勤続3年目 Bさん  入社の時より、仕事が難しくなっています。自分にできるかなとの不安もありますが任せてもらうありがたさと信頼されている実感があります。一日の中でも時間帯や天候の変化などで不安定になったりするので安定するような働き方ができたらと思っています。  考え過ぎると、体調を崩すので、定期的に支援スタッフと相談したり、Aさんと相談したりしています。体調管理のために、睡眠をしっかり取るようにしています。「休みを取っていますか?」などの同僚の声かけに助けられているとの安心感があります。いつも不安がありますが、「大丈夫?」と聞いてくれる先輩達がいることで仕事が続けられています。 活用した制度 トライアル雇用、ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、 障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター 労働条件等:■週3日〜4日から開始 ■3か月後に週30時間勤務 ■勤務時間は選択可・ 9:30〜17:30 ・10:15〜17:15 法人データ ■ 朝日土地建物株式会社 ● 所在地 東京都町田市 ● 従業員数 285人 ● 障害者雇用者数 5人 ● 障害種別 精神障害 ● 事業内容 不動産仲介業(主に販売業務)、一般顧客に新築物件・中古物件・土地紹介 事例. 10 株式会社古田土経営・税理士法人古田土会計 東京都 学術研究・専門・技術サービス業(専門サービス業) ポイント @ 障害者雇用を経営方針に掲げ、社内に浸透 A 経営者と実践者、支援機関が一体となって採用、戦力化につなげる 経営者の声 専務取締役 吉田 由美子さん  20年ほど前から、子育て中の女性など誰もが働きやすい職場にしたいという思いがありました。社長を中心に、社会福祉にも貢献してきましたが、障害者雇用はなかなかきっかけがありませんでした。しかし、このままではいけないと考え、必ずやるという意志を表すため、数年前に将来のビジョンとして障害者雇用について経営計画書に記載して取り組みました。東京都や地域活動支援センターなどの支援を得ながら、知的障害や精神障害のある方の採用を進め、今では合わせて5人の方が働いています。  障害者雇用は、経営者の真剣な思いが重要ですが、加えて、その思いに共感し、応えてくれるパートナー(実践者)が必要です。経営者、実践者、支援機関が一体となって取り組むことで、雇用が進んでいくと思います。  当社では、本人の希望等に応じ、3つのコースを設けて雇用しています。会社にとって利益を上げることは重要であり、それも社員を守ることにつながるものです。それぞれの働く力が最大限活かされ、戦力として活躍することで、働くことや人の役に立つ喜びを感じてもらえるようにしていきたいと考えています。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定と広がり  伊藤さんは、入社して5年目であり、入社当時に担当していた顧客の年末調整、賃金台帳、決算書等の入力業務に加え、現在は、DVDや各種資料の物販(受注、発送、管理)業務のほか、会計や財務分析に関する資料の作成補助業務を行うなど、その範囲は年々広がっている。  伊藤さんを含めた3人の精神障害者と、リーダーの十河さんの4人でチームを組んでいる。社内の他の業務も抱えて多忙な十河さんに代わり、最近は伊藤さんがサブリーダー的な役割を担う場面も出てきた。  伊藤さんを含め、同社での障害者雇用に向けた取組においては、次のような工夫を行っている。 2 職務の切り出しのポイント  どういう職務を障害者向けに切り出すかポイントを明確にしている。具体的には全社的に議論して決定する。 その1:手間がかかってできていない仕事 その2:電子化されておらず、あったらいいもの その3:パターン化され、補助者等がしている仕事 その4:期日がない仕事、リカバーできる仕事 3 採用までの取組  採用までのプロセスを明確にし、実践している。 STEP1:担当者を人選する (前向き、行動力、仕事の切り出し) STEP2:専門機関から支援を受ける (専門的なことは割り切って任せる) STEP3:セミナーに参加する (短時間でポイント、企業視点) STEP4:現場を見に行く (ベンチマーキング) (支援員の紹介、イメージする、個性) STEP5:社内への周知と協力要請 (全社員で、直接意見出し) STEP6:採用活動(理念を伝える、実習、採用基準) 4 障害者雇用が成功するコツ  成功するためのコツ(ポイント)を分かりやすく分析している。 その1:社長(トップ)が本気になる その2:喜ばれ、感謝される仕事を任せる その3:感謝の気持ちをしっかり伝える その4:仕事の意味をしっかり説明する その5:仕事を仕組み化する その6:立派な戦力として位置付ける 最大の成功要因:良い社風であること 5 サンクスカード  社員同士が名刺サイズのカードに感謝の気持ちを記入して、直接言葉によって相手に伝える仕組み。 吉田専務が伊藤さんに宛てたもの 雇用管理・現場担当者の声 戦略システム課 十河 寿寛さん  伊藤さんの採用に当たっては、不安が大きかったのですが、あれこれ悩むより、まずは行動することが大事だと感じました。  結果的には、トップの支援もあり、円滑に採用が進んだと思います。職務の切り出しも全社的に議論して行いました。  伊藤さんの採用のポイントは、仕事の正確さです。今では仕事の幅も広がり、チームだけでなく会社全体からも頼られる存在です。  これからも自信を持って活躍してほしいと期待していますし、採用増も検討していきます。 従業員の声 サポート課 勤続5年目 伊藤 勇男さん  会計事務所での仕事についていけるのか不安ばかりでしたが、徐々に慣れてきて、他の人に喜ばれることや、他の人のミスに気づけるようになったことで、役に立っている気持ちを味わうことも出てきました。今では仕事も増えて充実しています。もっと社内で活躍する障害者が増えればいいと思いますし、個人としては、職業相談に関する資格を取ることを目標に努力していきたいです。 活用した制度 東京都の支援事業、職場見学、職場実習・トライアル雇用 活用した支援機関 ハローワーク、地域活動支援センター 労働条件等:1日8時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 株式会社古田土経営、税理士法人古田土会計 ● 所在地 東京都江戸川区 ● 従業員数 210人(グループ全体) ● 障害者雇用者数 5人 ● 障害種別 身体障害、知的障害、精神障害 ● 事業内容 経営コンサルティング、税理士事務所等